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17章 次なる旅は
初めての領都へ
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オユキのというよりも、魔国と繋がる予定の門、フスカを始めとした翼人種への配慮をという事まで含めて、正式に風翼の門と命名された。合わせて、神殿に鎮座している今は箱についても、風翼の礎と。今はオユキとトモエ、それから先代アルゼオ公爵夫妻が同じ馬車に乗り込み、のんびりと飲み物を口にしながら一路アルゼオ公爵領の領都を目指している。
出立は、少々ごたつくだろうと。オユキはそのように考えていた。多少どころでは無い反感を買うだろうと。
「一部、そのような物がいる事は否定しませんが。」
「ええ。それはあまりに悲観が過ぎるでしょう。」
王都までと変わらぬ程度には急いで移動している馬車の中、王都でさらに大型化し、安定感も、大型船程度に感じられた揺れも今はすっかりと無い広げられた空間で、こうして王都を出る前の事を思い返しながら話している。
「威を借りて、好き放題と。見ようによってはそのように。」
「巫女様が居られても難しい神降ろし、それをこの国には神殿の無い柱迄行って頂いたのです。」
「以前、巫女の仕事と聞きましたが。」
「それこそ、陛下の代替わりなど、極稀な事です。」
凡そオユキの予測というのが大いに外れる要因として、こちらの世界の神の権威というものがある。
神々の存在が思ったよりも遠いのだと、そこまで思考を進め。では、それを大いに身近に感じる事が出来るようにしたものに向けられる感情が、どのような物か。距離が遠いとはいっても、こちらの人々は確かな感謝を胸に暮らしてはいるのだ。壁の外、魔物が跋扈するそこに、戦闘などできぬ者達が、それでも行われる祭りに参加しようと考える程度には。それこそ、王都の騎士達、その確かがこれまであっての上での事ではあろうが。
「成程。それにしても、護衛の方々には、随分と面倒を。」
「そればかりは、確かに否定は出来ませんな。」
先代アルゼオ公爵が、オユキのため息交じりの感想に、笑いながら応える。
本当に、神殿に迄出る、それだけの事が困難であったのだ。任命式そのものは、恙なく進んだ。今も馬車の中、椅子から立ち上がるときにトモエの補助がいる様な状態であり、式そのものもそれに配慮する形でとなった。国司としての先代アルゼオ公爵は、しっかりと王城で勅命を受けてとなっているが、オユキの方はマリーア公爵家の本邸の庭で王太子が勅使を務めてという形式であった。オユキ以外の参加者への配慮というものも大いに理由にある。今回はファルコと、彼の友人二人。それも隣国へと同行する。次の代を生きる者として、この機会に彼の国を見た上で、社交を重ねて来いと。そして、王太子はそのままの足で学び舎に向かい、今度は始まりの町へと送り出す今は学籍を持たぬ者達へも話があると、そう言い残して実に簡素な時間であった。
そして、それが終わればいざ出発と。貴族たちの暮らす区画。過去から変わらずそこにある壁、それを一枚超えた先からが、非常に困難であったのだ。
暴徒と呼ぶのはまた異なりはするが、そこでは群衆が待ち構えていたのだ。
愉快な速度で走る馬車、そこで生まれる騒音を中に届けぬというのに、それでもしっかりと馬車の中に迄外の騒ぎは聞こえてきた。治めるには顔を出さねばならぬかと、動けぬオユキに変わって動こうとすれば、アベルが飛び込んできて絶対に顔を出すなと厳命された物だ。
代わりに、隣国と接する領の最終的な管理者である先代アルゼオ公爵が、アベルに連れ出されこれからの事の説明であったりを早速頼むことになった物だ。そして、では、その危険な旅路に僅かな贈り物を、食料は足りているのか、先の祭りで得た物を、保存食に、装飾にとそう言う話を誰かが思い思いに口に出し、そ個からまた一騒動というものだ。
そこにあるのは、ただ善意であり、心からの贈り物をと願う者達でしかない。騎士達が守る一定の距離それを侵すこともない。暴徒ではない。しかし、梃子でも動かぬと、せめて一目見てお礼を言うだけでもと、そのようなにらみ合いが起こった。守るべき民に対して、護衛の騎士達も当然無体など働けるわけもなく馬車はそのまましばらくの間止まり続け、動き出してからも、ただじりじりとそう進むばかりとなった。民衆は、一定の距離は許可が出なければ保。しかし、あまりに集まった数が多く、無理に急げばそれこそ人が人を倒し大けがの要因になるからと、細心の注意を払って。
「初日から予定を変える事になろうとは。」
「こればかりは、どうにも。」
「ええ。これまでやはり距離を取ってきた私たち、その予測の甘さというしかないものでしょうから。」
そして、出立がそのように大いに遅れれば、旅程というのも変えざるを得ない。
オユキの最初の想定から、だいぶ意味は変わってしまっているが、逃げるように王都を出たのは、だいぶ時間が経っての事。そして今度は神殿に向かい、こちらもその様子を聞いていたであろう大司教と巫女から、楽しげに笑いながら既に運ぶべきものは荷馬車に積まれたと言われれば、早々にそれを受け取ったといい残して、今はアルゼオ公爵が王都に入る前に用意を整える町へと向けて移動している。本来であれば、今日の宿泊予定地はさらにその先であったのだが。
「そう言えば、受け入れの準備は。突然の事ですが。」
「王都には主要な門だけでも4つ。他にも細かいものもいくつか。」
「他の所も、同様になっているかとも思いましたが。」
「何、神殿に向かう道は一つ。それは流石に王都に暮らす誰もが知っている事です。」
「だとすれば、あの広大な王都で、わざわざですか。」
「それだけ、皆感謝しているという事ですよ。陛下の宣言もあり、それは民にも向けると。」
驚くべきことに、そう言えばいいのだろうか。アルゼオ公爵に預けた馬車を拡大するための新たな魔術。こうしてゆったりと旅をするために使う、それ以外の最初の使い道として。町に暮らす人々が、改めて己の住処を自由に選べるのだと、そうするのだと。流石に常にとはいかず、今回だけの事ではあるが。今頃は既に如何に風聞を広めるか、それを各領主が頭を悩ませている事であろう。
「しかし、マリーア公は、受け入れの人数に上限をと。」
「この騒動を引き起こした元凶を、抱える訳でもありますから。」
マリーア公爵が、翌日ようやく意識を取り戻したオユキとの食事の席で、実に重々しく語ったことがそれだ。
「国王陛下も、なかなかうまい策を考えるものですね。」
「この広大な神国を、まとめ上げた御方でもある。当然一筋縄でなど行かぬとも。」
そして、オユキの感想はそれ以外の何物でもない。面識など無いに等しい相手、公式の行事で予定に無い事を平然と捩じ込む様子を聞き、随分となどと考えていたものだが、想像以上の曲者であるらしい。
「それにしても、こうしていられる空間など得られないかとも思いましたが。」
そして話がまた陸でも無い方向に転がろうとし始めたため、トモエが軌道修正を図る。
「そちらは別にと、そのように纏まりました。」
今使っている馬車については、オユキとトモエ、先代アルゼオ公爵夫妻が利用する。そして空いた空間では、今こうしてのんびりと楽しんでいる飲み物であったりを用意してくれる使用人が。そして、どうした所で大いに揺れる馬車本体の空間には、護衛が乗り込んでいる。労働環境の差異に、実に多くの不満を貯め込みそうな配置ではあるが、それこそやむを得ない。護衛が出来るほどの物がなければ、とても耐えられない速度で馬車が駆け抜けるのだから。
そして、他に頼まれている多くの荷物はと言えば、実のところそこまで多くない。てっきり長蛇の列で、そうなるかと思えば、今回はまず門をという事とするらしい。他国との間で、情報の交換が叶うのか。そちらについてはオユキも若干の疑念はあった。実際にアイリスの国に向けて送り出した人員、これが返ってこなければアイリスの処遇が決まらないという話もあったため、恐らく叶わないものとして。
そこで、まずは実物にと言われたのであれば、あくまで国王、領地に対してある親子関係のような物、国内のみで機能する最低限のネットワーク、そのような物であるのだろうと。今は、そのように納得している。
「アルゼオ公爵領を考えれば、其の方が良いでしょうし。」
そして、纏まったのではなく、纏め切った相手がこうして目の前にいる。
魔国との関係を考えるのに、今は間違いなく切っても切り離せない人間が。
「さて、惚けて見せるのも良いかとは思いますが。」
「韜晦してというのも、良い物でしょう。しかし。」
少なくとも、ここまでの短い期間。そこでこうして互いに言葉で遊ぶ程度の関係性は、どうにか構築できてはいる。実年齢が近いこともあり、何かと波長が合うのだ。また、魔道具を取り扱う事を多く経験してきた相手でもあり、背景にある技術に目を向け続けてきたという、その生い立ちにしてもやはりどこか似通っている。良き友人、楽しい話し相手になれるだろうと、そう思えるほどに。マリーア公爵とは、いよいよ共犯関係というのが前提にあり、あまり気の置けない関係というのは、やはり難しい。
「私どもにも、目的があるわけですから。」
「日程の確保は、可能な限り。お約束できるのはどうした所で。」
「その辺り、詳しい事は後程改めてお伺いしても。」
「出立までの間にとも思いましたが、やはりお互いに忙しいこともありましたから。」
そうしてオユキの要望を、軽やかに交わすこの人物にしても、長く隣国との交渉に身をやつしてた来た経験というのが、何処までも感じられる。確約というのは、何処までも避けられる。つまり、そうしなければいけない理由に、心当たりがあるという事でもあるらしい。
「今日は、まぁ、いよいよ遅れの生まれた一日です。どこかで取り戻すでしょうが、だからこそ。」
「そうですね。日程の確認はやはり必要ではありますし。」
「私どもが勝手な推測で構えを作る、それでも宜しければ。」
「それは、流石にご遠慮いただきたいものです。」
何も話さないのであれば、ではオユキはオユキでトモエの為に。これまでと変わらず、ただそれを行う。そして、他国でも、この世界であればこそ変わらぬものが存在する。そちらを頼ってもいいのだぞと。
そうして、互いに軽く刃を覗かせながらも、結局はそれを楽しんでいる。それが楽しめるだけの関係性、それを育むことができるだけの時間があったこと。オユキはただトモエに感謝を。こうして楽しい遊び相手と旅行ができる。広くなったとはいえ、窓もない馬車の中。長時間、仕事ばかりではやはり息が詰まる。
出立は、少々ごたつくだろうと。オユキはそのように考えていた。多少どころでは無い反感を買うだろうと。
「一部、そのような物がいる事は否定しませんが。」
「ええ。それはあまりに悲観が過ぎるでしょう。」
王都までと変わらぬ程度には急いで移動している馬車の中、王都でさらに大型化し、安定感も、大型船程度に感じられた揺れも今はすっかりと無い広げられた空間で、こうして王都を出る前の事を思い返しながら話している。
「威を借りて、好き放題と。見ようによってはそのように。」
「巫女様が居られても難しい神降ろし、それをこの国には神殿の無い柱迄行って頂いたのです。」
「以前、巫女の仕事と聞きましたが。」
「それこそ、陛下の代替わりなど、極稀な事です。」
凡そオユキの予測というのが大いに外れる要因として、こちらの世界の神の権威というものがある。
神々の存在が思ったよりも遠いのだと、そこまで思考を進め。では、それを大いに身近に感じる事が出来るようにしたものに向けられる感情が、どのような物か。距離が遠いとはいっても、こちらの人々は確かな感謝を胸に暮らしてはいるのだ。壁の外、魔物が跋扈するそこに、戦闘などできぬ者達が、それでも行われる祭りに参加しようと考える程度には。それこそ、王都の騎士達、その確かがこれまであっての上での事ではあろうが。
「成程。それにしても、護衛の方々には、随分と面倒を。」
「そればかりは、確かに否定は出来ませんな。」
先代アルゼオ公爵が、オユキのため息交じりの感想に、笑いながら応える。
本当に、神殿に迄出る、それだけの事が困難であったのだ。任命式そのものは、恙なく進んだ。今も馬車の中、椅子から立ち上がるときにトモエの補助がいる様な状態であり、式そのものもそれに配慮する形でとなった。国司としての先代アルゼオ公爵は、しっかりと王城で勅命を受けてとなっているが、オユキの方はマリーア公爵家の本邸の庭で王太子が勅使を務めてという形式であった。オユキ以外の参加者への配慮というものも大いに理由にある。今回はファルコと、彼の友人二人。それも隣国へと同行する。次の代を生きる者として、この機会に彼の国を見た上で、社交を重ねて来いと。そして、王太子はそのままの足で学び舎に向かい、今度は始まりの町へと送り出す今は学籍を持たぬ者達へも話があると、そう言い残して実に簡素な時間であった。
そして、それが終わればいざ出発と。貴族たちの暮らす区画。過去から変わらずそこにある壁、それを一枚超えた先からが、非常に困難であったのだ。
暴徒と呼ぶのはまた異なりはするが、そこでは群衆が待ち構えていたのだ。
愉快な速度で走る馬車、そこで生まれる騒音を中に届けぬというのに、それでもしっかりと馬車の中に迄外の騒ぎは聞こえてきた。治めるには顔を出さねばならぬかと、動けぬオユキに変わって動こうとすれば、アベルが飛び込んできて絶対に顔を出すなと厳命された物だ。
代わりに、隣国と接する領の最終的な管理者である先代アルゼオ公爵が、アベルに連れ出されこれからの事の説明であったりを早速頼むことになった物だ。そして、では、その危険な旅路に僅かな贈り物を、食料は足りているのか、先の祭りで得た物を、保存食に、装飾にとそう言う話を誰かが思い思いに口に出し、そ個からまた一騒動というものだ。
そこにあるのは、ただ善意であり、心からの贈り物をと願う者達でしかない。騎士達が守る一定の距離それを侵すこともない。暴徒ではない。しかし、梃子でも動かぬと、せめて一目見てお礼を言うだけでもと、そのようなにらみ合いが起こった。守るべき民に対して、護衛の騎士達も当然無体など働けるわけもなく馬車はそのまましばらくの間止まり続け、動き出してからも、ただじりじりとそう進むばかりとなった。民衆は、一定の距離は許可が出なければ保。しかし、あまりに集まった数が多く、無理に急げばそれこそ人が人を倒し大けがの要因になるからと、細心の注意を払って。
「初日から予定を変える事になろうとは。」
「こればかりは、どうにも。」
「ええ。これまでやはり距離を取ってきた私たち、その予測の甘さというしかないものでしょうから。」
そして、出立がそのように大いに遅れれば、旅程というのも変えざるを得ない。
オユキの最初の想定から、だいぶ意味は変わってしまっているが、逃げるように王都を出たのは、だいぶ時間が経っての事。そして今度は神殿に向かい、こちらもその様子を聞いていたであろう大司教と巫女から、楽しげに笑いながら既に運ぶべきものは荷馬車に積まれたと言われれば、早々にそれを受け取ったといい残して、今はアルゼオ公爵が王都に入る前に用意を整える町へと向けて移動している。本来であれば、今日の宿泊予定地はさらにその先であったのだが。
「そう言えば、受け入れの準備は。突然の事ですが。」
「王都には主要な門だけでも4つ。他にも細かいものもいくつか。」
「他の所も、同様になっているかとも思いましたが。」
「何、神殿に向かう道は一つ。それは流石に王都に暮らす誰もが知っている事です。」
「だとすれば、あの広大な王都で、わざわざですか。」
「それだけ、皆感謝しているという事ですよ。陛下の宣言もあり、それは民にも向けると。」
驚くべきことに、そう言えばいいのだろうか。アルゼオ公爵に預けた馬車を拡大するための新たな魔術。こうしてゆったりと旅をするために使う、それ以外の最初の使い道として。町に暮らす人々が、改めて己の住処を自由に選べるのだと、そうするのだと。流石に常にとはいかず、今回だけの事ではあるが。今頃は既に如何に風聞を広めるか、それを各領主が頭を悩ませている事であろう。
「しかし、マリーア公は、受け入れの人数に上限をと。」
「この騒動を引き起こした元凶を、抱える訳でもありますから。」
マリーア公爵が、翌日ようやく意識を取り戻したオユキとの食事の席で、実に重々しく語ったことがそれだ。
「国王陛下も、なかなかうまい策を考えるものですね。」
「この広大な神国を、まとめ上げた御方でもある。当然一筋縄でなど行かぬとも。」
そして、オユキの感想はそれ以外の何物でもない。面識など無いに等しい相手、公式の行事で予定に無い事を平然と捩じ込む様子を聞き、随分となどと考えていたものだが、想像以上の曲者であるらしい。
「それにしても、こうしていられる空間など得られないかとも思いましたが。」
そして話がまた陸でも無い方向に転がろうとし始めたため、トモエが軌道修正を図る。
「そちらは別にと、そのように纏まりました。」
今使っている馬車については、オユキとトモエ、先代アルゼオ公爵夫妻が利用する。そして空いた空間では、今こうしてのんびりと楽しんでいる飲み物であったりを用意してくれる使用人が。そして、どうした所で大いに揺れる馬車本体の空間には、護衛が乗り込んでいる。労働環境の差異に、実に多くの不満を貯め込みそうな配置ではあるが、それこそやむを得ない。護衛が出来るほどの物がなければ、とても耐えられない速度で馬車が駆け抜けるのだから。
そして、他に頼まれている多くの荷物はと言えば、実のところそこまで多くない。てっきり長蛇の列で、そうなるかと思えば、今回はまず門をという事とするらしい。他国との間で、情報の交換が叶うのか。そちらについてはオユキも若干の疑念はあった。実際にアイリスの国に向けて送り出した人員、これが返ってこなければアイリスの処遇が決まらないという話もあったため、恐らく叶わないものとして。
そこで、まずは実物にと言われたのであれば、あくまで国王、領地に対してある親子関係のような物、国内のみで機能する最低限のネットワーク、そのような物であるのだろうと。今は、そのように納得している。
「アルゼオ公爵領を考えれば、其の方が良いでしょうし。」
そして、纏まったのではなく、纏め切った相手がこうして目の前にいる。
魔国との関係を考えるのに、今は間違いなく切っても切り離せない人間が。
「さて、惚けて見せるのも良いかとは思いますが。」
「韜晦してというのも、良い物でしょう。しかし。」
少なくとも、ここまでの短い期間。そこでこうして互いに言葉で遊ぶ程度の関係性は、どうにか構築できてはいる。実年齢が近いこともあり、何かと波長が合うのだ。また、魔道具を取り扱う事を多く経験してきた相手でもあり、背景にある技術に目を向け続けてきたという、その生い立ちにしてもやはりどこか似通っている。良き友人、楽しい話し相手になれるだろうと、そう思えるほどに。マリーア公爵とは、いよいよ共犯関係というのが前提にあり、あまり気の置けない関係というのは、やはり難しい。
「私どもにも、目的があるわけですから。」
「日程の確保は、可能な限り。お約束できるのはどうした所で。」
「その辺り、詳しい事は後程改めてお伺いしても。」
「出立までの間にとも思いましたが、やはりお互いに忙しいこともありましたから。」
そうしてオユキの要望を、軽やかに交わすこの人物にしても、長く隣国との交渉に身をやつしてた来た経験というのが、何処までも感じられる。確約というのは、何処までも避けられる。つまり、そうしなければいけない理由に、心当たりがあるという事でもあるらしい。
「今日は、まぁ、いよいよ遅れの生まれた一日です。どこかで取り戻すでしょうが、だからこそ。」
「そうですね。日程の確認はやはり必要ではありますし。」
「私どもが勝手な推測で構えを作る、それでも宜しければ。」
「それは、流石にご遠慮いただきたいものです。」
何も話さないのであれば、ではオユキはオユキでトモエの為に。これまでと変わらず、ただそれを行う。そして、他国でも、この世界であればこそ変わらぬものが存在する。そちらを頼ってもいいのだぞと。
そうして、互いに軽く刃を覗かせながらも、結局はそれを楽しんでいる。それが楽しめるだけの関係性、それを育むことができるだけの時間があったこと。オユキはただトモエに感謝を。こうして楽しい遊び相手と旅行ができる。広くなったとはいえ、窓もない馬車の中。長時間、仕事ばかりではやはり息が詰まる。
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