570 / 1,235
16章 隣国への道行き
旅立つのは
しおりを挟む
少年達の試しは、恙なく終わった。
それぞれに思うところもあり、何事もなくという訳ではなかったが、五人それぞれに改めてトモエが覚悟を問うためにと、相応の圧をかけた場においても教えた通りのことは出来た。そして、それ以上の成果など存在しはしない。
トモエから、技を教えた物として、武器を与える。そうであれば、昔から、何時からかは分からないとトモエも義父もオユキに話したが、変わらぬ覚悟を試す場というのが折々に。
人を殺す。そのような技を磨くからこそ。凶器を手に持つからこそ。
「何度経験しても、この寂しさばかりは、慣れませんね。」
連れ歩く物では無く、今日は送り出すものとして。
生憎とメイは新年祭の場に出席しなければならないため、代理としてまた別の人員が引率を行っている。
今は、実に多くの人間が新たに生まれた門、その前に並んで固唾を飲んで見守っている。果たして、これがどうなるのかと。
「かつての神よ。運ぶものよ。古くから変わらぬ裔の声を聞け。」
祭祀の主体は、神殿の者達ではなく、しっかりと対価をせしめた者によって。
まぁ、正当な者ではある。この忙しい最中に、移動を願う者達からも誠意を見たいと言われたことにしても。しかし、如何に準備運動は良しと出来たからとはいえ、未だに森に入れるような能力はない。毒であったりに対応するだけの能力も、そもそもトモエの教えに含まれてもいない以上身に着けているわけもない。
その程度の相手を、異空と流離が運ぶのかと難色を示されながらも、結局は彼らが持ち帰った肉に喜んだ者達も多く、結局はどうにかなった。過去の逸話であるため、それに影響を受ける始祖はともかく、末裔たちの方は食の好みは千差万別という事であるらしい。
加えて、この場を貸すことを承諾している水と癒しの神に向けては、一先ずの品をアルノーとトモエで用意したうえで納めてもいる。当然、この場に顔をそろえている者達から、実にあれこれと持ち込まれてもいるが。
「そうですね。最期に見送ったのは、あの子でしょうか。」
如何にトモエとオユキが健勝であったとはいえ、そこは人の世界。事故などいくらでもある。治らぬ病もある。間に合わぬことも。事身内という意味では、1度だけしかなかった、トモエとオユキがそうあるようにと、今もそうであるように心を砕いた結果として、その一度だけしかなかったが。
「あの時とは違いますからね。」
「そうですね。あくまで、今はこの一時。」
隣国迄足を延ばし、そちらでまた忙しなさの中でも、己の楽しみを果たせば戻って来るのだ。そこでまた会う事が出来る。
「それ以外となると、やはり、相応に前ですね。」
「ええ。あの子は結局私が在る間には、そう言う話を見つけられませんでしたし。」
「あの子は、まぁ、難しいでしょうね。」
トモエの言うあの子。かつての世界で、廃れていくものにすっかりと傾倒してしまったのだ。まずは、そのような精神性を良しと出来る相手を探すという、それはそれは難しい関門を突破しなければ話にならないのだ。その後には、認められるだけの強さを示してと、また愉快な難問が控えている。
「なんにせよ、これで一先ずはというところでしょう。」
「そうなのですか。」
「ええ。後はいよいよ、まぁ、大仕事はありますが顔を出すのが主体ですから。」
「新年の物は。」
「そちらはいよいよ、出発前ではありますし、まぁ、道中はここまでと同じですから。」
新年祭。何やら国王その人の方でも色々と考えがあるというのは、聞こえてきている。
王妃にしても、観光の開設を行ってくれている折に、随分と思わせぶりな事を言った物だ。
「オユキさんは。」
「想像は付いていますが、流石に此処では話せませんね。」
流石に、耳目が多すぎる。国王その人が、当日まで多少の心構えを作らせはしても、公示を差し控えている事でもあるのだ。おいそれと口に出して良いものでもない。
「それと、もしかしたら、そう言う予想もありますから。」
「では、私は当日を楽しみにしていましょうか。ただ、私の方でも、当日は魔物の狩りではなく、前回と同じになりそうではりますが。」
「屋外で料理を行える方というのは、少ないでしょうから。」
トモエは未だに渋っている。少年たちもいないため、改めてのびのびと刀を振るうつもりであった所に、アベルと公爵からそのような話が持ち込まれている。既にいる料理人たちは、何処まで行っても、現在の状況に慣れた料理人たちだ。それぞれ、応用が利くだけの素地は身に着けているだろうが、それでも経験が無い以上は何かと手間がかかる。当然、そうなれば、当日の人出を賄い切れる物では無くなる。
それこそ、始まりの町と同じように、許可さえ出れば、随分と賑やかな事にはなるだろうが、そちらで作られた物を回しても良いのかと言えば、また話も違う。王都には、しっかりと不破の種が存在している。口に入れる物は選ばなければならない。そして、問題なく口にできる料理を用意できる相手はと考えていけば、誰に白羽の矢が立つのかという話になる。オユキはいよいよ飾り物であり、既に少しづつ、回復の様子を見ながらという事だろうが、日々溜まっている木々と狩猟の神の聖印を下賜する役目がある。
アイリスの方は、それに合わせて、改めて祖霊の力をこの地に降ろし、獣人たちのまとめ役を頼まれていることもあり実に忙しい。最も、アイリスにしても料理という意味では、とりあえず肉を焼けばよいと、その程度であるというのは窺い知れているため、誰も頼みはしないのだが。
「仕方ありませんね。」
「お手数かけます。」
オユキの方でも、そこにはどうにもならない流れがあるのだと。そう遠回しに言えば、トモエもやむを得ないと留飲を下げる。トモエよりも多くを我慢する相手が隣にいるのだから。
「そろそろ、ですね。」
「以前は私も見ることは叶いませんでしたが。」
追加の異邦人。それが訪れるときに、始まりの町で一度開いたのだとは聞いている。しかし、生憎とその頃にはオユキを抱えてトモエも教会に入っていた。そして、そこから相応の時間治療に説教にと、そのような事に時間を費やしていればすっかりと終わっていたのだ。その辺りも、恐らく元々の計画という事なのだろうが。
現在配置されている人員にしても、オユキとトモエも顔を出して話をすれば、また身の振り方が変わっただろう。だからこそ、ミズキリが主導を行える状況になった。
「そう言えば、王都に来られているのでしたか。」
「話は聞きましたが、流石に隣国には間に合いそうにないと。」
かつて秘書業務を頼んだ相手は、オユキ達よりもだいぶ早くに王都に来ている。そして、今はこちらの世界で、そう言った業務を行う為に必要な知識を身に着けてもらっている最中だ。今は始まりの町の屋敷、今後の拠点となるその屋敷を任せているゲラルドは、流石にメイに返さなければならない。本人に確認は取っていないが、リース伯爵家がマリーア公爵家から別れたときにそのまま付いて言ったような人物だ。取り上げてしまえば、困るの者は実に多いというものだ。
「シェリアさんは。」
「流石に、交替ですね。」
そして、ここまでである程度顔なじみになった相手にしても、此処で一度盛大に入れ替えがある。
問題があった者達をどうするのか、その話し合いにしても大過なく勤めあげた者達として監督責任を問われもする。また、問題を起こさなかったからこそ、これまでの事にその者達は関係が無かったのだとあらためて証明が出来た。だから、元の道に戻る。加えて、トモエとオユキが好む在り方というのに、最も身近に触れた人間として、方々から話を求められるという仕事も待っている。こちらも、同行は出来ない。
だから、オユキは、トモエも。王都に来るまでの期間をできるだけ伸ばしたかった。
何処まで行っても、王都に来てしまえば次への話が始まる。身の回りに、僅かに増えた慣れた顔ぶれというのが、特に時間を使った相手というのがいなくなる。
「そうですか。何度繰り返しても、慣れませんね。」
「慣れたくは、やはりないですから。」
フスカが、こちらの神職に比べれば少々挑戦的ともいえる口上を謳いあげれば、いよいよ閉ざされていた門が開く。平時は、一体何処から開くのかと疑問に思うばかりの作りだが、どうやら両開きであるらしいと、今更ながらにそんな事をトモエとオユキは思う。
そして、少年たちは、それが決まりでもあるため、振り返らず光渦巻く門の中へ。
トモエが、一先ず良しと武器を渡したときに、随分とぐずった少女たちは、いよいよ昨夜は誰憚ることなく泣きながら、一時の別離を惜しんだ。次が必ずあるからと、そのような約束があったとして。教会を離れる時、少し離れた場所へ行くときには、そのような様子もなかったが、やはりまた戻るのだと決めている事と、そこから離れていく誰かがいる事は、大きさが違うものであったらしい。
「全く、あの子たちは。」
「頼もしい限りですね。」
振り返ることは許されない。言い含められたことはそれだけだと。
門に向けて、それぞれがトモエの手によって渡された武器を掲げて進んでいく。作法としては、大いに問題があるし、こういった事を見逃しはしない相手の目もあるだろうから、後でお叱りを受けるだろう。ただ、それにしても、仕方のないと、そう言った柔らかさを伴っての事にはなるのだろうが。
確かに、預けた流派の名前、トモエとオユキをこちらの世界で表す紋章を掲げた各々の武器から靡かせて、少年たちが消えていく。言いたいことは、確かによくわかる。武器を、渡したそれをどう使うのか、じつに分かりやすい彼らなりの示し方ではあるだろう。
後は、少年たちが預かった物を、先導役の者が代官としての権限を使うのか、それとも未だにトモエとオユキに知らされていない方法か。間違いなくたどり着いたかどうかは、そのうち分かるだろう。最も、神の名を使ってまで行った事だ。その末裔が自信ありげな様子を見れば、まず間違いはないと、そう判断できることでもある。
「次に会うときには、またお土産など、色々と持ち帰れると良いのですが。」
「ええ、そうですね。」
そして、かつてあったように。また会う時が出来る時には、やはり新しい場所に行った者として、あれこれと。それが出来ればと話をしながら。どうした所で、これまでばかりを考えてしまえば、寂しさは募るばかり。誤魔化しでしかないが、それが上手くできるだけの積み重ねがあるのだからと。
それぞれに思うところもあり、何事もなくという訳ではなかったが、五人それぞれに改めてトモエが覚悟を問うためにと、相応の圧をかけた場においても教えた通りのことは出来た。そして、それ以上の成果など存在しはしない。
トモエから、技を教えた物として、武器を与える。そうであれば、昔から、何時からかは分からないとトモエも義父もオユキに話したが、変わらぬ覚悟を試す場というのが折々に。
人を殺す。そのような技を磨くからこそ。凶器を手に持つからこそ。
「何度経験しても、この寂しさばかりは、慣れませんね。」
連れ歩く物では無く、今日は送り出すものとして。
生憎とメイは新年祭の場に出席しなければならないため、代理としてまた別の人員が引率を行っている。
今は、実に多くの人間が新たに生まれた門、その前に並んで固唾を飲んで見守っている。果たして、これがどうなるのかと。
「かつての神よ。運ぶものよ。古くから変わらぬ裔の声を聞け。」
祭祀の主体は、神殿の者達ではなく、しっかりと対価をせしめた者によって。
まぁ、正当な者ではある。この忙しい最中に、移動を願う者達からも誠意を見たいと言われたことにしても。しかし、如何に準備運動は良しと出来たからとはいえ、未だに森に入れるような能力はない。毒であったりに対応するだけの能力も、そもそもトモエの教えに含まれてもいない以上身に着けているわけもない。
その程度の相手を、異空と流離が運ぶのかと難色を示されながらも、結局は彼らが持ち帰った肉に喜んだ者達も多く、結局はどうにかなった。過去の逸話であるため、それに影響を受ける始祖はともかく、末裔たちの方は食の好みは千差万別という事であるらしい。
加えて、この場を貸すことを承諾している水と癒しの神に向けては、一先ずの品をアルノーとトモエで用意したうえで納めてもいる。当然、この場に顔をそろえている者達から、実にあれこれと持ち込まれてもいるが。
「そうですね。最期に見送ったのは、あの子でしょうか。」
如何にトモエとオユキが健勝であったとはいえ、そこは人の世界。事故などいくらでもある。治らぬ病もある。間に合わぬことも。事身内という意味では、1度だけしかなかった、トモエとオユキがそうあるようにと、今もそうであるように心を砕いた結果として、その一度だけしかなかったが。
「あの時とは違いますからね。」
「そうですね。あくまで、今はこの一時。」
隣国迄足を延ばし、そちらでまた忙しなさの中でも、己の楽しみを果たせば戻って来るのだ。そこでまた会う事が出来る。
「それ以外となると、やはり、相応に前ですね。」
「ええ。あの子は結局私が在る間には、そう言う話を見つけられませんでしたし。」
「あの子は、まぁ、難しいでしょうね。」
トモエの言うあの子。かつての世界で、廃れていくものにすっかりと傾倒してしまったのだ。まずは、そのような精神性を良しと出来る相手を探すという、それはそれは難しい関門を突破しなければ話にならないのだ。その後には、認められるだけの強さを示してと、また愉快な難問が控えている。
「なんにせよ、これで一先ずはというところでしょう。」
「そうなのですか。」
「ええ。後はいよいよ、まぁ、大仕事はありますが顔を出すのが主体ですから。」
「新年の物は。」
「そちらはいよいよ、出発前ではありますし、まぁ、道中はここまでと同じですから。」
新年祭。何やら国王その人の方でも色々と考えがあるというのは、聞こえてきている。
王妃にしても、観光の開設を行ってくれている折に、随分と思わせぶりな事を言った物だ。
「オユキさんは。」
「想像は付いていますが、流石に此処では話せませんね。」
流石に、耳目が多すぎる。国王その人が、当日まで多少の心構えを作らせはしても、公示を差し控えている事でもあるのだ。おいそれと口に出して良いものでもない。
「それと、もしかしたら、そう言う予想もありますから。」
「では、私は当日を楽しみにしていましょうか。ただ、私の方でも、当日は魔物の狩りではなく、前回と同じになりそうではりますが。」
「屋外で料理を行える方というのは、少ないでしょうから。」
トモエは未だに渋っている。少年たちもいないため、改めてのびのびと刀を振るうつもりであった所に、アベルと公爵からそのような話が持ち込まれている。既にいる料理人たちは、何処まで行っても、現在の状況に慣れた料理人たちだ。それぞれ、応用が利くだけの素地は身に着けているだろうが、それでも経験が無い以上は何かと手間がかかる。当然、そうなれば、当日の人出を賄い切れる物では無くなる。
それこそ、始まりの町と同じように、許可さえ出れば、随分と賑やかな事にはなるだろうが、そちらで作られた物を回しても良いのかと言えば、また話も違う。王都には、しっかりと不破の種が存在している。口に入れる物は選ばなければならない。そして、問題なく口にできる料理を用意できる相手はと考えていけば、誰に白羽の矢が立つのかという話になる。オユキはいよいよ飾り物であり、既に少しづつ、回復の様子を見ながらという事だろうが、日々溜まっている木々と狩猟の神の聖印を下賜する役目がある。
アイリスの方は、それに合わせて、改めて祖霊の力をこの地に降ろし、獣人たちのまとめ役を頼まれていることもあり実に忙しい。最も、アイリスにしても料理という意味では、とりあえず肉を焼けばよいと、その程度であるというのは窺い知れているため、誰も頼みはしないのだが。
「仕方ありませんね。」
「お手数かけます。」
オユキの方でも、そこにはどうにもならない流れがあるのだと。そう遠回しに言えば、トモエもやむを得ないと留飲を下げる。トモエよりも多くを我慢する相手が隣にいるのだから。
「そろそろ、ですね。」
「以前は私も見ることは叶いませんでしたが。」
追加の異邦人。それが訪れるときに、始まりの町で一度開いたのだとは聞いている。しかし、生憎とその頃にはオユキを抱えてトモエも教会に入っていた。そして、そこから相応の時間治療に説教にと、そのような事に時間を費やしていればすっかりと終わっていたのだ。その辺りも、恐らく元々の計画という事なのだろうが。
現在配置されている人員にしても、オユキとトモエも顔を出して話をすれば、また身の振り方が変わっただろう。だからこそ、ミズキリが主導を行える状況になった。
「そう言えば、王都に来られているのでしたか。」
「話は聞きましたが、流石に隣国には間に合いそうにないと。」
かつて秘書業務を頼んだ相手は、オユキ達よりもだいぶ早くに王都に来ている。そして、今はこちらの世界で、そう言った業務を行う為に必要な知識を身に着けてもらっている最中だ。今は始まりの町の屋敷、今後の拠点となるその屋敷を任せているゲラルドは、流石にメイに返さなければならない。本人に確認は取っていないが、リース伯爵家がマリーア公爵家から別れたときにそのまま付いて言ったような人物だ。取り上げてしまえば、困るの者は実に多いというものだ。
「シェリアさんは。」
「流石に、交替ですね。」
そして、ここまでである程度顔なじみになった相手にしても、此処で一度盛大に入れ替えがある。
問題があった者達をどうするのか、その話し合いにしても大過なく勤めあげた者達として監督責任を問われもする。また、問題を起こさなかったからこそ、これまでの事にその者達は関係が無かったのだとあらためて証明が出来た。だから、元の道に戻る。加えて、トモエとオユキが好む在り方というのに、最も身近に触れた人間として、方々から話を求められるという仕事も待っている。こちらも、同行は出来ない。
だから、オユキは、トモエも。王都に来るまでの期間をできるだけ伸ばしたかった。
何処まで行っても、王都に来てしまえば次への話が始まる。身の回りに、僅かに増えた慣れた顔ぶれというのが、特に時間を使った相手というのがいなくなる。
「そうですか。何度繰り返しても、慣れませんね。」
「慣れたくは、やはりないですから。」
フスカが、こちらの神職に比べれば少々挑戦的ともいえる口上を謳いあげれば、いよいよ閉ざされていた門が開く。平時は、一体何処から開くのかと疑問に思うばかりの作りだが、どうやら両開きであるらしいと、今更ながらにそんな事をトモエとオユキは思う。
そして、少年たちは、それが決まりでもあるため、振り返らず光渦巻く門の中へ。
トモエが、一先ず良しと武器を渡したときに、随分とぐずった少女たちは、いよいよ昨夜は誰憚ることなく泣きながら、一時の別離を惜しんだ。次が必ずあるからと、そのような約束があったとして。教会を離れる時、少し離れた場所へ行くときには、そのような様子もなかったが、やはりまた戻るのだと決めている事と、そこから離れていく誰かがいる事は、大きさが違うものであったらしい。
「全く、あの子たちは。」
「頼もしい限りですね。」
振り返ることは許されない。言い含められたことはそれだけだと。
門に向けて、それぞれがトモエの手によって渡された武器を掲げて進んでいく。作法としては、大いに問題があるし、こういった事を見逃しはしない相手の目もあるだろうから、後でお叱りを受けるだろう。ただ、それにしても、仕方のないと、そう言った柔らかさを伴っての事にはなるのだろうが。
確かに、預けた流派の名前、トモエとオユキをこちらの世界で表す紋章を掲げた各々の武器から靡かせて、少年たちが消えていく。言いたいことは、確かによくわかる。武器を、渡したそれをどう使うのか、じつに分かりやすい彼らなりの示し方ではあるだろう。
後は、少年たちが預かった物を、先導役の者が代官としての権限を使うのか、それとも未だにトモエとオユキに知らされていない方法か。間違いなくたどり着いたかどうかは、そのうち分かるだろう。最も、神の名を使ってまで行った事だ。その末裔が自信ありげな様子を見れば、まず間違いはないと、そう判断できることでもある。
「次に会うときには、またお土産など、色々と持ち帰れると良いのですが。」
「ええ、そうですね。」
そして、かつてあったように。また会う時が出来る時には、やはり新しい場所に行った者として、あれこれと。それが出来ればと話をしながら。どうした所で、これまでばかりを考えてしまえば、寂しさは募るばかり。誤魔化しでしかないが、それが上手くできるだけの積み重ねがあるのだからと。
0
お気に入りに追加
449
あなたにおすすめの小説
僕の兄上マジチート ~いや、お前のが凄いよ~
SHIN
ファンタジー
それは、ある少年の物語。
ある日、前世の記憶を取り戻した少年が大切な人と再会したり周りのチートぷりに感嘆したりするけど、実は少年の方が凄かった話し。
『僕の兄上はチート過ぎて人なのに魔王です。』
『そういうお前は、愛され過ぎてチートだよな。』
そんな感じ。
『悪役令嬢はもらい受けます』の彼らが織り成すファンタジー作品です。良かったら見ていってね。
隔週日曜日に更新予定。
僕のおつかい
麻竹
ファンタジー
魔女が世界を統べる世界。
東の大地ウェストブレイ。赤の魔女のお膝元であるこの森に、足早に森を抜けようとする一人の少年の姿があった。
少年の名はマクレーンといって黒い髪に黒い瞳、腰まである髪を後ろで一つに束ねた少年は、真っ赤なマントのフードを目深に被り、明るいこの森を早く抜けようと必死だった。
彼は、母親から頼まれた『おつかい』を無事にやり遂げるべく、今まさに旅に出たばかりであった。
そして、その旅の途中で森で倒れていた人を助けたのだが・・・・・・。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
※一話約1000文字前後に修正しました。
他サイト様にも投稿しています。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。
ネタバレ異世界 ~最強チートスキル【心を読む】で第一話からオチを知ってしまった生ポ民の俺が仕方なくストーリーを消化して全世界を救う件について
蒼き流星ボトムズ
ファンタジー
伊勢海地人(いせかいちーと)は、異世界でチート無双する事を夢見る生活保護家庭の貧民。
ある日、念願の異世界行きを果たした彼が引き当てたスキルは、他者の心を読む能力だった!
【心を読む】能力が災いして異世界に飛ばされる前から世界観のネタバレを食らったチートは、やや興ざめしながらも異世界に挑む。
戦闘力ゼロ、ルックスゼロ、職歴ゼロの三重苦をものともせずに【心を読む】ことでのみ切り抜ける新天地での生活。
解体屋、ゴミ処理業者、ヤクザへの利益供与、賞金目当ての密告と社会の底辺を軽やかに這いずり回る。
底辺生活系異世界冒険譚。
【前編完結】50のおっさん 精霊の使い魔になったけど 死んで自分の子供に生まれ変わる!?
眼鏡の似合う女性の眼鏡が好きなんです
ファンタジー
リストラされ、再就職先を見つけた帰りに、迷子の子供たちを見つけたので声をかけた。
これが全ての始まりだった。
声をかけた子供たち。実は、覚醒する前の精霊の王と女王。
なぜか真名を教えられ、知らない内に精霊王と精霊女王の加護を受けてしまう。
加護を受けたせいで、精霊の使い魔《エレメンタルファミリア》と為った50のおっさんこと芳乃《よしの》。
平凡な表の人間社会から、国から最重要危険人物に認定されてしまう。
果たして、芳乃の運命は如何に?
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる