559 / 1,235
16章 隣国への道行き
神殿へ
しおりを挟む
アイリスの方は、どうにか間に合った。旅の間は、いよいよ食事の時しか顔を合わせる事もなかったが、それこそ必要な睡眠であったらしい。後は、想定外の事として、生え代わりがまだ終わっていなかったようでもある。
今となっては、服から覗く尻尾にしても、随分と愉快なボリュームを誇っている。加えて、耳や髪までも。
「門を守る方は、大変そうですね。」
今は、門を創るための箱を乗せた馬車にオユキはアイリスと揃って座っている。時刻は昼を過ぎて程々。事が終わるころには、夜の気配も届こうという、そのような時間。国王その人が先頭に、それに少し遅れて運ばれるとなればなかなか視線の痛いものだ。時も近い。
「まぁ、貴女では聞こえないわよね。」
「人の聴力では、難しいと思いますよ。流石に。」
既に、巨大な王都の壁も相応に小さく見える様な、その程度の距離を進んでいる。どうにも、空気の振動であれば早々に拡散しそうだというのに、聞こえて当然と答えるこの相手。カナリアのこともあるため、王都ではどうにか時間を取って色々と話を聞かなければならないだろう。種族の差、それを認識する話をして結局そこから先を行う時間が取れていないのだ。
「でも、気が付いている事はあるのでしょう。」
「神殿に迄運べば、どうにもなりません。」
「まぁ、そうね。」
だからこそ、汚染を広め、少しでも削ろうと動くのだ。
こちらにある9の国、それに対してたった一国。差は歴然としている。そして、汚染された相手も、別に熱心に祈りを捧げる訳でも無い。そこに存在するものをただ食らい、そのような存在だ。
「ただ、まぁ、準備も下調べも不足がありますね。」
それは、オユキ達についても同様に。
「一応、己の正当を訴える、その程度はすると思っていましたが。」
「それだけ、汚染が進んでいるのかしら。」
「まぁ、尋ねるくらいはしてみましょう。」
そして、騒ぎが起こる。後方から、こうして神殿に向かう者達に追いつこうと、随分と賑やかに近づく一団がいれば、オユキがとりあえずとばかりに打った鉄菱で目が潰れ悲鳴を上げて顔を抑える者、そして、反対側はアイリスが切り捨てる。話を聞くとはいっても、当然それはいまではない。
既にそれぞれに動き出している。戦と武技の神に示される印、それは何処まで行っても分かりやすい。敵がいる、その判定が実に簡単だ。
「おや、お久しぶりです。」
「これは、巫女様。ご健勝なようで何よりでございます。しかしながら、御身を守るために動くのが遅れた、それについては後程改めて。」
「こちらから仕掛けたこともあります。」
王太子妃の近衛、その統括を任されていたはずのユリアが、気が付けば直ぐ側に。アイリスに確認を込めて視線を向けるのだが、突然の声に耳を向け、武器に手をかけている様子を見れば種族由来の警戒ですら抜けてきたという事らしい。
「王太子妃様のおそばを離れても。」
「先の巫女様のご配慮により、今や王太子妃様とご子息は離宮に置いて盤石です。」
「では、配慮を有難くと。」
「それと、こちらを。」
そう言うユリアから、相応の重さがある荷物を渡される。
「有難う御座います。」
剣帯とも似ているが、僅かに異なるベルト。より多くの武器がつるせるようにされたそこには、ナイフがしっかりと。
「領都で事があり、普段身に着けておられるものが無いと伺いましたので。」
「流石に、慣れない形状ですので、精度は落ちそうですね。」
そして、試しとばかりに一つを引き抜き暢気に話しているオユキに向かって来ようとした相手に投げつける。目を狙って投じたはずが、喉に向かうあたり、やはり習熟は必要だとそんな事を考えてしまう。
トモエに習おうと、そう言った話はしているのだがこちらにしてもなかなか時間が取れていない。暗器の扱いなど、色々広く目のある場で出来る状況でも無かった。加えて、多少は許されるだろう時間が来た時には、次への移動が何処までも忙しい。
「アイリスさん。力を入れすぎているように見えます。」
「何というか、こう、もう少しあると思ったのよ。」
「教会での経験があったはずですが。」
「教会の中はともかく、外にいた相手は、まだそれなりだったわよ。」
国王の守りは、それこそ信頼に足る騎士達が行っている。そちらは問題がない。こういった場面を前に子供たちがどうするかと、そう言った不安もあるが、最後の確認のためにと少女たちは門前で合流した助祭と共に馬車の中。音に対する配慮もされているだろう。外で何かあったかなど、まぁ、到着時に露骨に数が減るのだ、察するだろうが問題ない。
「それにしても、あれがトモエさんのこちらで得た技ですか。」
「大概よね、正直。一度で負荷が大きい様だから、それが救いかしら。」
「遠くまでと、そう望まなければ回数はこなせそうですよ。アイリスさんの祖霊様を相手取ったときに、そうであったと聞いていますから。」
そうして二人で呑気に話していれば、それがただ異様に映るのだろう。檄を飛ばす豪華な衣装を着た者達、それを背に置いていただけの相手が、徐々に下がり始める。
「あそこの方々は、印がありませんね。家の関係で已む無くと、その辺りでしょうか。」
「聞いてはいたけれど。」
独立は、既に無い何に決まっていた。それをかさに着て、暴走するものが出て来る想像もできていた。ただ、いまでは無いだろうと、そう考えてはいた。だからこそ、不足している準備がある。捕らえる余裕というのが、それだ。この後、神事を行わなければならない。そして、壁の外でもあるため、護衛の手はそこまで減らせない。汚染の不安を消すことができるトモエとオユキ、メイにしても神殿だ。神事を行う場に、そのような者達は連れて行く事も出来ない。最初に予定として存在していれば、メイを王都に、そうする事も出来はしたのだが。
「首謀者は、あちらで檄を飛ばされている方でしょうか。」
「さぁ、正直興味が無いのよね。」
「あの、アイリスさんにとっては国までの通り道、その領でもあるわけですから。」
「武国を経由すればいいだけだもの。確か、そちらの方が行程は楽だったはずよ。」
汚染されてしまえば魔物に襲われない。そして、魔物にしても神々の加護だ。加護が失われた地にそれがいるのかと言われれば、確かに疑問も持つ。
「人がまだ開拓していない地に強力な魔物が、そちらは、そのような場を切り開くならと、そう言った形の試練なのでしょうか。」
「そうかもしれないわね。」
そして、既にオユキ達の下に迄、武器の届く範囲にまで近寄ってくる相手はいなくなった。後ろから走り込んできた相手、そちらはトモエが大部分を纏めて切り捨てた。そして、それに驚き別れて転がる残った物に足を取られて実に愉快な事になっている。そして、そこに対して容赦のない魔術が既に叩き込まれた。
「一応、あの方は捕らえるのですね。」
「王都の中にも教会はあります。それに、これまで王都の中で捕らえた物も相応に。扱いは、心得ておりますとも。」
「では、そちらは一応預けましょうか。」
印を与えられていない者達は、既に戦意を失い、武装解除に応じている。そうでない者達は、ただ容赦なく駆逐されていく。その光景に、オユキとしては、どうした所で虚しさを覚えるというものだ。
こちらの世界では、それが前提として存在している。加護の有無。それが何処まで行っても明確に彼我を隔てる。同じだけの訓練、不心得者がいたとして、今も重装鎧を着こんで動く事が出来ている者達もいるにはいるのだ。だというのに、印を与えられ、加護が無くなってしまえばここまでの道中で、加護が無ければ鎧を着て動けまい。そう見られた者達にただ蹂躙される。それが、何処までも。過去、此処が現実ではない頃には、それを楽しんだ。そして、そこにも最低限はいるからと、現実の己を鍛えねばそう考えるものも増えた。いよいよゲームに特化した者達もいるにはいた。そして、それ故の問題というのも、まぁあるにはあった。当時のオユキは、数少ない例だと、そもそも生きる体が無ければどうにもならぬわけではあるし、現実であるがゆえに体調の維持というものも求められた。本当に極一部、それこそ利用者に対して三桁いるかいないか、そう言った数しかそのような者達はいなかった。
現実を誤認させる機会だからこそ、確かにある肉体にも、返る物があったのだ。重たいものを持つ、それが現実にあると認識すればそれ相応の力みを体がいれ、筋肉痛になるものとて多かった。
「また、何か考ええてるわね。」
「ええ。」
「私も、まぁ、貴女たちに出会うまでは、まったく同じことを考えていたわよ。」
この歪を、涙を流してそれを司る相手に訴えた者がいる。そして、それに対して賢しらに語った者も。
「いけませんね、どうにも疲れもありますし、こうした望まぬ煩わしさというのは。」
「それを喜ぶものは、いないでしょう。いえ、これらの上にいる者達であれば。」
「流石に神殿が近いからでしょうか、以前に見た者は目につきませんが。」
神殿。過去にほろんだ世界から持ってきたと言われている、神々のお膝元。それが近いところで、あれが、滅ぼすと決められている相手が動けば、そこに容赦など存在しないだろう。
「むしろ、だからこそいないのではないかしら。」
「成程、そう言うこともありますか。」
一先ず、そう言った重苦しいものは、纏めてため息一つで追い出しておく。本来であれば、衆目もある場で、こういった振る舞いを零したりはしない。それが出来ない程度には、この急ぎの移動というのに疲れている。
トモエにしても、オユキにしても多少は広がりを持ったと言え、一室にずっと押し込められて気が滅入らない人間ではない。体を動かすのは、好きなのだ。ゲームのためにという、あまりにあまりな目的で叩いた扉、そこで随分手酷い歓迎をされても続けようと思う程にはオユキも。
「さて、休みを頂くためにも、気兼ねなく休む為にも、片づけるべきことを片付けましょうか。」
襲撃の首謀者、その相手にはもはやオユキは興味もない。神国、そこから離反するという公爵家に対しても。そちらの方向には、神殿が無い。少し迂回すれば問題がない、その程度の領でしかない。
ただ、だからと言って何もなしで済ませる事が出来ないのも、政治の話なのだ。
今となっては、服から覗く尻尾にしても、随分と愉快なボリュームを誇っている。加えて、耳や髪までも。
「門を守る方は、大変そうですね。」
今は、門を創るための箱を乗せた馬車にオユキはアイリスと揃って座っている。時刻は昼を過ぎて程々。事が終わるころには、夜の気配も届こうという、そのような時間。国王その人が先頭に、それに少し遅れて運ばれるとなればなかなか視線の痛いものだ。時も近い。
「まぁ、貴女では聞こえないわよね。」
「人の聴力では、難しいと思いますよ。流石に。」
既に、巨大な王都の壁も相応に小さく見える様な、その程度の距離を進んでいる。どうにも、空気の振動であれば早々に拡散しそうだというのに、聞こえて当然と答えるこの相手。カナリアのこともあるため、王都ではどうにか時間を取って色々と話を聞かなければならないだろう。種族の差、それを認識する話をして結局そこから先を行う時間が取れていないのだ。
「でも、気が付いている事はあるのでしょう。」
「神殿に迄運べば、どうにもなりません。」
「まぁ、そうね。」
だからこそ、汚染を広め、少しでも削ろうと動くのだ。
こちらにある9の国、それに対してたった一国。差は歴然としている。そして、汚染された相手も、別に熱心に祈りを捧げる訳でも無い。そこに存在するものをただ食らい、そのような存在だ。
「ただ、まぁ、準備も下調べも不足がありますね。」
それは、オユキ達についても同様に。
「一応、己の正当を訴える、その程度はすると思っていましたが。」
「それだけ、汚染が進んでいるのかしら。」
「まぁ、尋ねるくらいはしてみましょう。」
そして、騒ぎが起こる。後方から、こうして神殿に向かう者達に追いつこうと、随分と賑やかに近づく一団がいれば、オユキがとりあえずとばかりに打った鉄菱で目が潰れ悲鳴を上げて顔を抑える者、そして、反対側はアイリスが切り捨てる。話を聞くとはいっても、当然それはいまではない。
既にそれぞれに動き出している。戦と武技の神に示される印、それは何処まで行っても分かりやすい。敵がいる、その判定が実に簡単だ。
「おや、お久しぶりです。」
「これは、巫女様。ご健勝なようで何よりでございます。しかしながら、御身を守るために動くのが遅れた、それについては後程改めて。」
「こちらから仕掛けたこともあります。」
王太子妃の近衛、その統括を任されていたはずのユリアが、気が付けば直ぐ側に。アイリスに確認を込めて視線を向けるのだが、突然の声に耳を向け、武器に手をかけている様子を見れば種族由来の警戒ですら抜けてきたという事らしい。
「王太子妃様のおそばを離れても。」
「先の巫女様のご配慮により、今や王太子妃様とご子息は離宮に置いて盤石です。」
「では、配慮を有難くと。」
「それと、こちらを。」
そう言うユリアから、相応の重さがある荷物を渡される。
「有難う御座います。」
剣帯とも似ているが、僅かに異なるベルト。より多くの武器がつるせるようにされたそこには、ナイフがしっかりと。
「領都で事があり、普段身に着けておられるものが無いと伺いましたので。」
「流石に、慣れない形状ですので、精度は落ちそうですね。」
そして、試しとばかりに一つを引き抜き暢気に話しているオユキに向かって来ようとした相手に投げつける。目を狙って投じたはずが、喉に向かうあたり、やはり習熟は必要だとそんな事を考えてしまう。
トモエに習おうと、そう言った話はしているのだがこちらにしてもなかなか時間が取れていない。暗器の扱いなど、色々広く目のある場で出来る状況でも無かった。加えて、多少は許されるだろう時間が来た時には、次への移動が何処までも忙しい。
「アイリスさん。力を入れすぎているように見えます。」
「何というか、こう、もう少しあると思ったのよ。」
「教会での経験があったはずですが。」
「教会の中はともかく、外にいた相手は、まだそれなりだったわよ。」
国王の守りは、それこそ信頼に足る騎士達が行っている。そちらは問題がない。こういった場面を前に子供たちがどうするかと、そう言った不安もあるが、最後の確認のためにと少女たちは門前で合流した助祭と共に馬車の中。音に対する配慮もされているだろう。外で何かあったかなど、まぁ、到着時に露骨に数が減るのだ、察するだろうが問題ない。
「それにしても、あれがトモエさんのこちらで得た技ですか。」
「大概よね、正直。一度で負荷が大きい様だから、それが救いかしら。」
「遠くまでと、そう望まなければ回数はこなせそうですよ。アイリスさんの祖霊様を相手取ったときに、そうであったと聞いていますから。」
そうして二人で呑気に話していれば、それがただ異様に映るのだろう。檄を飛ばす豪華な衣装を着た者達、それを背に置いていただけの相手が、徐々に下がり始める。
「あそこの方々は、印がありませんね。家の関係で已む無くと、その辺りでしょうか。」
「聞いてはいたけれど。」
独立は、既に無い何に決まっていた。それをかさに着て、暴走するものが出て来る想像もできていた。ただ、いまでは無いだろうと、そう考えてはいた。だからこそ、不足している準備がある。捕らえる余裕というのが、それだ。この後、神事を行わなければならない。そして、壁の外でもあるため、護衛の手はそこまで減らせない。汚染の不安を消すことができるトモエとオユキ、メイにしても神殿だ。神事を行う場に、そのような者達は連れて行く事も出来ない。最初に予定として存在していれば、メイを王都に、そうする事も出来はしたのだが。
「首謀者は、あちらで檄を飛ばされている方でしょうか。」
「さぁ、正直興味が無いのよね。」
「あの、アイリスさんにとっては国までの通り道、その領でもあるわけですから。」
「武国を経由すればいいだけだもの。確か、そちらの方が行程は楽だったはずよ。」
汚染されてしまえば魔物に襲われない。そして、魔物にしても神々の加護だ。加護が失われた地にそれがいるのかと言われれば、確かに疑問も持つ。
「人がまだ開拓していない地に強力な魔物が、そちらは、そのような場を切り開くならと、そう言った形の試練なのでしょうか。」
「そうかもしれないわね。」
そして、既にオユキ達の下に迄、武器の届く範囲にまで近寄ってくる相手はいなくなった。後ろから走り込んできた相手、そちらはトモエが大部分を纏めて切り捨てた。そして、それに驚き別れて転がる残った物に足を取られて実に愉快な事になっている。そして、そこに対して容赦のない魔術が既に叩き込まれた。
「一応、あの方は捕らえるのですね。」
「王都の中にも教会はあります。それに、これまで王都の中で捕らえた物も相応に。扱いは、心得ておりますとも。」
「では、そちらは一応預けましょうか。」
印を与えられていない者達は、既に戦意を失い、武装解除に応じている。そうでない者達は、ただ容赦なく駆逐されていく。その光景に、オユキとしては、どうした所で虚しさを覚えるというものだ。
こちらの世界では、それが前提として存在している。加護の有無。それが何処まで行っても明確に彼我を隔てる。同じだけの訓練、不心得者がいたとして、今も重装鎧を着こんで動く事が出来ている者達もいるにはいるのだ。だというのに、印を与えられ、加護が無くなってしまえばここまでの道中で、加護が無ければ鎧を着て動けまい。そう見られた者達にただ蹂躙される。それが、何処までも。過去、此処が現実ではない頃には、それを楽しんだ。そして、そこにも最低限はいるからと、現実の己を鍛えねばそう考えるものも増えた。いよいよゲームに特化した者達もいるにはいた。そして、それ故の問題というのも、まぁあるにはあった。当時のオユキは、数少ない例だと、そもそも生きる体が無ければどうにもならぬわけではあるし、現実であるがゆえに体調の維持というものも求められた。本当に極一部、それこそ利用者に対して三桁いるかいないか、そう言った数しかそのような者達はいなかった。
現実を誤認させる機会だからこそ、確かにある肉体にも、返る物があったのだ。重たいものを持つ、それが現実にあると認識すればそれ相応の力みを体がいれ、筋肉痛になるものとて多かった。
「また、何か考ええてるわね。」
「ええ。」
「私も、まぁ、貴女たちに出会うまでは、まったく同じことを考えていたわよ。」
この歪を、涙を流してそれを司る相手に訴えた者がいる。そして、それに対して賢しらに語った者も。
「いけませんね、どうにも疲れもありますし、こうした望まぬ煩わしさというのは。」
「それを喜ぶものは、いないでしょう。いえ、これらの上にいる者達であれば。」
「流石に神殿が近いからでしょうか、以前に見た者は目につきませんが。」
神殿。過去にほろんだ世界から持ってきたと言われている、神々のお膝元。それが近いところで、あれが、滅ぼすと決められている相手が動けば、そこに容赦など存在しないだろう。
「むしろ、だからこそいないのではないかしら。」
「成程、そう言うこともありますか。」
一先ず、そう言った重苦しいものは、纏めてため息一つで追い出しておく。本来であれば、衆目もある場で、こういった振る舞いを零したりはしない。それが出来ない程度には、この急ぎの移動というのに疲れている。
トモエにしても、オユキにしても多少は広がりを持ったと言え、一室にずっと押し込められて気が滅入らない人間ではない。体を動かすのは、好きなのだ。ゲームのためにという、あまりにあまりな目的で叩いた扉、そこで随分手酷い歓迎をされても続けようと思う程にはオユキも。
「さて、休みを頂くためにも、気兼ねなく休む為にも、片づけるべきことを片付けましょうか。」
襲撃の首謀者、その相手にはもはやオユキは興味もない。神国、そこから離反するという公爵家に対しても。そちらの方向には、神殿が無い。少し迂回すれば問題がない、その程度の領でしかない。
ただ、だからと言って何もなしで済ませる事が出来ないのも、政治の話なのだ。
0
お気に入りに追加
449
あなたにおすすめの小説
【前編完結】50のおっさん 精霊の使い魔になったけど 死んで自分の子供に生まれ変わる!?
眼鏡の似合う女性の眼鏡が好きなんです
ファンタジー
リストラされ、再就職先を見つけた帰りに、迷子の子供たちを見つけたので声をかけた。
これが全ての始まりだった。
声をかけた子供たち。実は、覚醒する前の精霊の王と女王。
なぜか真名を教えられ、知らない内に精霊王と精霊女王の加護を受けてしまう。
加護を受けたせいで、精霊の使い魔《エレメンタルファミリア》と為った50のおっさんこと芳乃《よしの》。
平凡な表の人間社会から、国から最重要危険人物に認定されてしまう。
果たして、芳乃の運命は如何に?
僕の兄上マジチート ~いや、お前のが凄いよ~
SHIN
ファンタジー
それは、ある少年の物語。
ある日、前世の記憶を取り戻した少年が大切な人と再会したり周りのチートぷりに感嘆したりするけど、実は少年の方が凄かった話し。
『僕の兄上はチート過ぎて人なのに魔王です。』
『そういうお前は、愛され過ぎてチートだよな。』
そんな感じ。
『悪役令嬢はもらい受けます』の彼らが織り成すファンタジー作品です。良かったら見ていってね。
隔週日曜日に更新予定。
【完結】シナリオブレイカーズ〜破滅確定悪役貴族の悠々自適箱庭生活〜
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
【ファンタジーカップ参加作品です。清き一票をお願いします】
王国の忠臣スグエンキル家の嫡子コモーノは弟の死に際を目前に、前世の記憶を思い出した。
自身が前世でやりこんだバッドエンド多めのシミュレーションゲーム『イバラの王国』の血塗れ侯爵であると気づき、まず最初に行動したのは、先祖代々から束縛された呪縛の解放。
それを実行する為には弟、アルフレッドの力が必要だった。
一方で文字化けした職能〈ジョブ〉を授かったとして廃嫡、離れの屋敷に幽閉されたアルフレッドもまた、見知らぬ男の記憶を見て、自信の授かったジョブが国家が転覆しかねない程のチートジョブだと知る。
コモーノはジョブでこそ認められたが、才能でアルフレッドを上回ることをできないと知りつつ、前世知識で無双することを決意する。
原作知識? 否、それはスイーツ。
前世パティシエだったコモーノの、あらゆる人材を甘い物で釣るスイーツ無双譚。ここに開幕!
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
World of Fantasia
神代 コウ
ファンタジー
ゲームでファンタジーをするのではなく、人がファンタジーできる世界、それがWorld of Fantasia(ワールド オブ ファンタジア)通称WoF。
世界のアクティブユーザー数が3000万人を超える人気VR MMO RPG。
圧倒的な自由度と多彩なクラス、そして成長し続けるNPC達のAI技術。
そこにはまるでファンタジーの世界で、新たな人生を送っているかのような感覚にすらなる魅力がある。
現実の世界で迷い・躓き・無駄な時間を過ごしてきた慎(しん)はゲーム中、あるバグに遭遇し気絶してしまう。彼はゲームの世界と現実の世界を行き来できるようになっていた。
2つの世界を行き来できる人物を狙う者。現実の世界に現れるゲームのモンスター。
世界的人気作WoFに起きている問題を探る、ユーザー達のファンタジア、ここに開演。
なんでもアリな異世界は、なんだか楽しそうです!!
日向ぼっこ
ファンタジー
「異世界転生してみないか?」
見覚えのない部屋の中で神を自称する男は話を続ける。
神の暇つぶしに付き合う代わりに異世界チートしてみないか? ってことだよと。
特に悩むこともなくその話を受け入れたクロムは広大な草原の中で目を覚ます。
突如襲い掛かる魔物の群れに対してとっさに突き出した両手より光が輝き、この世界で生き抜くための力を自覚することとなる。
なんでもアリの世界として創造されたこの世界にて、様々な体験をすることとなる。
・魔物に襲われている女の子との出会い
・勇者との出会い
・魔王との出会い
・他の転生者との出会い
・波長の合う仲間との出会い etc.......
チート能力を駆使して異世界生活を楽しむ中、この世界の<異常性>に直面することとなる。
その時クロムは何を想い、何をするのか……
このお話は全てのキッカケとなった創造神の一言から始まることになる……
どーも、反逆のオッサンです
わか
ファンタジー
簡単なあらすじ オッサン異世界転移する。 少し詳しいあらすじ 異世界転移したオッサン...能力はスマホ。森の中に転移したオッサンがスマホを駆使して普通の生活に向けひたむきに行動するお話。 この小説は、小説家になろう様、カクヨム様にて同時投稿しております。
俺とシロ
マネキネコ
ファンタジー
【完結済】(全面改稿いたしました)
俺とシロの異世界物語
『大好きなご主人様、最後まで守ってあげたかった』
ゲンが飼っていた犬のシロ。生涯を終えてからはゲンの守護霊の一位(いちい)として彼をずっと傍で見守っていた。そんなある日、ゲンは交通事故に遭い亡くなってしまう。そうして、悔いを残したまま役目を終えてしまったシロ。その無垢(むく)で穢(けが)れのない魂を異世界の女神はそっと見つめていた。『聖獣フェンリル』として申し分のない魂。ぜひ、スカウトしようとシロの魂を自分の世界へ呼び寄せた。そして、女神からフェンリルへと転生するようにお願いされたシロであったが。それならば、転生に応じる条件として元の飼い主であったゲンも一緒に転生させて欲しいと女神に願い出たのだった。この世界でなら、また会える、また共に生きていける。そして、『今度こそは、ぜったい最後まで守り抜くんだ!』 シロは決意を固めるのであった。
シロは大好きなご主人様と一緒に、異世界でどんな活躍をしていくのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる