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第2話 変な人を見る目で俺を見ないで!

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「それにしてもVRのときと比べて、あまり目立った変化は無いな」

 改めて俺はVRMMOの技術の高さに感服する。
 DSOに酷似している世界に来たわけだが、細かいところ以外はVRMMOの中と一緒なのだ。
 元の世界に帰ることを目的にしているとはいえ、この状況は正直とてもワクワクする。
 社会復帰のためにDSOから身を引いていたが、こんな世界にやってきてしまったら帰りたくなくなってしまうかもしれない。

「って、いかんいかん! 俺はちゃんと元の世界に戻って親孝行するんだ。企業に入社も出来そうだったしな」

 周りからの視線を感じて俺はハッ、と正気を取り戻した。
 何かヤバイ人を見るよう視線だ。
 あっ、それもそうか。
 今の俺はスーツ姿。
 この世界にスーツなんてものは存在しないので、例えるならこの姿は現実世界で若者のいない田舎でコスプレをしているようなものだ。

「スキルの前にまずは服装をなんとかしないとな……」

 DSOでは服はNPCが売っているもの以外にプレイヤーが自作したものを着用することが出来る。
 VRMMO内では、この世界よりも奇抜な格好をしたプレイヤーで溢れており、NPCが経営する服屋を利用するプレイヤーは初心者以外だとあまり多くなかった。

 そのせいで少し忘れかけていたのだが、この始まりの街でも服屋は存在する。
 この世界に馴染める色々な服が置かれていることだろう。
 早速行ってみるか。


 ◇


 服屋に到着した俺は真っ先にスーツを店主に見せた。

「この服を買い取ってもらいたいんですけど」

「そ、その着ている服をかい? 見たこと無いなぁ……」

「ええ、見たことはないでしょうね。これは上質なウール素材を使ったスーツと呼ばれる服です。遠い東の国で着られている服ですので、まだこの辺りでは着ている方をあまり見かけませんね」

「なるほど……じゃあひとまず査定させてもらってもいいかな?」

「はい。是非お願いします」


 査定の結果、俺はスーツ、ワイシャツ、ネクタイ、革靴、この4点を7万ソウルで買い取ってもらった。
 このスーツ一式を約4万円で購入した訳だが、まさか7万ソウルで売れるとはな。

 DSO内での通貨の単位はソウルで価値は円と変わらない。
 1円 = 1ソウル である。

 やっぱり交渉はしてみるものだな。

 需要と供給が日本とこの世界では全く異なっているため、7万ソウルが妥当かどうかはよく分からんが、7万ソウルあればとりあえず困らんだろう。

 それから俺は15000ソウルを消費して紺色のシャツと深い緑色のズボンと靴を買った。
 まさにNPCのような格好である。
 もともと俺は派手な顔つきをしておらず、どちらかといえば地味で少し冴えない感じ。
 うん、どう見ても俺の姿はNPCにしか見えない。
 喜べばいいのか、それとも悲しむべきなのか……。
 気にしたら負けかもしれない。

 さて、脱不審者も出来たところでステータスの確認だ。
 人差し指を伸ばして、横にスライドする。

 DSOは従来のMMORPGにあるシステムは宙に浮かぶ透明なパネルで操作、確認が出来た。
 このパネルは、どこにでも判定があるため、場所を選ばず、使用することが出来る。
 例えるなら、実体を持たない、どこでも使える超万能なスマホって感じ。
 使用感がまんまスマホなので、透明のパネルは『仮想スマホ』と呼ばれる。
 だから多くのプレイヤーは宙を指でなぞって操作しているのだが……。

「むむ、何も出ないかぁー」

 少しそんな気もしていたが、実際に何も出て来ないとなると、いよいよここがゲームではなく、現実だと確信した。
 ただ、ステータスは違う方法で見ることが出来る。
 転職の神殿に行き、神官からステータスを鑑定してもらう方法。
 それかスキル【鑑定】を手に入れ、自分自身を鑑定する方法。
 この二つの方法が挙げられる。

 まぁ現状では転職の神殿に行くしかなさそうだ。
 ステータスを確認した後は盗賊に転職しよう。

 てっとり早く強くなるには盗賊が最適解だ。
 しかし、そう答えるプレイヤーは俺ぐらいなものだろう。



 盗賊にはとんでもない隠しスキルがあるのだが、これを知る人はかなり少ない。


 スキルの発見者はとんでもない値段で情報を売っていたので、購入できたのは超上位プレイヤーだけだった。


 そして、スキルの入手難易度もかなり高く、入手できずに購入して損をしたプレイヤーがほとんだ。



 結局、DSO時代でそのスキルを入手出来たのは俺一人だけだったのだから。
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