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06話 領民の頼み
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アルヴァレズ家の領地の人口は1000人にも満たない。
小規模な領地であり、周りには手付かずの森や荒れた土地ばかりだ。
領民は開拓と農作業、畜産業などを行い、質素な生活を送っている。
前回会った領民の話から、父上は嫌われている印象を受けた。
だからポーションをあげ、効果が良かった。そんな風に思われていたとしても、必ずしも良いことばかりではない。
俺たちが頑張って働いているってのに貴族様は何をやっているんだ?
なんていちゃもんをつけてくることだってあり得る。
一応それ相応の覚悟をして領民達に会いに来たのだが……。
「ケミスト様! あのポーションを5個……いや3個でいいから俺たちに譲ってくれませんか!」
「「「「お願いします!!!」」」」
広場に多くの領民が集まっている。
筋骨隆々とした男性が頭を下げると、周りの老若男女達もそれに続く。
これは一体何がどうなっているのだろうか。
よし、何があったか思い返そう。
屋敷を出て、領地を歩いていると、領民が俺の顔を見た途端、声をあげて領民を呼び出し、このように何十人も集まった。
……展開が早すぎて、訳がわからん。
とりあえず、話を聞いてみよう。
「えーっと、一体何があったんですか?」
「先日、ゴレンのやつにケミスト様がポーションをくださったのを覚えていますか?」
ポーションあげた人って言えば、あの農作業をしていた人か。
ゴレンって名前なんだな。
「はい」
「あのポーションを飲んだら凄い元気になったって大騒ぎでして。それがもう元気すぎたので、俺たちも余っていたポーションを水に薄めて飲んだのですよ。そしたらもう作業が捗るのなんの」
それに頷きながら数人の領民が口を開いた。
「あれはとんでもないっす! あれさえあれば、俺たちもっと頑張れます!」
「すごいやる気が出て、なんでも出来ちゃう気がしますね!」
「薄めただけであれだけ元気が出るんだ。原液を飲んだアイツは、1日の間、不眠不休で働いてたな」
麻薬効果でもあるのか?
そう思わせるような勢いを領民達から感じた。
いやいや、麻薬なんて……そんなことないはず……。
……待てよ。
もしかしてポーションの効果が高すぎて、領民達の身体にマッチしていないのでは?
そうだとしたら、俺はとんでもないものを贈ってしまったみたいだ。
自分のものさしでは、劣悪なものでも他の人は違っていたりする。
身体能力や魔力が上昇したおかげで、そこら辺の感覚がズレていたようだ。
「……分かりました。……ですが、効果を薄めたものを差し上げます」
「しかし、薄めたものですと、皆に飲ませてやることができなくなるのでは……?」
ポーションを水で薄めて、多く人に分け与えていたのか。
用法用量を間違えれば、副作用が出る可能性がある。
水で薄めなければ、これ以上渡すことは出来ないな。
「じゃあこうしましょう。希望する方、全員にポーションを差し上げます」
「「「「ケミスト様!?」」」」
領民達は一斉に驚いた。
「そ、そんなにあげちゃって大丈夫なんですか!?」
「僕が作っているので大丈夫です。それに水で薄めたものなので、簡単に量産できると思います」
複製は食べ物、飲み物には使えないため、少し面倒だが、まぁすぐに出来る。
「えっ、ケ、ケミスト様が作っているのですか?」
「そうですよ」
そう答えると、領民は、
「すげぇ……」
「なんてお人だ……」
「天才、ここに極まれり……」
といった具合でざわつき出した。
「俺たちは一体なにを返せば……?」
「開拓作業をいつも頑張って頂いているのですから、それに報いるのは当然ですよ。何もいりません」
これは心からそう思う。
屋敷の外に出て、領地に赴くようになってから、多くの領民が日々、懸命に働いているのだと知った。
その助けになれば幸いだ。
「「「「うおおおおおおおお! ケミスト様、万歳!!」」」」
拍手喝采。
領民達は、大変嬉しそうだ。
……普通、ポーションでこんなに喜ぶかね?
本当に麻薬効果が無いのか不安になってきた。
一応、あとで調べてみるか。
だが、その前に領民達にポーションを配る方法を確立しようか。
そうだな……。
……箱。
ポーションを入れるための大きな箱があれば、ちゃんと皆に行き届くだろう。
「あそこにある木を使わせてもらっても良いですか?」
広場の端に生えていた木を指差す。
「えっ、あぁ、別に大丈夫ですけど、何をされるのですか?」
「ちょっと箱を作ろうと思ってね」
「箱?」
まぁ説明するほどのものでも無いから実際に見てもらおう。
木のところまで歩いていき、錬金術を使用する。
「加工」
原木が一瞬にして、木材へと変貌を遂げた。
「き、木が……」
「ありゃあ木材じゃねーか……」
「一体何が起こったんだ!?」
魔力が多くなり、やっと錬金術師らしいことが出来るようになってきたな。
物の錬成を瞬時に行えるのが、錬金術師の強みだ。
木材を箱に変形させ、終了。
これで毎日ポーションを運んでくるだけでいい。
だが、盗まれてしまう可能性があるな。
あとで番人代わりになる物でも錬成しておくか。
「この箱に明日からポーションを入れておきますので、欲しい方の人数を教えてください」
「あ、はい! ──お前ら肉体労働者の人数をかぞえろー! ケミスト様を待たせるなよ!」
「「「おう!」」」
男の領民達は走って、人数をかぞえに行った。
この指示している男は、リーダー格なのだろうか?
「あなたが領民達のリーダーですか?」
「そう……ですね。上下関係とかは無いですけど、俺が一応リーダーの役割を担っています」
「名前を教えてもらえますか? この先、色々と話す機会も多くなるかもしれませんし」
「サムです! 自分からも一つケミスト様にお聞きしたいのですが、よろしいでしょうか?」
「良いですよ」
「率直に聞かせて頂きますが、ケミスト様は一体何者なのでしょうか……?」
何者と聞かれては答えづらいな。
領主の息子と答えても問題は無いだろうが、求めている答えとは違うだろう。
サムは、何故こんなことが出来るのか、そう疑問に思っているに違いない。
だから俺は、こう答えよう。
「僕は──錬金術師です」
小規模な領地であり、周りには手付かずの森や荒れた土地ばかりだ。
領民は開拓と農作業、畜産業などを行い、質素な生活を送っている。
前回会った領民の話から、父上は嫌われている印象を受けた。
だからポーションをあげ、効果が良かった。そんな風に思われていたとしても、必ずしも良いことばかりではない。
俺たちが頑張って働いているってのに貴族様は何をやっているんだ?
なんていちゃもんをつけてくることだってあり得る。
一応それ相応の覚悟をして領民達に会いに来たのだが……。
「ケミスト様! あのポーションを5個……いや3個でいいから俺たちに譲ってくれませんか!」
「「「「お願いします!!!」」」」
広場に多くの領民が集まっている。
筋骨隆々とした男性が頭を下げると、周りの老若男女達もそれに続く。
これは一体何がどうなっているのだろうか。
よし、何があったか思い返そう。
屋敷を出て、領地を歩いていると、領民が俺の顔を見た途端、声をあげて領民を呼び出し、このように何十人も集まった。
……展開が早すぎて、訳がわからん。
とりあえず、話を聞いてみよう。
「えーっと、一体何があったんですか?」
「先日、ゴレンのやつにケミスト様がポーションをくださったのを覚えていますか?」
ポーションあげた人って言えば、あの農作業をしていた人か。
ゴレンって名前なんだな。
「はい」
「あのポーションを飲んだら凄い元気になったって大騒ぎでして。それがもう元気すぎたので、俺たちも余っていたポーションを水に薄めて飲んだのですよ。そしたらもう作業が捗るのなんの」
それに頷きながら数人の領民が口を開いた。
「あれはとんでもないっす! あれさえあれば、俺たちもっと頑張れます!」
「すごいやる気が出て、なんでも出来ちゃう気がしますね!」
「薄めただけであれだけ元気が出るんだ。原液を飲んだアイツは、1日の間、不眠不休で働いてたな」
麻薬効果でもあるのか?
そう思わせるような勢いを領民達から感じた。
いやいや、麻薬なんて……そんなことないはず……。
……待てよ。
もしかしてポーションの効果が高すぎて、領民達の身体にマッチしていないのでは?
そうだとしたら、俺はとんでもないものを贈ってしまったみたいだ。
自分のものさしでは、劣悪なものでも他の人は違っていたりする。
身体能力や魔力が上昇したおかげで、そこら辺の感覚がズレていたようだ。
「……分かりました。……ですが、効果を薄めたものを差し上げます」
「しかし、薄めたものですと、皆に飲ませてやることができなくなるのでは……?」
ポーションを水で薄めて、多く人に分け与えていたのか。
用法用量を間違えれば、副作用が出る可能性がある。
水で薄めなければ、これ以上渡すことは出来ないな。
「じゃあこうしましょう。希望する方、全員にポーションを差し上げます」
「「「「ケミスト様!?」」」」
領民達は一斉に驚いた。
「そ、そんなにあげちゃって大丈夫なんですか!?」
「僕が作っているので大丈夫です。それに水で薄めたものなので、簡単に量産できると思います」
複製は食べ物、飲み物には使えないため、少し面倒だが、まぁすぐに出来る。
「えっ、ケ、ケミスト様が作っているのですか?」
「そうですよ」
そう答えると、領民は、
「すげぇ……」
「なんてお人だ……」
「天才、ここに極まれり……」
といった具合でざわつき出した。
「俺たちは一体なにを返せば……?」
「開拓作業をいつも頑張って頂いているのですから、それに報いるのは当然ですよ。何もいりません」
これは心からそう思う。
屋敷の外に出て、領地に赴くようになってから、多くの領民が日々、懸命に働いているのだと知った。
その助けになれば幸いだ。
「「「「うおおおおおおおお! ケミスト様、万歳!!」」」」
拍手喝采。
領民達は、大変嬉しそうだ。
……普通、ポーションでこんなに喜ぶかね?
本当に麻薬効果が無いのか不安になってきた。
一応、あとで調べてみるか。
だが、その前に領民達にポーションを配る方法を確立しようか。
そうだな……。
……箱。
ポーションを入れるための大きな箱があれば、ちゃんと皆に行き届くだろう。
「あそこにある木を使わせてもらっても良いですか?」
広場の端に生えていた木を指差す。
「えっ、あぁ、別に大丈夫ですけど、何をされるのですか?」
「ちょっと箱を作ろうと思ってね」
「箱?」
まぁ説明するほどのものでも無いから実際に見てもらおう。
木のところまで歩いていき、錬金術を使用する。
「加工」
原木が一瞬にして、木材へと変貌を遂げた。
「き、木が……」
「ありゃあ木材じゃねーか……」
「一体何が起こったんだ!?」
魔力が多くなり、やっと錬金術師らしいことが出来るようになってきたな。
物の錬成を瞬時に行えるのが、錬金術師の強みだ。
木材を箱に変形させ、終了。
これで毎日ポーションを運んでくるだけでいい。
だが、盗まれてしまう可能性があるな。
あとで番人代わりになる物でも錬成しておくか。
「この箱に明日からポーションを入れておきますので、欲しい方の人数を教えてください」
「あ、はい! ──お前ら肉体労働者の人数をかぞえろー! ケミスト様を待たせるなよ!」
「「「おう!」」」
男の領民達は走って、人数をかぞえに行った。
この指示している男は、リーダー格なのだろうか?
「あなたが領民達のリーダーですか?」
「そう……ですね。上下関係とかは無いですけど、俺が一応リーダーの役割を担っています」
「名前を教えてもらえますか? この先、色々と話す機会も多くなるかもしれませんし」
「サムです! 自分からも一つケミスト様にお聞きしたいのですが、よろしいでしょうか?」
「良いですよ」
「率直に聞かせて頂きますが、ケミスト様は一体何者なのでしょうか……?」
何者と聞かれては答えづらいな。
領主の息子と答えても問題は無いだろうが、求めている答えとは違うだろう。
サムは、何故こんなことが出来るのか、そう疑問に思っているに違いない。
だから俺は、こう答えよう。
「僕は──錬金術師です」
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