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19章 久しぶりの日々
メイとお仕事
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「何と言いましょうか。」
「私も意外に感じています。」
トモエが狩猟に鍛錬にと勤しんでいる頃、オユキはそれこそ生前と同じように仕事に励んでいる。
「花精とは、私も正式に交渉したのは初めてですが、話しに聞いていた通りといった印象ですわね。」
異邦人二人は、あまりに簡単に終わった交渉にどうにも座りが悪いと感じるものだが、メイの方ではこうなると考えていたと、そう返ってくる。
アイリスからの許諾も条件付きとはいえ得られたため、早速とばかりにメイと共に移り住んできた花精の一団と席を持てばそれが当然とばかりに全ての条件を相手が飲んだ。
居住する区画にしても、森の中、汚染の要因である相手に対する協力すらも。
「そうなのですか。」
「そうであれば、わざわざ待たなくてもと思いますが。」
「これがファンタズマ子爵だけが持ち込んだ事であれば、私も代官として待つ必要は無かったのですが。」
アイリスが河沿いの町に向けて、祖霊からの加護が伸びるよう調整したという事もあるのだろう。その線上に改めて居住用の区画を用意する。何となれば、そちらで用意が可能なら、既にそちらを自由にして構わないと告げれば、寧ろそれを喜んで受け入れられた。話し合いがどうなる事やらと、そう言った様子で場を見守っていた者達がそわそわとする程度には喜んで。
「種族として、それだけの価値があるという事なのでしょうか。」
「穀物に対して強い効果はある、ええ、他の植物もある程度以上の恩恵はあるのでしょうが。」
「仕方ありませんわ。私たちでは、畑の成長を見る以外には知りようがありませんもの。」
「領主としての権能を持っていれば、そのように考えていましたが。」
メイの言葉に、その辺り土地の事、領地の事なのだから領主としての能力で分かるのではないかと。
「生憎と。私もまだまだ領主としては経験不足ですから。」
「権能と呼ばれはしていますが、成程、そのような物ですか。」
こうして、それぞれが書類と向き合いながら、雑談という程仕事から離れてはいないが、それでも実際に手元にあるものとは関係のない話に興じている。
オユキがこの場に連れてこられたのは他でもない。河沿いの町から戦力を抽出するための、事後承諾になるからこそ巫女としての強権を振るえと言わんばかりに、各種書類の確認とサインを書くという何とも過去によくあった業務。メイとケレスは、それこそ放っておけば一日中そうしているのだと分かる程度には、机にうずたかく積んだ書類を次から次へと。
「ケレスさんは、生前と言ってもいいか分かりませんが。」
「嫌いではありませんから。ただ、かつては私に回ってくるものというのはもう意味が薄れて久しいものでしたから。」
「ああ。確かに、そうなりますか。」
裏方、そう言ってしまってもいい部署の最高責任者として、オユキとミズキリが後進に後を譲ってからは、唯一籍を残していた創業時からの人員として。彼女に伺いを立てたいと考える人間は、それはさぞかし多かった事だろう。そして、計画の妥当性や運用に関して知見の無い人物でもその立場が許されるだけの基盤が出来上がっていた。つまり、いよいよ書類を確認して、そんな人物でも分かるエラーが無いかを確認すれば後はサインをするだけ。
「今の私が、まさにそのような業務ですが。」
「メイ様の場合は、御身が決定をしなければ進まないという違いがあります。」
「上位の者の決定を待たずに、進むことがあったのですか。」
「日々の事、ですね。かつての世界では、勿論決裁が必要な事はありましたが、やはり通常業務と申しましょうか、権限を細かく分割していたといいましょうか。採決が出来る人員がいなくとも、日々恙なくと、そうしていましたから。」
メイは、それについては始まりの町でも変わらぬはずだと、実に納得がいかない様子だが。
「新規の事業、計画を始めるとなれば、相応に私たちも忙しくはなりましたが、平時はいよいよまとめられた資料に目を通してサインをして。」
まさに今している仕事、そう変わりは無いのだが。
「ただ、重要では無い事も多かったので、正直月次で十分だったのですよね。」
実際には、それぞれのサイクルで責任者にタスクを任せていたが、ケレスの所にまで回ってくるというものは、稟議書さえなければ月次の報告書位な物だ。
「新興の商会と聞いていましたが、随分と組織として確立していたのですね。」
「それこそ初期は、まぁ、とてもではありませんが利かせられない話も多くありましたが、安定してからは、ケレスさんを始め、ミズキリが基盤を整えましたから。」
同じ目的の為に動いている、それだけは違いなかったが初期の頃は正直誰が何をしているか分かっていない事の方が多かった。ミズキリの用意した場所というのもあるにはあったが、そこに常時、文字通り常時だ、いたのはミズキリ本人とケレス。それともう一人。オユキを始めとした者達は、それこそ連絡一つ寄こしてあちらこちらへと動き回っていたものだ。
「ケレス、今でも過剰な仕事とは分かっていますが。」
「こちらとは制度も違いますから。」
「決裁権を役職ごとに付記して、組織図の概要を作れば良いでしょう。運用の実態としての判断は、メイ様と他の方で行えますから。」
貴族制が残るこの世界では、かつての事など難しいと断じるケレスに対して、オユキから。
如何に社会構造が違うとはいえ、他の類型を知っているのと知らぬのでは、取れる対応がそもそも違う。メイにしても、組織の運用という意味では先に本人が語ったように、新人もいい所。こうした場にはゲラルドが必ずいるはずだろうに、すっかりとケレスに任されて、今は彼もどこぞで走り回っている事だろう。侍従としての仕事はシェリアがいる為、そちらに任せたという事でもあるのだろう。貴族制などと言っても、身の回りにいる者達は、その世界で存分に生きてきた者達であり、伯子女に子爵家当主程度、そう言った位を持つ者達も多いのだ。ならば、役に立たぬという訳もないだろう。現に、ダンジョンに関連する組織を立ち上げようとしたときに、ミズキリが語った組織としての構造は大いに助けになったのだから。
「貴族社会が、総務ですか。」
「営業職も熟されてはいますが、実態はそちらに依っていると思いますよ。」
「夢の無い。」
「夢だけで民が暮らせるのであれば、私がここまで苦労することもなかったでしょう。」
「実に嬉しいお言葉です。」
監督下、為政者の下で暮らす身としては、何とも頼もしい言葉ではある。その内情が全て書かれた書類に向き合って、要点を纏め、疑義があれば別途書き出してとしていると何とも言えない気持ちにはなるのだが。
「それにしても、やはり需要が大いに崩れていますね。」
「陛下が暫く滞在されていましたから、それに合わせてですね。」
「オユキさん。」
「詳細は、また細かく見なければいけないでしょうが、大まかな分類としては加工品の類でしょうね。後は教会から、寄付として受け取った品の報告書ですね。前年とは比べるまでもなく。ここ数カ月は上昇傾向が激しいですね。」
国王陛下その人が滞在した影響に関しても、教会に関しても。この場にその責任の一端を間違いなく持っているものがいる。一先ず目を通した資料の所感として口に出したその結果に、何やら愉快な視線が己に向かう事を感じたオユキとしては座りの悪さもあるが。
「不可抗力です。」
「それは、まぁ、そうなのでしょうが。」
「あの子たちに関しては、メイ様からの指示もあるのでしょうから。」
「それは、まぁ、そうですわね。」
教会に寄付として修められるものが増えている。勿論、ここ一年程で起きた色々が影響していないかといわっれば、そんな事も無いだろう。何となれば、内訳から見れば国王陛下その人が持ち込んだものが、他と比べるのも馬鹿々々しいくらいの量ではある。しかし、それ以外の物が埋没しない程度には増えているのだ。
シグルドたちの能力が向上しており、そもそもの動機に教会で暮らす者達の食事事情の改善もあるようで、しっかりとそちらも増えている。それが叶うだけの能力は確かにトモエとオユキが後押ししたのだろうが、日々の物以上とわかる部分についてはメイの指示としか考えられない。
「ダンジョン、ですか。」
「オユキは、トモエがあまり好んでいないと聞きましたが。」
「いえ、頂いた屋敷に四阿を誂えようと考えているので、資材くらいはと。」
流石に、オユキとしても現状のこの町から資材を買い上げるというのは気が引ける。
「あら、良い事ですわね。案はあるのですか。」
「一応は。木造でも良いのですが、屋敷との兼ね合いを考えて、やはり石造りの物をと。合わせて庭園ですね。こちらは幸い花精の方々も定住されるようですから、また別途相談しますが。」
「管理の手が足りますか。」
「教会の子供たちが励んでくれていますし、受け入れ先としても、まぁ、必要でしょうから。」
色々と、打算もあっての事ではあるのだ。
「人口の移動に関しては、ええ、来歴も少し伺いました。知っている方がいれば、こちらも相応に人気があるでしょう。」
「ええ。頭の痛い事に。」
オユキが、それぞれに処理すべき書類が相応に減ったからと口火を切れば、メイがまずはため息から。
「陛下からも、直々に。数は絞って頂けるようですが、賓客の受け入れ先を任せる形で数家移動をとの事です。」
「妥当な所でしょう。」
「そこで、オユキ、四阿の資材をと言いましたね。」
「ダンジョンに関しては私どもで無くとも、問題が無いという話ですが。」
オユキとトモエに狩りが勧められる最たる理由は、トロフィーの存在だ。加護の量が少なく、能力が低い。しかし、技術が秀でているから、少々不相応な魔物を狩ることが多い。その結果として、得られるものが他と比べて多いのだ。比べるのが馬鹿々々しくなるくらいに。一頭の鹿から丸ごと肉が取れるのと、一塊が残されるのでは、肉以外を考えれば猶の事。
「ダンジョンにも秘密があると、そうは思いません事。」
「あの、そうなるとまた騒がしくなりますが。」
「それこそ、今更でしょう。必要な量を集める、今は何よりもそれが重要ですから。」
「私も意外に感じています。」
トモエが狩猟に鍛錬にと勤しんでいる頃、オユキはそれこそ生前と同じように仕事に励んでいる。
「花精とは、私も正式に交渉したのは初めてですが、話しに聞いていた通りといった印象ですわね。」
異邦人二人は、あまりに簡単に終わった交渉にどうにも座りが悪いと感じるものだが、メイの方ではこうなると考えていたと、そう返ってくる。
アイリスからの許諾も条件付きとはいえ得られたため、早速とばかりにメイと共に移り住んできた花精の一団と席を持てばそれが当然とばかりに全ての条件を相手が飲んだ。
居住する区画にしても、森の中、汚染の要因である相手に対する協力すらも。
「そうなのですか。」
「そうであれば、わざわざ待たなくてもと思いますが。」
「これがファンタズマ子爵だけが持ち込んだ事であれば、私も代官として待つ必要は無かったのですが。」
アイリスが河沿いの町に向けて、祖霊からの加護が伸びるよう調整したという事もあるのだろう。その線上に改めて居住用の区画を用意する。何となれば、そちらで用意が可能なら、既にそちらを自由にして構わないと告げれば、寧ろそれを喜んで受け入れられた。話し合いがどうなる事やらと、そう言った様子で場を見守っていた者達がそわそわとする程度には喜んで。
「種族として、それだけの価値があるという事なのでしょうか。」
「穀物に対して強い効果はある、ええ、他の植物もある程度以上の恩恵はあるのでしょうが。」
「仕方ありませんわ。私たちでは、畑の成長を見る以外には知りようがありませんもの。」
「領主としての権能を持っていれば、そのように考えていましたが。」
メイの言葉に、その辺り土地の事、領地の事なのだから領主としての能力で分かるのではないかと。
「生憎と。私もまだまだ領主としては経験不足ですから。」
「権能と呼ばれはしていますが、成程、そのような物ですか。」
こうして、それぞれが書類と向き合いながら、雑談という程仕事から離れてはいないが、それでも実際に手元にあるものとは関係のない話に興じている。
オユキがこの場に連れてこられたのは他でもない。河沿いの町から戦力を抽出するための、事後承諾になるからこそ巫女としての強権を振るえと言わんばかりに、各種書類の確認とサインを書くという何とも過去によくあった業務。メイとケレスは、それこそ放っておけば一日中そうしているのだと分かる程度には、机にうずたかく積んだ書類を次から次へと。
「ケレスさんは、生前と言ってもいいか分かりませんが。」
「嫌いではありませんから。ただ、かつては私に回ってくるものというのはもう意味が薄れて久しいものでしたから。」
「ああ。確かに、そうなりますか。」
裏方、そう言ってしまってもいい部署の最高責任者として、オユキとミズキリが後進に後を譲ってからは、唯一籍を残していた創業時からの人員として。彼女に伺いを立てたいと考える人間は、それはさぞかし多かった事だろう。そして、計画の妥当性や運用に関して知見の無い人物でもその立場が許されるだけの基盤が出来上がっていた。つまり、いよいよ書類を確認して、そんな人物でも分かるエラーが無いかを確認すれば後はサインをするだけ。
「今の私が、まさにそのような業務ですが。」
「メイ様の場合は、御身が決定をしなければ進まないという違いがあります。」
「上位の者の決定を待たずに、進むことがあったのですか。」
「日々の事、ですね。かつての世界では、勿論決裁が必要な事はありましたが、やはり通常業務と申しましょうか、権限を細かく分割していたといいましょうか。採決が出来る人員がいなくとも、日々恙なくと、そうしていましたから。」
メイは、それについては始まりの町でも変わらぬはずだと、実に納得がいかない様子だが。
「新規の事業、計画を始めるとなれば、相応に私たちも忙しくはなりましたが、平時はいよいよまとめられた資料に目を通してサインをして。」
まさに今している仕事、そう変わりは無いのだが。
「ただ、重要では無い事も多かったので、正直月次で十分だったのですよね。」
実際には、それぞれのサイクルで責任者にタスクを任せていたが、ケレスの所にまで回ってくるというものは、稟議書さえなければ月次の報告書位な物だ。
「新興の商会と聞いていましたが、随分と組織として確立していたのですね。」
「それこそ初期は、まぁ、とてもではありませんが利かせられない話も多くありましたが、安定してからは、ケレスさんを始め、ミズキリが基盤を整えましたから。」
同じ目的の為に動いている、それだけは違いなかったが初期の頃は正直誰が何をしているか分かっていない事の方が多かった。ミズキリの用意した場所というのもあるにはあったが、そこに常時、文字通り常時だ、いたのはミズキリ本人とケレス。それともう一人。オユキを始めとした者達は、それこそ連絡一つ寄こしてあちらこちらへと動き回っていたものだ。
「ケレス、今でも過剰な仕事とは分かっていますが。」
「こちらとは制度も違いますから。」
「決裁権を役職ごとに付記して、組織図の概要を作れば良いでしょう。運用の実態としての判断は、メイ様と他の方で行えますから。」
貴族制が残るこの世界では、かつての事など難しいと断じるケレスに対して、オユキから。
如何に社会構造が違うとはいえ、他の類型を知っているのと知らぬのでは、取れる対応がそもそも違う。メイにしても、組織の運用という意味では先に本人が語ったように、新人もいい所。こうした場にはゲラルドが必ずいるはずだろうに、すっかりとケレスに任されて、今は彼もどこぞで走り回っている事だろう。侍従としての仕事はシェリアがいる為、そちらに任せたという事でもあるのだろう。貴族制などと言っても、身の回りにいる者達は、その世界で存分に生きてきた者達であり、伯子女に子爵家当主程度、そう言った位を持つ者達も多いのだ。ならば、役に立たぬという訳もないだろう。現に、ダンジョンに関連する組織を立ち上げようとしたときに、ミズキリが語った組織としての構造は大いに助けになったのだから。
「貴族社会が、総務ですか。」
「営業職も熟されてはいますが、実態はそちらに依っていると思いますよ。」
「夢の無い。」
「夢だけで民が暮らせるのであれば、私がここまで苦労することもなかったでしょう。」
「実に嬉しいお言葉です。」
監督下、為政者の下で暮らす身としては、何とも頼もしい言葉ではある。その内情が全て書かれた書類に向き合って、要点を纏め、疑義があれば別途書き出してとしていると何とも言えない気持ちにはなるのだが。
「それにしても、やはり需要が大いに崩れていますね。」
「陛下が暫く滞在されていましたから、それに合わせてですね。」
「オユキさん。」
「詳細は、また細かく見なければいけないでしょうが、大まかな分類としては加工品の類でしょうね。後は教会から、寄付として受け取った品の報告書ですね。前年とは比べるまでもなく。ここ数カ月は上昇傾向が激しいですね。」
国王陛下その人が滞在した影響に関しても、教会に関しても。この場にその責任の一端を間違いなく持っているものがいる。一先ず目を通した資料の所感として口に出したその結果に、何やら愉快な視線が己に向かう事を感じたオユキとしては座りの悪さもあるが。
「不可抗力です。」
「それは、まぁ、そうなのでしょうが。」
「あの子たちに関しては、メイ様からの指示もあるのでしょうから。」
「それは、まぁ、そうですわね。」
教会に寄付として修められるものが増えている。勿論、ここ一年程で起きた色々が影響していないかといわっれば、そんな事も無いだろう。何となれば、内訳から見れば国王陛下その人が持ち込んだものが、他と比べるのも馬鹿々々しいくらいの量ではある。しかし、それ以外の物が埋没しない程度には増えているのだ。
シグルドたちの能力が向上しており、そもそもの動機に教会で暮らす者達の食事事情の改善もあるようで、しっかりとそちらも増えている。それが叶うだけの能力は確かにトモエとオユキが後押ししたのだろうが、日々の物以上とわかる部分についてはメイの指示としか考えられない。
「ダンジョン、ですか。」
「オユキは、トモエがあまり好んでいないと聞きましたが。」
「いえ、頂いた屋敷に四阿を誂えようと考えているので、資材くらいはと。」
流石に、オユキとしても現状のこの町から資材を買い上げるというのは気が引ける。
「あら、良い事ですわね。案はあるのですか。」
「一応は。木造でも良いのですが、屋敷との兼ね合いを考えて、やはり石造りの物をと。合わせて庭園ですね。こちらは幸い花精の方々も定住されるようですから、また別途相談しますが。」
「管理の手が足りますか。」
「教会の子供たちが励んでくれていますし、受け入れ先としても、まぁ、必要でしょうから。」
色々と、打算もあっての事ではあるのだ。
「人口の移動に関しては、ええ、来歴も少し伺いました。知っている方がいれば、こちらも相応に人気があるでしょう。」
「ええ。頭の痛い事に。」
オユキが、それぞれに処理すべき書類が相応に減ったからと口火を切れば、メイがまずはため息から。
「陛下からも、直々に。数は絞って頂けるようですが、賓客の受け入れ先を任せる形で数家移動をとの事です。」
「妥当な所でしょう。」
「そこで、オユキ、四阿の資材をと言いましたね。」
「ダンジョンに関しては私どもで無くとも、問題が無いという話ですが。」
オユキとトモエに狩りが勧められる最たる理由は、トロフィーの存在だ。加護の量が少なく、能力が低い。しかし、技術が秀でているから、少々不相応な魔物を狩ることが多い。その結果として、得られるものが他と比べて多いのだ。比べるのが馬鹿々々しくなるくらいに。一頭の鹿から丸ごと肉が取れるのと、一塊が残されるのでは、肉以外を考えれば猶の事。
「ダンジョンにも秘密があると、そうは思いません事。」
「あの、そうなるとまた騒がしくなりますが。」
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