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20話~39話
20:「事件」 社長の夜逃げ
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「警部、事件です」
「?どうした。なんのパロディーだ。絵画警察か?」
「え・・・・」
吊るしのヨレヨレの背広姿でポカンと突っ立っている。
「つまらない突っ込みを入れるから、分からないネタで返されるんだ。まあいい。それで、何がどうしてどうなった?」
「どうして、伝わらないんですか?」
そこでムキになってどうすると思うが、コイツごときに知らないと思われるのもシャクだ。
「おまえの元ネタは、HOTELだろ。それなら『姉さん、事件です』と言わないと伝わらないだろ」
「伝わっているじゃないですか。それに、課長に姉さんと言ったら灰皿で殴られそうで」
デスクの上を指し示してやった。灰皿など何処にもない。
「禁煙だ、昨日からしている。知らなかったのか?」
「電子タバコを吸いながら言われても分からないですよ」
「禁煙だ。タバコを止めたとは言っていない。時代の流れに合わせてやっただけだ」
まったく、受動喫煙で癌のリスクが高まるとかぬかす奴は、先に車の排ガスに文句を言うべきだ。中国の越境汚染にも文句を言うべきだ。
深呼吸をする様に電子タバコを吸うが・・・・
「電子タバコは不味くて敵わん」
引き出しから灰皿とセブンスターを出すと、火をつけた。
「やっぱり、こっちの方が旨い」
室内に広がる煙が雲のようで、なんともリラックス気分になる。
「ところで、課長。事件なんですが・・・・」
「なぜ、そこで喋るのを止める? 上司に報告するのに勿体ぶってどうする。問題点が分かる様に、簡潔に、無駄な形容詞を含まずに報告しなさい」
コイツにも散々言っているから、そろそろ出来る様になるか?
「取引先から連絡があって、注文した商品が何時になっても届かないと、マジ怒っていて直ぐに持ってこないなら、もう買ってやらないとマジ切れして、チョーヤバかったです」
ドヤ顔で報告している・・・・、十回ぐらい死なないと直らんな・・・・コイツは。
「どこの取引先が、何時注文した、どの商品で、返答した納期がいつなのか。その上で、出庫配送の記録がどうなっているのか。メーカー直送ならメーカーに取合わせをしたのか」
「まず、一報を入れろと言っているからです。これから確認します」
気が付いたら、灰皿を握りしめていた。コイツの所為でスーツが汚れるのもムショに入るのもまっぴらだ。
「まだ、報告があるのか?」
いつまでも突っ立っている。
「ところで、事務さんたちは何をバタバタしているんですか」
普段、茶ばかり飲んでいる連中が血相変えていれば、コイツでも分かる様だ。
「社長が夜逃げしたのも知らないで仕事していたのか?」
!!!「ほんとですか・・・・」
なぜ、小声になるのかさっぱり分からん。コイツには周りの慌てふためいている姿が見えんのか。
「嘘をついてどうする。この状況が理解できないのか?」
「いえ、そう言うつもりではなく。課長があまりにも普段通りなので・・・、つい」
コイツでは仕方がない。
「業者からの電話の時に、社長が不在で連絡がつかない。と、ご丁寧に説明した奴がいたからこの始末だ。連鎖的に電話が掛かってくるだろ」
「それにしても、社長が夜逃げなんて。そんなに会社危なかったんですか?」
「今年に入ってからは機嫌も悪いし顔色も悪いし、気付かなかったのか?」
「いつも、若い子の太もも観てニタニタしていたから・・・・、気が付きませんでした」
コイツのスケベさは社長並みだな。
「部長は・・・・いないですね」
太鼓持ちは無能だから、こんな状況を招いた責任がある。いや、無能だから太鼓持ちなのか・・・、どっちにしても無責任には代わらない。
「奴なら、顧客リストを持って逃げた」
「さすが部長ですね。次の会社でも優遇して貰えそうですね」
「今頃持ち出しても意味がない。それにだ、持ち出す奴を採用したら持ち出されると普通の会社は考えるんだよ」
目から鱗が取れた様な顔をしている。コイツでも理解できる様だ。
「課長は、就活しないんですか?」
「顧客と業者リストを使って事業も軌道に乗ったからな。これからは自分の会社の社長業一本だ」
「えええ! いつから副業してたんですか?」
コイツのデカい声に、事務所内の視線が集まる。
「三年ぐらいだ」
「?どうした。なんのパロディーだ。絵画警察か?」
「え・・・・」
吊るしのヨレヨレの背広姿でポカンと突っ立っている。
「つまらない突っ込みを入れるから、分からないネタで返されるんだ。まあいい。それで、何がどうしてどうなった?」
「どうして、伝わらないんですか?」
そこでムキになってどうすると思うが、コイツごときに知らないと思われるのもシャクだ。
「おまえの元ネタは、HOTELだろ。それなら『姉さん、事件です』と言わないと伝わらないだろ」
「伝わっているじゃないですか。それに、課長に姉さんと言ったら灰皿で殴られそうで」
デスクの上を指し示してやった。灰皿など何処にもない。
「禁煙だ、昨日からしている。知らなかったのか?」
「電子タバコを吸いながら言われても分からないですよ」
「禁煙だ。タバコを止めたとは言っていない。時代の流れに合わせてやっただけだ」
まったく、受動喫煙で癌のリスクが高まるとかぬかす奴は、先に車の排ガスに文句を言うべきだ。中国の越境汚染にも文句を言うべきだ。
深呼吸をする様に電子タバコを吸うが・・・・
「電子タバコは不味くて敵わん」
引き出しから灰皿とセブンスターを出すと、火をつけた。
「やっぱり、こっちの方が旨い」
室内に広がる煙が雲のようで、なんともリラックス気分になる。
「ところで、課長。事件なんですが・・・・」
「なぜ、そこで喋るのを止める? 上司に報告するのに勿体ぶってどうする。問題点が分かる様に、簡潔に、無駄な形容詞を含まずに報告しなさい」
コイツにも散々言っているから、そろそろ出来る様になるか?
「取引先から連絡があって、注文した商品が何時になっても届かないと、マジ怒っていて直ぐに持ってこないなら、もう買ってやらないとマジ切れして、チョーヤバかったです」
ドヤ顔で報告している・・・・、十回ぐらい死なないと直らんな・・・・コイツは。
「どこの取引先が、何時注文した、どの商品で、返答した納期がいつなのか。その上で、出庫配送の記録がどうなっているのか。メーカー直送ならメーカーに取合わせをしたのか」
「まず、一報を入れろと言っているからです。これから確認します」
気が付いたら、灰皿を握りしめていた。コイツの所為でスーツが汚れるのもムショに入るのもまっぴらだ。
「まだ、報告があるのか?」
いつまでも突っ立っている。
「ところで、事務さんたちは何をバタバタしているんですか」
普段、茶ばかり飲んでいる連中が血相変えていれば、コイツでも分かる様だ。
「社長が夜逃げしたのも知らないで仕事していたのか?」
!!!「ほんとですか・・・・」
なぜ、小声になるのかさっぱり分からん。コイツには周りの慌てふためいている姿が見えんのか。
「嘘をついてどうする。この状況が理解できないのか?」
「いえ、そう言うつもりではなく。課長があまりにも普段通りなので・・・、つい」
コイツでは仕方がない。
「業者からの電話の時に、社長が不在で連絡がつかない。と、ご丁寧に説明した奴がいたからこの始末だ。連鎖的に電話が掛かってくるだろ」
「それにしても、社長が夜逃げなんて。そんなに会社危なかったんですか?」
「今年に入ってからは機嫌も悪いし顔色も悪いし、気付かなかったのか?」
「いつも、若い子の太もも観てニタニタしていたから・・・・、気が付きませんでした」
コイツのスケベさは社長並みだな。
「部長は・・・・いないですね」
太鼓持ちは無能だから、こんな状況を招いた責任がある。いや、無能だから太鼓持ちなのか・・・、どっちにしても無責任には代わらない。
「奴なら、顧客リストを持って逃げた」
「さすが部長ですね。次の会社でも優遇して貰えそうですね」
「今頃持ち出しても意味がない。それにだ、持ち出す奴を採用したら持ち出されると普通の会社は考えるんだよ」
目から鱗が取れた様な顔をしている。コイツでも理解できる様だ。
「課長は、就活しないんですか?」
「顧客と業者リストを使って事業も軌道に乗ったからな。これからは自分の会社の社長業一本だ」
「えええ! いつから副業してたんですか?」
コイツのデカい声に、事務所内の視線が集まる。
「三年ぐらいだ」
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