上 下
13 / 15

13話 錬金術で料理

しおりを挟む
「身体を動かしたらお腹が空いたね」

「あーそうだな」

昼になり休憩時間になった。
ツルハシを置いて、開拓作業を一度中断する。

開拓者達には、おにぎりが2個ずつ配られている。

「おにぎり2個かぁ……ちょっとお腹が空きそう」

シルフィが肩をがっくりと落とした。
明らかに残念がっている。

……あれ? このままでは少しまずいもでは?

シルフィが領内を回り終えたとき、満足度が低かったらジェラード卿に何て伝わるか分からない。
それでこの領地に未来はないと判断されれば、今後の資金援助にも関わってくる。

な、なんとかしなければ……!

「よし! じゃあ俺がもう一品作ろう!」

「えっ、そんな気にしなくてもいいよ!」

「いやいや、俺も少し足りないと思っていたところなんだ。甘いものを作らせてもらうよ」

「あ、甘いもの……」

シルフィは頬を少し緩めた。
ふふ、やはり女の子は甘いものに目がないようだな。
錬金術は料理にとても応用が効く。
その一例を見せるとしよう。

「サムさん、家畜に牛がいましたよね」

サムを呼び、問いかける。

「もちろんいますよ!」

「牛のミルクが欲しいんだ。用意できるかな?」

「はい! ただいまお持ちします!」

そう言ってサムは走って、牛のミルクを取りに行ってくれた。

そして1Lほど牛のミルクを持ってきてくれた。

「……はぁ、はぁ、お持ちしました……!」

全速力でミルクを運んできてくれたサムは疲労困憊していた。
休憩時間なんだし、そんなに頑張らなくても……。

「ありがとうございます」

「いえ! お役に立てて光栄です!」

うーん……なぜかめちゃくちゃ慕われている。

「とりあえず作っていくか」

アイテムバッグを持ってきた俺は、グラニュー糖と砂糖を取り出す。
あとついでに卵も。

ポーションの味を整えるために調味料を色々と作ってきた。
そのため俺が所持している調味料の数は100を超えるだろう。

「まずは──っと」

ミルクの脂肪分を錬金術によって分離させ、バターを作成。

「わわっ、なんか出来上がったよ!?」

「これはバターだ」

「ええっ!? こんなに早く作れるものなの?」

「それが錬金術だな。でも驚くのはまだ早いぞ」


バターとミルクを混ぜ合わせ、砂糖で味を整える。
よし、生クリームが完成。

次に卵黄と砂糖を混ぜ合わせる。
それに生クリームと牛乳を合わせ、錬金術で熱する。


そこに俺特製のの素となるポーションを入れ、冷却すると──。

「アイスクリームの完成だ!」

器に粗雑にアイスクリームを盛り付けたが、これでも十分美味しそうだ。

シルフィの方を見ると、ポカーンと口を開けたまま呆然としていた。

「シルフィ? 大丈夫か?」

「……はっ! 私は一体何を見ていたのだろう。そうとね、あんな簡単に料理ができるわけ──」

「ほらアイスクリームが完成したから食べてみてくれないか?」

「あー! ちゃんと完成してるー!」

シルフィのテンションが高い。
喜んでくれたようで何よりだ。

「じゃ、じゃあこれ食べちゃうよ?」

「溶ける前に召し上がれ」

そう言うとシルフィは、はむっとアイスクリームを口に運んだ。

「ん~~! おいし~!」

幸せそうな顔でシルフィが言った。

ふぅ、危ない危ない。
これでシルフィも嫌な気分にならず、満足してくれるだろう。

領地の平和は保たれたようだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

理学療法士だった俺、異世界で見習い聖女と診療所を開きました

burazu
ファンタジー
理学療法士として病院に勤めていた宮下祐一はある日の仕事帰りに誤ってマンホールより落下するが、マンホールの先はなんと異世界であり、異世界で出会った聖女見習のミミと出会い、道行く怪我人を彼女の治癒魔法で救うが、後遺症が残ってしまう、その時祐一(ユーイチ)はなんとかリハビリができればと考えるが。その時彼のスキルである最適化≪リハビリ≫が開花し後遺症を治してしまう。 今後の生活の為ユーイチとミミは治療とリハビリの診療所を開く決意をする。 この作品は小説家になろうさん、エブリスタさんでも公開しています。

転生した世界で前世からの願いを叶えることが出来ました

竹桜
ファンタジー
 神のミスによって死んでしまった主人公はリボルバーと共に転生した。  転生した主人公には前世から願いがあったのだ。  これは願いを叶える為にリボルバーの引き金を引く物語。

突然現れた自称聖女によって、私の人生が狂わされ、婚約破棄され、追放処分されたと思っていましたが、今世だけではなかったようです

珠宮さくら
恋愛
デュドネという国に生まれたフェリシア・アルマニャックは、公爵家の長女であり、かつて世界を救ったとされる異世界から召喚された聖女の直系の子孫だが、彼女の生まれ育った国では、聖女のことをよく思っていない人たちばかりとなっていて、フェリシア自身も誰にそう教わったわけでもないのに聖女を毛嫌いしていた。 だが、彼女の幼なじみは頑なに聖女を信じていて悪く思うことすら、自分の側にいる時はしないでくれと言う子息で、病弱な彼の側にいる時だけは、その約束をフェリシアは守り続けた。 そんな彼が、隣国に行ってしまうことになり、フェリシアの心の拠り所は、婚約者だけとなったのだが、そこに自称聖女が現れたことでおかしなことになっていくとは思いもしなかった。

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

今世ではあなたと結婚なんてお断りです!

水川サキ
恋愛
私は夫に殺された。 正確には、夫とその愛人である私の親友に。 夫である王太子殿下に剣で身体を貫かれ、死んだと思ったら1年前に戻っていた。 もう二度とあんな目に遭いたくない。 今度はあなたと結婚なんて、絶対にしませんから。 あなたの人生なんて知ったことではないけれど、 破滅するまで見守ってさしあげますわ!

少年治療

葉月
BL
少年の性の悩みを解決する特殊な病院です。少年達の射精を我慢させる事をモットーにしています。イきたいのにイカせてもらえない。。。とにかくHな話だけが読みたい方向け。18禁 番外編もあります。

王太子様に婚約破棄されましたので、辺境の地でモフモフな動物達と幸せなスローライフをいたします。

なつめ猫
ファンタジー
公爵令嬢のエリーゼは、婚約者であるレオン王太子に婚約破棄を言い渡されてしまう。 二人は、一年後に、国を挙げての結婚を控えていたが、それが全て無駄に終わってしまう。 失意の内にエリーゼは、公爵家が管理している辺境の地へ引き篭もるようにして王都を去ってしまうのであった。 ――そう、引き篭もるようにして……。 表向きは失意の内に辺境の地へ篭ったエリーゼは、多くの貴族から同情されていたが……。 じつは公爵令嬢のエリーゼは、本当は、貴族には向かない性格だった。 ギスギスしている貴族の社交の場が苦手だったエリーゼは、辺境の地で、モフモフな動物とスローライフを楽しむことにしたのだった。 ただ一つ、エリーゼには稀有な才能があり、それは王国で随一の回復魔法の使い手であり、唯一精霊に愛される存在であった。

学校がダンジョンに転移してしまいました

竹桜
ファンタジー
 異世界に召喚され、帰還した主人公はまた非日常に巻き込まれたのだ。  通っていた高校がダンジョンの中に転移し、街を作れるなスキルを得た。  そのスキルを使用し、唯一の後輩を守る。

処理中です...