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25章 次に備えて
雪と雷
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春の訪れを告げる常套句。
雷で有名な物はそれだろうか。
しかし、冬の雷というものもあり、かつての季節の呼び名に準えれば、こちらも間違いなく春の訪れを謳うものになる。厳しい冬に、高く、遠く光る雷が。冬の澄んだ空気に、重くのしかかるような雲間に閃く、一筋の雷が。
「本当に、ようやくですね」
「ああ。よもやこうして選択の前に機があるとは思わなかったのだがな」
聞こえる声に、圧倒的な存在感に。後僅かの時間があれば、決定的な言葉を口にしたはずのオユキが、それを制するかのように現れた相手に。オユキは助けられたと。トモエは邪魔をするなと。話し合いをしなければならない状況を抱えている二人として、対極に立つ二人の考えというのは、やはりここでもはっきりと異なる。
夫婦の話し合い、そうなるはずの時間であったというのに無粋な乱入者たちが。
「考えている事は、分かります」
「そうだな。改めて機会を、この後与えよう。必要とあらば、其の方らの考えを我らがそれぞれに口にしようとも」
容赦なく、それが当然可能だからと。
一柱は、黒曜石もかくやと言う程に夜闇を写し取ったかのような長い黒髪。何処までも冷たさを感じさせる、氷雪の如き青い瞳。抜ける様に白い肌を、これもまた長くひらりとした簡素な長衣で覆った相手。
対するは、冷厳さを容赦なく感じさせる彫の浅い、東洋の人物だと一目でわかる相手。黒髪に、金に輝く怪しい瞳。隣に並ぶ少女と見紛う如き相手と比べれば上背があるとはいえそれでもトモエよりも低い。しかし、身を包む服では隠しきれないほどに発達した筋肉が。
「自己紹介は、必要ないのでしょうね」
「ああ。想像は付いているようだ。そして、その想像も正鵠を得ている」
一柱は、まるでオユキがもう少し成長すればこうなるのだと言わんばかりの冬と眠り。
他方は、義父に随分と容貌が似ている雷と輝き。
「この姿は仮のものでしかないの」
「我らはどうした所で、随分と遠い。人の想念によらずに形を作るには、まだ暫くかかる」
あくまで仮の姿だと、二柱が語る。
姿は間に合わずとも、世界を作る力はあるというのだろうか。随分と幻想的な、降りしきる雪が輝く世界。宵闇と輝く雪だけが作る世界に、今は雷と稲光が彩を添え、遠い雷鳴が鼓動に合わせるように響く。
「心配しなくてもいいのよ」
「その方らにかかる負担は、一応無い。その方らで分かる範囲ではな」
トモエの思考を奪い始めた問題、それが今は無いのだと語る二柱。不思議と、それが事実だと分かる。以前は、此処まででは無い状態で、トモエがオユキの喉を容赦なく貫いた時に呼ばわれた時には、実にわかりやすくオユキは不調を覚えていた。支えるトモエに、体重をしっかりと預けるほどに。しかし、今は寝台で寝ているままではあるのだが、上体を今も自分の力で起こしている。先ほどまで、互いに話す時に向き合っていたように。
「ならば、良いのですが」
「案ずるな、そう言ったところで目を覚まさねば、あちらに戻らねば分からぬものではあるだろうからな」
雷を名に関する神の言葉に、トモエもオユキも首をかしげる。その言葉が真実であれば、此処はつまりは。
「私がいるのよ。そちらばかりでは無く私の世界よ此処は」
「御身の世界、ですか」
「眠りを司る私だもの、それが暮らす世界はつまり」
恐らく、この神の下にそれそのものを司る神もいるには違いない。夢を司る神、己での将来を意味するものでは無く、先に思い描くものでは無く、ただ眠るときに見るそれを。
「だから、此処は泡沫の世界。私が現れれば、私の」
「そして、そうした世界だからこそ、刹那の輝きである我もこうして」
先ほどまで、確かに話していたと感じているトモエとオユキにしてみれば、いきなり夢の世界と言われても早々納得が出来るものではない。突然眠りに落ちたとなれば、シェリアあたりに随分と心配をかけていそうなものだと。
「心配しないで。あの屋敷、いいえ、今回は王都全体」
「この者の姉の計らいもあってな」
つまりは月と安息までもが力を振るって、容赦なく王都全体を眠りの内に落としたという事であるらしい。それはそれで、随分と問題が起こりそうな話でもあるのだが。
「まぁ、そればかりは私たちのあずかり知る所では無いのよ」
「申し訳なくは思うのだが、こうして得難い機会と言うのも訪れたのだからな」
どう言えばいいのか。何やら、また随分と大事を引き起こすことになった物だと。オユキとしては、こういった上位者の振る舞いについては半ばあきらめていたものだが、此処までかと。
「勘違いがあるようなのだけれど、流石に道端に、移動をしている者たちまでも変わりなく、そこまではしないわ」
オユキの懸念については、否定されたようでまずは何より。
「目を覚ます時には、それこそ平素の通りであろう。皆、己が普段眠る場所へと移してある」
それを行ったのが、安息を司る彼の柱と言う事なのだろう。姉妹神と、アナが確かにそう評するだけあって、髪の色はよく似ている。寧ろ、あの神の妹だと言われても確かに納得ができる。しかし、蠱惑的な、怪し気に輝く瞳の色は引き継がず。今こうして冬と眠りと並んで立つ、雷と輝きこそが湛えている。
この二人を程よく欠け合わせれば、上手く引き継いで生まれる子は、確かに月と安息によく似るだろう。
「目が覚めた時には、ええ、皆さんまたかと思って頂けるでしょう」
「また、ですか」
「よくあるのよ。あなたが心配するよりも」
それがどういった時に行われているのか、それに流石に思い当たる所は無いのだが。言われれば、そういうものかと納得が出来る範囲ではある。本当に、この世界と言うのはかつての仕組みによく似ている。ゲームとしての仕組みに。複雑怪奇な世界という訳ではない、いや、確かに一面としてはそういったものなのだろうが、単に、仕組みとして存在していた物をそのまま流用しているらしい。
今の言葉にしても、強制ログアウト、メンテナンス時に行い全ての配置を元に、セーブが出来る位置にまで戻すというそうした仕組みを流用しての事なのだろう。本当に、何処までも過去に存在した仕組みに縛られているらしい。この世界では、神と言うのは、まさにそうした仕組みそのもので、現状それから逸脱する振る舞いの一切を許されないという事なのだろう。
では、神が名を持つ由縁と言うのは。
「流石に、私達はそこまで権限が狭い存在では無いわ」
「一部、そうした者らもいるには居るが、神としてこの世界を支えるというよりも、もう少し人に寄り添った存在と言えばいいのか。」
「否定をされているようで、されていない、と言う事は」
つまり、オユキの思い付き。要は、プログラムとして、そこに存在した関数がそれぞれに神格を持った存在ではないか。常々考えていた事でもあり、これまでであればしっかりと封じられた思考が。
「そうした存在もいる。マナとは言ってしまえば、其の方らの意思と、そうした機能としての存在を繋ぐための物だ」
「付け加えるのであれば、魔術と言う仕組み自体がかつてあった機能をそのまま流用しているのよ」
魔術文字が、何やら随分と複雑なつくりをしているのはつまりはそこに構成されている論理が存在しており、組み合わせる事で回路として成立するのだとそう言う話ではあるのだろう。
「そう、話が逸れているわね」
「呼んだのは、他でもない」
既に此処に至った経緯と言うのがオユキの頭から抜け始めている、それを危惧したのかトモエの焦りが伝わっているからか。二柱の神が、話しの軌道修正を図る。
「やっと、こうして直接会う機会ができたんだもの」
「一度くらいは、顔を合わせておきたいとそう考えてもいたからな」
オユキの方は、トモエよりもいくらか早く。こちらで暮らす者達に比べれば、神から魔術文字と言う形で直接与えられてはいたのだが、随分と早く。それこそ、神にも届くほどの。オユキの手には、明らかに余るほどの。
「オユキ、貴女が扱うのは魔術と似て、非なる物よ」
「トモエ、其の方も気が付いているのだろうが、与えたのは魔術では無く奇跡となる」
オユキが使うものは、魔術でも無く、奇跡でもない物。
トモエが使うものは、神の名のもとに与えられた奇跡。
「トモエさんは、そうですね。隣国の王妃様も魔術とはまた違うと、そのように評されていました」
「オユキさんの物は、カナリアさんから魔術文字がとそうした話でしたが」
言われた言葉に、トモエが振るう物に関してはオユキも思い当たるところがある。寧ろ、神の言葉で先に聞いた言葉、その正体がどうした由来化が分かったというものだ。だが、オユキが振るうものに関しては、いよいよ不明なものだと。
「それは、あの翼人種が勘違いしているのよ。私は冬と眠り。与える奇跡の形は、外に向ける物と内面に向ける物」
「冬眠、それを象徴する力、ですか。であれば、奇跡と呼んでも良いものかと」
「仕組みがまた違うのよ。与えるばかりでは無く、己の内に貯める事も出来るの」
「つまりは、種としての特性ですか」
故に、根源に連なると、そう評される物であるらしい。
「一先ずは、今はそれで理解の限界でしょう」
「話しすぎだ。ここは確かにお前の世界だろうが、他の眼が無いわけでは無い」
「良いのよ。本当に、この子はよくやってくれているもの。姉さまは遠すぎるから、あまり加護をと出来ない物だし、伯父様もあちらは特別にと出来ない制約があるんだから」
「言い分は分かるがな。私にしても、こうして機会に便乗をしたわけでもある」
言葉の端々から、こちらに何を伝えたいのか、そうした物の推察と言うのも出来る。つまり、この世界で現状特に力を持つ神、そうした存在は特定の相手をと出来ない物であるらしい。役職などを確かに与えられて入るのだが、どちらかと言えばいよいよこの世界に対する目印のような物と言えばいいのか。勿論、加護では無く、物質として、功績として多く与えられる事はあるのだが、それにしても常に持ち歩き使う様な物ではない。
「ええ、考えている事は遠くは無いわ」
「要は、私達に連なる其の方らに、機会を見て何かをとそう考えていたわけでもある。」
「後は、オユキ、貴女の考えている事の一助と言えばいいのかしら」
雷で有名な物はそれだろうか。
しかし、冬の雷というものもあり、かつての季節の呼び名に準えれば、こちらも間違いなく春の訪れを謳うものになる。厳しい冬に、高く、遠く光る雷が。冬の澄んだ空気に、重くのしかかるような雲間に閃く、一筋の雷が。
「本当に、ようやくですね」
「ああ。よもやこうして選択の前に機があるとは思わなかったのだがな」
聞こえる声に、圧倒的な存在感に。後僅かの時間があれば、決定的な言葉を口にしたはずのオユキが、それを制するかのように現れた相手に。オユキは助けられたと。トモエは邪魔をするなと。話し合いをしなければならない状況を抱えている二人として、対極に立つ二人の考えというのは、やはりここでもはっきりと異なる。
夫婦の話し合い、そうなるはずの時間であったというのに無粋な乱入者たちが。
「考えている事は、分かります」
「そうだな。改めて機会を、この後与えよう。必要とあらば、其の方らの考えを我らがそれぞれに口にしようとも」
容赦なく、それが当然可能だからと。
一柱は、黒曜石もかくやと言う程に夜闇を写し取ったかのような長い黒髪。何処までも冷たさを感じさせる、氷雪の如き青い瞳。抜ける様に白い肌を、これもまた長くひらりとした簡素な長衣で覆った相手。
対するは、冷厳さを容赦なく感じさせる彫の浅い、東洋の人物だと一目でわかる相手。黒髪に、金に輝く怪しい瞳。隣に並ぶ少女と見紛う如き相手と比べれば上背があるとはいえそれでもトモエよりも低い。しかし、身を包む服では隠しきれないほどに発達した筋肉が。
「自己紹介は、必要ないのでしょうね」
「ああ。想像は付いているようだ。そして、その想像も正鵠を得ている」
一柱は、まるでオユキがもう少し成長すればこうなるのだと言わんばかりの冬と眠り。
他方は、義父に随分と容貌が似ている雷と輝き。
「この姿は仮のものでしかないの」
「我らはどうした所で、随分と遠い。人の想念によらずに形を作るには、まだ暫くかかる」
あくまで仮の姿だと、二柱が語る。
姿は間に合わずとも、世界を作る力はあるというのだろうか。随分と幻想的な、降りしきる雪が輝く世界。宵闇と輝く雪だけが作る世界に、今は雷と稲光が彩を添え、遠い雷鳴が鼓動に合わせるように響く。
「心配しなくてもいいのよ」
「その方らにかかる負担は、一応無い。その方らで分かる範囲ではな」
トモエの思考を奪い始めた問題、それが今は無いのだと語る二柱。不思議と、それが事実だと分かる。以前は、此処まででは無い状態で、トモエがオユキの喉を容赦なく貫いた時に呼ばわれた時には、実にわかりやすくオユキは不調を覚えていた。支えるトモエに、体重をしっかりと預けるほどに。しかし、今は寝台で寝ているままではあるのだが、上体を今も自分の力で起こしている。先ほどまで、互いに話す時に向き合っていたように。
「ならば、良いのですが」
「案ずるな、そう言ったところで目を覚まさねば、あちらに戻らねば分からぬものではあるだろうからな」
雷を名に関する神の言葉に、トモエもオユキも首をかしげる。その言葉が真実であれば、此処はつまりは。
「私がいるのよ。そちらばかりでは無く私の世界よ此処は」
「御身の世界、ですか」
「眠りを司る私だもの、それが暮らす世界はつまり」
恐らく、この神の下にそれそのものを司る神もいるには違いない。夢を司る神、己での将来を意味するものでは無く、先に思い描くものでは無く、ただ眠るときに見るそれを。
「だから、此処は泡沫の世界。私が現れれば、私の」
「そして、そうした世界だからこそ、刹那の輝きである我もこうして」
先ほどまで、確かに話していたと感じているトモエとオユキにしてみれば、いきなり夢の世界と言われても早々納得が出来るものではない。突然眠りに落ちたとなれば、シェリアあたりに随分と心配をかけていそうなものだと。
「心配しないで。あの屋敷、いいえ、今回は王都全体」
「この者の姉の計らいもあってな」
つまりは月と安息までもが力を振るって、容赦なく王都全体を眠りの内に落としたという事であるらしい。それはそれで、随分と問題が起こりそうな話でもあるのだが。
「まぁ、そればかりは私たちのあずかり知る所では無いのよ」
「申し訳なくは思うのだが、こうして得難い機会と言うのも訪れたのだからな」
どう言えばいいのか。何やら、また随分と大事を引き起こすことになった物だと。オユキとしては、こういった上位者の振る舞いについては半ばあきらめていたものだが、此処までかと。
「勘違いがあるようなのだけれど、流石に道端に、移動をしている者たちまでも変わりなく、そこまではしないわ」
オユキの懸念については、否定されたようでまずは何より。
「目を覚ます時には、それこそ平素の通りであろう。皆、己が普段眠る場所へと移してある」
それを行ったのが、安息を司る彼の柱と言う事なのだろう。姉妹神と、アナが確かにそう評するだけあって、髪の色はよく似ている。寧ろ、あの神の妹だと言われても確かに納得ができる。しかし、蠱惑的な、怪し気に輝く瞳の色は引き継がず。今こうして冬と眠りと並んで立つ、雷と輝きこそが湛えている。
この二人を程よく欠け合わせれば、上手く引き継いで生まれる子は、確かに月と安息によく似るだろう。
「目が覚めた時には、ええ、皆さんまたかと思って頂けるでしょう」
「また、ですか」
「よくあるのよ。あなたが心配するよりも」
それがどういった時に行われているのか、それに流石に思い当たる所は無いのだが。言われれば、そういうものかと納得が出来る範囲ではある。本当に、この世界と言うのはかつての仕組みによく似ている。ゲームとしての仕組みに。複雑怪奇な世界という訳ではない、いや、確かに一面としてはそういったものなのだろうが、単に、仕組みとして存在していた物をそのまま流用しているらしい。
今の言葉にしても、強制ログアウト、メンテナンス時に行い全ての配置を元に、セーブが出来る位置にまで戻すというそうした仕組みを流用しての事なのだろう。本当に、何処までも過去に存在した仕組みに縛られているらしい。この世界では、神と言うのは、まさにそうした仕組みそのもので、現状それから逸脱する振る舞いの一切を許されないという事なのだろう。
では、神が名を持つ由縁と言うのは。
「流石に、私達はそこまで権限が狭い存在では無いわ」
「一部、そうした者らもいるには居るが、神としてこの世界を支えるというよりも、もう少し人に寄り添った存在と言えばいいのか。」
「否定をされているようで、されていない、と言う事は」
つまり、オユキの思い付き。要は、プログラムとして、そこに存在した関数がそれぞれに神格を持った存在ではないか。常々考えていた事でもあり、これまでであればしっかりと封じられた思考が。
「そうした存在もいる。マナとは言ってしまえば、其の方らの意思と、そうした機能としての存在を繋ぐための物だ」
「付け加えるのであれば、魔術と言う仕組み自体がかつてあった機能をそのまま流用しているのよ」
魔術文字が、何やら随分と複雑なつくりをしているのはつまりはそこに構成されている論理が存在しており、組み合わせる事で回路として成立するのだとそう言う話ではあるのだろう。
「そう、話が逸れているわね」
「呼んだのは、他でもない」
既に此処に至った経緯と言うのがオユキの頭から抜け始めている、それを危惧したのかトモエの焦りが伝わっているからか。二柱の神が、話しの軌道修正を図る。
「やっと、こうして直接会う機会ができたんだもの」
「一度くらいは、顔を合わせておきたいとそう考えてもいたからな」
オユキの方は、トモエよりもいくらか早く。こちらで暮らす者達に比べれば、神から魔術文字と言う形で直接与えられてはいたのだが、随分と早く。それこそ、神にも届くほどの。オユキの手には、明らかに余るほどの。
「オユキ、貴女が扱うのは魔術と似て、非なる物よ」
「トモエ、其の方も気が付いているのだろうが、与えたのは魔術では無く奇跡となる」
オユキが使うものは、魔術でも無く、奇跡でもない物。
トモエが使うものは、神の名のもとに与えられた奇跡。
「トモエさんは、そうですね。隣国の王妃様も魔術とはまた違うと、そのように評されていました」
「オユキさんの物は、カナリアさんから魔術文字がとそうした話でしたが」
言われた言葉に、トモエが振るう物に関してはオユキも思い当たるところがある。寧ろ、神の言葉で先に聞いた言葉、その正体がどうした由来化が分かったというものだ。だが、オユキが振るうものに関しては、いよいよ不明なものだと。
「それは、あの翼人種が勘違いしているのよ。私は冬と眠り。与える奇跡の形は、外に向ける物と内面に向ける物」
「冬眠、それを象徴する力、ですか。であれば、奇跡と呼んでも良いものかと」
「仕組みがまた違うのよ。与えるばかりでは無く、己の内に貯める事も出来るの」
「つまりは、種としての特性ですか」
故に、根源に連なると、そう評される物であるらしい。
「一先ずは、今はそれで理解の限界でしょう」
「話しすぎだ。ここは確かにお前の世界だろうが、他の眼が無いわけでは無い」
「良いのよ。本当に、この子はよくやってくれているもの。姉さまは遠すぎるから、あまり加護をと出来ない物だし、伯父様もあちらは特別にと出来ない制約があるんだから」
「言い分は分かるがな。私にしても、こうして機会に便乗をしたわけでもある」
言葉の端々から、こちらに何を伝えたいのか、そうした物の推察と言うのも出来る。つまり、この世界で現状特に力を持つ神、そうした存在は特定の相手をと出来ない物であるらしい。役職などを確かに与えられて入るのだが、どちらかと言えばいよいよこの世界に対する目印のような物と言えばいいのか。勿論、加護では無く、物質として、功績として多く与えられる事はあるのだが、それにしても常に持ち歩き使う様な物ではない。
「ええ、考えている事は遠くは無いわ」
「要は、私達に連なる其の方らに、機会を見て何かをとそう考えていたわけでもある。」
「後は、オユキ、貴女の考えている事の一助と言えばいいのかしら」
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