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27章 雨乞いを
繰り返す
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「オユキさん、大丈夫ですか」
食事の席は、楽しくなるべきもの。会食の席は、仕事の話がどうしても付きまとう。オユキは、そんな事は既に理解していた。理解しているつもりであった。トモエがオユキの代わりに会話を進めてくれた、それは嬉しい。助かったというのも事実。以前に話した、オユキがやってみたい事。こちらで失われた神々を少しでも、それを行うための一つの布石。それを、オユキが無理にでも行うのだと言う事に、周囲は、思う所のある者たちもいるにはいたが、行われるものと納得させた事をただ嬉しく思えたのならばそれでよかった。
ミリアムの怒り、嘆き。それに触れてトモエのほうは、良くある話だと。過去にも、かつての世界の過去に、そのような惨劇はいくらでもあったと受け流している。だが、やはりオユキは。
「いいえ」
トモエでは流せるものが、オユキにとってはそうでは無い。
諦めようと、そう考えたのはつい最近の事。それでも。
「やはり、堪えます」
「そうでしょうとも」
オユキにとっては、砂をかむような痛苦を得る時間。先ごろ、カリンとヴィルヘルミナと過ごした楽しい会食とは全く異なる、ただ針の筵の上で時間が経つのを待つだけの時間。それを過ごした後は、こうしてトモエとの時間を。勿論、同席する相手には、タルヤとローレンツもいる。シェリアは生憎とこの時間を守るために扉の前に立ってもらっているのだが、それでもオユキがある程度気を許せる相手と机を囲んで。オユキの手が、特にそれを望んでの事ではないのだろうが、頑なに葡萄酒の入った器を握っているのが、トモエにとってもただ悲しい。
「話に、聞いたことはありましたが」
「ええ。ローレンツ卿が知らぬ、それは既に昼間の間に」
「事の経緯だけは、聞き及んではいたのですが」
ある程度、想像がつくことではあったのだ。どうにも、隣国の王妃だというのに立場が低い。同格としての扱いを、受けている様子がない。そこから、過去に遺恨があったのだろうと、それくらいは。今回の事にしてもそう。本来であれば、頼まれれば、次代をつないだ王太子妃の生国に対して送るのだと言えばもっと大々的なものになっても良いはずだ。それこそ、アルゼオ公爵領から、人を送って然るべき事なのだから。これまで、魔国から利益を得ていた公爵領。それが、何故今回はそうしないのか。前回、魔国へと送った人員の一部は、間違いなく残しているのだろうが、もっと大々的にとしなかった理由とは何か。考えれば、嫌でも分かる。
「オユキ様は、やはり想定が出来ていたようではありますが」
「ええ、前回こちらに来た時に。窮状と、そう繰り返し言っていますが」
「そうでしたな。現状ばかりではなく、食料ばかりではなく」
過去にしても、基本は変わらない。そもそも、遠距離で戦う者たち。それでどうにかなるのは限度がある。魔物と戦うからには、戦闘を行うのならば、離れて戦う者たちを守る人間と言うのが、必ず必要になる。それが避けられるようになったのは、避けることが出来るようになるのは本当にいつになるのやら。かつての世界では、致死性の兵器を持つ者たちにしてもはっきりとした前衛と後衛、そうした役割分担が存在していた。空想科学の中では、どうだったのだろうか。有名な映画では、何やら珍妙な棒を振っているとそうした話を聞いたことくらいはあったものだが。
「何故、軽視をしてしまったのでしょうか」
こぼれるオユキの言葉に、脈絡があまりにないそれに。ローレンツとタルヤは答えることが出来ない。ただ、そうでは無い者が、長らく連れ添って、オユキの言葉以上を組むことが出来る者が今は傍らにいる。
「軽視されるだけの事があったのでしょう。神国でも、それは変わらなかったでしょう」
「加護、その弊害と言う訳ですか」
「加えて、こちらでは知識と魔を関する以上は」
「そうした流れを加速させる」
それに十分な土壌が、こちらの国に存在している。
「魔国に、騎士はいないのでしょうね」
「トモエ卿」
それが、やはりトモエにとっては最も残念な事ではある。神国で出会った騎士たち。一部心得違いの物はいたのだが、壮年の者たちは確実に。まだまだ若さを遺す者たちにしても、まさに物語の中に出てくる騎士然としていたのだ。かつては、トモエにしてもそうした物語を読んでいた。子供たちに乞われて、有名どころの読み聞かせなども良く行っていた。その結果と言う訳でもないのだが、トモエにしても憧れと言うほど強い感情ではないのだが、それに近しい何かくらいは抱いたものだ。
現実の者たちは違う。それは調べて知っていた。侍にしても同様。
だからこそ、この世界に来て、イマノルやクララ。今目の前にいるローレンツにしても。本当に、素晴らしい、手本とするべき者たちに違いないと、そう思える相手に出会えたことを喜んで。
翻って、こちらの国はどうなのだろうか。カナリアが、魔術師として身を成したものが他国に出奔をした。先に来た時には、気骨がある素振りは確かに見せてくれた。
「オユキさん、先にこちらに来た時、そこで矜持を確かに持っていた方々が居ました」
「そういえば、そうでしたね」
オユキが、どうしても己の想定、目先の事に気を取られて忘れてしまう事。それを、トモエがどうにか思い出させて。目の前に新たに出てきたこと。そこから想定が出来てしまう、あまりにも分かりやすい悲劇。それだけではないのだと。オユキが信じたいと考えているもの、この世界には間違いなくよき人がいるのだと、トモエはそれに気が付き、喜んでいるのだと。
「こちらの方々、以前私の前に立ちはだかった魔術師の方々ですが」
「そういえば、その様な事もありましたな」
その時には、ローレンツにしても、タルヤにしても同行はしていなかった。アベルと彼に縁のある王太子妃に今はついている近衛。そうした者たちと共にこちらに来て。ニーナに関しては、今回の事でも名前が挙がったとは聞いているのだが、オユキがそちらは流石にと断ったこともある。その代わりに出張ってくる予定になっているのが、ユリア、王太子妃の近衛たちの統括を行う人物だというのが、あまりにも過剰に感じはする。それほどまでに、期待をされていると言う事なのだろう、今回こそはと。
「さて、少し、いい加減に切り替えましょう」
「オユキさん」
「トモエさんのおかげで、思い出せることもありました。こちらの者たちにしても、少しくらいは期待できるに違いないでしょう」
どうにも、言葉選びからオユキの評価は芳しくないなと、トモエとしてもそんな事を思いながら。オユキにしてみれば、知識を貴ぶというのなら、現状を得る前に対応して見せろとそう言いたいものだろう。そんな態度を隠しもしない。失敗など、いくらでもある。勘違いなど、人である以上は当然発生する。しかし、結果とそこに至るまでの過程を遺して分析をしない、そのような振る舞いが特にオユキには気にかかる。ならば、呼び出してとなるかどうかはわからないのだが、一度問いただしてみるのが良いのだろう。科学的な思考方法。それを間違いなく持ち込んだはずのかつての異邦人たち、その話がどのように伝わって、いま、どのように使われているのかも含めて。
「いえ、だからこそ、ですか」
「そうですね。こちらの方々は、やはりそれを良しとできなかったのでしょう」
そうしたことを考えていれば、オユキもようやく一つ思い当たるところが出てくる。
知識と魔を貴ぶからこそ、解決策として使うべきは武力では無いとそう考えたのだろう。そのために、実に多くの事を繰り返し、その結果としてしっかりと淀みをため続けたのだろう。多くの魔道具が生まれ、それから発生するのは淀みであり、魔物の糧になるものだ。溢れの周期にしても、間違いなく神国よりも早い。その時には、最大戦力として周囲を存分に薙ぎ払う魔術師たちの出番となり。さらなる淀みが、勿論解消するために溢れが起こるわけだから、それに比べれば少ないにはちがいないのだが。
「となると、純度を上げようと研鑽を積み上げていったわけですか」
かつての世界でもあった様に、いまさら捨てられぬ、他の生活には戻れないとして。
「はて、しかし、魔術文字がそのまま回路になると、そのようにカナリアさんから聞いた覚えが」
「どうなのでしょうね。カナリアさんとの会話にしても、何処までが正しかったのか」
「実例を交えて、そうでないものはやはり疑うべきですか」
そうして、オユキは手を伸ばし、口に運ぶ頻度が多かったからだろう。どこか目線は既に定まらず、トモエがこうしてオユキが興味があるだろう方向に施行を誘導すれば、もはや周囲の視線も気にならぬとばかりに思考に没頭する。そして、そのままあと十分もする頃には、舟をこぎ始める事だろう。やはり、現状のオユキの体調と言うのが良くないこともある。本当に、見た目通り、いやそれ以上に体力がない。同席している相手は、いよいよどうした会話の流れか分からぬと、そんな様子。
「ええ、明日から、またそのあたりを確かめていくのが良いのでしょうね」
「そう、ですね。いえ、カナリアさんに頼まねばならないことも」
「簪と、首飾り。そのどちらも確認いただきましょうか、まずは」
トモエとしては、オユキにあれこれと話しながらも、最も急ぐべきこととして考えているものをオユキに話す。言ってしまえば、ここまでの話の流れにしてもこれにつなげるためなのだから。魔国の魔術師たち、その研鑽を確認しようと思えば、オユキは間違いなくカナリアに話を聞くことになる。それを理解したうえで、トモエが話の組み立てを行った。オユキのほうでも、それが分かって本来であれば乗るのだろうが、今はどうにも気もそぞろであったため、それに気が付いたそぶりも無い。明日起きて、カナリアに話をするときにはトモエの気遣いに改めて感謝をすることには違いない。オユキが眠った後にでも、そのあたりの説明はこうして招いたローレンツとタルヤに行っておかねばならないだろう。ただ、今は。
「そういえば、お子様の名前は決まったのですか」
始まりの町にいた頃には、タルヤに尋ねてもまずはローレンツにとそう応えられていたものだ。
食事の席は、楽しくなるべきもの。会食の席は、仕事の話がどうしても付きまとう。オユキは、そんな事は既に理解していた。理解しているつもりであった。トモエがオユキの代わりに会話を進めてくれた、それは嬉しい。助かったというのも事実。以前に話した、オユキがやってみたい事。こちらで失われた神々を少しでも、それを行うための一つの布石。それを、オユキが無理にでも行うのだと言う事に、周囲は、思う所のある者たちもいるにはいたが、行われるものと納得させた事をただ嬉しく思えたのならばそれでよかった。
ミリアムの怒り、嘆き。それに触れてトモエのほうは、良くある話だと。過去にも、かつての世界の過去に、そのような惨劇はいくらでもあったと受け流している。だが、やはりオユキは。
「いいえ」
トモエでは流せるものが、オユキにとってはそうでは無い。
諦めようと、そう考えたのはつい最近の事。それでも。
「やはり、堪えます」
「そうでしょうとも」
オユキにとっては、砂をかむような痛苦を得る時間。先ごろ、カリンとヴィルヘルミナと過ごした楽しい会食とは全く異なる、ただ針の筵の上で時間が経つのを待つだけの時間。それを過ごした後は、こうしてトモエとの時間を。勿論、同席する相手には、タルヤとローレンツもいる。シェリアは生憎とこの時間を守るために扉の前に立ってもらっているのだが、それでもオユキがある程度気を許せる相手と机を囲んで。オユキの手が、特にそれを望んでの事ではないのだろうが、頑なに葡萄酒の入った器を握っているのが、トモエにとってもただ悲しい。
「話に、聞いたことはありましたが」
「ええ。ローレンツ卿が知らぬ、それは既に昼間の間に」
「事の経緯だけは、聞き及んではいたのですが」
ある程度、想像がつくことではあったのだ。どうにも、隣国の王妃だというのに立場が低い。同格としての扱いを、受けている様子がない。そこから、過去に遺恨があったのだろうと、それくらいは。今回の事にしてもそう。本来であれば、頼まれれば、次代をつないだ王太子妃の生国に対して送るのだと言えばもっと大々的なものになっても良いはずだ。それこそ、アルゼオ公爵領から、人を送って然るべき事なのだから。これまで、魔国から利益を得ていた公爵領。それが、何故今回はそうしないのか。前回、魔国へと送った人員の一部は、間違いなく残しているのだろうが、もっと大々的にとしなかった理由とは何か。考えれば、嫌でも分かる。
「オユキ様は、やはり想定が出来ていたようではありますが」
「ええ、前回こちらに来た時に。窮状と、そう繰り返し言っていますが」
「そうでしたな。現状ばかりではなく、食料ばかりではなく」
過去にしても、基本は変わらない。そもそも、遠距離で戦う者たち。それでどうにかなるのは限度がある。魔物と戦うからには、戦闘を行うのならば、離れて戦う者たちを守る人間と言うのが、必ず必要になる。それが避けられるようになったのは、避けることが出来るようになるのは本当にいつになるのやら。かつての世界では、致死性の兵器を持つ者たちにしてもはっきりとした前衛と後衛、そうした役割分担が存在していた。空想科学の中では、どうだったのだろうか。有名な映画では、何やら珍妙な棒を振っているとそうした話を聞いたことくらいはあったものだが。
「何故、軽視をしてしまったのでしょうか」
こぼれるオユキの言葉に、脈絡があまりにないそれに。ローレンツとタルヤは答えることが出来ない。ただ、そうでは無い者が、長らく連れ添って、オユキの言葉以上を組むことが出来る者が今は傍らにいる。
「軽視されるだけの事があったのでしょう。神国でも、それは変わらなかったでしょう」
「加護、その弊害と言う訳ですか」
「加えて、こちらでは知識と魔を関する以上は」
「そうした流れを加速させる」
それに十分な土壌が、こちらの国に存在している。
「魔国に、騎士はいないのでしょうね」
「トモエ卿」
それが、やはりトモエにとっては最も残念な事ではある。神国で出会った騎士たち。一部心得違いの物はいたのだが、壮年の者たちは確実に。まだまだ若さを遺す者たちにしても、まさに物語の中に出てくる騎士然としていたのだ。かつては、トモエにしてもそうした物語を読んでいた。子供たちに乞われて、有名どころの読み聞かせなども良く行っていた。その結果と言う訳でもないのだが、トモエにしても憧れと言うほど強い感情ではないのだが、それに近しい何かくらいは抱いたものだ。
現実の者たちは違う。それは調べて知っていた。侍にしても同様。
だからこそ、この世界に来て、イマノルやクララ。今目の前にいるローレンツにしても。本当に、素晴らしい、手本とするべき者たちに違いないと、そう思える相手に出会えたことを喜んで。
翻って、こちらの国はどうなのだろうか。カナリアが、魔術師として身を成したものが他国に出奔をした。先に来た時には、気骨がある素振りは確かに見せてくれた。
「オユキさん、先にこちらに来た時、そこで矜持を確かに持っていた方々が居ました」
「そういえば、そうでしたね」
オユキが、どうしても己の想定、目先の事に気を取られて忘れてしまう事。それを、トモエがどうにか思い出させて。目の前に新たに出てきたこと。そこから想定が出来てしまう、あまりにも分かりやすい悲劇。それだけではないのだと。オユキが信じたいと考えているもの、この世界には間違いなくよき人がいるのだと、トモエはそれに気が付き、喜んでいるのだと。
「こちらの方々、以前私の前に立ちはだかった魔術師の方々ですが」
「そういえば、その様な事もありましたな」
その時には、ローレンツにしても、タルヤにしても同行はしていなかった。アベルと彼に縁のある王太子妃に今はついている近衛。そうした者たちと共にこちらに来て。ニーナに関しては、今回の事でも名前が挙がったとは聞いているのだが、オユキがそちらは流石にと断ったこともある。その代わりに出張ってくる予定になっているのが、ユリア、王太子妃の近衛たちの統括を行う人物だというのが、あまりにも過剰に感じはする。それほどまでに、期待をされていると言う事なのだろう、今回こそはと。
「さて、少し、いい加減に切り替えましょう」
「オユキさん」
「トモエさんのおかげで、思い出せることもありました。こちらの者たちにしても、少しくらいは期待できるに違いないでしょう」
どうにも、言葉選びからオユキの評価は芳しくないなと、トモエとしてもそんな事を思いながら。オユキにしてみれば、知識を貴ぶというのなら、現状を得る前に対応して見せろとそう言いたいものだろう。そんな態度を隠しもしない。失敗など、いくらでもある。勘違いなど、人である以上は当然発生する。しかし、結果とそこに至るまでの過程を遺して分析をしない、そのような振る舞いが特にオユキには気にかかる。ならば、呼び出してとなるかどうかはわからないのだが、一度問いただしてみるのが良いのだろう。科学的な思考方法。それを間違いなく持ち込んだはずのかつての異邦人たち、その話がどのように伝わって、いま、どのように使われているのかも含めて。
「いえ、だからこそ、ですか」
「そうですね。こちらの方々は、やはりそれを良しとできなかったのでしょう」
そうしたことを考えていれば、オユキもようやく一つ思い当たるところが出てくる。
知識と魔を貴ぶからこそ、解決策として使うべきは武力では無いとそう考えたのだろう。そのために、実に多くの事を繰り返し、その結果としてしっかりと淀みをため続けたのだろう。多くの魔道具が生まれ、それから発生するのは淀みであり、魔物の糧になるものだ。溢れの周期にしても、間違いなく神国よりも早い。その時には、最大戦力として周囲を存分に薙ぎ払う魔術師たちの出番となり。さらなる淀みが、勿論解消するために溢れが起こるわけだから、それに比べれば少ないにはちがいないのだが。
「となると、純度を上げようと研鑽を積み上げていったわけですか」
かつての世界でもあった様に、いまさら捨てられぬ、他の生活には戻れないとして。
「はて、しかし、魔術文字がそのまま回路になると、そのようにカナリアさんから聞いた覚えが」
「どうなのでしょうね。カナリアさんとの会話にしても、何処までが正しかったのか」
「実例を交えて、そうでないものはやはり疑うべきですか」
そうして、オユキは手を伸ばし、口に運ぶ頻度が多かったからだろう。どこか目線は既に定まらず、トモエがこうしてオユキが興味があるだろう方向に施行を誘導すれば、もはや周囲の視線も気にならぬとばかりに思考に没頭する。そして、そのままあと十分もする頃には、舟をこぎ始める事だろう。やはり、現状のオユキの体調と言うのが良くないこともある。本当に、見た目通り、いやそれ以上に体力がない。同席している相手は、いよいよどうした会話の流れか分からぬと、そんな様子。
「ええ、明日から、またそのあたりを確かめていくのが良いのでしょうね」
「そう、ですね。いえ、カナリアさんに頼まねばならないことも」
「簪と、首飾り。そのどちらも確認いただきましょうか、まずは」
トモエとしては、オユキにあれこれと話しながらも、最も急ぐべきこととして考えているものをオユキに話す。言ってしまえば、ここまでの話の流れにしてもこれにつなげるためなのだから。魔国の魔術師たち、その研鑽を確認しようと思えば、オユキは間違いなくカナリアに話を聞くことになる。それを理解したうえで、トモエが話の組み立てを行った。オユキのほうでも、それが分かって本来であれば乗るのだろうが、今はどうにも気もそぞろであったため、それに気が付いたそぶりも無い。明日起きて、カナリアに話をするときにはトモエの気遣いに改めて感謝をすることには違いない。オユキが眠った後にでも、そのあたりの説明はこうして招いたローレンツとタルヤに行っておかねばならないだろう。ただ、今は。
「そういえば、お子様の名前は決まったのですか」
始まりの町にいた頃には、タルヤに尋ねてもまずはローレンツにとそう応えられていたものだ。
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