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19章 久しぶりの日々
ダンジョンの先で
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ダンジョンを進むこと自体は、まぁ、凡そ問題が無い。問題点を上げるとすれば、それこそ都合の良い相手がいるからと、指導に熱の入るトモエと、やはりそれに興味を引かれる者達が足を止める事が多いこと位だろう。
一度、それこそ既存のダンジョン傾向と大きく異なると報告したからだろう、追加の人員が様子を見に来たりもしたが、木人形をそれぞれに相手どらせながら、細かく指導するトモエと、護衛として周囲に散りながらも、そこで語られる術理に耳を傾ける者達の様子を見て、ただため息をついたりもしていた。予定よりも遅い、運び出される資源も何やら少ない。では、それが起こりうるほどの事態が起こっているのかと責任者の指示を受けてくれば、すっかりと訓練所扱いをしているのだから。
「シグルド君。繰り返しになりますが、武器を持つ手にばかり意識を向けないように。」
「いや、でも攻撃してくるのはそこだろ。」
「そうですね。この相手は、確かにそうです。」
「あー。」
確かに、木人形は愚直と言っても良い程に武器の形をした体の一部を振るう。それに付き合うのが悪いかと言われれば、必ずしもそういう訳でもない。鍛錬の間であれば、どれだけ隙があろうとも、トモエもオユキも教える相手にはそのように振舞う。
「トモエさん。今は教える時に暗器を使ったりしませんから。」
「言われてみれば、そうですね。あまりに適当な相手がいたので、少々段階を見誤りましたか。」
オユキは元来トモエが己の掌中にある術理を語る場において、口を差し挟む事は無い。精々、物理学としての、学問としての知見を付け加えて、理解を深める手助けをするくらい。己がかつて大いにその知識に助けられたように。しかし、今はこうして指導者としてのトモエに対して。
要は、トモエにしても、そうされるだけの物を今抱えている。
「どうにも、不安を抱えさせているようですから、先を急ぎましょうか。」
周囲にはほとんど伝わらぬ、トモエのそれではなく。分かりやすい、この場を用意した相手と、戦闘に不慣れな花精に向けた物として。
「アイリスさんからの許可というのは、五穀豊穣の加護、それを花精の方々が滋養とすることに関してです。町に住むものとして、当然求められる物もあるでしょう。その選択肢としては、十分な成果とも思えますから。」
今回始まりの町に移住を求めている花精の一団、その長であるオルテンシア。その名にふさわしく、実に多くの同族を連れて訪れていた。これまではいよいよ稀であったはずの種族が、それこそ百を桁として使わなければいけないほどに、突然町にやってきたのだ。メイでなくとも、アイリスの得た加護を吸い上げるといわれれば躊躇うだろう程に連れ立って。ルーリエラやアマリーア、タルヤといった本当に一握りの者達を除けば、基本的にヒトに交じって暮らす花精というのは、原種ではない。ヒトと混じった結果として発生した流れであり、発現形質としてそちらが出ていると、そう言った程度。要は、これまでダンジョンという奇跡を調査するために頼むことが出来た相手も、そうであったという事。
「その、私たちは身を守ることは出来ますが。」
「ええ。ご心配なく。確実に己の身を守ることができる、他の者をも守ることができる。その事実だけで実に心強い事ですから。」
攻撃に不向きな技能を持っている。壁のない危険な、人では限られた物しか過ごすことができない環境で、当然のように生命を繋ぐことができる。それこそ、鶏と卵、どちらが先なのかと、そう言った話になるのだろう。かつてのオユキは、変異体として発生するのであれば、卵の段階でそのようになっていたのではないかなどと言い、恐らく同じ系統の思考を持ったであろう相手が製作者にいるからこそ、そのように。
「苦手な事は、得意な物に任せればよいだけですから。少なくとも、私たちではオルテンシア様の様な術は使えません。」
純粋な花精と言えばいいのだろうか。そんな存在がダンジョンの中で振るう事が出来る力というのは、かなり広範にわたっている。
先に試したはずのどうにもならぬ壁、それに対して彼女が働きかけを行えば、枝を伸ばし、木々がうねり空洞を開ける。そして、そのな中には何やら見知らぬ苗木や種といった物が収められている事もある。こちらについては、正しく持ち帰った上で、しっかりと調査すべき項目なのだが、別の点として伸ばした枝がついでとばかりに果実を枝に付けていることもあるのだ。さぁ、これを収穫せよと言わんばかりに。
「これまでの調査との大きな違いは、受動的な物か、能動的な物か。そう纏めてみようと思うが。」
「ファルコ様、あくまでそれはファルコ様の所感です。調査の結果ではありません。」
「ファンタズマ子爵の仰る通りです。こうして同行させて頂いており、明らかな変事を報告したとはいえ、やはり正式な調査ではありませんから。」
「成程。私たちがそのつもりであっても、確かに現実に未だ組織としては存在しない、その辺りか。」
それぞれに目的を持った一行でもある。目的がダンジョンに足を踏み入れてから増えたと、そう言うのが正しいのかもしれないが、そうなった以上は、やはりそれぞれを片付けて収拾がつくものではない。ダンジョンを攻略する、共通する目標などただそれだけだ。オユキが選択したとして、先を進む様に全体を促したうえで足を進めれば、まずはオユキを護衛対象と考えている者達が。次にオユキが並んで歩くことを良しとするトモエが。そしてトモエに教えを受けている最中の者達が。そこまでが動けば、集団の中で、こう動くのだなと周囲に同調せよと言外に示すに足る圧力も生まれるというものだ。
気が付けば、護衛に少し遅れた位置で、回された敵を相手に少々の手習いを交えながらトモエが。そして、それについていく形で戦闘よりも調査を主体とする者達もついていく形となる。そして、そんな位置に自然とオユキも紛れて、ファルコとリュディの話に対して、時折軌道を修正しながらのんびりと歩く。
「やはり、私にとっては、こうした時間が楽しく感じられるのです。」
「オユキ殿。」
「いえ、つまらぬ独り言です。」
オユキの視線の先には、護衛達が数を調整するためにと無造作に魔物を蹴散らす姿があり、そして、少し離れた場所ではトモエが実にのびのびと、自在に振舞いながらも後進に心を置く姿がある。常であれば、その姿を何処までもただ喜ばしいものとして見る事が出来たのだろう。
トモエ自身が、誰よりもよく知っている。
人の心の動き、その微かな機微にも良く気が付くアナはやはり普段に比べて口数が少ない。
トモエの、己の習うものの到達点を目に焼き付けようとするセシリアも、何処か今日のトモエの教えは響いていない様子。
しかし、それに気が付かぬ残りが悪いのかと言えば、当然そんな事は無い。
彼らにしても、己の親しい相手がどうやらいつもと違うという事に気が付いている。その意識が向かう先に、正解は分からないまでも、何処に答えがあるのかなどは、当然気が付いている。子供は、何処までも大人をよく見ているのだ。
では、その原因を作ったのは誰かと言えば、意固地、生前から変わらぬ頑固さを、何度も窘められた融通の利かぬオユキにあるのだ。意見を翻すに足る術を、己の心を相手に与えた傷以上に得る事意外に持たぬトモエにもあるという事も出来るのだが、結局は因はオユキだ。
「ああ、成程。奥はこのようになりますか。」
以前見た、荘厳な作りの石造りではなく。何処か重い歳月を感じさせる石と木が入り混じった扉。
少し前から、左右に分かれていたはずの石造りと木造りが、徐々に融合を見せる様な様相を呈し始め、綺麗に半分に別れた道が混じっていたものだ。
そして、その姿にしても、オユキに対して、トモエに対して、訴えるものがあった。
「後押しをされているという事なのでしょう。」
「ファンタズマ子爵、此処より先は変異種の。」
「そうですね、その前に。シェリア様。」
故に、変異種の討伐を行ってからとオユキは考えていたのだが、ただ、こうした風情の景色が用意され、それに思いを寄せる時間を得たのならと、考えを改めた。
そして、オユキが名を呼べば、彼女の対応というのは、あまりに早い。残すべきものと、そうでない者。それらを一切の容赦を見せることなく分け、そして、声が漏れぬようにとカナリアに。
「御身から胸中をお聞かせいただくとすれば、変異種を討伐し、ある程度のものたちを見送ってからと考えておりましたが。」
「ここまで歩いた中で、気が変わったと言いましょうか。」
「オユキさん。」
そして、トモエからは、やはりどこか悲し気で、期待に満ちた視線が。トモエの感情表現というのは、基本的に薄い。部に対しては真摯であり、あまりにわかりやすい反応を見せる。だが、それを基準にしてしまえば、常のトモエの振る舞いの多くを見落とすことになる。シェリアが選んだのは、正しく、オユキもそれに気が付けていると判断している相手。
「ローレンツ様。シェリア様。」
それが本意であるかと言われれば、やはりオユキとしても難しい。
これから口にする言葉、それを此処で言う己を恥知らずとそう面罵することも躊躇わないような言葉だ。
けれども、オユキにとっての大事は、トモエだ。既にすべてが終わった上で、こちらに来ている。どうにも見知った相手にしても、齟齬を感じるところがある。オユキにとっての唯一は、かつて望んだことが無いとはとても言えない、己の続きだと信じられるものは、トモエだけ。
「既にご存知の事とは思います。ええ。私の位に懸けた上で、森に蔓延る厄介を払う心算です。」
行き過ぎている、それ以上はと。かつてトモエは、オユキの腕を折って止めた。今となっては、二人にとって大事な思い出。笑って話せるようになったこと。しかし、当時はそうでは無かった。そいて、今度の事もそうなるだろう。だからオユキもトモエも、精彩を欠く。近づく日に、ただ憂いを感じる。そんな暇など無いというのに。
「私は、参加しません。メイ様と共に回線を告げた後には、そのまま残りましょう。しかし。」
汚染される危険がある。そして、次は少々根に近い部分。汚染がどうにもならぬと言われた者達は、確かに処分された。だというのに、トモエが悲しむから、どうかと。
「私の願いを受けて、私が預かる神の名をもって。そこに向かう者は、やはり必要なのです。トモエさんだけではなく。」
一度、それこそ既存のダンジョン傾向と大きく異なると報告したからだろう、追加の人員が様子を見に来たりもしたが、木人形をそれぞれに相手どらせながら、細かく指導するトモエと、護衛として周囲に散りながらも、そこで語られる術理に耳を傾ける者達の様子を見て、ただため息をついたりもしていた。予定よりも遅い、運び出される資源も何やら少ない。では、それが起こりうるほどの事態が起こっているのかと責任者の指示を受けてくれば、すっかりと訓練所扱いをしているのだから。
「シグルド君。繰り返しになりますが、武器を持つ手にばかり意識を向けないように。」
「いや、でも攻撃してくるのはそこだろ。」
「そうですね。この相手は、確かにそうです。」
「あー。」
確かに、木人形は愚直と言っても良い程に武器の形をした体の一部を振るう。それに付き合うのが悪いかと言われれば、必ずしもそういう訳でもない。鍛錬の間であれば、どれだけ隙があろうとも、トモエもオユキも教える相手にはそのように振舞う。
「トモエさん。今は教える時に暗器を使ったりしませんから。」
「言われてみれば、そうですね。あまりに適当な相手がいたので、少々段階を見誤りましたか。」
オユキは元来トモエが己の掌中にある術理を語る場において、口を差し挟む事は無い。精々、物理学としての、学問としての知見を付け加えて、理解を深める手助けをするくらい。己がかつて大いにその知識に助けられたように。しかし、今はこうして指導者としてのトモエに対して。
要は、トモエにしても、そうされるだけの物を今抱えている。
「どうにも、不安を抱えさせているようですから、先を急ぎましょうか。」
周囲にはほとんど伝わらぬ、トモエのそれではなく。分かりやすい、この場を用意した相手と、戦闘に不慣れな花精に向けた物として。
「アイリスさんからの許可というのは、五穀豊穣の加護、それを花精の方々が滋養とすることに関してです。町に住むものとして、当然求められる物もあるでしょう。その選択肢としては、十分な成果とも思えますから。」
今回始まりの町に移住を求めている花精の一団、その長であるオルテンシア。その名にふさわしく、実に多くの同族を連れて訪れていた。これまではいよいよ稀であったはずの種族が、それこそ百を桁として使わなければいけないほどに、突然町にやってきたのだ。メイでなくとも、アイリスの得た加護を吸い上げるといわれれば躊躇うだろう程に連れ立って。ルーリエラやアマリーア、タルヤといった本当に一握りの者達を除けば、基本的にヒトに交じって暮らす花精というのは、原種ではない。ヒトと混じった結果として発生した流れであり、発現形質としてそちらが出ていると、そう言った程度。要は、これまでダンジョンという奇跡を調査するために頼むことが出来た相手も、そうであったという事。
「その、私たちは身を守ることは出来ますが。」
「ええ。ご心配なく。確実に己の身を守ることができる、他の者をも守ることができる。その事実だけで実に心強い事ですから。」
攻撃に不向きな技能を持っている。壁のない危険な、人では限られた物しか過ごすことができない環境で、当然のように生命を繋ぐことができる。それこそ、鶏と卵、どちらが先なのかと、そう言った話になるのだろう。かつてのオユキは、変異体として発生するのであれば、卵の段階でそのようになっていたのではないかなどと言い、恐らく同じ系統の思考を持ったであろう相手が製作者にいるからこそ、そのように。
「苦手な事は、得意な物に任せればよいだけですから。少なくとも、私たちではオルテンシア様の様な術は使えません。」
純粋な花精と言えばいいのだろうか。そんな存在がダンジョンの中で振るう事が出来る力というのは、かなり広範にわたっている。
先に試したはずのどうにもならぬ壁、それに対して彼女が働きかけを行えば、枝を伸ばし、木々がうねり空洞を開ける。そして、そのな中には何やら見知らぬ苗木や種といった物が収められている事もある。こちらについては、正しく持ち帰った上で、しっかりと調査すべき項目なのだが、別の点として伸ばした枝がついでとばかりに果実を枝に付けていることもあるのだ。さぁ、これを収穫せよと言わんばかりに。
「これまでの調査との大きな違いは、受動的な物か、能動的な物か。そう纏めてみようと思うが。」
「ファルコ様、あくまでそれはファルコ様の所感です。調査の結果ではありません。」
「ファンタズマ子爵の仰る通りです。こうして同行させて頂いており、明らかな変事を報告したとはいえ、やはり正式な調査ではありませんから。」
「成程。私たちがそのつもりであっても、確かに現実に未だ組織としては存在しない、その辺りか。」
それぞれに目的を持った一行でもある。目的がダンジョンに足を踏み入れてから増えたと、そう言うのが正しいのかもしれないが、そうなった以上は、やはりそれぞれを片付けて収拾がつくものではない。ダンジョンを攻略する、共通する目標などただそれだけだ。オユキが選択したとして、先を進む様に全体を促したうえで足を進めれば、まずはオユキを護衛対象と考えている者達が。次にオユキが並んで歩くことを良しとするトモエが。そしてトモエに教えを受けている最中の者達が。そこまでが動けば、集団の中で、こう動くのだなと周囲に同調せよと言外に示すに足る圧力も生まれるというものだ。
気が付けば、護衛に少し遅れた位置で、回された敵を相手に少々の手習いを交えながらトモエが。そして、それについていく形で戦闘よりも調査を主体とする者達もついていく形となる。そして、そんな位置に自然とオユキも紛れて、ファルコとリュディの話に対して、時折軌道を修正しながらのんびりと歩く。
「やはり、私にとっては、こうした時間が楽しく感じられるのです。」
「オユキ殿。」
「いえ、つまらぬ独り言です。」
オユキの視線の先には、護衛達が数を調整するためにと無造作に魔物を蹴散らす姿があり、そして、少し離れた場所ではトモエが実にのびのびと、自在に振舞いながらも後進に心を置く姿がある。常であれば、その姿を何処までもただ喜ばしいものとして見る事が出来たのだろう。
トモエ自身が、誰よりもよく知っている。
人の心の動き、その微かな機微にも良く気が付くアナはやはり普段に比べて口数が少ない。
トモエの、己の習うものの到達点を目に焼き付けようとするセシリアも、何処か今日のトモエの教えは響いていない様子。
しかし、それに気が付かぬ残りが悪いのかと言えば、当然そんな事は無い。
彼らにしても、己の親しい相手がどうやらいつもと違うという事に気が付いている。その意識が向かう先に、正解は分からないまでも、何処に答えがあるのかなどは、当然気が付いている。子供は、何処までも大人をよく見ているのだ。
では、その原因を作ったのは誰かと言えば、意固地、生前から変わらぬ頑固さを、何度も窘められた融通の利かぬオユキにあるのだ。意見を翻すに足る術を、己の心を相手に与えた傷以上に得る事意外に持たぬトモエにもあるという事も出来るのだが、結局は因はオユキだ。
「ああ、成程。奥はこのようになりますか。」
以前見た、荘厳な作りの石造りではなく。何処か重い歳月を感じさせる石と木が入り混じった扉。
少し前から、左右に分かれていたはずの石造りと木造りが、徐々に融合を見せる様な様相を呈し始め、綺麗に半分に別れた道が混じっていたものだ。
そして、その姿にしても、オユキに対して、トモエに対して、訴えるものがあった。
「後押しをされているという事なのでしょう。」
「ファンタズマ子爵、此処より先は変異種の。」
「そうですね、その前に。シェリア様。」
故に、変異種の討伐を行ってからとオユキは考えていたのだが、ただ、こうした風情の景色が用意され、それに思いを寄せる時間を得たのならと、考えを改めた。
そして、オユキが名を呼べば、彼女の対応というのは、あまりに早い。残すべきものと、そうでない者。それらを一切の容赦を見せることなく分け、そして、声が漏れぬようにとカナリアに。
「御身から胸中をお聞かせいただくとすれば、変異種を討伐し、ある程度のものたちを見送ってからと考えておりましたが。」
「ここまで歩いた中で、気が変わったと言いましょうか。」
「オユキさん。」
そして、トモエからは、やはりどこか悲し気で、期待に満ちた視線が。トモエの感情表現というのは、基本的に薄い。部に対しては真摯であり、あまりにわかりやすい反応を見せる。だが、それを基準にしてしまえば、常のトモエの振る舞いの多くを見落とすことになる。シェリアが選んだのは、正しく、オユキもそれに気が付けていると判断している相手。
「ローレンツ様。シェリア様。」
それが本意であるかと言われれば、やはりオユキとしても難しい。
これから口にする言葉、それを此処で言う己を恥知らずとそう面罵することも躊躇わないような言葉だ。
けれども、オユキにとっての大事は、トモエだ。既にすべてが終わった上で、こちらに来ている。どうにも見知った相手にしても、齟齬を感じるところがある。オユキにとっての唯一は、かつて望んだことが無いとはとても言えない、己の続きだと信じられるものは、トモエだけ。
「既にご存知の事とは思います。ええ。私の位に懸けた上で、森に蔓延る厄介を払う心算です。」
行き過ぎている、それ以上はと。かつてトモエは、オユキの腕を折って止めた。今となっては、二人にとって大事な思い出。笑って話せるようになったこと。しかし、当時はそうでは無かった。そいて、今度の事もそうなるだろう。だからオユキもトモエも、精彩を欠く。近づく日に、ただ憂いを感じる。そんな暇など無いというのに。
「私は、参加しません。メイ様と共に回線を告げた後には、そのまま残りましょう。しかし。」
汚染される危険がある。そして、次は少々根に近い部分。汚染がどうにもならぬと言われた者達は、確かに処分された。だというのに、トモエが悲しむから、どうかと。
「私の願いを受けて、私が預かる神の名をもって。そこに向かう者は、やはり必要なのです。トモエさんだけではなく。」
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