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22章 祭りを終えて
ちょっとした騒ぎ
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その日は、どう言えばいいのか。
トモエとオユキは、ぼんやりとした想像はあったのだが、そうならぬようにと舵を切ったはずだとそういった自負もあったのだ。しかし、期待は裏切られた。
「あの、私は流石に屋敷に戻らせて頂きますが。」
「あら、そうなの。」
アイリスが聞きつけたのは良い、彼女の祖霊である三狐神がいるのも良い。何となれば、誘った覚えはないが少年たちがいつもの時間に訪れ、そこで簡単に話した結果としてメイと少女たちまでがまとめてきたところまでは、想像の範疇。
「ふむ。オユキは苦手かね。」
「はい。正直な所、ああした脂の多い肉が焼ける匂いというのが、どうにも。」
問題としては、それこそ狩猟者ギルドの長、採取者ギルドの長までもが仕事を放り出して、いや実際には分からないのだが、少なくともこんな日の高いうちにも拘らずファンタズマ子爵家の庭にいる事だろう。一応は戦利品、別でと考えていたのだが、護衛を頼んでいた傭兵達にしても大挙して庭にいる。少々人数が庭の用量に対して過剰だと思うくらいには人が押し寄せている。オユキとしては、門を頼んでいる相手から来る確認に対して、流石にこれ以上は無理だとそうした話はしているのだが、それでも気にしている者達もいる訳であるし。今度は一体なんだとばかりに、何やら物見高い者達が集まっているという事でもあるらしい。
そちらを落ち着かせるためにも、現在庭で愉快な食欲を隠そうともしない者達を満足させた後には、若しくは彼らに主として饗する物だけではなく、残った他の物を外に回さなければならないだろうか。そこで起きる騒ぎの収集を、さて誰に頼むのが良いか。色々と考える事が増えてしまった。
「それに、対応すべきこともあるようですから。」
「然も有りなん。」
「ブルーノ様にも、狩猟者ギルドの長として少々お手伝い願っても。」
「生憎と、今日は休暇でな。」
少々口汚い言葉が、瞬時に脳裏をよぎるがそれも仕方がない。これまで散々にオユキも同様の真似は、不可抗力という部分も含めた上で行ってきたのだ。一先ず、四阿に座るギルド長から視線を切って、そのまま立ち上がる。
少年達に案内されてきたメイは、こうした状況を見て既に屋敷の中へと連れていかれた。オユキとしても、その時に一緒にとしても良かったのだが、流石に来客を放置しきるのは問題があるとして。トモエはもはや鉄火場の住人となっているし、教会からお土産もあるからと呼んだはずの少女たちも今はそちらで手伝っているような有様だ。屋外で利用可能な調理器具、武器だけでなくそちらも随分と無理をさせている。メンテナンスはすっかりとアルノーに一任しているし、そのための予算というのも組んではいるのだが。
「では、一先ず失礼いたしますね。」
「うむ。我もこの後こちらで満足すれば、屋敷内に改めて挨拶に伺おう。」
「お気になさらずとも、そうは思いますが。」
「その方の予想通り、いくらか話も合ってな。」
最早ため息しか出ない。オユキは、ただその感想のままに行動を。いくらか、オユキに挨拶をという視線もそこかしこから感じるのだが、流石に昨日の今日でもあり、体調もそこまでよくない。胸元にぶら下がっている功績の余剰を示す器に昨日の狩猟でかなりの色が溜まったはずだというのに、今朝起きてみれば残っているものはやはり少ない。一体オユキのため込んだはずの余剰は、何処に消えていくというのか。
恐らく、次に得るために次から次へと消費されていくのだろうとオユキとしてはそんな事を考えているのだが、せめてもう少し残して、オユキ自身の成長に使ってはくれまいかと。
そんな事を考えながら、少々食欲に忠実すぎる者たちに背を向けて屋敷の中へ。どうにも朝からシェリアとトモエがオユキの装いに手を入れると思えば、成程こうしたことになるには違いない。
「あら、オユキ。随分と早く戻って来ましたのね。」
「ええ。流石に、あのままでは匂いに当てられそうでしたから。」
「まぁ、オユキさんはそうなりますよね。」
そして、屋敷の中。そこにある客間の一つへと向かえば、そこでは外からの匂いに対処するためにカナリアが魔術を振るい、そうした匂いを苦手とする者達がのんびりとお茶を楽しんでいる。勿論、その視線の先と言えばいいのか、客間の一部には既に処理を終えた戦利品が積まれている。白い虎の毛皮、これまでに見た物よりもかなり大きな魔石。他にも、羚羊の特徴らしき腹部に筋のような黒い線が入った毛皮なども。
「皆さんで、品評会でしょうか。」
「まぁ、そのような物ね。」
「えっと、私の方はこちらに未処理の魔石を回すから、少しは引き取ってくれと魔術師ギルドから嘆願されまして。」
「それは、まぁ、仕方ないですね。では、カナリア様に処理して頂いたものはいくらかそのままメイ様に。」
「あら、宜しいんですの。税収として得られる物だけでもかなりの物ですわ。」
魔石だけ持っていたところで、正直な所使い道などない。門での移動に使えるのだと分かってはいるが、それにしてもカナリアの言によれば求められる形に調整をしなければならない。流石に、未だに己のマナとやらを持て余しているオユキにとっては、それが出来るのがいつになるかなどわかりはしない。
「あとは、あの虎の毛皮などは、流石に公爵夫人へと贈らせて頂きますが。」
「良いのではなくて。まさに出物ですもの。ただ、そうですわね。」
少々色めき立った視線をメイが送っているので、牽制も兼ねてそう言葉をかけてみれば彼女からは別の案が提示される。
「間もなく公爵様がこちらに来られるのですから、選別は任せても良いのではないかしら。」
「それも考えないでは無いですが、全てを任せきりというのも。」
それを考えないでも無かったのだが、流石に丸投げするのも申し訳ないと。公爵には、正直な所かなり厄介な政治におけるパワーゲームを既に丸投げしているのだ。オユキの下に直接届く手紙は、あくまで王太子妃からの物だけ。それ以外の全ては一度公爵夫人が受け取った上で中を改めるとしている。王太子妃からの物にしても、こうして始まりの町にまで送られてくるものは、全て目を通しているのだろうが。その辺りは、王太子妃も理解があるようで基本的には当たり障りのない内容で手紙は作られている。隣国の王妃、彼女にとっての母に関する情報などは当然含まれていない。それこそ、彼女の子供がこの日はどうであった、こういった反応をようやく見せるようになった等、子を持つ親らしい話が随分と詩的につづられている。
「良いのではないかしら。オユキも狩猟者としての身分を買われているんですもの。」
「成程。そういった部分を考えれば、寧ろご覧いただくのが筋ではありますか。ただ、この町の狩猟者ギルドに置いておくというのも。」
「えっと、オユキさんは過小に評価されていると思いますが、狩猟者ギルドは何処の町でも最低限の設備はもっていますからね。」
「おや、そうなのですか。」
こちらの町では、確かに周囲に比べれば大きい建物ではあるのだが、それこそ傭兵ギルドに比べれば用地も随分と少ないのだ。外観は。
「そう言えば、その辺りも興味をあまり示していないと聞いていますが、狩猟者ギルドにしても通りから見える裏側に倉庫としての用地を確保しています。」
「ええ。魔石なんかもそうですけど、色々と保管しておくための場所があってですね。」
「確かに、そうした物は必要ですか。」
であれば、預けてしまったままでいい気もする。一応、保管場所が無いのではないかとそんな事を考えて、枝肉のついでに処理が終わったものは屋敷に運ぶようにとそうした話をしたのだが。ついでに言えば、メイにと言えばいいのかこの町の代官であるリース伯爵子女に収める税としていくらかの物品を先に回してしまおうという考えも。
正直な所、税という意味では国に対して納めるものとなっており、ファンタズマ子爵家としては一通りまとめた上で寄り親でもあるマリーア公爵に納めるのが本来の流れ。そちらにしても、既に領都と王都で派手にやったこともありそのほとんどを公爵に任せてもいる為寧ろ過払いだとそんな事をケレスとゲラルド、それからカレンからも言われてはいる。これが会社であり、かつての世界の税であればオユキとしても少々気になりはしたのだが、こちらではそれこそ身内相手のような物だ。過払いになったところで、贈り物として考えれば正直オユキとしても気になりはしない。
「まぁ、それも良いでしょう。メイ様が先に必要と思うものを選ばれた後には、そうしましょうか。」
「公爵様よりも先に、私が選べるわけ無いではありませんか。」
「いえ、一応は公爵様用にトモエさんが仕留めたビソンテの毛皮や角も丸ごと残っていますから。」
枝肉として確かに処理がされている。まぁ、その枝肉にしても随分な量であり、門を通す時には騎士達が無理に持ち上げて壁を越させてと愉快な事をしなければならなかったのだが、それも今となってはアルノーの指示の元、トモエが扱いやすいサイズに切り分けてしまっている。
「あら、そうなんですのね。」
「そう言えば、こちらに持ってきたのは肉だけだったんですか。」
「いえ、肉以外にもこういった品を。」
そうして示すのは、先ほどから視線を集めている品々。
「そう言えば、このあたりではあまり見ない魔物の品ばかりですものね。」
「と、言いますか。どうしてオユキさんやトモエさんは、こうもトロフィーをゴロゴロと。」
「それこそ、神々の思し召し、それ以上の物では無いでしょう。」
こちらで活動する狩猟者たちとの大きな差、それはトモエとオユキが正しく技を修めている事にある。加えて、本人たちが弱いものに対して強いとそう言ってはいるのだが、少し格上どころでは無い魔物相手でも、その技は有用なのだ。あくまで一対一であったり、そこまでの移動を護衛してもらえるのであれば。
トモエは少しは体力が付き始めているのだが、オユキの方はそれこそ二日も外で活動することになれば、それが終わりに向かう頃にはすっかりと疲労しきってしまうだろう。
「さて、そろそろこうしてゆっくりと出来る時間も、また終わりそうですね。」
あと数日もすれば、公爵がこの町に訪れる。そして、そこからはまた色々と巻き起こる事だろう。
トモエとオユキは、ぼんやりとした想像はあったのだが、そうならぬようにと舵を切ったはずだとそういった自負もあったのだ。しかし、期待は裏切られた。
「あの、私は流石に屋敷に戻らせて頂きますが。」
「あら、そうなの。」
アイリスが聞きつけたのは良い、彼女の祖霊である三狐神がいるのも良い。何となれば、誘った覚えはないが少年たちがいつもの時間に訪れ、そこで簡単に話した結果としてメイと少女たちまでがまとめてきたところまでは、想像の範疇。
「ふむ。オユキは苦手かね。」
「はい。正直な所、ああした脂の多い肉が焼ける匂いというのが、どうにも。」
問題としては、それこそ狩猟者ギルドの長、採取者ギルドの長までもが仕事を放り出して、いや実際には分からないのだが、少なくともこんな日の高いうちにも拘らずファンタズマ子爵家の庭にいる事だろう。一応は戦利品、別でと考えていたのだが、護衛を頼んでいた傭兵達にしても大挙して庭にいる。少々人数が庭の用量に対して過剰だと思うくらいには人が押し寄せている。オユキとしては、門を頼んでいる相手から来る確認に対して、流石にこれ以上は無理だとそうした話はしているのだが、それでも気にしている者達もいる訳であるし。今度は一体なんだとばかりに、何やら物見高い者達が集まっているという事でもあるらしい。
そちらを落ち着かせるためにも、現在庭で愉快な食欲を隠そうともしない者達を満足させた後には、若しくは彼らに主として饗する物だけではなく、残った他の物を外に回さなければならないだろうか。そこで起きる騒ぎの収集を、さて誰に頼むのが良いか。色々と考える事が増えてしまった。
「それに、対応すべきこともあるようですから。」
「然も有りなん。」
「ブルーノ様にも、狩猟者ギルドの長として少々お手伝い願っても。」
「生憎と、今日は休暇でな。」
少々口汚い言葉が、瞬時に脳裏をよぎるがそれも仕方がない。これまで散々にオユキも同様の真似は、不可抗力という部分も含めた上で行ってきたのだ。一先ず、四阿に座るギルド長から視線を切って、そのまま立ち上がる。
少年達に案内されてきたメイは、こうした状況を見て既に屋敷の中へと連れていかれた。オユキとしても、その時に一緒にとしても良かったのだが、流石に来客を放置しきるのは問題があるとして。トモエはもはや鉄火場の住人となっているし、教会からお土産もあるからと呼んだはずの少女たちも今はそちらで手伝っているような有様だ。屋外で利用可能な調理器具、武器だけでなくそちらも随分と無理をさせている。メンテナンスはすっかりとアルノーに一任しているし、そのための予算というのも組んではいるのだが。
「では、一先ず失礼いたしますね。」
「うむ。我もこの後こちらで満足すれば、屋敷内に改めて挨拶に伺おう。」
「お気になさらずとも、そうは思いますが。」
「その方の予想通り、いくらか話も合ってな。」
最早ため息しか出ない。オユキは、ただその感想のままに行動を。いくらか、オユキに挨拶をという視線もそこかしこから感じるのだが、流石に昨日の今日でもあり、体調もそこまでよくない。胸元にぶら下がっている功績の余剰を示す器に昨日の狩猟でかなりの色が溜まったはずだというのに、今朝起きてみれば残っているものはやはり少ない。一体オユキのため込んだはずの余剰は、何処に消えていくというのか。
恐らく、次に得るために次から次へと消費されていくのだろうとオユキとしてはそんな事を考えているのだが、せめてもう少し残して、オユキ自身の成長に使ってはくれまいかと。
そんな事を考えながら、少々食欲に忠実すぎる者たちに背を向けて屋敷の中へ。どうにも朝からシェリアとトモエがオユキの装いに手を入れると思えば、成程こうしたことになるには違いない。
「あら、オユキ。随分と早く戻って来ましたのね。」
「ええ。流石に、あのままでは匂いに当てられそうでしたから。」
「まぁ、オユキさんはそうなりますよね。」
そして、屋敷の中。そこにある客間の一つへと向かえば、そこでは外からの匂いに対処するためにカナリアが魔術を振るい、そうした匂いを苦手とする者達がのんびりとお茶を楽しんでいる。勿論、その視線の先と言えばいいのか、客間の一部には既に処理を終えた戦利品が積まれている。白い虎の毛皮、これまでに見た物よりもかなり大きな魔石。他にも、羚羊の特徴らしき腹部に筋のような黒い線が入った毛皮なども。
「皆さんで、品評会でしょうか。」
「まぁ、そのような物ね。」
「えっと、私の方はこちらに未処理の魔石を回すから、少しは引き取ってくれと魔術師ギルドから嘆願されまして。」
「それは、まぁ、仕方ないですね。では、カナリア様に処理して頂いたものはいくらかそのままメイ様に。」
「あら、宜しいんですの。税収として得られる物だけでもかなりの物ですわ。」
魔石だけ持っていたところで、正直な所使い道などない。門での移動に使えるのだと分かってはいるが、それにしてもカナリアの言によれば求められる形に調整をしなければならない。流石に、未だに己のマナとやらを持て余しているオユキにとっては、それが出来るのがいつになるかなどわかりはしない。
「あとは、あの虎の毛皮などは、流石に公爵夫人へと贈らせて頂きますが。」
「良いのではなくて。まさに出物ですもの。ただ、そうですわね。」
少々色めき立った視線をメイが送っているので、牽制も兼ねてそう言葉をかけてみれば彼女からは別の案が提示される。
「間もなく公爵様がこちらに来られるのですから、選別は任せても良いのではないかしら。」
「それも考えないでは無いですが、全てを任せきりというのも。」
それを考えないでも無かったのだが、流石に丸投げするのも申し訳ないと。公爵には、正直な所かなり厄介な政治におけるパワーゲームを既に丸投げしているのだ。オユキの下に直接届く手紙は、あくまで王太子妃からの物だけ。それ以外の全ては一度公爵夫人が受け取った上で中を改めるとしている。王太子妃からの物にしても、こうして始まりの町にまで送られてくるものは、全て目を通しているのだろうが。その辺りは、王太子妃も理解があるようで基本的には当たり障りのない内容で手紙は作られている。隣国の王妃、彼女にとっての母に関する情報などは当然含まれていない。それこそ、彼女の子供がこの日はどうであった、こういった反応をようやく見せるようになった等、子を持つ親らしい話が随分と詩的につづられている。
「良いのではないかしら。オユキも狩猟者としての身分を買われているんですもの。」
「成程。そういった部分を考えれば、寧ろご覧いただくのが筋ではありますか。ただ、この町の狩猟者ギルドに置いておくというのも。」
「えっと、オユキさんは過小に評価されていると思いますが、狩猟者ギルドは何処の町でも最低限の設備はもっていますからね。」
「おや、そうなのですか。」
こちらの町では、確かに周囲に比べれば大きい建物ではあるのだが、それこそ傭兵ギルドに比べれば用地も随分と少ないのだ。外観は。
「そう言えば、その辺りも興味をあまり示していないと聞いていますが、狩猟者ギルドにしても通りから見える裏側に倉庫としての用地を確保しています。」
「ええ。魔石なんかもそうですけど、色々と保管しておくための場所があってですね。」
「確かに、そうした物は必要ですか。」
であれば、預けてしまったままでいい気もする。一応、保管場所が無いのではないかとそんな事を考えて、枝肉のついでに処理が終わったものは屋敷に運ぶようにとそうした話をしたのだが。ついでに言えば、メイにと言えばいいのかこの町の代官であるリース伯爵子女に収める税としていくらかの物品を先に回してしまおうという考えも。
正直な所、税という意味では国に対して納めるものとなっており、ファンタズマ子爵家としては一通りまとめた上で寄り親でもあるマリーア公爵に納めるのが本来の流れ。そちらにしても、既に領都と王都で派手にやったこともありそのほとんどを公爵に任せてもいる為寧ろ過払いだとそんな事をケレスとゲラルド、それからカレンからも言われてはいる。これが会社であり、かつての世界の税であればオユキとしても少々気になりはしたのだが、こちらではそれこそ身内相手のような物だ。過払いになったところで、贈り物として考えれば正直オユキとしても気になりはしない。
「まぁ、それも良いでしょう。メイ様が先に必要と思うものを選ばれた後には、そうしましょうか。」
「公爵様よりも先に、私が選べるわけ無いではありませんか。」
「いえ、一応は公爵様用にトモエさんが仕留めたビソンテの毛皮や角も丸ごと残っていますから。」
枝肉として確かに処理がされている。まぁ、その枝肉にしても随分な量であり、門を通す時には騎士達が無理に持ち上げて壁を越させてと愉快な事をしなければならなかったのだが、それも今となってはアルノーの指示の元、トモエが扱いやすいサイズに切り分けてしまっている。
「あら、そうなんですのね。」
「そう言えば、こちらに持ってきたのは肉だけだったんですか。」
「いえ、肉以外にもこういった品を。」
そうして示すのは、先ほどから視線を集めている品々。
「そう言えば、このあたりではあまり見ない魔物の品ばかりですものね。」
「と、言いますか。どうしてオユキさんやトモエさんは、こうもトロフィーをゴロゴロと。」
「それこそ、神々の思し召し、それ以上の物では無いでしょう。」
こちらで活動する狩猟者たちとの大きな差、それはトモエとオユキが正しく技を修めている事にある。加えて、本人たちが弱いものに対して強いとそう言ってはいるのだが、少し格上どころでは無い魔物相手でも、その技は有用なのだ。あくまで一対一であったり、そこまでの移動を護衛してもらえるのであれば。
トモエは少しは体力が付き始めているのだが、オユキの方はそれこそ二日も外で活動することになれば、それが終わりに向かう頃にはすっかりと疲労しきってしまうだろう。
「さて、そろそろこうしてゆっくりと出来る時間も、また終わりそうですね。」
あと数日もすれば、公爵がこの町に訪れる。そして、そこからはまた色々と巻き起こる事だろう。
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