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「うん、美味しいや。」
「ちまき、美味しそうだね。私ももらうね。」
「ああ、これ、そういう料理なんだ。」
僕が分からなかった回答を、彼女がくれる。どうやらこれはそういった料理らしい。
食感が、普段のご飯と違う事は分かるけど、正直炊き込みご飯で作ったおにぎりくらいに思っていた。
中には、おにぎりの具材みたいに、レンコンとタケノコ、それと豚のミンチらしきものが詰められているし。
夕食が少なめという事もあるったけど、思ったよりもしっかりとした食べ物に少し驚く。
彼女は彼女で、一つを手に取ってかじりついていて、美味しいとそんな感想を漏らしている。
ただ、持たされた容器にはあと4つ程残っていて、流石に半分ずつとするには、僕は少ししんどい。
晩御飯を食べていなければともかく、普段より少ないと、そう言えるくらいにはしっかり食べたのだから。
「美味しいね。お祖母さん、料理上手なんだ。」
「うん、たぶん。」
「なに、それ。」
あやふやな返しに、彼女が声を立てて笑う。
「んー、僕がそんなに食事にこだわりがないからかな。」
「それでも、美味しいって思う料理を相手が作ってくれるなら、それってすごく上手って事じゃないの。」
「そうかも。うん。これまで美味しくない食べ物って、あんまり食べたことが無いし。」
「へー、あるんだ。それでも。」
「うん、家以外で食べたときに。」
「ほら。」
思い返して、これまで美味しくないと、そう感じた料理の共通点を答えると、彼女は今度こそ楽しそうに笑う。
そう言えば、家の料理で美味しいと思った事しかないけれど、外食をしたときは、これはちょっと、そう思うものがたまにあるのだ。口に合わない、そう思うものが。
「慣れてるだけかも。」
「だったら、珍しい、そう感じるんじゃないかな。」
「そうだね。そうだ。」
そんなことを話しながら、僕がもう一つに手を伸ばせば、彼女ももう一つ取り上げる。
その動きのためらいの無さに、美味しいというのもあるのだろうけれど、お腹が空いていたのだろう、そんなことを思う。
「晩御飯は、もう食べたの。」
「ううん。食べて動くと、やっぱりきついから。」
「そんなに大変なんだ。」
「あんまり道も良くないし、やっぱり荷物が重いから。」
「そっか。」
そうして、それぞれに黙り、手に持ったものを片付ける。
そして、どうにか二つ食べた物の、流石にこれ以上はと、僕は相手に容器を押し出す。
「えっと。」
「僕は流石にお腹いっぱい。」
「気を遣わせちゃった。」
「いや、僕晩御飯も食べてるから。本当にこれ以上は無理。」
「あ、そうなんだ。」
「うん、食べきれないなら、持って帰ってもらっても。」
多分、それも考えて祖母はこうして葉っぱとはいえ、包んである料理を準備したのだろうと思うから。
相手の状況を詳しく話したわけでもないのに、祖母にしろ、祖父にしろ、一体どうしてここまで気が回るのだろうか。気を回して疲れないのだろうか。
「あの、お祖母さんに、ありがとうって。」
「うん、伝えとくね。」
どうやら、彼女はさっき話したように、空腹を結構我慢していたらしい。
僕が見ている前で、さらにもう一つと手を伸ばして食べ始める。
「えっと、普段は。」
「うん、その、栄養補助食品みたいなのだけ。」
「それで、何日くらい。」
「一週間かな。水は水道があるし。でも、去年は流石に途中で一回買い物に出て、そこで食べたかな。」
「よく大丈夫だね。」
「あんまり大丈夫じゃないけど、好きな事だから。」
そういって彼女は苦笑いをする。
「ま、程々で。体壊したら元も子もないし。道が危ないなら、なおの事怪我したら、どうにもならないし。」
「うん、そうだね。でも、やっぱりこうやっていい条件で観測できることって少ないから。」
「へー、条件とかってあるんだ。」
「さっきも言ったけど、町中みたいに、明るい場所じゃなくて、雲がないとか、うん色々。」
「まぁ、星が隠れたら、見ることは出来ないもんね。」
「そうなんだ。どうしてもね。」
「少し郊外にとかは。」
「その、街の明かりってすっごく強いんだ。実のところここでも少し明るかったりするくらいに。」
その彼女の言葉に思わず首をかしげる。
十分に離れているし、少なくとも僕には月明かりと星の明り、そういった物しか感じられない。
「分からないよね。うん、それでも街灯が一晩中ついてたりすると、本当は見える星が見えなかったりするんだ。
極限等級、えっと、天体望遠鏡の性能を表す一つの数値なんだけど。」
「へー、そんなのがあるんだ。でも、そっか、それがわからなきゃ選びようもないのか。」
「うん。勿論持ち運びできるようなのだから、そんなにいいのじゃないけど、やっぱり極限等級の星は見えないんだ。他の明りがあると、それに隠れちゃって。」
「それは、町中で星が全然見えないみたいに。」
「月の明るさもあったりして、そのあたりは結構難しかったりするんだけど、天体観測には、実は新月の夜の方がよかったりもするんだよ。」
「月も、きれいだけど。」
「それこそ、満月の時にいくらでも見えるから。」
僕がそっと月のフォローをすれば、彼女はそう返してきた。
まぁ、それはそうだろう。陰に隠れず、全体が観測できる、月の観測は確かに満月の時が一番やりやすいのだろう。
「ちまき、美味しそうだね。私ももらうね。」
「ああ、これ、そういう料理なんだ。」
僕が分からなかった回答を、彼女がくれる。どうやらこれはそういった料理らしい。
食感が、普段のご飯と違う事は分かるけど、正直炊き込みご飯で作ったおにぎりくらいに思っていた。
中には、おにぎりの具材みたいに、レンコンとタケノコ、それと豚のミンチらしきものが詰められているし。
夕食が少なめという事もあるったけど、思ったよりもしっかりとした食べ物に少し驚く。
彼女は彼女で、一つを手に取ってかじりついていて、美味しいとそんな感想を漏らしている。
ただ、持たされた容器にはあと4つ程残っていて、流石に半分ずつとするには、僕は少ししんどい。
晩御飯を食べていなければともかく、普段より少ないと、そう言えるくらいにはしっかり食べたのだから。
「美味しいね。お祖母さん、料理上手なんだ。」
「うん、たぶん。」
「なに、それ。」
あやふやな返しに、彼女が声を立てて笑う。
「んー、僕がそんなに食事にこだわりがないからかな。」
「それでも、美味しいって思う料理を相手が作ってくれるなら、それってすごく上手って事じゃないの。」
「そうかも。うん。これまで美味しくない食べ物って、あんまり食べたことが無いし。」
「へー、あるんだ。それでも。」
「うん、家以外で食べたときに。」
「ほら。」
思い返して、これまで美味しくないと、そう感じた料理の共通点を答えると、彼女は今度こそ楽しそうに笑う。
そう言えば、家の料理で美味しいと思った事しかないけれど、外食をしたときは、これはちょっと、そう思うものがたまにあるのだ。口に合わない、そう思うものが。
「慣れてるだけかも。」
「だったら、珍しい、そう感じるんじゃないかな。」
「そうだね。そうだ。」
そんなことを話しながら、僕がもう一つに手を伸ばせば、彼女ももう一つ取り上げる。
その動きのためらいの無さに、美味しいというのもあるのだろうけれど、お腹が空いていたのだろう、そんなことを思う。
「晩御飯は、もう食べたの。」
「ううん。食べて動くと、やっぱりきついから。」
「そんなに大変なんだ。」
「あんまり道も良くないし、やっぱり荷物が重いから。」
「そっか。」
そうして、それぞれに黙り、手に持ったものを片付ける。
そして、どうにか二つ食べた物の、流石にこれ以上はと、僕は相手に容器を押し出す。
「えっと。」
「僕は流石にお腹いっぱい。」
「気を遣わせちゃった。」
「いや、僕晩御飯も食べてるから。本当にこれ以上は無理。」
「あ、そうなんだ。」
「うん、食べきれないなら、持って帰ってもらっても。」
多分、それも考えて祖母はこうして葉っぱとはいえ、包んである料理を準備したのだろうと思うから。
相手の状況を詳しく話したわけでもないのに、祖母にしろ、祖父にしろ、一体どうしてここまで気が回るのだろうか。気を回して疲れないのだろうか。
「あの、お祖母さんに、ありがとうって。」
「うん、伝えとくね。」
どうやら、彼女はさっき話したように、空腹を結構我慢していたらしい。
僕が見ている前で、さらにもう一つと手を伸ばして食べ始める。
「えっと、普段は。」
「うん、その、栄養補助食品みたいなのだけ。」
「それで、何日くらい。」
「一週間かな。水は水道があるし。でも、去年は流石に途中で一回買い物に出て、そこで食べたかな。」
「よく大丈夫だね。」
「あんまり大丈夫じゃないけど、好きな事だから。」
そういって彼女は苦笑いをする。
「ま、程々で。体壊したら元も子もないし。道が危ないなら、なおの事怪我したら、どうにもならないし。」
「うん、そうだね。でも、やっぱりこうやっていい条件で観測できることって少ないから。」
「へー、条件とかってあるんだ。」
「さっきも言ったけど、町中みたいに、明るい場所じゃなくて、雲がないとか、うん色々。」
「まぁ、星が隠れたら、見ることは出来ないもんね。」
「そうなんだ。どうしてもね。」
「少し郊外にとかは。」
「その、街の明かりってすっごく強いんだ。実のところここでも少し明るかったりするくらいに。」
その彼女の言葉に思わず首をかしげる。
十分に離れているし、少なくとも僕には月明かりと星の明り、そういった物しか感じられない。
「分からないよね。うん、それでも街灯が一晩中ついてたりすると、本当は見える星が見えなかったりするんだ。
極限等級、えっと、天体望遠鏡の性能を表す一つの数値なんだけど。」
「へー、そんなのがあるんだ。でも、そっか、それがわからなきゃ選びようもないのか。」
「うん。勿論持ち運びできるようなのだから、そんなにいいのじゃないけど、やっぱり極限等級の星は見えないんだ。他の明りがあると、それに隠れちゃって。」
「それは、町中で星が全然見えないみたいに。」
「月の明るさもあったりして、そのあたりは結構難しかったりするんだけど、天体観測には、実は新月の夜の方がよかったりもするんだよ。」
「月も、きれいだけど。」
「それこそ、満月の時にいくらでも見えるから。」
僕がそっと月のフォローをすれば、彼女はそう返してきた。
まぁ、それはそうだろう。陰に隠れず、全体が観測できる、月の観測は確かに満月の時が一番やりやすいのだろう。
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