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35章 流れに揺蕩う
愁う心に
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王都の狩猟者ギルド、オユキにとっては随分と懐かしく感じる場。そこに、シェリアに手を引かれるままに馬車から進み出る。トモエは、到着というよりも、馬車が止まった時には既に飛び出しており、既に存分に威圧を行っていることだろう。昼を過ぎて暫く、平素も静かな時間であるには違いないのだが、今は何やら水を打ったような静けさ。さらには、オユキに向いていないとは確かに分かるのだがトモエの不機嫌というのが嫌でも分かる気配。
これが、オユキに向けられているのであれば、首元に刃を当たられているような錯覚を覚えるのだろう。
事実、慣れているシェリアは気にしていない、立ち位置がトモエがいるだろう気配の出どころに対して、特に何も行ってはいない。寧ろ、それらを向けているだろう相手、そちらに対応ができる様に何やら手にいくつかの暗器を取り出してもいる。後からついてくるようにと、そう言い置いた腰が引けていたサラリックのように、怯えるとでも言えばいいのだろうか。そういった人間が、果たしてこの建物の中にどのてどいるのか、手配は行っているのだが、流石に間に合わない以上は今後の流れにどうしたところで影響も出るだろうとそんな事をオユキは考えて。
「さて、何か、申し開きはあるのでしょうか」
「グティエレスが手配をしたことでしょうが、武国の者たちは軟禁をされていたはずですのに」
「そこを手引きしたものが居るのでしょう」
「オユキ様は」
「ユニエス、いえリゴドー公ですか。そちらに対する配慮、遠慮と言うものがあるのでしょう。そうなると、容疑者が多すぎて、ですね」
「確かに、ユニエス公爵家ともなれば配慮をする者は多いでしょうね」
「正直な所、王族の分家という認識ですが、その、毎度と言えばいいのでしょうか」
公爵家として、領地も当然存在している。寄り親としての働きも、というよりも王家の分家だからこそ、やらねばならぬことも多いはずなのだ。だというのに、現当主は騎士などに身をやつして挙句の果てには始まりの町、マリーア公爵の領で傭兵ギルドの長に収まっていた。そうした背景を考えて、対して難しくはないだろうと考えて新しい仕組み、そうした物を話してみたのだがどうにもそうした振る舞いをしていた割にはしがらみが多いようなのだ。
アイリスに対しても、幾度か何か知らないのかと婉曲的に尋ねているのだが踏み込んでくれるなと綺麗に警戒されて終わっていくというものだ。そのあたりは、暫くオユキとしてはどういった意味かが分からなったのだが、己もそうした感情を自覚してみれば意味も分かるというもの。
「公爵家としての家督は王族が、それも現陛下に最も近い物が自動的に。実権や実態に関しましては、オユキ様の想像通りに」
「確かに、そうでも無ければ不都合が多すぎますか」
そんな話をしていれば、シェリアが空けた扉を潜り、いよいよ現場とでもいえばいいのだろうか、無造作に転がる数人の者達。少女たちを守る様に、そうある様にと振る舞った結果だろう。鞘に納めたままの武器を手に持つシグルドと、未だに盾を降ろしていないパウ。後は、改めて過去の傷口が開いたのだろうサキを守る様に揃って引っ付いている少女たち。
間の悪い事だ。
そして、彼女に対して明確にそうした刺激が与えられたからだろう。トモエにとって大切な、オユキにとっても見過ごすことが出来ない振る舞いを行ったからだろうか。今となっては、しっかりと戦と武技に与えられる敵対者の印が与えられている。さらには、オユキが思わず袂で口元を覆ってしまう醜い色彩がそこには広がっている。
「トモエさん」
そうしてオユキが名を呼べば、一応流派の中に存在している抜き打ちをもって、トモエがその色合いを断ち切る。そのついでに、床に転がっている者たちの髪を少々切り取ったのは八つ当たりも兼ねてなのだろう。
「皆さんは、大事ないですか」
「まぁ、俺らはな。任されてたってのに、間に合わなかった」
「ああ」
「そればかりは、本来無いはずの事でしたから。それに、皆さんでは難しいところもありますからね」
本来であれば、そこまでを踏まえた護衛だと考えていた。いや、そこはサキが過剰に反応をしたのか。そもそも、この汚物を処分するのは、視覚として捉えることが出来る人間が限られているのは事実でもある。騎士として一応の最高峰でもあるアベルでさえも相応に手順を踏まなければ目にすることが叶わないのだ。
トモエは、オユキよりもそうした気配に敏いとはいえ、寧ろそうした気配が視覚に影響を与えているのだろうとオユキは踏んでいるのだが、それでもやはり難しい。今回の事にしてもそう。前回にしても、同じく。裏で誰かが手を引いている、明確にこの世界に悪意を持っている存在がいる。こちらならでは、こちらだからこそ。人よりも圧倒的に優れた神、世界樹にある座とやらを得ることが出来れば神として成立するこの世界。つまりは、過去に真摯に信仰を持っていた者たちは、それをこの世界では真っ向から否定されるのだ。そして、この世界があるからこそ、唯一であるという宇宙観に当たり前のようにひびが入る。それが認められぬ者たちが、こちらでも改めてと考えている者たちが。そうした物が背後にいるのだろうと、オユキとしては考えている。
勿論、彼らの正しいとする経典にそのような話が載っているはずもない。
そうでない限りは、オユキとしても好ましく思うのだ。宗教などというのは、信仰等と言うのは無駄とする向きも多いのだがオユキにとってはまた違う。トモエが、太刀を信仰するように、オユキの信仰も当然存在している。それは、他の者たちにしても同様に。主義信条、その一環でしかないとオユキは考えているのだから。
だが、それが今回のように他者を害する方向に向かえば、己の害する方向に向かうものであれば、対応に容赦がないとそれだけなのだ。
「さて、これで少しはまともに話ができると良いのですが」
「オユキ様、では、この者たちは」
「ええ、当家に一先ず隔離を行いましょうか。既に手配を行った者たちも、当家に向かっていることでしょうから」
床に転がる四人、間違いなく武国からだろう者達。肌の色や髪の色に関しては、そもそも神国でもさまざまであるために、何一つ役に立ちはしない。装備に関しても、他と陸に区別のつかぬ軽装であるためそちらも同様。だが、この場でこのような狼藉に走る相手など他に居るまいとばかりに。
「マリーア公爵家の領地以来、でしょうか。勿論、色々と話は聞いていますが」
「教会に頼んではいるのですが、やはりなかなか」
「トモエさんや私が対応を続けるというのも難しいですからね」
そうして話しながらも、オユキは改めてギルドの内部を眺める。
先程のトモエの抜き打ち、それと共に響いた耳に入るだけでも気分の悪くなる音。オユキは気が付いていないのだが、未だにオユキは袂を口元に持ってきたまま。あからさまに、こちらの振る舞いの中では、扇で口元を覆うどころではなく、それ以上の不快感を示す仕草のままに。はたから見れば、今回の騒動で損ねた機嫌、それをぶつける先を求めているのだと示す仕草。
当然、トモエもシェリアも理解しているのだが、責任者には追及しなければと考えている二人は止める気も無い。
「さて、そろそろ出てくると考えているのですが」
「オユキさん」
「グティエレス候は、おられますよね。この場ではないにせよ」
受付の相手に、視線を送ってみれば何やら顔色を失って、首を縦に振っている。
哀れなとは思うのだが、オユキとしてもそちらを連れてさっさと戻りたい、何よりも少年たちにしても屋敷に一度戻したいと考えているために、止める気は無い。
「お呼びしていただけますか」
「は、はい」
「さて、後の事はマリーア公爵に借り受けている場でお伺いします。其処の者たちにしても、当家が一度預かりますので」
「あの、一応経緯といいますか」
「ご説明頂けるというのであれば、喜んでお伺いしますが」
こちらから、狩猟者ギルドに対して報告することなど何もないのだぞと、そうオユキが伝えて。
「さて、来ましたか」
受付ではなく、話を聞いていたものが声をかけに行ったわけでもないというのに。機を見計らってと言う事なのだろうが、それにしても遅すぎる。
「な、なにを」
「いえ、面倒ですから。確認も兼ねて、シェリア、動かさぬ様に」
顔を出した人物に、容赦なくシェリアが寸鉄を打って。今後の面倒を避けるために、オユキがトモエを改めてみる。遠慮をしているわけではなく、どちらでとそうした支援で訴えているのが分かる。オユキとしては、流石に刃傷沙汰はどうかと思うのだが、そう視線で訪ねる以上はオユキに見えぬものがトモエには見えているのだろう。
オユキがその影を認識するには、色々と手間がかかる。だが、トモエはそうでは無いらしい。明確に敵意をもって相手を見れば、トモエに対して敵意があるのだと判断すればある程度上の判別が出来る様子。ならば、任せてしまえばいいかと、そう考えて改めてオユキはトモエに対して頷いて返す。
周囲を纏めて、流石にトモエはそうしたことを行わないだろうと考えている。そして、オユキの想像が正しい様で、頬をかすめるようにしてトモエが遠間から放った刺突によってまたオユキの気分が悪くなる音が響く。悲鳴の類なのだろう。一体、この汚泥と呼ぶにも控えめな色、それがどうして等と考える物の。
「こちらもですか。王城の中は、掃除が済んだと聞いていますが、それ以外はやはり難しいのでしょうね」
「王城の中も、この様子では不安といいますか」
「月と安息の神像を設置せねばならぬほど、それを考えると確かにと言うものですね」
「難しい、のでしょうか」
「方法が無いにはないのでしょうが、それを行うには、やはり色々とありますし」
それこそ、持祭の少女たちで難しいのだと、それは既に理解が及んでいる。こうして、襲われていることからも分かる様に。そして、トモエとオユキが対応を行ったところで、対症療法でしかない。魔石の量、魔石が大量に手に入るようになったとはいえ、月と安息の結界の強度を上げるというのもまた難しいのだろう。
これが、オユキに向けられているのであれば、首元に刃を当たられているような錯覚を覚えるのだろう。
事実、慣れているシェリアは気にしていない、立ち位置がトモエがいるだろう気配の出どころに対して、特に何も行ってはいない。寧ろ、それらを向けているだろう相手、そちらに対応ができる様に何やら手にいくつかの暗器を取り出してもいる。後からついてくるようにと、そう言い置いた腰が引けていたサラリックのように、怯えるとでも言えばいいのだろうか。そういった人間が、果たしてこの建物の中にどのてどいるのか、手配は行っているのだが、流石に間に合わない以上は今後の流れにどうしたところで影響も出るだろうとそんな事をオユキは考えて。
「さて、何か、申し開きはあるのでしょうか」
「グティエレスが手配をしたことでしょうが、武国の者たちは軟禁をされていたはずですのに」
「そこを手引きしたものが居るのでしょう」
「オユキ様は」
「ユニエス、いえリゴドー公ですか。そちらに対する配慮、遠慮と言うものがあるのでしょう。そうなると、容疑者が多すぎて、ですね」
「確かに、ユニエス公爵家ともなれば配慮をする者は多いでしょうね」
「正直な所、王族の分家という認識ですが、その、毎度と言えばいいのでしょうか」
公爵家として、領地も当然存在している。寄り親としての働きも、というよりも王家の分家だからこそ、やらねばならぬことも多いはずなのだ。だというのに、現当主は騎士などに身をやつして挙句の果てには始まりの町、マリーア公爵の領で傭兵ギルドの長に収まっていた。そうした背景を考えて、対して難しくはないだろうと考えて新しい仕組み、そうした物を話してみたのだがどうにもそうした振る舞いをしていた割にはしがらみが多いようなのだ。
アイリスに対しても、幾度か何か知らないのかと婉曲的に尋ねているのだが踏み込んでくれるなと綺麗に警戒されて終わっていくというものだ。そのあたりは、暫くオユキとしてはどういった意味かが分からなったのだが、己もそうした感情を自覚してみれば意味も分かるというもの。
「公爵家としての家督は王族が、それも現陛下に最も近い物が自動的に。実権や実態に関しましては、オユキ様の想像通りに」
「確かに、そうでも無ければ不都合が多すぎますか」
そんな話をしていれば、シェリアが空けた扉を潜り、いよいよ現場とでもいえばいいのだろうか、無造作に転がる数人の者達。少女たちを守る様に、そうある様にと振る舞った結果だろう。鞘に納めたままの武器を手に持つシグルドと、未だに盾を降ろしていないパウ。後は、改めて過去の傷口が開いたのだろうサキを守る様に揃って引っ付いている少女たち。
間の悪い事だ。
そして、彼女に対して明確にそうした刺激が与えられたからだろう。トモエにとって大切な、オユキにとっても見過ごすことが出来ない振る舞いを行ったからだろうか。今となっては、しっかりと戦と武技に与えられる敵対者の印が与えられている。さらには、オユキが思わず袂で口元を覆ってしまう醜い色彩がそこには広がっている。
「トモエさん」
そうしてオユキが名を呼べば、一応流派の中に存在している抜き打ちをもって、トモエがその色合いを断ち切る。そのついでに、床に転がっている者たちの髪を少々切り取ったのは八つ当たりも兼ねてなのだろう。
「皆さんは、大事ないですか」
「まぁ、俺らはな。任されてたってのに、間に合わなかった」
「ああ」
「そればかりは、本来無いはずの事でしたから。それに、皆さんでは難しいところもありますからね」
本来であれば、そこまでを踏まえた護衛だと考えていた。いや、そこはサキが過剰に反応をしたのか。そもそも、この汚物を処分するのは、視覚として捉えることが出来る人間が限られているのは事実でもある。騎士として一応の最高峰でもあるアベルでさえも相応に手順を踏まなければ目にすることが叶わないのだ。
トモエは、オユキよりもそうした気配に敏いとはいえ、寧ろそうした気配が視覚に影響を与えているのだろうとオユキは踏んでいるのだが、それでもやはり難しい。今回の事にしてもそう。前回にしても、同じく。裏で誰かが手を引いている、明確にこの世界に悪意を持っている存在がいる。こちらならでは、こちらだからこそ。人よりも圧倒的に優れた神、世界樹にある座とやらを得ることが出来れば神として成立するこの世界。つまりは、過去に真摯に信仰を持っていた者たちは、それをこの世界では真っ向から否定されるのだ。そして、この世界があるからこそ、唯一であるという宇宙観に当たり前のようにひびが入る。それが認められぬ者たちが、こちらでも改めてと考えている者たちが。そうした物が背後にいるのだろうと、オユキとしては考えている。
勿論、彼らの正しいとする経典にそのような話が載っているはずもない。
そうでない限りは、オユキとしても好ましく思うのだ。宗教などというのは、信仰等と言うのは無駄とする向きも多いのだがオユキにとってはまた違う。トモエが、太刀を信仰するように、オユキの信仰も当然存在している。それは、他の者たちにしても同様に。主義信条、その一環でしかないとオユキは考えているのだから。
だが、それが今回のように他者を害する方向に向かえば、己の害する方向に向かうものであれば、対応に容赦がないとそれだけなのだ。
「さて、これで少しはまともに話ができると良いのですが」
「オユキ様、では、この者たちは」
「ええ、当家に一先ず隔離を行いましょうか。既に手配を行った者たちも、当家に向かっていることでしょうから」
床に転がる四人、間違いなく武国からだろう者達。肌の色や髪の色に関しては、そもそも神国でもさまざまであるために、何一つ役に立ちはしない。装備に関しても、他と陸に区別のつかぬ軽装であるためそちらも同様。だが、この場でこのような狼藉に走る相手など他に居るまいとばかりに。
「マリーア公爵家の領地以来、でしょうか。勿論、色々と話は聞いていますが」
「教会に頼んではいるのですが、やはりなかなか」
「トモエさんや私が対応を続けるというのも難しいですからね」
そうして話しながらも、オユキは改めてギルドの内部を眺める。
先程のトモエの抜き打ち、それと共に響いた耳に入るだけでも気分の悪くなる音。オユキは気が付いていないのだが、未だにオユキは袂を口元に持ってきたまま。あからさまに、こちらの振る舞いの中では、扇で口元を覆うどころではなく、それ以上の不快感を示す仕草のままに。はたから見れば、今回の騒動で損ねた機嫌、それをぶつける先を求めているのだと示す仕草。
当然、トモエもシェリアも理解しているのだが、責任者には追及しなければと考えている二人は止める気も無い。
「さて、そろそろ出てくると考えているのですが」
「オユキさん」
「グティエレス候は、おられますよね。この場ではないにせよ」
受付の相手に、視線を送ってみれば何やら顔色を失って、首を縦に振っている。
哀れなとは思うのだが、オユキとしてもそちらを連れてさっさと戻りたい、何よりも少年たちにしても屋敷に一度戻したいと考えているために、止める気は無い。
「お呼びしていただけますか」
「は、はい」
「さて、後の事はマリーア公爵に借り受けている場でお伺いします。其処の者たちにしても、当家が一度預かりますので」
「あの、一応経緯といいますか」
「ご説明頂けるというのであれば、喜んでお伺いしますが」
こちらから、狩猟者ギルドに対して報告することなど何もないのだぞと、そうオユキが伝えて。
「さて、来ましたか」
受付ではなく、話を聞いていたものが声をかけに行ったわけでもないというのに。機を見計らってと言う事なのだろうが、それにしても遅すぎる。
「な、なにを」
「いえ、面倒ですから。確認も兼ねて、シェリア、動かさぬ様に」
顔を出した人物に、容赦なくシェリアが寸鉄を打って。今後の面倒を避けるために、オユキがトモエを改めてみる。遠慮をしているわけではなく、どちらでとそうした支援で訴えているのが分かる。オユキとしては、流石に刃傷沙汰はどうかと思うのだが、そう視線で訪ねる以上はオユキに見えぬものがトモエには見えているのだろう。
オユキがその影を認識するには、色々と手間がかかる。だが、トモエはそうでは無いらしい。明確に敵意をもって相手を見れば、トモエに対して敵意があるのだと判断すればある程度上の判別が出来る様子。ならば、任せてしまえばいいかと、そう考えて改めてオユキはトモエに対して頷いて返す。
周囲を纏めて、流石にトモエはそうしたことを行わないだろうと考えている。そして、オユキの想像が正しい様で、頬をかすめるようにしてトモエが遠間から放った刺突によってまたオユキの気分が悪くなる音が響く。悲鳴の類なのだろう。一体、この汚泥と呼ぶにも控えめな色、それがどうして等と考える物の。
「こちらもですか。王城の中は、掃除が済んだと聞いていますが、それ以外はやはり難しいのでしょうね」
「王城の中も、この様子では不安といいますか」
「月と安息の神像を設置せねばならぬほど、それを考えると確かにと言うものですね」
「難しい、のでしょうか」
「方法が無いにはないのでしょうが、それを行うには、やはり色々とありますし」
それこそ、持祭の少女たちで難しいのだと、それは既に理解が及んでいる。こうして、襲われていることからも分かる様に。そして、トモエとオユキが対応を行ったところで、対症療法でしかない。魔石の量、魔石が大量に手に入るようになったとはいえ、月と安息の結界の強度を上げるというのもまた難しいのだろう。
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