憧れの世界でもう一度

五味

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16章 隣国への道行き

予定を話す

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「私どもの方からは、それくらいでしょうか。」

果たして、意味があるのかと言われれば、オユキもそれはそれは言葉を選んだうえで、想定することに意味があるのだと。それ自体の意義ではなく、行為の意義に話をすり替えた上で煙に巻くだろう。説得ではなく。

「随分と、大層な事であったと報告は受けたが。」
「元々は、王都でとのことでしたし。」

祈願の儀式。対外的には、一切口にしなかったが、オユキにとってみればこれで正しいのかと、それを試すための予行演習でしかない。元来月と安息からの指示は、王都で行えとなっている。

「先の王太子妃様への物を思えば、確かにと頷けはするが。」
「祈願というよりも、誓願としての事なのではないかと。」

祈願と言われるから、オユキとしても今一つ要領を得なかったのだが、改めて流れの中に身を置いてみればなるほどと思うものもあった。と、言うよりも、オユキがあまりそういった事に重きを置いていなかったのだが、トモエが良くあることだと、そう言った風情であったのを見てそう言えばと思い出したということもある。
要は、神前で誓いを立て、その成就を見守ってくれと、そう願うのだ。

「どちらも同じ単語と、そう聞こえたが。」
「ああ、こちらでその区分が無いからこそですか。もしくは、どちらともなのか。」
「となると、参加者は、陛下と王太子様。それからその方らもか。祈願祭と日が変わる故、用意すべきものも異なりそうだが。」
「それこそ、神殿と教会を頼むのが良いでしょう。ただ、まぁ。」

オユキは、そうして懐から一枚の封書を取り出して、公爵に。同席している婦人が、それを当然のようにとろうとした公爵に先んじて手を伸ばし、オユキに苦言を。

「オユキ、せめて袖口にしまっておきなさい。」
「次からは、そのように。」
「全く。」

そうして、淑女としてどうかと。そう言えば、こちらに訪れたばかりの時にも、衣装の袷を人前で緩める事を注意されたようなとそんな事を思い返していれば、公爵夫人がオユキと国王陛下その人とのやり取り、その手紙を纏めた物を確認し、その内容を公爵に。王家とのやり取りの多くは、オユキが公爵家に対応を伺う必要が無いときには、近衛の手によって叶えられたこともある。メイはあくまでリース伯爵子女で、代官でしかない。伯爵も、領都で統治の一部を担っていたものだ。そこに他の都合を捩じ込む余地くらいはある。つまり、これを公爵に見せるのは初めてだろうと、そう思える書類だ。勿論、オユキが概要をまとめたものになるが。

「新年祭の予定を例年から変える事に、随分と強硬であると思えば。」
「公爵様に、報告も既にしましたが。」
「それについては、王都でしか話せぬ。この場では難しい。」

今は、翌日には王都に到着する、その手前にある町。そこに用意されている移動を行う貴族向けの邸宅の一つを使って、こうして色々と話し込んでいる。以前王都に足を運んだときには、また異なる町で休んだというか、布告の必要などもなかったため、この町で用意を改めて行う事などせずに、そのまま王都に駆け込んだのだが。

「王都についた折には、私どもからも、いよいよ聞きたいこともありますので。」

魔国への出発、それがどうにもならない日程であればともかく、少なくともオユキ達よりも先に動いている相手。魔国との調整を行っている相手が、それを行うだけの時間を見た上で移動しなければならない。散々日程を詰めたこともあり、王都では、少なくとも3週は時間を使う予定になっている。その時間を使って、確認できるものならしたいことというのは、オユキにしても随分と増えた。
かつての舞台であったときに、オユキは人の歴史に全く興味を持たなかったのだが、この国がプレイヤーに最初に発見された国であることは間違いない。ゲーム内表記の暦、神暦とされていたそれと話を聞いたこちらのあるとされている歴史。その差も随分と感じるものだ。そもそも、ゲームとして合った時、その中でもその暦は300年程進んだ。そして国王の台替わりは一度だけ。広大な領都、それを持つマリーア公爵その人も八代目だとそう言い切り、先代公爵が、色々と忙しくしているため会うことは叶っていないが、まだまだ現役を感じさせるものだ。寿命が長い、その予想をオユキは持ち、簡単に話を振ってみたが、とてもではないが足りない。三代目のマリーア公爵、そこは既にこれから縁を得るアルゼオ公爵の領地であるはずの場所、そこに現れた王種の素材からなる武具を、マリーア公爵家が所持している。買い求めたというのならまだしも、そのような発言は無かった。

「ロザリア司教が語るのは、あくまで。」
「うむ。人の物では無い。まぁ、そちらについては、場を選ぶが、用意はある。問題は。」

マリーア公爵が、オユキをみてため息を。さて、何事かとオユキは首をかしげるが。

「流石に、陛下を招いての事に、今は許可を出せません。」

その回答は、文化であったり礼儀であったり、そう言った物を守る相手から。

「他領に向けるにも不足があまりに多いというのに。」
「その、一応、今度ばかりはエリーザ助祭の同行を求めようかと。」
「あくまで助祭でしかありません。新規の家として登録するのです。」
「となると、位も決まりましたか。」

レジス侯爵家の家名を預かる、そう言った背景が存在するため、実に紛糾していたらしいが。

「家に与えるものと、個人に与える物、それを別ける事となった。」

オユキの持つ、神職としての位と、何処まで行ってもそこに居ない現実との折り合いがつかぬと判断されたらしい。

「家としては、リース伯子女との兼ね合い、他国との事もあるため子爵家相当となる。加えて、個人として四位の位をトモエにと。」
「私たちの知る物と同じであれば、その位階は王太子の教育を担当するのですが。」
「知っているのならば、話が早いな。」

そして、既に決まったこととして、実に面倒な仕組みの話をされる。リース伯爵子女の下で動く必要はあるが、折に触れてそれを超えなければならない。しかし、言えとして法衣としての仕事も出来ぬ相手に贈れる家格というのは、やはり無理がある。故に、使われるものとしての子爵家が家として。公爵の麾下として、公爵家に由来を持った名前を名乗る事であくまで、急場をしのぐという形に収まった物であるらしい。それとは別に、オユキ個人は三位の位を。要は、伯爵家相当の個人を認める位を与えられたため、制限、巫女としての振る舞いという前提は付くが、メイに対して上からものをいう権利が。

「正直、面倒だと、そう言ってしまっても。」
「まぁ、誰もがそう思うであろうよ。」

実際には、そこには生と従、といった区分も生まれるらしい。

「となると、陛下は。」
「来年の事になるがな。」

どうやら、その辺りが誓願の肝になって来そうなものではある。公爵も、そう考えているからこそ、此処で話したのだおる。そして、何やらやたらと強硬に狩猟祭を行う構えを取る、そのことにも納得がいくというものだ。
ただ、そこまで大掛かりな変更を行うとして、オユキからは疑問もある。

「現行とは、分担も変えることとなった。」

公爵家、そこが独立したいというのであれば、そうすればよいと。寧ろそうなれば王太子の、他国との折衝を行うという役割が無くなるのだと。王都を囲むように存在する、公爵領。それがある以上、王家が対応すべきは、独立したなら公爵相手のみ。当然これ間dネオ関係というものがあるが、寧ろ相手にしても急に担当が変わるのだ。繋ぎは求めるだろうが、後の事は、混乱が時間を用意する。

「公爵家は、一つは確定として。」
「二つ、決まったな。一つはまぁ、其の方も予想していた家だ。」
「まぁ、それなりに汚染も進んでいるでしょうから、そうなるでしょう。残りの一つは。」

初期の段階では、オユキもミズキリも、独自の領として運用ができる公爵は管理者権限を得たのなら、全てそうすると考えていたのだが。どうにも、これまでの時間で良い関係を築いていたらしい。マリーア公爵が、トモエとオユキんお巻き起こすことのかじ取りを放棄し、王家にそれを投げるためにと選んだこともあり、ある程度のかじ取りを任せた方が楽だろうと、それに同意する領が現れた。王太子妃、その問題を抱えるアルゼオ公爵家も、勿論マリーア公爵に習うと決めた。魔国との関係が変わる。これまでの優位が無くなるに等しい変化が起こる。

「西と北西、そちらだけだな。」
「どちらも神殿の無い地域、随分と分かりやすい事ですね。」

どちらにしても、既に汚染されている領は以前家名を聞いたこともあるが、独立に際して、神国の王から与えられた名前は捨てるだろう。であれば、いちいち、それを呼ぶ必要もない。

「受け入れは。」
「隣接する領でとなるな。ただ、易々と逃がすとは思えぬ。そして、そこには混ぜられる者達も。」
「そこは、安息の加護を信じるしかありませんが。」

結果として、問題が無ければと言えばいいのか。そこで何か大掛かりな事を許さずに済めば、神国の抱える人手不足、その問題を解決することができる。王都、王領も広いが、寄子として多くの領地を持つ貴族を纏める公爵の版図もそれぞれ広大なのだ。そこで暮らす人々の内、神敵に与することを良しとしない家は、それらの公爵家が独立するのに合わせて離反する。裸の王様を目指す者達はまだ気が付いていないが、既に大掛かりな移動が始まっていると、その話はオユキも聞いている。

「となると、新年祭の前、ですか。」
「流石にな。新しくする場で、陛下としてもそのような者は混ぜる気も無い。」
「つまらぬ仕事は、早々に片づけたいものですね。他で煩わされるのも面倒です。」

公爵夫人としては、そう言った役を得るのだから相応に。そちらの伊敷初男憂いのかもしれないが。公爵とオユキは、行うべきことに合わせて、都合のいいものとして与えられた役割だとそう理解している。トモエの用意した場、そこでの話は勿論公爵にも伝わっている。家を残す気が無いのだ、現状は。ならば、家名など、仕事の中で示すだけのものに過ぎない。実態は、何処までも個人が持つものだけだ。

「乱れる人心を治め、新たな方向を示すのも祭りの役割でしょう。ならば、その前に。」
「オユキは、それで。」
「そちらは、カナリアさんに確認を取らねばなりませんが。」

オユキの自己診断というものを、そのまま受け取ってくれるものがいないと、それは分かっているのだから。
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