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壁の扉
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古代遺跡の螺旋階段を降りた先には、大きな扉が待ち構えていた。
雰囲気が今までとは違う。
この先に何かが待っているのだと予感させた。
「ここまで来て、こんな扉を前にするといよいよって感じがするわね!」
「そうだね。ダンジョンの最深部で何が待っているのか、楽しみだよ」
扉を開けようと力を入れる。
……が、びくともしない。
「この扉、なんて重さだ……」
「開かないの?」
「どうだろう。何か仕掛けがあるのかも」
今までの仕掛けは比較的単純なものだった。
中には難解なものもあったが、大半は古代文字を知っているか、知らないか、それを問うものだ。
『ふぬ! ふぬぅん! ……ダメだな。この扉、まるで壁のようだぞ』
ファフニールは扉に体当たりするもすぐに諦めた。
「これって……」
俺は少し観察して、あることに気付いた。
「なになに!? なにか分かったの!?」
「はい……。この扉だと思っていたもの、実はこれただの壁です」
「……へ?」
『なに!? 我は無駄に身体を痛めつけただけではないか!』
『ファフニールの行動は無駄じゃないよ。おかげで壁なのかも? って思えたし』
『そ、そうか……』
ファフニールは少し腑に落ちなそうだった。
続けて俺はこの壁について説明する。
「壁を扉に見せかけるように凹凸を作って、一見分からないようにしています。そりゃ開かない訳ですよ」
「えっ? じゃあここまで来て結局行き止まりってこと!?」
「……まだ分かりません。道がないか、もう少し調べてみます」
周囲をじっくりと調べてみる。
重要な手かがりは何も見つからない。
ましてや古代文字の痕跡すら見つからない。
……本当にここで行き止まりなのか?
扉が描かれた壁に寄りかかって、頭を抱えた。
「ユン、ごめん。ここまで来て、この先には進めそうにないよ」
「何謝ってるのよ! ノアは大成果をあげてくれたじゃない! 何十年も謎に包まれていた古代遺跡をここまで解き明かしてくれたのよ! 感謝しかないわよ! 謝る必要なんて一切ないわ!」
「はは……それなら嬉しいよ」
ユンは優しくそう言ってくれた。
その心遣いはとても嬉しい。
でも──。
ここまで来たなら、この遺跡の謎を解き明かしたかったな──。
そのとき、視界が真っ白になって、中心に一冊の本が見えた。
ぼやけた白い光が本を包んでいた。
これは一体なんだろう。
俺は一体何を見ているのだろう。
そんな疑問が頭をよぎったが、不思議とその本はどこか見覚えがあるように思えた。
パラパラと本がめくられる。
そしてあるページで止まった。
文は古代文字(ルーン)で書かれていた。
隠し書庫で見た古代魔導書かな……?
そう思ったが、どうやら違うらしい。
内容は魔法についてあまり記されていない。
でも内容は見覚えのあるものだった。
矢の罠、岩の罠、槍の罠……などなど。
この古代遺跡で体験したものが本には記されていた。
そしてページ最後の方には──今、目の前にある壁のことについて記されていた。
偶然とは思えなかった。
何か関連性があるように俺は思えて仕方がない。
俺はその本に手を伸ばした。
掴んで、俺は本能的に魔法を詠唱した。
「《消印》」
記されていた『壁』という古代文字(ルーン)を消す。
そこに新しく──。
「《刻印》」
『扉』という古代文字(ルーン)を記した。
すると、本は再びパラパラとページが動いた。
パタン、と本が閉じられると視界は突然、元の場所に戻った。
「ノア!? 大丈夫!? やっぱり無理させすぎちゃったかしら……? ごめん、ノア……」
心配した様子のユンが俺の顔を覗き込んでいた。
「ん、俺、今何してた……?」
「力がなくなったように意識を失っていたのよ! でも無事で良かった。さ、早く帰りましょう。これ以上、無理すると危ないわ」
「なるほど、意識を失ってたんだね」
俺は立ち上がり、扉が描かれた壁に手をかける。
ゴゴゴ……。
思った通りだった。
壁は既に扉になっていた。
扉は力を入れると、ゆっくり開いていく。
「えっ、扉が開いた……!? 壁だったんじゃないの!?」
『ほう。一体何をしたのだ?』
ユンとファフニールは驚いていた。
だけど──。
「説明するのは後だよ。この遺跡、最後の守護者を倒さなきゃいけないから」
ページの最後に書かれていたのは遺跡の守護者──ガーディアンゴーレム。
《傀儡の箱庭》で戦ったガーディアンゴーレムと違って、大きさと形状がまるで人間のようだった。
構成する鉱石はヒヒイロカネ。
現代ではお目にかかれない幻の鉱石。
円状の空間の中央に、緋色の光沢を放つ異質なゴーレムが待ち構えていた。
雰囲気が今までとは違う。
この先に何かが待っているのだと予感させた。
「ここまで来て、こんな扉を前にするといよいよって感じがするわね!」
「そうだね。ダンジョンの最深部で何が待っているのか、楽しみだよ」
扉を開けようと力を入れる。
……が、びくともしない。
「この扉、なんて重さだ……」
「開かないの?」
「どうだろう。何か仕掛けがあるのかも」
今までの仕掛けは比較的単純なものだった。
中には難解なものもあったが、大半は古代文字を知っているか、知らないか、それを問うものだ。
『ふぬ! ふぬぅん! ……ダメだな。この扉、まるで壁のようだぞ』
ファフニールは扉に体当たりするもすぐに諦めた。
「これって……」
俺は少し観察して、あることに気付いた。
「なになに!? なにか分かったの!?」
「はい……。この扉だと思っていたもの、実はこれただの壁です」
「……へ?」
『なに!? 我は無駄に身体を痛めつけただけではないか!』
『ファフニールの行動は無駄じゃないよ。おかげで壁なのかも? って思えたし』
『そ、そうか……』
ファフニールは少し腑に落ちなそうだった。
続けて俺はこの壁について説明する。
「壁を扉に見せかけるように凹凸を作って、一見分からないようにしています。そりゃ開かない訳ですよ」
「えっ? じゃあここまで来て結局行き止まりってこと!?」
「……まだ分かりません。道がないか、もう少し調べてみます」
周囲をじっくりと調べてみる。
重要な手かがりは何も見つからない。
ましてや古代文字の痕跡すら見つからない。
……本当にここで行き止まりなのか?
扉が描かれた壁に寄りかかって、頭を抱えた。
「ユン、ごめん。ここまで来て、この先には進めそうにないよ」
「何謝ってるのよ! ノアは大成果をあげてくれたじゃない! 何十年も謎に包まれていた古代遺跡をここまで解き明かしてくれたのよ! 感謝しかないわよ! 謝る必要なんて一切ないわ!」
「はは……それなら嬉しいよ」
ユンは優しくそう言ってくれた。
その心遣いはとても嬉しい。
でも──。
ここまで来たなら、この遺跡の謎を解き明かしたかったな──。
そのとき、視界が真っ白になって、中心に一冊の本が見えた。
ぼやけた白い光が本を包んでいた。
これは一体なんだろう。
俺は一体何を見ているのだろう。
そんな疑問が頭をよぎったが、不思議とその本はどこか見覚えがあるように思えた。
パラパラと本がめくられる。
そしてあるページで止まった。
文は古代文字(ルーン)で書かれていた。
隠し書庫で見た古代魔導書かな……?
そう思ったが、どうやら違うらしい。
内容は魔法についてあまり記されていない。
でも内容は見覚えのあるものだった。
矢の罠、岩の罠、槍の罠……などなど。
この古代遺跡で体験したものが本には記されていた。
そしてページ最後の方には──今、目の前にある壁のことについて記されていた。
偶然とは思えなかった。
何か関連性があるように俺は思えて仕方がない。
俺はその本に手を伸ばした。
掴んで、俺は本能的に魔法を詠唱した。
「《消印》」
記されていた『壁』という古代文字(ルーン)を消す。
そこに新しく──。
「《刻印》」
『扉』という古代文字(ルーン)を記した。
すると、本は再びパラパラとページが動いた。
パタン、と本が閉じられると視界は突然、元の場所に戻った。
「ノア!? 大丈夫!? やっぱり無理させすぎちゃったかしら……? ごめん、ノア……」
心配した様子のユンが俺の顔を覗き込んでいた。
「ん、俺、今何してた……?」
「力がなくなったように意識を失っていたのよ! でも無事で良かった。さ、早く帰りましょう。これ以上、無理すると危ないわ」
「なるほど、意識を失ってたんだね」
俺は立ち上がり、扉が描かれた壁に手をかける。
ゴゴゴ……。
思った通りだった。
壁は既に扉になっていた。
扉は力を入れると、ゆっくり開いていく。
「えっ、扉が開いた……!? 壁だったんじゃないの!?」
『ほう。一体何をしたのだ?』
ユンとファフニールは驚いていた。
だけど──。
「説明するのは後だよ。この遺跡、最後の守護者を倒さなきゃいけないから」
ページの最後に書かれていたのは遺跡の守護者──ガーディアンゴーレム。
《傀儡の箱庭》で戦ったガーディアンゴーレムと違って、大きさと形状がまるで人間のようだった。
構成する鉱石はヒヒイロカネ。
現代ではお目にかかれない幻の鉱石。
円状の空間の中央に、緋色の光沢を放つ異質なゴーレムが待ち構えていた。
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