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19章 久しぶりの日々
遊ぶように
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「成程。」
「ま、流石に町の周りだ。」
シェリアが一度屋敷の方へ随分な速度で歩いて、走る姿勢はとっていないのだが愉快な速度で、戻ったかと思えば馬車迄もが合わせて用意された。そして、その中から引っ張り出した敷物、椅子に机。町の外、壁を背に随分と寛げる馬が用意された一角に腰を下ろし、魔物についてまとめられた冊子をトモエと頭を並べて読んだ結果、オユキとしては勝手知ったると言い切っても良い範囲ではあった。
「しかし、魔物の行動も少々気になりますね。」
「それか。魔物同士でという事は無いんだがな。」
川が引き込まれ水場が側に生まれた事で、当然というのもまた首を傾げたくなるのだが、変わっている。これまでは目にすることもなかった魔物が現れた。それについては、まだ良い。しかし結界の外。これまでは森から出たとしても僅かであったはずのシカであったりが、当然のように川に水を求めて足を運んでいる。
「確かに、方角に合わせて難易度は上がっていそうですね。」
「俺らも北側はまだ早いって言われたからな。」
「森のある西側ではなく、草原の続く北ですか。いえ、納得の意気そうなものでもありますが。さて。」
話を聞きたいところでもあるのは確か。しかしながら、ようやくのんびりと過ごせる時間が手に入った事もある。手に馴染んだ得物の内いくつかが手元に戻って入れば、もう少し意気揚々と足を前に運んだのだろうが、生憎と今はウーヴェも相応に忙しい。トモエとオユキが強権を振るえば適いそうなものでもあるが、それを望んでいるわけでもない。替えとして用意しているいよいよ数打ち。形すらも真似ができていない物ではあるが。
「さて、なかなか面倒がありそうな手合いですが。」
そして、目を向けた先にはなかなか彩豊かな爬虫類もいれば、地面が露出していれば保護色と言い切っても良い色合いをしたものがのそのそと歩き回っている。
「トリトンとサラマンドラですね。」
「サンショウの方は、有名な書籍にも記載がありましたか。」
「そうなのか。」
トラノスケに心当たりはないらしい。少年たちの方を見ても、あまりこちらに足を延ばしていなかったのか、口にすることが無かったのか。得られるだろうものに、そこまでの興味があるようには見えない。
「あいつら、面倒であんま狙わなかったんだよな。」
「ね。動きは遅いからいいんだけど、表面が滑るし。」
「刃筋を立てる練習には、良い相手という事ですね。」
苦手意識がどうやらあるらしい。見た目にしても、まぁ確かに好みが別れるであろうし、これまで目にしたものに比べれば、明らかに異質でもある。
「難易度としては、歩きキノコとそう差はありませんからね。さて、どちらが上位でしたか。」
「トリトンだな。毒もある。」
「ああ。そう言えば、そのような話でしたね。古来から生薬ともされていましたし、生物濃縮の一環ですから、こちらでは違う由縁とは思いますが。」
加えてイモリと言っても種によって、こちらも様々。オユキの記憶にあるものは、そもそも毒々しい色合いを見せるのは腹部だけなのだが、こちらではしっかりと背中側も警戒色とはかくあるべしといった色味を呈している。そして毒と聞いて少々警戒を示す相手もいるが。
「既に討伐されている方もいるのでしょう。そちらの方々に明確に症状が出ていないのなら、やはり私どもの知識にあるもの多は違うのでしょう。」
「ま、そうだな。俺も何度も討伐してるが今のところ何ともない。それにあっちの客人たちは喜んで食ってるしな。」
そうしてトラノスケが視線を向ける先には、空に浮かぶ巨大な岩の塊。シグルドにした約束もある。そろそろそれを果たすためにも、カナリアに戻ってきてほしいものではあるが。
「そういや、トモエは爬虫類や両生類は大丈夫なのか。」
「ええ。どちらも問題ありません。」
「そう言えばトードもいましたか。流石に少し距離はあるでしょうが。」
それこそ、愉快な大きさの蛙なども少し足を進めればいそうなものではある。ただ、まぁ、旅行を好んでいたのだ。
「鶏肉よりも淡白でしたから、オユキさんも気兼ねなく食べられそうですね。」
「匂いは、それこそアルノーさんに頼めばよいでしょうから。」
当然、既に食料として見ることは出来ている。トモエの言うように、トモエが食料とすることもあると知ったとして克服できなかったのは、足の多い虫だけ。
「では、参りましょうか。」
何時までも鍛錬の場の側に、その時間としているというのに。何もせぬというのは、やはり勿体ないと感じるものだ。久しぶりというほどでもないが、麗らかな陽気の下、こうして穏やかに時間を過ごすのも悪くない。視線を遮るのは建造物ではなく、自然そのもの。ならばそれをのんびりと眺めるというのも楽しくはあるが。
「気を付けるべきところは、ええ、資料に書いてあった通り。それから。」
「種の特徴として、表面にぬめりがあるでしょう。それに抗する為には、鋭さと速さが要りますね。」
「へー。」
「そうですね、皆さんもそろそろ魚の料理なども出来そうですが。」
「そちらは、同じ成分でしたか。」
トモエが例示している物について、オユキからものんびりと。流石に生物学迄詳細に学んでいるわけでは無い。
「言われてみれば、そうですね。まぁ、結果は変わらないでしょう。手入れが少し困りますが。」
「あー、それか。ウーヴェのおっさんが、流石に慣れない類だから、基本研ぐっつてたな。」
「魚と同じであれば熱変性するので、加熱すれば落としやすくなりますし塩を使う方法もありますが。」
「その場合、打ち直しの際に炉に不純物が溜まる事になるのでしょうか。炭化してくれるのであればとも思いますが。」
そうして、そうして話しながらも少年たちを後ろに置いて魔物が闊歩する領域へ。
トモエもオユキも、どうした所で疲労は残っている。四半期も馬車に乗って移動を暮らしとしていれば、如何に居住性が上がっていようとも限界などある。鍛錬にしても、最低限を維持するものがどれだけ多かった事か。
「改めて、確認しながらとしましょうか。」
「そうですね。カングレホなどもいますし。」
見覚えのない相手にどうした所で視線が向いていたものだが、当然見慣れた魔物というのもあちこちにいる。水を飲みに来る、草原や森を住処とする魔物、水辺を生息域とするものもいれば、時折明らかに水棲と分かる魔物らしきものが水面を叩きに飛び出したりもしている。
「あちらは、釣り上げてどうにかなるのでしょうか。」
「浅瀬で試すのも良い鍛錬でしょう。足腰には良いですから。」
さて、評価としてはやはりそうなる。
「動きは鈍く、的も大きい。そして、四肢を持っていると。」
「ええ。重量が厄介、と言った所とやはり打撃は通りが悪そうですね。」
結界を踏み越えて少し歩けば、変わらずのそのそとした地を這うような動きで、狙いを定めたと言わんばかりに近づいてくる。
「動く相手の練習には、成程良い相手でしょう。」
「しかし、相性は出そうですね。」
そして、近寄って気相手は順に切り分けられていくだけだ。こちらに来たばかりの頃、武器にもなれず、体の扱いにも慣れていなかったころとはすでに違う。如何に今手に持つ武器が、馴染んでいないとはいえただのろのろと動くだけの相手を一息に切り捨てる事など造作もない。かつて歩きキノコ、よく似た特徴を持つ相手に手間取ったことなど、そうなるだけの不慣れがあったというだけだ。
「そうですね、こちらに向かって動いているわけですから、正面から当たれば余勢をかってその重量に潰される子もいそうですね。」
「このあたりを踏まえて、盾を使い正面から迎え撃つ、そうした戦術が発展していったのでしょうか。」
一先ずはサラマンドラ、和名で言えばサンショウウオをトモエとオユキで切り捨てる。かつての世界であれば、冗談では済まない行為ではあるが、こちらでは放っておいてもそこらから発生するのだ。口にしたいものだと考えても、それこそ国を選んだところで難しい。であればこそ、成程、こちらならではの楽しみと言えるだろう。
「アルノーさんは、ご存知でしょうか。」
「さて、そればかりはいよいよ尋ねてみなければ。一応香味野菜と煮込むのが良いとされていた、それくらいは伝えますが。」
ではと、まずはその方法で作り味を見た上で彼はそこに更なる工夫を、思いもしない何かを果敢に試していくことだろう。
「それと、あちらは。」
「記憶違いでなければ、フグと同じ種類です。海洋生物が発生させ、生物濃縮が起きるとかそのような流れだったと思いますので、当然生育環境によっては無毒化もあるとは思いますが。」
相手の方が大きく、重量についても想像したくないほどに差があると見えるのだ。当然真っ向から迎え撃つのではなく、立ち位置をずらし脇を抜け。そして、すれ違いざまについでとばかりに剣の腹で打ってみたりとそれぞれの効果を確かめる。
「成程。こちらならではの物もありますし、あの子たちには当身を教える予定ですから、こちら側は向いていませんね。」
「ええ。景色は良く、心地よい風も吹くのですが。」
「ならば、折に触れてピクニックにでも出ましょうか。センヨウも結界の中であれば。」
「あの子達なら、この程度の魔物相手ならば蹴散らしてとしそうなものですが。」
そうして話しながらも、サンショウウオよりも早く近づいてきたイモリを、まずはトモエが前肢を切りそのまま地面を滑らせる。そして、慣性に従うだけの相手へのとどめはオユキが。
「確かに、どちらも少し滑りますね。それに。」
「ええ。切った感触は柔らかい、しかし欠けている。となると。」
そうなると心当たりは、酸となる。気が付いた時には、少し離れた場所で足を止めたイモリが上体を起こす動きを見せたため、トモエがそれを遠間から切り捨てる。
「報告が無かったのは、見落としか、それとも種類の確認だけを優先したか。」
「後者でしょう。情報が無いのであれば、頼むべきはより安全と言える相手です。」
どうやらシグルドたちに許されたのは、サンショウウオまでという事であるらしい。もう少し川に向けて歩けば、既に対応できると分かっているカングレホも歩いている。そして、少々賑やかに動いたこともあり、向かってくる魔物の数も増え始める。背後では、少年たちもそろそろかと武器を構え、周囲に散った護衛がまたかと言わんばかりに数の調整を。
「成程、蛙に、あちらに見えるは亀ですか。」
さて、楽しい時間になりそうだと。
「ま、流石に町の周りだ。」
シェリアが一度屋敷の方へ随分な速度で歩いて、走る姿勢はとっていないのだが愉快な速度で、戻ったかと思えば馬車迄もが合わせて用意された。そして、その中から引っ張り出した敷物、椅子に机。町の外、壁を背に随分と寛げる馬が用意された一角に腰を下ろし、魔物についてまとめられた冊子をトモエと頭を並べて読んだ結果、オユキとしては勝手知ったると言い切っても良い範囲ではあった。
「しかし、魔物の行動も少々気になりますね。」
「それか。魔物同士でという事は無いんだがな。」
川が引き込まれ水場が側に生まれた事で、当然というのもまた首を傾げたくなるのだが、変わっている。これまでは目にすることもなかった魔物が現れた。それについては、まだ良い。しかし結界の外。これまでは森から出たとしても僅かであったはずのシカであったりが、当然のように川に水を求めて足を運んでいる。
「確かに、方角に合わせて難易度は上がっていそうですね。」
「俺らも北側はまだ早いって言われたからな。」
「森のある西側ではなく、草原の続く北ですか。いえ、納得の意気そうなものでもありますが。さて。」
話を聞きたいところでもあるのは確か。しかしながら、ようやくのんびりと過ごせる時間が手に入った事もある。手に馴染んだ得物の内いくつかが手元に戻って入れば、もう少し意気揚々と足を前に運んだのだろうが、生憎と今はウーヴェも相応に忙しい。トモエとオユキが強権を振るえば適いそうなものでもあるが、それを望んでいるわけでもない。替えとして用意しているいよいよ数打ち。形すらも真似ができていない物ではあるが。
「さて、なかなか面倒がありそうな手合いですが。」
そして、目を向けた先にはなかなか彩豊かな爬虫類もいれば、地面が露出していれば保護色と言い切っても良い色合いをしたものがのそのそと歩き回っている。
「トリトンとサラマンドラですね。」
「サンショウの方は、有名な書籍にも記載がありましたか。」
「そうなのか。」
トラノスケに心当たりはないらしい。少年たちの方を見ても、あまりこちらに足を延ばしていなかったのか、口にすることが無かったのか。得られるだろうものに、そこまでの興味があるようには見えない。
「あいつら、面倒であんま狙わなかったんだよな。」
「ね。動きは遅いからいいんだけど、表面が滑るし。」
「刃筋を立てる練習には、良い相手という事ですね。」
苦手意識がどうやらあるらしい。見た目にしても、まぁ確かに好みが別れるであろうし、これまで目にしたものに比べれば、明らかに異質でもある。
「難易度としては、歩きキノコとそう差はありませんからね。さて、どちらが上位でしたか。」
「トリトンだな。毒もある。」
「ああ。そう言えば、そのような話でしたね。古来から生薬ともされていましたし、生物濃縮の一環ですから、こちらでは違う由縁とは思いますが。」
加えてイモリと言っても種によって、こちらも様々。オユキの記憶にあるものは、そもそも毒々しい色合いを見せるのは腹部だけなのだが、こちらではしっかりと背中側も警戒色とはかくあるべしといった色味を呈している。そして毒と聞いて少々警戒を示す相手もいるが。
「既に討伐されている方もいるのでしょう。そちらの方々に明確に症状が出ていないのなら、やはり私どもの知識にあるもの多は違うのでしょう。」
「ま、そうだな。俺も何度も討伐してるが今のところ何ともない。それにあっちの客人たちは喜んで食ってるしな。」
そうしてトラノスケが視線を向ける先には、空に浮かぶ巨大な岩の塊。シグルドにした約束もある。そろそろそれを果たすためにも、カナリアに戻ってきてほしいものではあるが。
「そういや、トモエは爬虫類や両生類は大丈夫なのか。」
「ええ。どちらも問題ありません。」
「そう言えばトードもいましたか。流石に少し距離はあるでしょうが。」
それこそ、愉快な大きさの蛙なども少し足を進めればいそうなものではある。ただ、まぁ、旅行を好んでいたのだ。
「鶏肉よりも淡白でしたから、オユキさんも気兼ねなく食べられそうですね。」
「匂いは、それこそアルノーさんに頼めばよいでしょうから。」
当然、既に食料として見ることは出来ている。トモエの言うように、トモエが食料とすることもあると知ったとして克服できなかったのは、足の多い虫だけ。
「では、参りましょうか。」
何時までも鍛錬の場の側に、その時間としているというのに。何もせぬというのは、やはり勿体ないと感じるものだ。久しぶりというほどでもないが、麗らかな陽気の下、こうして穏やかに時間を過ごすのも悪くない。視線を遮るのは建造物ではなく、自然そのもの。ならばそれをのんびりと眺めるというのも楽しくはあるが。
「気を付けるべきところは、ええ、資料に書いてあった通り。それから。」
「種の特徴として、表面にぬめりがあるでしょう。それに抗する為には、鋭さと速さが要りますね。」
「へー。」
「そうですね、皆さんもそろそろ魚の料理なども出来そうですが。」
「そちらは、同じ成分でしたか。」
トモエが例示している物について、オユキからものんびりと。流石に生物学迄詳細に学んでいるわけでは無い。
「言われてみれば、そうですね。まぁ、結果は変わらないでしょう。手入れが少し困りますが。」
「あー、それか。ウーヴェのおっさんが、流石に慣れない類だから、基本研ぐっつてたな。」
「魚と同じであれば熱変性するので、加熱すれば落としやすくなりますし塩を使う方法もありますが。」
「その場合、打ち直しの際に炉に不純物が溜まる事になるのでしょうか。炭化してくれるのであればとも思いますが。」
そうして、そうして話しながらも少年たちを後ろに置いて魔物が闊歩する領域へ。
トモエもオユキも、どうした所で疲労は残っている。四半期も馬車に乗って移動を暮らしとしていれば、如何に居住性が上がっていようとも限界などある。鍛錬にしても、最低限を維持するものがどれだけ多かった事か。
「改めて、確認しながらとしましょうか。」
「そうですね。カングレホなどもいますし。」
見覚えのない相手にどうした所で視線が向いていたものだが、当然見慣れた魔物というのもあちこちにいる。水を飲みに来る、草原や森を住処とする魔物、水辺を生息域とするものもいれば、時折明らかに水棲と分かる魔物らしきものが水面を叩きに飛び出したりもしている。
「あちらは、釣り上げてどうにかなるのでしょうか。」
「浅瀬で試すのも良い鍛錬でしょう。足腰には良いですから。」
さて、評価としてはやはりそうなる。
「動きは鈍く、的も大きい。そして、四肢を持っていると。」
「ええ。重量が厄介、と言った所とやはり打撃は通りが悪そうですね。」
結界を踏み越えて少し歩けば、変わらずのそのそとした地を這うような動きで、狙いを定めたと言わんばかりに近づいてくる。
「動く相手の練習には、成程良い相手でしょう。」
「しかし、相性は出そうですね。」
そして、近寄って気相手は順に切り分けられていくだけだ。こちらに来たばかりの頃、武器にもなれず、体の扱いにも慣れていなかったころとはすでに違う。如何に今手に持つ武器が、馴染んでいないとはいえただのろのろと動くだけの相手を一息に切り捨てる事など造作もない。かつて歩きキノコ、よく似た特徴を持つ相手に手間取ったことなど、そうなるだけの不慣れがあったというだけだ。
「そうですね、こちらに向かって動いているわけですから、正面から当たれば余勢をかってその重量に潰される子もいそうですね。」
「このあたりを踏まえて、盾を使い正面から迎え撃つ、そうした戦術が発展していったのでしょうか。」
一先ずはサラマンドラ、和名で言えばサンショウウオをトモエとオユキで切り捨てる。かつての世界であれば、冗談では済まない行為ではあるが、こちらでは放っておいてもそこらから発生するのだ。口にしたいものだと考えても、それこそ国を選んだところで難しい。であればこそ、成程、こちらならではの楽しみと言えるだろう。
「アルノーさんは、ご存知でしょうか。」
「さて、そればかりはいよいよ尋ねてみなければ。一応香味野菜と煮込むのが良いとされていた、それくらいは伝えますが。」
ではと、まずはその方法で作り味を見た上で彼はそこに更なる工夫を、思いもしない何かを果敢に試していくことだろう。
「それと、あちらは。」
「記憶違いでなければ、フグと同じ種類です。海洋生物が発生させ、生物濃縮が起きるとかそのような流れだったと思いますので、当然生育環境によっては無毒化もあるとは思いますが。」
相手の方が大きく、重量についても想像したくないほどに差があると見えるのだ。当然真っ向から迎え撃つのではなく、立ち位置をずらし脇を抜け。そして、すれ違いざまについでとばかりに剣の腹で打ってみたりとそれぞれの効果を確かめる。
「成程。こちらならではの物もありますし、あの子たちには当身を教える予定ですから、こちら側は向いていませんね。」
「ええ。景色は良く、心地よい風も吹くのですが。」
「ならば、折に触れてピクニックにでも出ましょうか。センヨウも結界の中であれば。」
「あの子達なら、この程度の魔物相手ならば蹴散らしてとしそうなものですが。」
そうして話しながらも、サンショウウオよりも早く近づいてきたイモリを、まずはトモエが前肢を切りそのまま地面を滑らせる。そして、慣性に従うだけの相手へのとどめはオユキが。
「確かに、どちらも少し滑りますね。それに。」
「ええ。切った感触は柔らかい、しかし欠けている。となると。」
そうなると心当たりは、酸となる。気が付いた時には、少し離れた場所で足を止めたイモリが上体を起こす動きを見せたため、トモエがそれを遠間から切り捨てる。
「報告が無かったのは、見落としか、それとも種類の確認だけを優先したか。」
「後者でしょう。情報が無いのであれば、頼むべきはより安全と言える相手です。」
どうやらシグルドたちに許されたのは、サンショウウオまでという事であるらしい。もう少し川に向けて歩けば、既に対応できると分かっているカングレホも歩いている。そして、少々賑やかに動いたこともあり、向かってくる魔物の数も増え始める。背後では、少年たちもそろそろかと武器を構え、周囲に散った護衛がまたかと言わんばかりに数の調整を。
「成程、蛙に、あちらに見えるは亀ですか。」
さて、楽しい時間になりそうだと。
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