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37章 新年に向けて
実際には
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実のところ、降臨祭においてトモエとオユキがやらねばならぬ事というのは非常に少ない。
勿論、これまでに比べれば増えている、ただ純粋に祭りを楽しむことが出来る時間というのがごく短時間しか存在していないというのは事実。だが、その前後までもが埋まっているわけではない。
例えば、これが家主でもある公爵夫妻であれば、まさにしばらく前どころか、王都に来てからという物時間が取れていない現状が、まさにそれを示している。
だからこそ、このタイミングで話を持ち込んだ、入れ知恵は確かに感じるのだが、素直に話を聞くだけヴァレリアという人物そのものに対する評価として、オユキはそこまで下に見積もっていない。能力といえばいいのか、人となり、これまでに習っていない政治的な部分に対してはどこまでも目をつぶった上で。
「で、俺らのほうでばーさんから頼まれたことがあってさ」
久しぶりという程でもなく、始まりの町に一度戻ったシグルドたちが何やら、実に多くの要望や書状を携えて戻ってきた。降臨祭迄いよいよ日付が無いため、準備の為にと戻っていったというのに、シグルドとパウ、そこに加えてサキと見知らぬ少女二人といった組み合わせで。
足りない顔に関しては、今も始まりの町で降臨祭に向けて実に色々と叩き込まれているのだろう。
前から要望を出していたとはいえ、ようやく王都の屋敷に招くことが出来たエリーザにマルタといった人物二人にヴァレリア、アイリスと共に徹底的に仕込まれているオユキのように。
「司祭様から、ですか」
「なんか、色々とあんちゃんの周りにいる人員を借りたいってことらしくてさ」
「私たちの周り、ですか。具体的には、どなたでしょう」
生憎と、トモエでは呼ばれる顔ぶれに想像がつかない。
そして、この場にいるのは生憎と女性陣の集まりとなっているオユキの練習の場から離されているクレド。そして、ローレンツがこの場の護衛の統括を行いながら、給仕役はタルヤとラズリアにとなっている。
他の慣れた顔に関しては、いよいよオユキの用意があることに加えて、持ち込まれたヴァレリア用の衣装、こちらに関してもいつの間にやらトモエとオユキの枕元に置かれていたものを教会に送り付け、必要な市立て直しを頼んでいた物がいよいよ完成を見た事もある。
要は、衣装合わせも多くあるからと、こうして男性陣が庭先に出て久しぶりの焼き台で散々にファンタズマ子爵家に確保され続けている肉であったり、加工品であったりを焼きながら男たちの時間を楽しんでいる処。
トモエとしても、オユキがいないからと言う事もあり、かなり挑戦的な大きさに切り分けた肉などをせっせと口に運んで。
「あー、あの木精のばーさんと」
「タルヤ様、ですか」
こちらも、年齢、見た目のわりに、かつての世界を考えればかなりの県単ぶりを見せているローレンツに一度視線をトモエが送れば。そもそも、そちらは花精であるため、お門違いではあるとローレンツから首を振ることで返ってくる。
本来の護衛であれば、他の者たちがそうであるように職務の間は決して口をつけたりはしないのだろうが、彼に関してはそれでも対応ができるという自信に加えてトモエが改めて誘ったと言う事もある。
トモエがオユキを相手にそうするように、
「いや、そっちじゃなくて」
「なんといったか、虚飾と絢爛、誕生と繁栄の二柱を前に始まりの町で降ろす起点になったとか」
「ああ、ナザレア様、ですか。その、ただ、ですね」
そちら、ナアザレアに関してはあくまでファンタズマ子爵家が借りている人員でしかない。
さらに言えば、出所がいよいよ王家でもあるため、またお門違いと言う事になるのだが。
「トモエ様、横合いから失礼いたします」
「エステール様、いえ、エステールは何か」
「ユーフォリアがいま王城に、そちらから一度計ってみても良いかと。始まりの町からの依頼、司祭様からという事であれば、彼らも正式に書状を預かってきているでしょうから」
トモエに足りないものを、エステールに頼んでみれば実に簡単に解決策が得られるものだ。
何やら、エステールのほうからローレンツに向けての視線が少し厳しい物になっているあたり、本来であればローレンツからの指摘が正解なのかもしれないが。もしくは、こうして口に出す前に何かを行うべきと考えられていたのか。それこそ、おり悪くかなり大きなサイズに切り分けた肉を口に運んでいなければ、そういったこともあったかもしれないが。
「あー、サキ」
「えっと、うん。私がそのあたりは色々持ってるけど、ジークは忘れてたの」
「言われた事は、覚えてるぞ」
「もう。アンにも言われたじゃない、先に名前を言った方がって」
「三人言われたってのは、覚えてんだけどな。正直、そこまでかかわりが無いっていうか、うち一人はいよいよあいらない相手だったろ」
「シグルド君たちの、見覚えのない相手、ですか」
見知らぬ相手というのであれば、先に見知らぬ二人を紹介してほしいものだと、トモエとしてはそんな事を考えながら。一人は、明らかに肉に対して忌避感という程でもなく、オユキが見せるようなものではなく。そこまで好きではないのだと言わんばかりにほどほどに。恐らくは、こちらが仲良くなったという花精の少女なのだろう。翻って、もう一人、こちらはいよいよ見覚えのない相手。
これまでに出会った相手ともまた違い、いや、勿論持っている特徴に覚えはあるのだが。
「狐のねーちゃんのところに、新しく来るのがいるらしくってさ」
「そちらの方に御用がと言う事でしたら、それこそ初めから始まりの町へと行かれるのでは」
「それが、そうでもないらしい」
「そのあたりは、アイリスさんが国許で扱われているだろう身分、その話故でしょうか」
さて、そのあたりは、いよいよファンタズマ子爵家に身を寄せている、今も屋敷内から何やら騒々しい気配を感じるあたりにひと悶着どころではなく色々とありそうな女性陣の集まっている場にと考えるものだが。
「そのあたりの話は、アイリスさんにとも思いますが」
「な、ばーさん、なんで俺らにいったんだろうな」
「そういえば、そうだよね。私もいるわけだし、リリアも、シャトラもいるのにね」
「改めて、そちらのお二人は、その」
「あれ、そういえば、あんちゃん合うの初めてだっけ」
シグルドが今更ながらに思い出したと、気が付いたと言わんばかりに。
「リリアさんは、前にお話だけは」
「あー、そうだっけ」
そして、改めて二人の紹介を受けながら。
花精、オルテンシア氏族に連なるという話のリリア、名前からはまた別の種かとトモエの記憶にはユリになるのだが、そちらかと思えば紫陽花という話。
いよいよ遠い、そう感じるのはかつての世界の記憶に引きずられすぎだろうかと、その様な事をトモエとしては考えながら、いよいよ覚えのない相手に視線を向ける。
「俺のほうも、前にジークが言っていたように思うのだが、前にテトラポダからこちらに来た一団、それについていた」
「ああ、そういえばパウ君と一緒にという話でしたか」
草食動物、生憎とどういった種族か分からない。それほどに、特徴が薄いとでも言えばいいのだろうか。
「一応、兎人という事らしいのだが」
「それは、その、アイリスさんと併せるのは、いえ、クレドさんも」
聞こえた言葉が間違っていなければ、狐にとっても狼にとっても餌となる動物を祖に持っているらしい。名前の響きから、それこそ過去の言葉の音に引っ張られてそうした種族かとも考えていたのだ。
しかし、改めて群れを離れる者たちについて回り、出先で数を増やすのはかつてでいえば草食の動物たちなのだと。
トモエとしては、どうしてそのような勘違いをしたのかと考えてしまう。
そして、その答えは今まさに己の前で脂を滴らせながら、肉の焼ける匂い、オユキは苦手とする、トモエにとっては非常にうれしい香り。それが漂う場だというのに、平然といる。そして、こちらにしても、そこまで気にせずに口にしている様子を見せている。
「ウサギは、確かに獲物ではあるが、そこまで見境が無いわけでもない」
「あー、そういや、特徴だけでいえばそうなんのか。俺らっていうか、ヒトに近づいたのは互いをそうは見れないって聞いてるけど」
「だから、言っただろう。見境が無いわけではない」
「見境が無い方がいれば、いえ、そうした比喩もありましたか。そちらは、今は置いておきましょう。それで、そちらのシャトラさんはアイリスさんに取り次いでほしいと、そういった話でしょうか」
兎であれば、やはり人参だろうか、その様な事をトモエはぼんやりと考える。
それにしても、なかなかに東のほうに偏った神話体系とでも言えばいいのだろうか。もとよりこちらにいた、アーサーという名前から連なる者たち、オユキとも話した白と赤の二冊存在していた書籍、それを考えたときに神国では西側が、神々にしてもそうだと考えていたものだが、すっかりと身の回りには東側の神話に属する存在が多い物だと、ついついその様な事も考えながら。
「いや、こいつはどっちかっていうと、単にパウについてきただけで特に関係ないな」
「ああ」
「であれば、アイリスさんには、いえ、そういえば始まりの町には一番最初に用意した社もありますか。いえ、そちらの管理はアイリスさんが頼んだ方が」
「日々の事はそれでもいいけど、祭りの時とかはちゃんとしたのがいるらしくってさ」
「それで、司祭様からですか。そうなると、降臨祭に合わせてこちらに来る方々の中に、混じっていそうですね」
いよいよ己の話も俎上に乗っているというのに、新しい顔ぶれ二人に関しては特に気にした素振りも無い。大物なのか、それともここまでの道すがらいよいよ己の知らぬ流れに身を任せ、思考を放棄する手段を覚えたのか。
「では、そちらの書状は、オユキさんに纏めてで大丈夫でしょうか」
「オユキが忙しいに違いないから、ユーフォリアだっけ、そっちにって言われたな、そういや」
「オユキさんも降臨祭ではなんだかんだと色々と仕事を頼まれていますから、確かにそちらに専念をと言う事でしょうか」
相も変わらず、屋敷の中から音は聞こえない。しかし、何処か浮ついたともまた違う、騒々しさというのが気配として伝わってくるという物だ。
勿論、これまでに比べれば増えている、ただ純粋に祭りを楽しむことが出来る時間というのがごく短時間しか存在していないというのは事実。だが、その前後までもが埋まっているわけではない。
例えば、これが家主でもある公爵夫妻であれば、まさにしばらく前どころか、王都に来てからという物時間が取れていない現状が、まさにそれを示している。
だからこそ、このタイミングで話を持ち込んだ、入れ知恵は確かに感じるのだが、素直に話を聞くだけヴァレリアという人物そのものに対する評価として、オユキはそこまで下に見積もっていない。能力といえばいいのか、人となり、これまでに習っていない政治的な部分に対してはどこまでも目をつぶった上で。
「で、俺らのほうでばーさんから頼まれたことがあってさ」
久しぶりという程でもなく、始まりの町に一度戻ったシグルドたちが何やら、実に多くの要望や書状を携えて戻ってきた。降臨祭迄いよいよ日付が無いため、準備の為にと戻っていったというのに、シグルドとパウ、そこに加えてサキと見知らぬ少女二人といった組み合わせで。
足りない顔に関しては、今も始まりの町で降臨祭に向けて実に色々と叩き込まれているのだろう。
前から要望を出していたとはいえ、ようやく王都の屋敷に招くことが出来たエリーザにマルタといった人物二人にヴァレリア、アイリスと共に徹底的に仕込まれているオユキのように。
「司祭様から、ですか」
「なんか、色々とあんちゃんの周りにいる人員を借りたいってことらしくてさ」
「私たちの周り、ですか。具体的には、どなたでしょう」
生憎と、トモエでは呼ばれる顔ぶれに想像がつかない。
そして、この場にいるのは生憎と女性陣の集まりとなっているオユキの練習の場から離されているクレド。そして、ローレンツがこの場の護衛の統括を行いながら、給仕役はタルヤとラズリアにとなっている。
他の慣れた顔に関しては、いよいよオユキの用意があることに加えて、持ち込まれたヴァレリア用の衣装、こちらに関してもいつの間にやらトモエとオユキの枕元に置かれていたものを教会に送り付け、必要な市立て直しを頼んでいた物がいよいよ完成を見た事もある。
要は、衣装合わせも多くあるからと、こうして男性陣が庭先に出て久しぶりの焼き台で散々にファンタズマ子爵家に確保され続けている肉であったり、加工品であったりを焼きながら男たちの時間を楽しんでいる処。
トモエとしても、オユキがいないからと言う事もあり、かなり挑戦的な大きさに切り分けた肉などをせっせと口に運んで。
「あー、あの木精のばーさんと」
「タルヤ様、ですか」
こちらも、年齢、見た目のわりに、かつての世界を考えればかなりの県単ぶりを見せているローレンツに一度視線をトモエが送れば。そもそも、そちらは花精であるため、お門違いではあるとローレンツから首を振ることで返ってくる。
本来の護衛であれば、他の者たちがそうであるように職務の間は決して口をつけたりはしないのだろうが、彼に関してはそれでも対応ができるという自信に加えてトモエが改めて誘ったと言う事もある。
トモエがオユキを相手にそうするように、
「いや、そっちじゃなくて」
「なんといったか、虚飾と絢爛、誕生と繁栄の二柱を前に始まりの町で降ろす起点になったとか」
「ああ、ナザレア様、ですか。その、ただ、ですね」
そちら、ナアザレアに関してはあくまでファンタズマ子爵家が借りている人員でしかない。
さらに言えば、出所がいよいよ王家でもあるため、またお門違いと言う事になるのだが。
「トモエ様、横合いから失礼いたします」
「エステール様、いえ、エステールは何か」
「ユーフォリアがいま王城に、そちらから一度計ってみても良いかと。始まりの町からの依頼、司祭様からという事であれば、彼らも正式に書状を預かってきているでしょうから」
トモエに足りないものを、エステールに頼んでみれば実に簡単に解決策が得られるものだ。
何やら、エステールのほうからローレンツに向けての視線が少し厳しい物になっているあたり、本来であればローレンツからの指摘が正解なのかもしれないが。もしくは、こうして口に出す前に何かを行うべきと考えられていたのか。それこそ、おり悪くかなり大きなサイズに切り分けた肉を口に運んでいなければ、そういったこともあったかもしれないが。
「あー、サキ」
「えっと、うん。私がそのあたりは色々持ってるけど、ジークは忘れてたの」
「言われた事は、覚えてるぞ」
「もう。アンにも言われたじゃない、先に名前を言った方がって」
「三人言われたってのは、覚えてんだけどな。正直、そこまでかかわりが無いっていうか、うち一人はいよいよあいらない相手だったろ」
「シグルド君たちの、見覚えのない相手、ですか」
見知らぬ相手というのであれば、先に見知らぬ二人を紹介してほしいものだと、トモエとしてはそんな事を考えながら。一人は、明らかに肉に対して忌避感という程でもなく、オユキが見せるようなものではなく。そこまで好きではないのだと言わんばかりにほどほどに。恐らくは、こちらが仲良くなったという花精の少女なのだろう。翻って、もう一人、こちらはいよいよ見覚えのない相手。
これまでに出会った相手ともまた違い、いや、勿論持っている特徴に覚えはあるのだが。
「狐のねーちゃんのところに、新しく来るのがいるらしくってさ」
「そちらの方に御用がと言う事でしたら、それこそ初めから始まりの町へと行かれるのでは」
「それが、そうでもないらしい」
「そのあたりは、アイリスさんが国許で扱われているだろう身分、その話故でしょうか」
さて、そのあたりは、いよいよファンタズマ子爵家に身を寄せている、今も屋敷内から何やら騒々しい気配を感じるあたりにひと悶着どころではなく色々とありそうな女性陣の集まっている場にと考えるものだが。
「そのあたりの話は、アイリスさんにとも思いますが」
「な、ばーさん、なんで俺らにいったんだろうな」
「そういえば、そうだよね。私もいるわけだし、リリアも、シャトラもいるのにね」
「改めて、そちらのお二人は、その」
「あれ、そういえば、あんちゃん合うの初めてだっけ」
シグルドが今更ながらに思い出したと、気が付いたと言わんばかりに。
「リリアさんは、前にお話だけは」
「あー、そうだっけ」
そして、改めて二人の紹介を受けながら。
花精、オルテンシア氏族に連なるという話のリリア、名前からはまた別の種かとトモエの記憶にはユリになるのだが、そちらかと思えば紫陽花という話。
いよいよ遠い、そう感じるのはかつての世界の記憶に引きずられすぎだろうかと、その様な事をトモエとしては考えながら、いよいよ覚えのない相手に視線を向ける。
「俺のほうも、前にジークが言っていたように思うのだが、前にテトラポダからこちらに来た一団、それについていた」
「ああ、そういえばパウ君と一緒にという話でしたか」
草食動物、生憎とどういった種族か分からない。それほどに、特徴が薄いとでも言えばいいのだろうか。
「一応、兎人という事らしいのだが」
「それは、その、アイリスさんと併せるのは、いえ、クレドさんも」
聞こえた言葉が間違っていなければ、狐にとっても狼にとっても餌となる動物を祖に持っているらしい。名前の響きから、それこそ過去の言葉の音に引っ張られてそうした種族かとも考えていたのだ。
しかし、改めて群れを離れる者たちについて回り、出先で数を増やすのはかつてでいえば草食の動物たちなのだと。
トモエとしては、どうしてそのような勘違いをしたのかと考えてしまう。
そして、その答えは今まさに己の前で脂を滴らせながら、肉の焼ける匂い、オユキは苦手とする、トモエにとっては非常にうれしい香り。それが漂う場だというのに、平然といる。そして、こちらにしても、そこまで気にせずに口にしている様子を見せている。
「ウサギは、確かに獲物ではあるが、そこまで見境が無いわけでもない」
「あー、そういや、特徴だけでいえばそうなんのか。俺らっていうか、ヒトに近づいたのは互いをそうは見れないって聞いてるけど」
「だから、言っただろう。見境が無いわけではない」
「見境が無い方がいれば、いえ、そうした比喩もありましたか。そちらは、今は置いておきましょう。それで、そちらのシャトラさんはアイリスさんに取り次いでほしいと、そういった話でしょうか」
兎であれば、やはり人参だろうか、その様な事をトモエはぼんやりと考える。
それにしても、なかなかに東のほうに偏った神話体系とでも言えばいいのだろうか。もとよりこちらにいた、アーサーという名前から連なる者たち、オユキとも話した白と赤の二冊存在していた書籍、それを考えたときに神国では西側が、神々にしてもそうだと考えていたものだが、すっかりと身の回りには東側の神話に属する存在が多い物だと、ついついその様な事も考えながら。
「いや、こいつはどっちかっていうと、単にパウについてきただけで特に関係ないな」
「ああ」
「であれば、アイリスさんには、いえ、そういえば始まりの町には一番最初に用意した社もありますか。いえ、そちらの管理はアイリスさんが頼んだ方が」
「日々の事はそれでもいいけど、祭りの時とかはちゃんとしたのがいるらしくってさ」
「それで、司祭様からですか。そうなると、降臨祭に合わせてこちらに来る方々の中に、混じっていそうですね」
いよいよ己の話も俎上に乗っているというのに、新しい顔ぶれ二人に関しては特に気にした素振りも無い。大物なのか、それともここまでの道すがらいよいよ己の知らぬ流れに身を任せ、思考を放棄する手段を覚えたのか。
「では、そちらの書状は、オユキさんに纏めてで大丈夫でしょうか」
「オユキが忙しいに違いないから、ユーフォリアだっけ、そっちにって言われたな、そういや」
「オユキさんも降臨祭ではなんだかんだと色々と仕事を頼まれていますから、確かにそちらに専念をと言う事でしょうか」
相も変わらず、屋敷の中から音は聞こえない。しかし、何処か浮ついたともまた違う、騒々しさというのが気配として伝わってくるという物だ。
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