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25章 次に備えて
揃って机に向かい
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「オユキ、貴方まさかとは思っていたのだけれど」
「あの、オユキさん、それはあまりにも」
オユキとしては、手習いとして渡されたいくつかの物。トモエは、明らかに少々難易度の高い方法で緩やかな曲線を縫取っていたため、それ以外。ひとまずの目標としてある雪の結晶、その縫い取りを手早く片付けて見せたところ、せっかくだからと同席している異邦人たちから随分と不評を得た。
一応は、直線を主体として、ナザレアは今もまだ本番で使うための布を隣で選んでいるためオユキの様子を見ることはできず、一針縫っては半分ほど戻して、そこから少し続けてと。そのようなことを繰り返して。なかなかうまくいかない部分として、どうにも定められた図案、それを縫取ろうとしたときにオユキの定めた間隔、最初にこの程度かと判断したものと最後が著しくずれているあたり、オユキとしてもどうかとは思うのだが。どうにも、それ以上に周囲には不評な様子。
「その、私としても確かにこう、最後のほうの不揃いは気になるのですが」
「いえ、それもそうなのですけど、基本の縫い取りばかりでは」
「ええ、表現としても今回は雪の結晶なのでしょう、ならばもう少し柔らかさを表現するか、固さを表現するにしてもやりようがあるものでしょうに」
「とは申されましても」
さて、そうして指摘されてみたところで、何をもってしてそのように言われているのかとんと分からぬとオユキは首をかしげるばかり。参考として昨日渡されたものを隣に並べ、ナザレアがしっかりと用意した木枠に張られた布に、さっそくとばかりに己が刺繍をしたものと比べてはみるのだが。
「確かに、少々精度に劣ってはいるかと思いますが」
カリンとヴィルヘルミナが口をそろえて言う言葉が、どうにも分からぬオユキとしては改めてまじまじと見てはみるのだが。
「そうですね、こちらはオユキがこれと思う図案を、急ぎで縫取ったものなのでしょう」
「よくお分かりですね」
「それは、わかりますわよ。縫い目には随分と熟練が感じられるんですもの。こうして、慣れぬ図案であるというにもかかわらず、こうして均等に」
示される縫い目は、確かにオユキが縫取った少々不揃いな、端の部分だけでなくそこまでに至るまでも所々長さが変わってしまっているようなものとは違う。均一に並ぶ縫い目、刺繍として裏面を見なければまさにこうした図がそのままに布に描かれているのだとそう思わせるような。やはり刺繍らしい立体感といえばいいのだろうか、基本の、オユキに渡すための物としてあくまで基本の縫い方でしかないというのにそこまでを見事になしている。
「こちらは、誰の手によるものでしょうか。叶うなら、私の衣装にもいくつか頼みたいわ」
軽く指でなぞって、ヴィルヘルミナがほうと息をつきながらそのようなことをいうものだが。
「王妃様の手によるものですので、頼めるかと言われれば」
「あら、それは残念ですね。では、こちらで刺繍が得意なものを改めて探してみましょうか」
「それこそ、オユキに頼んで商人ギルドの者たちをまた呼んで貰えば良いのではないかしら。さすがにミーナがそのままふらりと出かけてと、それをやると面倒も多いでしょう」
「私の歌を求めてくださる方が多いのは、ええ、嬉しくはあるのですが」
「何か、不都合がありましたか」
カリンが訳知り顔でオユキに頼めばというものだが、さすがに早々頻繁に商人たちを呼び出す気はオユキにもない。一応はトモエが持ち帰るだろう貴石、鉱石の類を処理するためにまた呼び出す気でいることは確かではあるのだが。
「不都合、というほどではないのだけれど。こちらでも、ほら、私は私としてあるでしょう」
「そういえば、あまりお話を伺ってはいませんでしたが」
要は、以前に王都に来た時に、そして今回もあちらこちらで歌声を披露して回っているということらしい。さすがに、始まりの町とは違い、今度ばかりはファンタズマ子爵家あてに公演の依頼などは届いていないのだが。
「特に、そうした話を当家は受けていませんよね」
ひどく簡略化された図案、雪の結晶の縫い取りを初めて既に一時間は経ってしまっている。これでは、オユキの求める中央に少し派手なものを据えて、その周囲を彩るようなものというのは、さてどれだけがかかるのかと。
「いえ、そのあたりはカレンが差配を行っています」
「なるほど、それで私の元までは話が来ていないわけですか」
「ごめんなさいね、私としても気が進まないのだけれど」
「いえ、以前にも庇護を行うとそう約束はしていますから。今もこうして、いろいろとお付き合いいただいていますし」
そして、オユキが終わってからしばらく。今度はこうして並んで一つの机を囲んで、お茶を楽しみながらも裁縫に勤しんでいる二人もそれぞれに一区切りとばかりに出来上がったものをオユキに見えるようにしながら。
「ありがたい限りです。正直、生前も本当にいろいろな人に頼んでやっとと言う所でしたもの」
「世界に名を馳せた歌姫である以上、それはそうなるものでしょうとも。カリンさんも、同じような煩雑はあったかと思いますが」
「私のほうは、そのあたりは弟子たちが引き取ってくれていましたね。やはり、舞とは言え武に身を捧げた者である以上は、世の煩雑に係わってばかりは」
それぞれに刺しゅうを施したひとひらの布。オユキは生憎と木枠からいかに外すかもよく分からぬのだが、それが当然とばかりに外した上でオユキのほうへ。要は、完成したらこのようにして外すのだとそれを示して見せて。それを見ながらオユキもどうにかねじを緩めて、二つ重なる木枠をずらして布を取り出す。そうして、オユキ自身が縫い上げたものをカリンとヴィルヘルミナが縫い上げたものと並べて見比べてはみるのだが、どうにも。
「武に傾倒してというのもかまいはしないと思いますけど、カリン、貴女も舞を主体としているのでしょう」
「それは、そうなのですがやはり体を動かすとなれば、そのためにも日々行わなければならないことが」
「そういえば、確か、東のほうで有名な踊り子がいると、そんな話を聞いた覚えもあるのだけど」
「それが私かは、生憎と」
踊りという意味では、有名なものというのはやはりそれなりに多く。カリンにしても、ゲームの中では対人において名を馳せていたのだがそれに関してはヴィルヘルミナの知るところではなかったということなのだろう。闘技場にも足を運んで、そこで観戦を楽しんだりは下には違いないのだろうが、それでもそこにいる者たちを個別に認識してとそうするほどでは無かったのだと、何ともまたわかりやすい。
「そういえば、オユキ、貴女は生前どういった者だったのかしら」
「興味はあれど、聞いていませんでしたね、思い返してみれば」
「まぁ、もとよりマナーとしてそういった部分はありましたから」
思い返してみれば、確かにこれまで出会った異邦人たちはオユキの知人ばかり。アルノーもミズキリがどういった由来の相手かは知っていたようであり、その知人であるというオユキのことも成程そうした知り合いかとばかりに。
「そうですね、では、次の刺繍を行う間にでも少しの昔語りを」
ただ、その前に、オユキとしてもこの難題に関してぶつけたい疑問が存在しているのだ。甚だ分からぬ、昔からげいじゅと呼ばれるものに関しては本当に分からぬことばかりだと。
「正直、機能として大差ないように思うのですが」
確かに、カリンの物も、ヴィルヘルミナの物も。オユキが行ったものに比べて手間がかかっているというのはわかる。細かい部分で完成度が、針の幅が均等に近いとそれはわかるのだがやはりそれ以上はわからない。
「機能ではなく、美意識の問題ですわ」
「オユキ、機能美という言葉もあるでしょう」
「刺繍における機能というのは、凡そ布の強度を上げる程度だったように思いますが」
そんなオユキの言葉に、何やら著しく衝撃を受けたのか、ナザレアが手に持っていた次の布を取り落とす。シェリアは、まぁそのようなものかと一応の納得はするのだろうが、こうして習おうとまで言い出した相手が、まさかとそう考えてのことではあるのだろう。今、同席している二人にしても、何故それだけのためにとそんな視線。
「その、私の現状ですね、それを改善するための手立てをいただくにあたって、供え物をと」
そして、このあたりの共有もまだだったかとオユキがかいつまんで話をすれば。
「それこそ、オユキであれば買い上げるほうが早いのではなくて」
「己の身の為にというのであれば、浪費ではなく必要な経費とそう考えるものでは」
「ええ、そうは考えますし、これで供え物を求められてというわけでもなければ。いえ、勿論いくらかは買い求めますが」
そう、すでにそのあたりは、カレンに人足の手配をどうしたのかを訪ねるとともに頼んである。まもなく、というほどでもないが、明日にもまた御用聞きにこの屋敷に商人たちが訪れることだろう。今度は、トモエとオユキの不興を買わぬ様にと気を払って。
「であるならば、よいのですが」
「そうですね、その際、私が同席しても宜しくて」
「ご希望とあれば、構いませんとも。と、言いますかお二方も、必要とあれば呼んでいただいてもかまいませんよ」
オユキが、そのあたりは気にすることも遠慮することもないのだとそう話をしてみるのだが。
「いえ、私たちがそれをしてしまうと、いらぬことを引き起こすでしょう」
「そうした心得違いを行う相手に関しては、どうでしょうか」
さすがに、もうこちらに来ないのではないのか、そうオユキは考えているのだが。確かに、この二人が呼びつけて、そこで何某かの品を求めてとした場合には、それをファンタズマ子爵家との取引実績とそう喧伝する可能性もないではない。寧ろ、ここぞとばかりにしそうな気もするのだ。それもあって、始まりの町や領都では買い物を楽しんでいた二人にしてもこちらではそれをしていないのだろう。
「そうですね、ただ不便を、不自由を感じてほしいわけではありませんから、必要とあれば事前に話だけをしていただければ。」
「ええ、ならばそのように」
「その時には、トモエさんやオユキを誘ったりと」
「いえ、その必要は正直そこまでは」
「あの、オユキさん、それはあまりにも」
オユキとしては、手習いとして渡されたいくつかの物。トモエは、明らかに少々難易度の高い方法で緩やかな曲線を縫取っていたため、それ以外。ひとまずの目標としてある雪の結晶、その縫い取りを手早く片付けて見せたところ、せっかくだからと同席している異邦人たちから随分と不評を得た。
一応は、直線を主体として、ナザレアは今もまだ本番で使うための布を隣で選んでいるためオユキの様子を見ることはできず、一針縫っては半分ほど戻して、そこから少し続けてと。そのようなことを繰り返して。なかなかうまくいかない部分として、どうにも定められた図案、それを縫取ろうとしたときにオユキの定めた間隔、最初にこの程度かと判断したものと最後が著しくずれているあたり、オユキとしてもどうかとは思うのだが。どうにも、それ以上に周囲には不評な様子。
「その、私としても確かにこう、最後のほうの不揃いは気になるのですが」
「いえ、それもそうなのですけど、基本の縫い取りばかりでは」
「ええ、表現としても今回は雪の結晶なのでしょう、ならばもう少し柔らかさを表現するか、固さを表現するにしてもやりようがあるものでしょうに」
「とは申されましても」
さて、そうして指摘されてみたところで、何をもってしてそのように言われているのかとんと分からぬとオユキは首をかしげるばかり。参考として昨日渡されたものを隣に並べ、ナザレアがしっかりと用意した木枠に張られた布に、さっそくとばかりに己が刺繍をしたものと比べてはみるのだが。
「確かに、少々精度に劣ってはいるかと思いますが」
カリンとヴィルヘルミナが口をそろえて言う言葉が、どうにも分からぬオユキとしては改めてまじまじと見てはみるのだが。
「そうですね、こちらはオユキがこれと思う図案を、急ぎで縫取ったものなのでしょう」
「よくお分かりですね」
「それは、わかりますわよ。縫い目には随分と熟練が感じられるんですもの。こうして、慣れぬ図案であるというにもかかわらず、こうして均等に」
示される縫い目は、確かにオユキが縫取った少々不揃いな、端の部分だけでなくそこまでに至るまでも所々長さが変わってしまっているようなものとは違う。均一に並ぶ縫い目、刺繍として裏面を見なければまさにこうした図がそのままに布に描かれているのだとそう思わせるような。やはり刺繍らしい立体感といえばいいのだろうか、基本の、オユキに渡すための物としてあくまで基本の縫い方でしかないというのにそこまでを見事になしている。
「こちらは、誰の手によるものでしょうか。叶うなら、私の衣装にもいくつか頼みたいわ」
軽く指でなぞって、ヴィルヘルミナがほうと息をつきながらそのようなことをいうものだが。
「王妃様の手によるものですので、頼めるかと言われれば」
「あら、それは残念ですね。では、こちらで刺繍が得意なものを改めて探してみましょうか」
「それこそ、オユキに頼んで商人ギルドの者たちをまた呼んで貰えば良いのではないかしら。さすがにミーナがそのままふらりと出かけてと、それをやると面倒も多いでしょう」
「私の歌を求めてくださる方が多いのは、ええ、嬉しくはあるのですが」
「何か、不都合がありましたか」
カリンが訳知り顔でオユキに頼めばというものだが、さすがに早々頻繁に商人たちを呼び出す気はオユキにもない。一応はトモエが持ち帰るだろう貴石、鉱石の類を処理するためにまた呼び出す気でいることは確かではあるのだが。
「不都合、というほどではないのだけれど。こちらでも、ほら、私は私としてあるでしょう」
「そういえば、あまりお話を伺ってはいませんでしたが」
要は、以前に王都に来た時に、そして今回もあちらこちらで歌声を披露して回っているということらしい。さすがに、始まりの町とは違い、今度ばかりはファンタズマ子爵家あてに公演の依頼などは届いていないのだが。
「特に、そうした話を当家は受けていませんよね」
ひどく簡略化された図案、雪の結晶の縫い取りを初めて既に一時間は経ってしまっている。これでは、オユキの求める中央に少し派手なものを据えて、その周囲を彩るようなものというのは、さてどれだけがかかるのかと。
「いえ、そのあたりはカレンが差配を行っています」
「なるほど、それで私の元までは話が来ていないわけですか」
「ごめんなさいね、私としても気が進まないのだけれど」
「いえ、以前にも庇護を行うとそう約束はしていますから。今もこうして、いろいろとお付き合いいただいていますし」
そして、オユキが終わってからしばらく。今度はこうして並んで一つの机を囲んで、お茶を楽しみながらも裁縫に勤しんでいる二人もそれぞれに一区切りとばかりに出来上がったものをオユキに見えるようにしながら。
「ありがたい限りです。正直、生前も本当にいろいろな人に頼んでやっとと言う所でしたもの」
「世界に名を馳せた歌姫である以上、それはそうなるものでしょうとも。カリンさんも、同じような煩雑はあったかと思いますが」
「私のほうは、そのあたりは弟子たちが引き取ってくれていましたね。やはり、舞とは言え武に身を捧げた者である以上は、世の煩雑に係わってばかりは」
それぞれに刺しゅうを施したひとひらの布。オユキは生憎と木枠からいかに外すかもよく分からぬのだが、それが当然とばかりに外した上でオユキのほうへ。要は、完成したらこのようにして外すのだとそれを示して見せて。それを見ながらオユキもどうにかねじを緩めて、二つ重なる木枠をずらして布を取り出す。そうして、オユキ自身が縫い上げたものをカリンとヴィルヘルミナが縫い上げたものと並べて見比べてはみるのだが、どうにも。
「武に傾倒してというのもかまいはしないと思いますけど、カリン、貴女も舞を主体としているのでしょう」
「それは、そうなのですがやはり体を動かすとなれば、そのためにも日々行わなければならないことが」
「そういえば、確か、東のほうで有名な踊り子がいると、そんな話を聞いた覚えもあるのだけど」
「それが私かは、生憎と」
踊りという意味では、有名なものというのはやはりそれなりに多く。カリンにしても、ゲームの中では対人において名を馳せていたのだがそれに関してはヴィルヘルミナの知るところではなかったということなのだろう。闘技場にも足を運んで、そこで観戦を楽しんだりは下には違いないのだろうが、それでもそこにいる者たちを個別に認識してとそうするほどでは無かったのだと、何ともまたわかりやすい。
「そういえば、オユキ、貴女は生前どういった者だったのかしら」
「興味はあれど、聞いていませんでしたね、思い返してみれば」
「まぁ、もとよりマナーとしてそういった部分はありましたから」
思い返してみれば、確かにこれまで出会った異邦人たちはオユキの知人ばかり。アルノーもミズキリがどういった由来の相手かは知っていたようであり、その知人であるというオユキのことも成程そうした知り合いかとばかりに。
「そうですね、では、次の刺繍を行う間にでも少しの昔語りを」
ただ、その前に、オユキとしてもこの難題に関してぶつけたい疑問が存在しているのだ。甚だ分からぬ、昔からげいじゅと呼ばれるものに関しては本当に分からぬことばかりだと。
「正直、機能として大差ないように思うのですが」
確かに、カリンの物も、ヴィルヘルミナの物も。オユキが行ったものに比べて手間がかかっているというのはわかる。細かい部分で完成度が、針の幅が均等に近いとそれはわかるのだがやはりそれ以上はわからない。
「機能ではなく、美意識の問題ですわ」
「オユキ、機能美という言葉もあるでしょう」
「刺繍における機能というのは、凡そ布の強度を上げる程度だったように思いますが」
そんなオユキの言葉に、何やら著しく衝撃を受けたのか、ナザレアが手に持っていた次の布を取り落とす。シェリアは、まぁそのようなものかと一応の納得はするのだろうが、こうして習おうとまで言い出した相手が、まさかとそう考えてのことではあるのだろう。今、同席している二人にしても、何故それだけのためにとそんな視線。
「その、私の現状ですね、それを改善するための手立てをいただくにあたって、供え物をと」
そして、このあたりの共有もまだだったかとオユキがかいつまんで話をすれば。
「それこそ、オユキであれば買い上げるほうが早いのではなくて」
「己の身の為にというのであれば、浪費ではなく必要な経費とそう考えるものでは」
「ええ、そうは考えますし、これで供え物を求められてというわけでもなければ。いえ、勿論いくらかは買い求めますが」
そう、すでにそのあたりは、カレンに人足の手配をどうしたのかを訪ねるとともに頼んである。まもなく、というほどでもないが、明日にもまた御用聞きにこの屋敷に商人たちが訪れることだろう。今度は、トモエとオユキの不興を買わぬ様にと気を払って。
「であるならば、よいのですが」
「そうですね、その際、私が同席しても宜しくて」
「ご希望とあれば、構いませんとも。と、言いますかお二方も、必要とあれば呼んでいただいてもかまいませんよ」
オユキが、そのあたりは気にすることも遠慮することもないのだとそう話をしてみるのだが。
「いえ、私たちがそれをしてしまうと、いらぬことを引き起こすでしょう」
「そうした心得違いを行う相手に関しては、どうでしょうか」
さすがに、もうこちらに来ないのではないのか、そうオユキは考えているのだが。確かに、この二人が呼びつけて、そこで何某かの品を求めてとした場合には、それをファンタズマ子爵家との取引実績とそう喧伝する可能性もないではない。寧ろ、ここぞとばかりにしそうな気もするのだ。それもあって、始まりの町や領都では買い物を楽しんでいた二人にしてもこちらではそれをしていないのだろう。
「そうですね、ただ不便を、不自由を感じてほしいわけではありませんから、必要とあれば事前に話だけをしていただければ。」
「ええ、ならばそのように」
「その時には、トモエさんやオユキを誘ったりと」
「いえ、その必要は正直そこまでは」
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