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6話 なんとか査定してもらえそうです

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「本日はどのようなご用件でしょうか?」



 俺たちの順番に回ってきた。

 カウンターの前に座る美人の受付嬢はニコッと笑った。



「魔物の素材の買い取りをして頂きたくて」



「素材の買い取りですねー。冒険者ギルドに登録されていますか?」



「あ、いえ、してないです」



「そうですか、素材の買い取りは冒険者ギルドにご登録した冒険者にしか出来ない決まりになっているのですが、どうされますか?」



「えーっと、それじゃあ──」



「付き添いの俺はちゃんと冒険者ギルドに登録しているんで大丈夫ですよね? ねっ!」



 俺が冒険者登録をしようかと思ったときに一緒に付き添ってくれていたラウルが口を開いた。

 ラウルは俺の顔を見て、ニコッと笑って親指を立てた。

 お前、本当に良い奴だな……。



「それでしたら何も問題ございません。素材の査定は倉庫にて行っておりますので、どうぞこちらへ」



 受付嬢が素材の査定を行っている倉庫まで案内してくれるようだった。

 俺とラウルは受付嬢の後についていく。



「ありがとな。助かったよ」



「いいっていいって。気にするなよ」



 ラウルは明るい笑顔で手を横に振った。



「こちらが倉庫になります。中に職員がいるので、あとはその人の指示に従ってくださいね」



「はい、ありがとうございます」



 俺は受付嬢にお辞儀をして、倉庫の扉を開いた。

 倉庫の中は結構広い。

 職員がいるって言ってたけど……あ、あの人か。

 中年の男性職員が倉庫に置かれている荷物を整理しているようだった。



「ん? なんだい、素材を売りに来たか?」



「はい、売りに来ました」



「よし、それじゃあ素材をそこら辺に置いてくれ」



 男性職員は何もないスペースを指さした。



「分かりました」



 俺は【アイテムボックス】を使用する。

 透明の板が出てくるので、出したい素材をポチポチと選んでいく。



「……一体何をしているんだ?」



 男性職員が不思議そうにしていた。



「お、おい。そんなところでボーッとしてないで早く素材を出した方がいいんじゃないか?」



 ラウルも大丈夫か? といった具合で心配している。



 ……ああ、なるほど。

 二人にはこの透明の板が見えないのか。

 だから俺が今、取り出す素材を選択しているということも分からないわけだ。



「大丈夫、大丈夫。もう少しで素材は選び終わるから」



「「選び終わる……?」」



 ラウルと男性職員は首をかしげた。



 うん、こんなもんでいいかな。

 素材を選び終わった俺は、アイテムボックスからそれらを取り出した。





 何もないところから突然現れた素材。

 宙に現れたので、それらは全て地面に落ちていく。



 どーんっ!



「……い、一体どこから取り出したんだ?」



 何が起きたのか分からない、という感じで男性職員は天井を見上げた。

 もちろん、天井には何も無い。



「……お前は手品師かっ!」



 ラウルは俺の胸に軽く平手打ちをした。



「これは手品じゃなくて【アイテムボックス】っていう魔法だよ」



「ア、アイテムボックスだって!? ……一体、なんだそりゃ」



 どうやらラウルは【アイテムボックス】を知らないようだった。



「アイテムボックスだとぉ!? お前その歳でとんでもない魔法を持っているんだな!」



 一方で男性職員はめちゃくちゃ驚いていた。



「えっと……アルマの持っている魔法ってそんなにすごいんすか?」



 少し戸惑いながらラウルは言った。



「ああ、持っているだけで商人として成功を収めるのは容易いって言われてるぐらいだぜ?」



「うおおおおおおっ!? まじっすか!? やったな、アルマ! お前とんでもない魔法を持っているらしいぞ!」



「……まぁ確かに便利だけど、流石に商人として成功を収めるにはそれだけじゃ難しいよ……。たぶん俺、商才とか無いだろうし」



「謙遜するなって! それだけ凄い魔法を持っているんだからさ! はははっ!」



「──オイオイ、ちょっと待って! なんだこの取り出された素材は!」



 素材を目にした男性職員は仰天した。

 ……しまった。

 もしかすると、品質の良くない素材ばかりだったのかもしれない。

 もう少し良さげなものを選ぶべきだったか……。



「……もしかして買い取りできない素材だったり? すみません、冒険者ギルドの利用は初なもので……」



 取り出した素材は、



 [竜眼]

 [火竜の鱗]

 [火竜の爪]

 [火竜の牙]

 [火竜の尻尾]

 [子鬼将軍の腰巻き]

 [子鬼将軍の皮]

 [黒曜熊の爪]

 [黒曜熊の牙]

 [黒曜熊の皮]



 これらを一つずつだ。

 まだまだ【アイテムボックス】には残っているが、ひとまずこれだけ買い取ってもらえれば数万ゴールドはいくんじゃないかと思ったんだけど……。

 この様子だとダメかもしれない。





「バカッ! その逆だよ! ぎゃ! く!」



「ほえ?」



「こんな高価な素材をなんでこんなに持ってるんだ!? しかも市場に出回らないようなものばっかりだ! 頼む! ウチで買い取らせてくれ!」



 男性職員は土下座をした。



「あ、はい……ぜひ、よろしくお願いします。それと土下座はしなくても大丈夫ですよ」



「いやー、ありがとう! 今から良い値で査定するからな! 少し待っててくれ!」



 男性職員はそう言って、ウキウキで素材の査定を始めるのだった。



「……お前とんでもない奴だったんだな」



 ラウルが男性職員の姿を見ながら言った。



「いや、そうでもないよ。ラウルがいないとこれだけスムーズに進まなかったと思うし」



「よせよ~。俺は別に何もしてない……ってか、本当に何もしてないからな」



 ぐぅ~。



 ラウルのお腹が鳴った。



「あっ」



「腹減ったのか? それなら、この後一緒に食事でもどう? 今日のお礼をさせてくれよ」



「い、いいのか!?」



「もちろん」



「く、くぅ~……。じゃあお言葉に甘えさせてもらうぜ」



「あははっ、じゃあ素材が高値で売れることを一緒に祈ろう」



「そうだな。……まぁ、あの様子だと結構な値がつきそうだけどな」
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