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37章 新年に向けて
デセールの前に
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ヴァレリアが本当に願いたかったこと、アイリスは間違いなく無理だと伝えていただろうこと。
寧ろ、アイリスとしては、そちらを餌として己の本命を通すためにとく立てているだろうと言う事。
それには、やはりトモエも気が付いている。
寧ろ、こうして気が付いているからこそ、ヴァレリアなどよりもアイリスの為にとオユキを誘導している。
トモエとしても、オユキの考えの通りにアイリスとアベルの事に対してしまえば、間違いなく与えられる試練が過剰になると考えているからこそ。
そして、トモエの中ではこの降臨祭で事が起こると踏んでいる。
だからこそ、オユキに対してあれこれと過剰とも思える仕事を振ることを良しとしている。
アイリスの祖霊、三狐神と呼んでも良いとアイリスからは許可を出されているのだが実態としては稲に関わる狐の神性。
どうしたところで、トモエの脳裏には、祟りという言葉が浮かぶ以上はアイリスに気を使ってしまう。
生前の性別としては、アイリスと同性ではあるのだからと。
「オユキさんは、例えば、アイリスさんが招きたいと願ったときに」
「もう少し早くにはと考えはしてしまいますが、ええ、当家からできる事でしたら、その、当家でしか行えぬことも多くあるでしょうから。ただ、その」
「貴女の不興を買った者達を、とまでは思わないわよ。その、流石にこちらだけでなく隣国に社も置いたでしょう」
「そういう話でしたら、協力は惜しみませんが」
「良いのかしら、馬車に門にと、色々と頼むことになるけれど」
「当家で行える協力であれば、勿論惜しみなく」
「有難いのだけれど」
「雑音の類は、私でも抑えられるでしょう。そうしたことを踏まえて、今度の仕事をトモエさんが淹れていることもあるでしょうから」
オユキとしても、つい先ごろにはオユキが己の費やすような真似をトモエが嫌っていたのだと覚えている。
だが、今度の祭りに関しては、間違いなく以前の物に比べれば余裕があるのだろう。何より、洗礼以外で言えばオユキが負担しなければならない事柄というのは、確かに無い。
単に、オユキはあちらこちらへと顔を出さなければならず、そのために用意をしなければならない事を考えれば、時間がとにかく取られるというだけ。
「具体的に、どの程度とはまだ決まっていないのだけれど」
「積載限界はあるでしょうし、魔石をこちらで用意するのに加えてフスカ様、パロティア様は難しいかもしれませんが」
「そちらも、負担を頼んでもいいのかしら」
「ええ、勿論ですとも」
色々と、オユキにしてもアイリスには恩義を感じている。
それ以上に、相見互いとそうした意識がやはり強い。
「結果は、すぐにでもと考えていますが、アイリスさんは、その」
「セラにやらせるわ。イリアも、貴女が良しとすれば一度顔を出すでしょうし」
「里帰りと言う事であれば、日数をとも思いますが」
「森猫の集落は神殿からは遠いというよりも、神国にあるもの。私の部族の暮らす場所にしてもすこし距離があるし。祖霊様方が、各々の部族に声をかけているらしくって、既に集まっている者たちをこちらに、その程度よ」
「祖霊様方からの、言葉によって、ですか」
「警戒は分かるけれど、流石に少し数はそこまで多くならないはずよ」
アイリスにしても、そのあたりが分かっていないのだなとオユキとしては一先ず飲み込んで。
「ああ。それで、今度の降臨祭がと言う事ですか」
そして、トモエの手によって誘導され、アイリスがそれに乗ったこともあり、オユキの思考はすっかりとそちらに傾くことになる。
アイリスは、ひとまず安心と考えて少しイスに深く改めて。
トモエにとっては、未だに安心できない範囲でしかない。
そのあたりは、オユキに対する理解の差とでも言えばいいのだろう。
オユキが、既にトモエが何か誘導をと考えていることに気が付いている。そして、視線でトモエに訴えているのだ。
一体、この結果で得たいものは何だと。
既にいくつか想定がある、オユキの視線はそのように語っている物であるし、トモエにしてもこの後に改めてオユキに伝える事になるだろう。あくまで、建前としての物を。
「間に合わせるというのであれば、早速とせねばなりませんか」
「急がせることは、悪いと思っているのよ」
「その、オユキさん。アイリスさんもようやくと言う所ですから」
「確かに、少しは整っていますか」
アイリスにしても、ここ暫くの無理がたたって自慢の毛並みがボロボロになっていたのだ。
こうして、ファンタズマ子爵家に逗留しているのはそれをアベルから隠すため。
「どういう、意味かしら」
「いえ、特に他意はありません。私よりも回復が早いと言う事については、少し物を言いたくもありますが」
互いに戦と武技の巫女であり、苦労を共にしているはずだというのに。
オユキは未だに快復には程遠く、なんとなれば己の種族の先達から苦言を呈される日々を送っている。
勿論、アイリスが己よりだいぶ長じているという自覚はオユキにもある。だが、オユキにしても冬と眠りから与えられた功績とてあるのだ。
それらを含めても、こうして及ばぬ回復の差がどこにあるのだろうかと考えざるを得ない。
勿論、真っ先にそれを口に出そうものならば、食事量の差だと返ってくることだろうが。
「それに関しては、貴女は今種族の長が側にいるじゃないの。そちらからは、いえ、そういえばそれを忘れていたわね」
「忘れていた、ですか」
トモエの判断というよりも、オユキのおらぬ場で受け板相談として。
アイリスは、この降臨祭でアベルとの関係を己の祖霊に認めさせるつもりでいるらしい。
トモエにしても、急ぎすぎではないのかと思うのだが、今となっては側にヴァレリアもいる。祖霊の承諾が必要ない、恐らく必要としないセラフィーナがいる。
焦るなという言葉が、もはや意味がなさない程度には、アベルの周囲に他の影がある。
生前にしても、トモエはオユキの周りにそうした影が現れるたびに、感じるたびに気をもんだトモエとしては理解をせざるを得ない部分でもある。
問題としては、ただ一つ。
その場にオユキが存在すれば、オユキがアベルという人間に対して良く思っていないという事実がどこまでもある以上。
同じ戦と武技の巫女、というだけでなく。
オユキにしても、何やらアイリスの祖霊に目を懸けられている様子もある。
アイリスがおらぬ場で、アイリスを呼ぶことが出来ぬ場ですらあの三狐神が平然と降りてきたりもしていた。勿論、その場にはロザリア司教という例外と呼ぶにしてもあまりにもそれ以上の相手がいたりもしたのだが、そうした経験すら持っている。
何より、己の後を任せるのだとしたらと、そうした言葉を聞いたこともある。
つまりは、己の可愛い娘を、明らかに寿命の違う、人の特徴しか持っていないとは、神国の王家の来歴を考えればそれも難しいのだが、だからこそとでも言えばいいのだろうか。
間違いなく、オユキがそうした場にいれば、急激に難易度が上がるのだ。アイリスにとっては。
「こう、精霊に近い訳でしょう、貴女の種族というのは」
「そういえば、降臨祭に関して、お伺いしていませんでしたね」
「勿論、国許なのかしら、集落なのかしら、そちらに運ぶのが難しいというのは、私も分かるのだけれど」
「ええと、そう、ですね。私としても、今戻られては困ると言いますか。また、こちらに来ていただけるのだとして、その際に起こる問題を考えればといいますか」
いっそのこと、オユキが足を運んで、いやそれもかなりの困難を伴うかと、その様な事をオユキは改めて呟いて。
考えてみれば、不思議な事ではあるのだと。
オユキは己の中で、そうした思考を作る。
確かに、これまでのオユキであれば。こちらに来てからはともかく、あちらの世界では一度招いたのであれば、次はやはり相手のほうにと考えた物でもある。寧ろ、足を運ばせたのだから、己も次はと考えることも多かった。
だというのに、ほぼ間違いなく己の種族の安寧を願って、拉致どころの騒ぎではない、種族の存続のかかった脅迫を受けた上で決断を下した者たちでもある。それに対して、受け取るだけを受け取って、返す物を確かに考えてはいるのだが、それだけしか行っていないのは何故かと。
オユキの思考がそちらに傾きそうになるのを。
「オユキさん、今は」
「これは、失礼を。とは言いましても、アイリスさんの話というのは、一応終わりといいますか」
「それは、そうなのだけれど。貴女は、本当にいいのかしら」
「一応、この後で改めてセツナ様にはお尋ねしてみますし、クレド様も同様ではありますが、門が現状ありません。その難しさを、どうにかするためにも今度の降臨祭を恙無くとは考えているのですが」
此処で、ようやくアイリスにしてみれば、大きな懸念をオユキが口にした。
アイリスにしても細心の注意を払って、具体的にはトモエの様子をオユキの様子よりも遥かに伺いながら進めてきた食事中の話題。それが、ようやく実ったとばかりに。
サラダも終わり、既にフロマージュに手を付けながら。
ヴァレリアは、トモエすらも彼女の意見を容赦なく退けたために、最早やけ酒とでも言えばいいのだろうか。
チーズを定期的に口を運びながらも、なかなかに愉快な速度で酒杯を傾けている。流石にメイ程の不慣れは無いだろうと、一度そちらは置いて起き。
「オユキさんは、今回得る心算、なのですか」
「降臨祭でまでとは考えていませんが、少なくとも新年祭までにはと」
「なら、オユキは必要なマナを得るまではと言う事かしら」
「そう、ですね。方々から、どうにもきちんと体調を整えよとそうした気配は感じていますし、その、セツナ様にしても私の体調を整えるためにと言う事でしょうから」
「あの方は、どうなのかしら。どうにも、貴女が回復したからと元の場所に変えるのかと言われれば、少し難しいも気がするのだけれど」
アイリスに関しては、オユキの抱えている不安、それに関してアイリスは違う意見を持っているのだと示したうえで。
「降臨祭は、基本は別となるのかしら」
「現状では、その予定かと。いえ、アイリスさんが、戦と武技の名のもとに行われる洗礼への出席を認めてくださるのであれば」
「前にも断ったのだけれど、流石に部族の物と差がある以上は無理よ。今度の物で、私も祖霊様から別途で言われている物」
寧ろ、アイリスとしては、そちらを餌として己の本命を通すためにとく立てているだろうと言う事。
それには、やはりトモエも気が付いている。
寧ろ、こうして気が付いているからこそ、ヴァレリアなどよりもアイリスの為にとオユキを誘導している。
トモエとしても、オユキの考えの通りにアイリスとアベルの事に対してしまえば、間違いなく与えられる試練が過剰になると考えているからこそ。
そして、トモエの中ではこの降臨祭で事が起こると踏んでいる。
だからこそ、オユキに対してあれこれと過剰とも思える仕事を振ることを良しとしている。
アイリスの祖霊、三狐神と呼んでも良いとアイリスからは許可を出されているのだが実態としては稲に関わる狐の神性。
どうしたところで、トモエの脳裏には、祟りという言葉が浮かぶ以上はアイリスに気を使ってしまう。
生前の性別としては、アイリスと同性ではあるのだからと。
「オユキさんは、例えば、アイリスさんが招きたいと願ったときに」
「もう少し早くにはと考えはしてしまいますが、ええ、当家からできる事でしたら、その、当家でしか行えぬことも多くあるでしょうから。ただ、その」
「貴女の不興を買った者達を、とまでは思わないわよ。その、流石にこちらだけでなく隣国に社も置いたでしょう」
「そういう話でしたら、協力は惜しみませんが」
「良いのかしら、馬車に門にと、色々と頼むことになるけれど」
「当家で行える協力であれば、勿論惜しみなく」
「有難いのだけれど」
「雑音の類は、私でも抑えられるでしょう。そうしたことを踏まえて、今度の仕事をトモエさんが淹れていることもあるでしょうから」
オユキとしても、つい先ごろにはオユキが己の費やすような真似をトモエが嫌っていたのだと覚えている。
だが、今度の祭りに関しては、間違いなく以前の物に比べれば余裕があるのだろう。何より、洗礼以外で言えばオユキが負担しなければならない事柄というのは、確かに無い。
単に、オユキはあちらこちらへと顔を出さなければならず、そのために用意をしなければならない事を考えれば、時間がとにかく取られるというだけ。
「具体的に、どの程度とはまだ決まっていないのだけれど」
「積載限界はあるでしょうし、魔石をこちらで用意するのに加えてフスカ様、パロティア様は難しいかもしれませんが」
「そちらも、負担を頼んでもいいのかしら」
「ええ、勿論ですとも」
色々と、オユキにしてもアイリスには恩義を感じている。
それ以上に、相見互いとそうした意識がやはり強い。
「結果は、すぐにでもと考えていますが、アイリスさんは、その」
「セラにやらせるわ。イリアも、貴女が良しとすれば一度顔を出すでしょうし」
「里帰りと言う事であれば、日数をとも思いますが」
「森猫の集落は神殿からは遠いというよりも、神国にあるもの。私の部族の暮らす場所にしてもすこし距離があるし。祖霊様方が、各々の部族に声をかけているらしくって、既に集まっている者たちをこちらに、その程度よ」
「祖霊様方からの、言葉によって、ですか」
「警戒は分かるけれど、流石に少し数はそこまで多くならないはずよ」
アイリスにしても、そのあたりが分かっていないのだなとオユキとしては一先ず飲み込んで。
「ああ。それで、今度の降臨祭がと言う事ですか」
そして、トモエの手によって誘導され、アイリスがそれに乗ったこともあり、オユキの思考はすっかりとそちらに傾くことになる。
アイリスは、ひとまず安心と考えて少しイスに深く改めて。
トモエにとっては、未だに安心できない範囲でしかない。
そのあたりは、オユキに対する理解の差とでも言えばいいのだろう。
オユキが、既にトモエが何か誘導をと考えていることに気が付いている。そして、視線でトモエに訴えているのだ。
一体、この結果で得たいものは何だと。
既にいくつか想定がある、オユキの視線はそのように語っている物であるし、トモエにしてもこの後に改めてオユキに伝える事になるだろう。あくまで、建前としての物を。
「間に合わせるというのであれば、早速とせねばなりませんか」
「急がせることは、悪いと思っているのよ」
「その、オユキさん。アイリスさんもようやくと言う所ですから」
「確かに、少しは整っていますか」
アイリスにしても、ここ暫くの無理がたたって自慢の毛並みがボロボロになっていたのだ。
こうして、ファンタズマ子爵家に逗留しているのはそれをアベルから隠すため。
「どういう、意味かしら」
「いえ、特に他意はありません。私よりも回復が早いと言う事については、少し物を言いたくもありますが」
互いに戦と武技の巫女であり、苦労を共にしているはずだというのに。
オユキは未だに快復には程遠く、なんとなれば己の種族の先達から苦言を呈される日々を送っている。
勿論、アイリスが己よりだいぶ長じているという自覚はオユキにもある。だが、オユキにしても冬と眠りから与えられた功績とてあるのだ。
それらを含めても、こうして及ばぬ回復の差がどこにあるのだろうかと考えざるを得ない。
勿論、真っ先にそれを口に出そうものならば、食事量の差だと返ってくることだろうが。
「それに関しては、貴女は今種族の長が側にいるじゃないの。そちらからは、いえ、そういえばそれを忘れていたわね」
「忘れていた、ですか」
トモエの判断というよりも、オユキのおらぬ場で受け板相談として。
アイリスは、この降臨祭でアベルとの関係を己の祖霊に認めさせるつもりでいるらしい。
トモエにしても、急ぎすぎではないのかと思うのだが、今となっては側にヴァレリアもいる。祖霊の承諾が必要ない、恐らく必要としないセラフィーナがいる。
焦るなという言葉が、もはや意味がなさない程度には、アベルの周囲に他の影がある。
生前にしても、トモエはオユキの周りにそうした影が現れるたびに、感じるたびに気をもんだトモエとしては理解をせざるを得ない部分でもある。
問題としては、ただ一つ。
その場にオユキが存在すれば、オユキがアベルという人間に対して良く思っていないという事実がどこまでもある以上。
同じ戦と武技の巫女、というだけでなく。
オユキにしても、何やらアイリスの祖霊に目を懸けられている様子もある。
アイリスがおらぬ場で、アイリスを呼ぶことが出来ぬ場ですらあの三狐神が平然と降りてきたりもしていた。勿論、その場にはロザリア司教という例外と呼ぶにしてもあまりにもそれ以上の相手がいたりもしたのだが、そうした経験すら持っている。
何より、己の後を任せるのだとしたらと、そうした言葉を聞いたこともある。
つまりは、己の可愛い娘を、明らかに寿命の違う、人の特徴しか持っていないとは、神国の王家の来歴を考えればそれも難しいのだが、だからこそとでも言えばいいのだろうか。
間違いなく、オユキがそうした場にいれば、急激に難易度が上がるのだ。アイリスにとっては。
「こう、精霊に近い訳でしょう、貴女の種族というのは」
「そういえば、降臨祭に関して、お伺いしていませんでしたね」
「勿論、国許なのかしら、集落なのかしら、そちらに運ぶのが難しいというのは、私も分かるのだけれど」
「ええと、そう、ですね。私としても、今戻られては困ると言いますか。また、こちらに来ていただけるのだとして、その際に起こる問題を考えればといいますか」
いっそのこと、オユキが足を運んで、いやそれもかなりの困難を伴うかと、その様な事をオユキは改めて呟いて。
考えてみれば、不思議な事ではあるのだと。
オユキは己の中で、そうした思考を作る。
確かに、これまでのオユキであれば。こちらに来てからはともかく、あちらの世界では一度招いたのであれば、次はやはり相手のほうにと考えた物でもある。寧ろ、足を運ばせたのだから、己も次はと考えることも多かった。
だというのに、ほぼ間違いなく己の種族の安寧を願って、拉致どころの騒ぎではない、種族の存続のかかった脅迫を受けた上で決断を下した者たちでもある。それに対して、受け取るだけを受け取って、返す物を確かに考えてはいるのだが、それだけしか行っていないのは何故かと。
オユキの思考がそちらに傾きそうになるのを。
「オユキさん、今は」
「これは、失礼を。とは言いましても、アイリスさんの話というのは、一応終わりといいますか」
「それは、そうなのだけれど。貴女は、本当にいいのかしら」
「一応、この後で改めてセツナ様にはお尋ねしてみますし、クレド様も同様ではありますが、門が現状ありません。その難しさを、どうにかするためにも今度の降臨祭を恙無くとは考えているのですが」
此処で、ようやくアイリスにしてみれば、大きな懸念をオユキが口にした。
アイリスにしても細心の注意を払って、具体的にはトモエの様子をオユキの様子よりも遥かに伺いながら進めてきた食事中の話題。それが、ようやく実ったとばかりに。
サラダも終わり、既にフロマージュに手を付けながら。
ヴァレリアは、トモエすらも彼女の意見を容赦なく退けたために、最早やけ酒とでも言えばいいのだろうか。
チーズを定期的に口を運びながらも、なかなかに愉快な速度で酒杯を傾けている。流石にメイ程の不慣れは無いだろうと、一度そちらは置いて起き。
「オユキさんは、今回得る心算、なのですか」
「降臨祭でまでとは考えていませんが、少なくとも新年祭までにはと」
「なら、オユキは必要なマナを得るまではと言う事かしら」
「そう、ですね。方々から、どうにもきちんと体調を整えよとそうした気配は感じていますし、その、セツナ様にしても私の体調を整えるためにと言う事でしょうから」
「あの方は、どうなのかしら。どうにも、貴女が回復したからと元の場所に変えるのかと言われれば、少し難しいも気がするのだけれど」
アイリスに関しては、オユキの抱えている不安、それに関してアイリスは違う意見を持っているのだと示したうえで。
「降臨祭は、基本は別となるのかしら」
「現状では、その予定かと。いえ、アイリスさんが、戦と武技の名のもとに行われる洗礼への出席を認めてくださるのであれば」
「前にも断ったのだけれど、流石に部族の物と差がある以上は無理よ。今度の物で、私も祖霊様から別途で言われている物」
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