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27章 雨乞いを
問題児
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以前、トモエとオユキが魔国に逗留していた折に。すげなくあしらった者が居る。
「あの子は、いえ」
「親心と言う事であれば、ええ、トモエも私も。ですが、許される立場では」
「わかっては、いた。つもりなのです」
如何に教育を受けて、そうした振る舞いを身に着けたからと言って。教育で、仮面をかぶることになれたとして。それでも肉親に向ける情と言うのはいかばかりか。
「であれば、私からは何を言うでもありません」
そして、理解の上でのことであれば、そこで評価を落とす事となっても。それすらも納得の上だというのであれば、最早オユキも何を言うでもない。今後、そう、間違いなくトモエとオユキがこちらに滞在している期間でなにがしかを行ってくるだろう。その時に、前回と同じか、それ以上の対応を行うだけ。特に今回は、神国からきているものとして、非常に明確な立場と言うのが存在している。流石に、容赦するのも難しい。間違いなく、トモエとオユキが行わなかったとて他から神国に報告がいくことだろう。
「さて、貴女は、少し考えがあると、その様子でしたが」
「少し、改めました」
どうやら、ごくわずかな時間とはいえ、あまりにもはっきりと警戒していたからだろう。
「あのクレリー家の令嬢ですね、そちらは、一度ここで話してみようかと」
「何があったのかと、そう尋ねても」
「そうですね、どうにも、説明には時間がいるのですが」
正直、オユキのほうでは未だに半信半疑。だというのに、誰も彼もが話してみよとそうした素振り。
こうして、王妃を招いてみて、改めて感じるのだがこの空間は、そこまで便利に使う事を良しとされてはいない。今も、こうして他に時間を使っている間に合わせて、確かな何かがオユキから削られていく。取り返しがつくことは、一応王妃から与えられた護符が、オユキの手元に戻されたそれが示してくれてはいるのだが。
「なら、結構でしょう。貴女も気が付いているようですが」
「ええ。やはり便利に使うには、と言う所です」
「鍛錬の果てには、扱える幅も増えるのですが貴女はやはり」
「どうにも、魔術の鍛錬と言えばいいのでしょうか」
そう、オユキとしても散々にカナリアに言われていることもある。もっと、馴染めと。そうすれば、毎度毎度、こうした倦怠感を、体調不良を覚えることも減ると言外に言われているのはよく分かる。だが、どうだろうか。オユキがそうした鍛錬を行う時間があるのか、勿論ある。トモエとの時間を削れば、魔物の狩猟を考えなければ、その時間は得られる。だが、それに対してはそもそも戦と武技から与えられた位を持っているのだからと、封殺することが出来る。できてしまうほどに、こちらの世界ではやはり当然と考えられているのだ。そして、頻繁に魔力の枯渇を起こしている以上、鍛錬に回す余裕があるのかと考えたときに。カナリアが、そのあたりは常に難しい顔をするあたり、恐らくないのだろう。
「ええ。時間がかかる物です。そして、私にしても、すでに聞いています」
そう、明確に時間制限を持っている人間が、魔術を学ぼうというのがまず可笑しいと、そうした話。
「伸ばせとは、言いませんとも」
そして、それに言及した相手に、警戒が表に出たからだろうか。表情と言う意味では、基本的に隠しおおせているはず、それをオユキは疑っていない。だからこそ、己の内面、それにかかわる事なのだろうと想像もつく。
すっかりと馴染んだ、魔術文字だとこれまでオユキが考えていたもの。これまでの王妃の口ぶりかしてみれば、種族由来の能力と言う事になるのだろうそれ。そちらに、流れる物があるのだろう。感情に合わせて。ただ、それを明確に奇跡を持つと口にしている王妃は見える。ただ、マナを目視できるという翼人種、カナリアが気が付いていないのは、さて何故か。
「生憎と、私も詳しくないので何とも言える物ではありませんが」
「あの」
「貴女は、こちらでは特に考えていることが分かりやすいのですよ」
それが当然とばかりに、思考が読まれるオユキとしては、少々言いたいこともあるのだがと。そう言ってい見たところで、やはりそこには王妃が口にする以上の経験の差が存在していることだろう。かつての経験が等と言ったところで、所詮は一企業。一国の王妃と比べれば、やはりそこにある差は歴然。加えて、オユキに対しては最低限の教育が、どうにかミズキリによって仕込まれただけ。
つまりは、オユキと言う人間が思う以上に、周囲はオユキの振る舞いから気が付くものがあるのだと、そうした話を今こうして。
「向こうでも、読み取れることは多いと、そういう事なのでしょう」
「そのあたりは、貴女に着けられた相手にしっかりと習いなさいとしか言えませんわね」
つまりは、エステールによく習えと言う事であるらしい。
「さて、そのあたりは、やはり一度おいておきましょう。私たちの子供、第一子でもある、あの子」
「カルラさんと共同で動くのかと、そう考えていました。そのために、今回のように大きな隙とて作ったのですが」
「ただ、クレリー家の子女がそれに乗らなかったと。アルゼオ公爵家の子息が、口車に」
「そちらは、既に目を覚ました先代アルゼオ公爵が」
そう、フォンタナ公爵の人となりを知らず、アンツォフェルモ辺境伯ですっかりと止まっていた先代アルゼオ公爵が、今は随分と精力的にこちらで活動している。間違いなく、これまでの彼の選択によって不利益を被ってきた者達もいるだろう。そちらとの間で、今、どのような交渉を持っているのかは本人から多少話位は聞いているものだがなかなか愉快な状況ではあるらしい。レモを、ファルコを存分に連れまわし、これまでの交渉で彼がどれほどを為してきたのかを、容赦なく見せつけて。トモエとオユキにも、色々と魔物の素材魔石に限らず、種々の品を融通してほしいとそうしたことを言われてもいる。実際に、それらを使って間違いのない成果を上げるのだとわかっている以上は、やはりそちらにしても惜しみなく。
「ええ、どうやらその様子。それにしても、上手くあの子も誘導してくれているようですが」
「それは、さて」
一体、どのように。そうオユキが考えれば、実にはっきりと回答が返ってくる。
「どうにも、目を覚まさせる方向で、誘導しているようです」
「成程」
つまりは、今この場にいる者たち、その中で強硬であるのは既にオユキだけと言う事らしい。誰も彼もがほだされて、そこまでは考えない。間違いなく、オユキの負担を減らすためにと周囲が動いた結果と、それくらいはオユキにも分かる。未だに、オユキは考えるのだ。己が命を奪う事になった者たちがいる。その者たちは、こちらに来てから、何かもっと手が打てたのではないかと。トモエは、そのあたりは早々に割り切っている。割り切ってしまっている。かつてから変わらず、トモエの容赦のなさは、生前から持っていたあまりにも明確な苛烈がそこにある。そして、オユキはそれを持っていない。だからこそ、とにかく負荷がかかる。
「異邦の者達からしてみれば、随分と命が安い世界だと」
「いえ、歴史を振り返れば、そうでなくとも」
「では、貴女がいた場所と言うのは」
「平和を、多くの者たちがその価値も知らずに謳歌していましたとも」
それが悪い事などとは、やはりオユキは思わない。そして、そんな環境下だからこそ、眼についてしまう悲劇と言うのがあまりにも重たい。広く、方々を見ればどこにでもある、無い方が珍しい悲劇なのだとしても、起こった当人にとっては唯一の物なのだ。それを、散々に思い知って生きてきた。
「少なくとも、私はこのままあの子が儚くなる事を望みはしません」
「烙印がない、未だに機会があると」
「ええ。正直、次代にしても」
「公爵家から、養子にという方法はあるかと思いますが」
かつての世界でも、そんな事は当たり前にあったのだ。寧ろ王家が単独でその血脈を保つことのほうが、遥かに少なかったはずだと。オユキの認識としては、かつての世界での歴史でもそうであったのだから。
「オユキ」
「わかってはいます」
それを行う、あくまで最終手段として。
その覚悟は、間違いなく、目の前の人物は持っている。しかし、それだけでは不足すると踏んだからだろう。だからこそ、こうして保障を求めている。オユキが、積極的にその選択をしないのだと。過日の事は、あくまであまりにも無遠慮に振る舞った物への、名乗りもせずに、先ぶれも無く訪なった者への対応なのだと。
特に今回、いや、神国にいた頃から。
「ここまでの譲歩を頂いているわけです。ならば、やはり私も」
「それほどに、クレリー家、ですか。そちらが」
「これは異なことを」
「ですが、あくまで」
オユキにとっては、実に面倒な諸々を運んできたサクレタ公爵家、そちらと共同していた家だ。
「なくなってもらった方が、やはりあとくされが無いかと」
「烙印を持たぬのに、ですか」
「私の判断基準は、そればかりではありません。やはり、今後も道を阻むとそう考えれば」
如何に望まぬことであろうとも。
過去に、類似の事は散々にやってきたのだ。もはや、いまさら、己の手が汚れるからと、それを嫌うことなどオユキにはない。ここで残すことで、今後の問題にしかならないのだと、オユキの中では既にそちらに思考が傾いてしまっている。天秤は、既に。
「であれば、私からも」
「クレリー家の令嬢、こちらについては一度話す機会を持ちましょう。余人の眼を排して、この空間を使って」
正直なところを言えば、知られてしまえば色々とまずい事ではある。広く知られてしまえば、それができる功績を持っているのだと喧伝されてしまえば。それこそトモエとオユキに対して、この空間を望むものも増えていくだろう。
結局のところ、オユキが嫌がっているのはやはりトモエに降りかかるかもしれない将来のわずらわしさ。そればかり。
「全く、誰も彼も」
そう、誰も彼も。オユキが、こちらに残ろうと考えるのがお気に召さないらしい。
「本当に、この世界は」
かつて己が憧れた世界、それが随分と遠く感じてしまうものだと。そう、ただため息をついて。
「あの子は、いえ」
「親心と言う事であれば、ええ、トモエも私も。ですが、許される立場では」
「わかっては、いた。つもりなのです」
如何に教育を受けて、そうした振る舞いを身に着けたからと言って。教育で、仮面をかぶることになれたとして。それでも肉親に向ける情と言うのはいかばかりか。
「であれば、私からは何を言うでもありません」
そして、理解の上でのことであれば、そこで評価を落とす事となっても。それすらも納得の上だというのであれば、最早オユキも何を言うでもない。今後、そう、間違いなくトモエとオユキがこちらに滞在している期間でなにがしかを行ってくるだろう。その時に、前回と同じか、それ以上の対応を行うだけ。特に今回は、神国からきているものとして、非常に明確な立場と言うのが存在している。流石に、容赦するのも難しい。間違いなく、トモエとオユキが行わなかったとて他から神国に報告がいくことだろう。
「さて、貴女は、少し考えがあると、その様子でしたが」
「少し、改めました」
どうやら、ごくわずかな時間とはいえ、あまりにもはっきりと警戒していたからだろう。
「あのクレリー家の令嬢ですね、そちらは、一度ここで話してみようかと」
「何があったのかと、そう尋ねても」
「そうですね、どうにも、説明には時間がいるのですが」
正直、オユキのほうでは未だに半信半疑。だというのに、誰も彼もが話してみよとそうした素振り。
こうして、王妃を招いてみて、改めて感じるのだがこの空間は、そこまで便利に使う事を良しとされてはいない。今も、こうして他に時間を使っている間に合わせて、確かな何かがオユキから削られていく。取り返しがつくことは、一応王妃から与えられた護符が、オユキの手元に戻されたそれが示してくれてはいるのだが。
「なら、結構でしょう。貴女も気が付いているようですが」
「ええ。やはり便利に使うには、と言う所です」
「鍛錬の果てには、扱える幅も増えるのですが貴女はやはり」
「どうにも、魔術の鍛錬と言えばいいのでしょうか」
そう、オユキとしても散々にカナリアに言われていることもある。もっと、馴染めと。そうすれば、毎度毎度、こうした倦怠感を、体調不良を覚えることも減ると言外に言われているのはよく分かる。だが、どうだろうか。オユキがそうした鍛錬を行う時間があるのか、勿論ある。トモエとの時間を削れば、魔物の狩猟を考えなければ、その時間は得られる。だが、それに対してはそもそも戦と武技から与えられた位を持っているのだからと、封殺することが出来る。できてしまうほどに、こちらの世界ではやはり当然と考えられているのだ。そして、頻繁に魔力の枯渇を起こしている以上、鍛錬に回す余裕があるのかと考えたときに。カナリアが、そのあたりは常に難しい顔をするあたり、恐らくないのだろう。
「ええ。時間がかかる物です。そして、私にしても、すでに聞いています」
そう、明確に時間制限を持っている人間が、魔術を学ぼうというのがまず可笑しいと、そうした話。
「伸ばせとは、言いませんとも」
そして、それに言及した相手に、警戒が表に出たからだろうか。表情と言う意味では、基本的に隠しおおせているはず、それをオユキは疑っていない。だからこそ、己の内面、それにかかわる事なのだろうと想像もつく。
すっかりと馴染んだ、魔術文字だとこれまでオユキが考えていたもの。これまでの王妃の口ぶりかしてみれば、種族由来の能力と言う事になるのだろうそれ。そちらに、流れる物があるのだろう。感情に合わせて。ただ、それを明確に奇跡を持つと口にしている王妃は見える。ただ、マナを目視できるという翼人種、カナリアが気が付いていないのは、さて何故か。
「生憎と、私も詳しくないので何とも言える物ではありませんが」
「あの」
「貴女は、こちらでは特に考えていることが分かりやすいのですよ」
それが当然とばかりに、思考が読まれるオユキとしては、少々言いたいこともあるのだがと。そう言ってい見たところで、やはりそこには王妃が口にする以上の経験の差が存在していることだろう。かつての経験が等と言ったところで、所詮は一企業。一国の王妃と比べれば、やはりそこにある差は歴然。加えて、オユキに対しては最低限の教育が、どうにかミズキリによって仕込まれただけ。
つまりは、オユキと言う人間が思う以上に、周囲はオユキの振る舞いから気が付くものがあるのだと、そうした話を今こうして。
「向こうでも、読み取れることは多いと、そういう事なのでしょう」
「そのあたりは、貴女に着けられた相手にしっかりと習いなさいとしか言えませんわね」
つまりは、エステールによく習えと言う事であるらしい。
「さて、そのあたりは、やはり一度おいておきましょう。私たちの子供、第一子でもある、あの子」
「カルラさんと共同で動くのかと、そう考えていました。そのために、今回のように大きな隙とて作ったのですが」
「ただ、クレリー家の子女がそれに乗らなかったと。アルゼオ公爵家の子息が、口車に」
「そちらは、既に目を覚ました先代アルゼオ公爵が」
そう、フォンタナ公爵の人となりを知らず、アンツォフェルモ辺境伯ですっかりと止まっていた先代アルゼオ公爵が、今は随分と精力的にこちらで活動している。間違いなく、これまでの彼の選択によって不利益を被ってきた者達もいるだろう。そちらとの間で、今、どのような交渉を持っているのかは本人から多少話位は聞いているものだがなかなか愉快な状況ではあるらしい。レモを、ファルコを存分に連れまわし、これまでの交渉で彼がどれほどを為してきたのかを、容赦なく見せつけて。トモエとオユキにも、色々と魔物の素材魔石に限らず、種々の品を融通してほしいとそうしたことを言われてもいる。実際に、それらを使って間違いのない成果を上げるのだとわかっている以上は、やはりそちらにしても惜しみなく。
「ええ、どうやらその様子。それにしても、上手くあの子も誘導してくれているようですが」
「それは、さて」
一体、どのように。そうオユキが考えれば、実にはっきりと回答が返ってくる。
「どうにも、目を覚まさせる方向で、誘導しているようです」
「成程」
つまりは、今この場にいる者たち、その中で強硬であるのは既にオユキだけと言う事らしい。誰も彼もがほだされて、そこまでは考えない。間違いなく、オユキの負担を減らすためにと周囲が動いた結果と、それくらいはオユキにも分かる。未だに、オユキは考えるのだ。己が命を奪う事になった者たちがいる。その者たちは、こちらに来てから、何かもっと手が打てたのではないかと。トモエは、そのあたりは早々に割り切っている。割り切ってしまっている。かつてから変わらず、トモエの容赦のなさは、生前から持っていたあまりにも明確な苛烈がそこにある。そして、オユキはそれを持っていない。だからこそ、とにかく負荷がかかる。
「異邦の者達からしてみれば、随分と命が安い世界だと」
「いえ、歴史を振り返れば、そうでなくとも」
「では、貴女がいた場所と言うのは」
「平和を、多くの者たちがその価値も知らずに謳歌していましたとも」
それが悪い事などとは、やはりオユキは思わない。そして、そんな環境下だからこそ、眼についてしまう悲劇と言うのがあまりにも重たい。広く、方々を見ればどこにでもある、無い方が珍しい悲劇なのだとしても、起こった当人にとっては唯一の物なのだ。それを、散々に思い知って生きてきた。
「少なくとも、私はこのままあの子が儚くなる事を望みはしません」
「烙印がない、未だに機会があると」
「ええ。正直、次代にしても」
「公爵家から、養子にという方法はあるかと思いますが」
かつての世界でも、そんな事は当たり前にあったのだ。寧ろ王家が単独でその血脈を保つことのほうが、遥かに少なかったはずだと。オユキの認識としては、かつての世界での歴史でもそうであったのだから。
「オユキ」
「わかってはいます」
それを行う、あくまで最終手段として。
その覚悟は、間違いなく、目の前の人物は持っている。しかし、それだけでは不足すると踏んだからだろう。だからこそ、こうして保障を求めている。オユキが、積極的にその選択をしないのだと。過日の事は、あくまであまりにも無遠慮に振る舞った物への、名乗りもせずに、先ぶれも無く訪なった者への対応なのだと。
特に今回、いや、神国にいた頃から。
「ここまでの譲歩を頂いているわけです。ならば、やはり私も」
「それほどに、クレリー家、ですか。そちらが」
「これは異なことを」
「ですが、あくまで」
オユキにとっては、実に面倒な諸々を運んできたサクレタ公爵家、そちらと共同していた家だ。
「なくなってもらった方が、やはりあとくされが無いかと」
「烙印を持たぬのに、ですか」
「私の判断基準は、そればかりではありません。やはり、今後も道を阻むとそう考えれば」
如何に望まぬことであろうとも。
過去に、類似の事は散々にやってきたのだ。もはや、いまさら、己の手が汚れるからと、それを嫌うことなどオユキにはない。ここで残すことで、今後の問題にしかならないのだと、オユキの中では既にそちらに思考が傾いてしまっている。天秤は、既に。
「であれば、私からも」
「クレリー家の令嬢、こちらについては一度話す機会を持ちましょう。余人の眼を排して、この空間を使って」
正直なところを言えば、知られてしまえば色々とまずい事ではある。広く知られてしまえば、それができる功績を持っているのだと喧伝されてしまえば。それこそトモエとオユキに対して、この空間を望むものも増えていくだろう。
結局のところ、オユキが嫌がっているのはやはりトモエに降りかかるかもしれない将来のわずらわしさ。そればかり。
「全く、誰も彼も」
そう、誰も彼も。オユキが、こちらに残ろうと考えるのがお気に召さないらしい。
「本当に、この世界は」
かつて己が憧れた世界、それが随分と遠く感じてしまうものだと。そう、ただため息をついて。
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