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16章 隣国への道行き
締まらない出立
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「本当は、オユキちゃんにも。」
「まぁ、こればかりは。」
公爵本人が、王都に向けて出立する。毎年のこととはいえそれでも一大行事。今回に至っては、大きな荷物を合わせてとなっているため、門を出るまでの間は、それこそ賑やかな見送りが行われた。そこに巫女の姿が無い事については、それこそ神々からの品があるため、そちらを大事にしているのだと、そう声を掛けながら。
実態は、二人してせっかく回復したものが尽きたため、とてもではないが人前に出せる状態ではないというものだ。先の色々と合わせてため込んでいた功績、首から下げれば、余剰を色で表すそれにしても儀式の参加者たちから、すっかりと無くなっている。アイリスにしても、今度ばかりは繋ぎやすい異邦人がいない状況でとなったため、かなりの負担を得たようで、当初予定になかった寝台が馬車の中に置かれる運びとなった。簡易的な物はあったのだが、よりしっかりと休めるようにと随分としっかりしたものが。道中、書類仕事をする腹積もりであった者達としては、非常に残念な事に、その空間を切り取った上で。
「では、皆さん。改めて後を任せます。」
そして、領都からの子供たちとも、此処で一度分かれる事になる。
教会から用意された人員と、それを守るためにと割かれている騎士達。こうして、町を覆う壁までは並んで移動となったが、此処からは違う。
「はい。きっと、しっかりとお勤めを。」
「本来であれば、教会から出たあなた達に頼むのは筋違いではあるのです。」
監督として、新たな教会を一時的に預かるものとして選ばれた助祭は、そうして申し訳なさそうにしがみついている子供たちの頭をなでる。
「大事な事ですから。出来る事を、出来る人がやるんだって。それがいい事だと学んできたから。」
「本当に、良い出会いに恵まれましたね。」
トモエの方で、後は任せると、子供たちと余程付き合いの長い相手に。
「では、貴方方が確かに神々に願った事、それが確かに果たされたと、それを見る日を楽しみにしています。」
残念ながら、予定は詰まっている。長々と時間を、お互いに使う訳にもいかない。どうにも、子供を送り出す。その寂しさばかりはなれる物では無いと、トモエの方でもそう感じながら。門の内から聞こえる群衆の声、それよりも遥かに小さいというのに、はっきりと聞こえる子供たちからの声を、背で聞きながら、オユキの乗る馬車の中に。
送り出すことはあっても、こうして送られることなど、それこそ試合や演武の時くらいであったと。どうした所で掻き立てられるものを感じながら。
「オユキさん。少しは良くなりましたか。」
そして、見た目に比べて遥かに広い馬車の中。その中には、すっかりと見慣れた氷の塊が置かれている。
カナリアにしても、本人は特別祈願することも無いと参加は断っていたのだが、その場に知識と魔の柱が現れ、声を掛けられてしまえばそうもいかなくなった。彼女にしても、戦と武技からは程遠い、そう考えて譲っただけではあるのだろう。新たに得た魔術文字。今は、初めからこう使うべしと、そうある在り方でしか使えていないもの、それに対して習熟を深め、自在と出来る様にとそのように己の先を願ったのだ。
「流石に、一晩ではどうにもなりませんよ。」
「ええ。傷が開いたりというのが無い、その程度の加減は頂けたようですが。」
「それにしても、これまではありませんでしたが。毒もあるわけですし、風邪もひきますよね。」
アイリスの方は、あまりにはっきりと見た目に出ている。本人からも、こんなみすぼらしい形で祖霊を祀るものとして表には出れぬと言い切られるほどに。そして、疲労が外見に出るわけでは無いオユキはと言えば、弱っている期間が長い所に疲労を重ねたため、風邪をひく羽目に。魔物が人体に害のある毒を持っているのだ。当然、その原因となるものは存在している。安息の加護にしても、己の不養生までは守りはしない。今回の事が、そうかと言われれば誰も彼も苦い顔をするだろうが、その辺りらしい雑さでもあるだろう。
どうにも、儀式の最中上の空といった様子はトモエも感じていたため、それに対してという事もあるかもしれないと、そのようには考えてもいるが。
「ええ。どうにも。」
「オユキさんは、元々そのつもりでもあったのでしょうし。移動の間はゆっくりと。」
過去の事を思い返して、トモエがそうしてオユキを揶揄う。
「いえ、今回は相応に仕事をするつもりでしたが。」
「ここまでのこともあります。任せられるものは、任せてしまいましょう。」
神々の前で宣誓を行い、その確かを認められた者達が増えた。ならば、少なくとも今については盤石でもある。道すがら、多少の襲撃などはあるだろうが、それを無造作に蹴散らしても問題がないだけの戦力もある。
「あの、トモエさん。これを。」
「ああ、有難う御座います。」
そして、誤算の一つと言えばいいのだろうか。
目を離すことができないからと、昨日同じ場にいたサキに対して、最低限の加護が与えられた。要は、言葉の問題が解消したのだ。身振り手振りを多く交えてでも、子供たちの輪に入り、あれこれと聞きながらメモを取ってと、そう言った努力もしていた。部活でという流れがあったにしても、生きるために戦うことを決めた少年たちと並んで、体を動かしていたのだ。時間は短くとも、目を届けやすい存在が側にいる。そして、こちらで生きる相手に良くする神々だ。伸ばした手を取るのであれば、やはりそこには確かなものが生まれる。
「サキさんは、今後はどうしましょうか。」
「えっと、正直、よくわからないです。」
「まぁ、それもそうですか。移動が苦でないのなら、当面は安心してくださいね。」
急に言葉に不自由が無くなった。それにしても、昨日の今日で、身の振り方を決めろと言われて出来る物など、早々いるはずもない。
神の加護も戻り、一応安全な存在となった。アベルが面倒を見なければならないが、彼はこの強行軍の指揮を執る立場であり、流石に一介の少女に逸れに並べというのは無理難題にもほどがあると、こうしてオユキの馬車に世話役も兼ねて乗っている。近衛たちは、どうした所で巫女達の不覚があるため、門の収められた箱の護衛も頼まなければならない。加えて、オユキとアイリスが乗る馬車の護衛にしても。
「有難う御座います。その、アルバイトもしたことないですし。」
「それについては、私も言えた義理ではありませんが。」
仕事として、流派を継いだものとしての事はトモエにもあったが。あまりにも一般的な労働とは異なる。
「まずは、色々試すのが良いでしょう。」
ここ暫くの事で、自己管理という四文字が熱に浮かされる頭を踊るオユキからは、そのように。
そもそも、望んでこちらに来た相手でもない。未練があって、失われた物で、やり残したことがあるからと、そう思いを残したわけでもない相手に。
「出来る事は、出来る様になることは、多いですから。まずは、色々見るのがいいでしょう。そして、興味を持った物を調べてみるといいでしょう。その程度の時間は、用意しますとも。」
「その、私なんかに。」
「こうして、縁を得ましたから。流石に見ず知らずの誰かに迄は無理ですが。」
そうして話していれば、風邪の諸症状が出ているオユキが咳き込み、カナリアが手を叩いてそれを止める。
「本来であれば、移動そのものを止めなければいけません。それでも行うのですから。」
「ええ、オユキさんは、安静に。」
サキというこの少女にしても、己の暮らしていた場にいた者達が、何をしていたのか。同じ境遇の相手に向けても、変わらない振る舞い。それについては、嫌という程知る事にもなった。己が強いと、その勘違いがあり、よほどのことが無ければ見た目通り。なにか技術を修めているのだとすれば、早々、そう言った場所に放り込まれることは無いのだから。
「ええ、そうですね。後は、サキさんも、こちらで戦いを職務とする者達がどういった者達か、興味があれば、移動中外を覗くと良いでしょう。」
またしても引き起こした出来事があり、それも参加者がどうした所で多く、持ち帰るものもそれなり以上にあった。それはオユキとトモエの用意した物だけでなく、アイリスの用意した場においても。そう言った諸々の報告が余儀なくされ、それこそ、間をおいて妙な報告の用意をされるよりは、纏めて王都にて報告させてしまったほうが面倒が無いと、公爵が実に疲れた素振りでそう零したものだ。お手軽な審問の場も、現在は王城内で用意が出来ることもある。そして、そうされるに足る者達にこそ、疑念が向いている。
「そう言えば、新幹線くらいって。」
「ええ。それも人の足で。」
「わ。」
なんだそれはと言わんばかりに声が上がっているが、オユキはそちらを放って置いて寝台の中、姿勢を変える。
「カナリアさんも、なかなか、難解な事を。」
「ええと、その。皆さまを巻き込むつもりではなかったのですよ。」
そして、知識と間に促される形として、カナリアにしても彼女がどうして現在に至ったのか。それが想像できることを、口にした。
彼女が本来暮らす地は、飛べなければ、生活も難しい。
しかし、翼はあるのに、それが叶わぬ者達が生まれて来る。そして、増加傾向にある。周囲の観察を常とした者達は、それこそその場で内輪の物として対策を考えている。しかし、それだけではと考えるものも現れる。カナリアのように。
病の一種かと、そう疑ったために、まずは癒しの奇跡を求めた。恐らくそうでないと、マルコとの出会いも影響しての事だろう。それが分かったのちには、知識に解決を見出して。
「彼の神の言葉もあります。恐らく、でしかありませんが。」
「はい。私たちが祀るのは、あくまでかつての世界の創造神様ですから。」
飛ぶには加護が必要であり、惜しみないそれを与えている存在は、未だに休んでいる。ならばこちらの世界でそれを台対していたのは、どの柱か。そう言った直接的な事は口にしなかったが、知識とは積み重ね、未知ばかりを求めるのでなく、振り返ることが大事なのだと、そう諭されたことでカナリアにしてもわざと見なかったことにしていたものに、改めて目を向けたらしい。
「ただ、受け入れるのは、難しいでしょう。」
「それは、そうでしょうとも。」
どういった由縁かは分からないが、世界の崩壊などという大惨事を、己の身を挺してまで守護した存在だ。そちらを置いて、他に目を向けろというのも、まぁ酷な話ではある。
「何か、思いついたりは。」
「木々と狩猟、そちらに向けたのと同じものが良いのでしょうが。そもそも旅自体が難しい世界ですし。」
「カナリアさんも、そこまでにしておいてください。オユキさんも、大人しく休む様に。」
「まぁ、こればかりは。」
公爵本人が、王都に向けて出立する。毎年のこととはいえそれでも一大行事。今回に至っては、大きな荷物を合わせてとなっているため、門を出るまでの間は、それこそ賑やかな見送りが行われた。そこに巫女の姿が無い事については、それこそ神々からの品があるため、そちらを大事にしているのだと、そう声を掛けながら。
実態は、二人してせっかく回復したものが尽きたため、とてもではないが人前に出せる状態ではないというものだ。先の色々と合わせてため込んでいた功績、首から下げれば、余剰を色で表すそれにしても儀式の参加者たちから、すっかりと無くなっている。アイリスにしても、今度ばかりは繋ぎやすい異邦人がいない状況でとなったため、かなりの負担を得たようで、当初予定になかった寝台が馬車の中に置かれる運びとなった。簡易的な物はあったのだが、よりしっかりと休めるようにと随分としっかりしたものが。道中、書類仕事をする腹積もりであった者達としては、非常に残念な事に、その空間を切り取った上で。
「では、皆さん。改めて後を任せます。」
そして、領都からの子供たちとも、此処で一度分かれる事になる。
教会から用意された人員と、それを守るためにと割かれている騎士達。こうして、町を覆う壁までは並んで移動となったが、此処からは違う。
「はい。きっと、しっかりとお勤めを。」
「本来であれば、教会から出たあなた達に頼むのは筋違いではあるのです。」
監督として、新たな教会を一時的に預かるものとして選ばれた助祭は、そうして申し訳なさそうにしがみついている子供たちの頭をなでる。
「大事な事ですから。出来る事を、出来る人がやるんだって。それがいい事だと学んできたから。」
「本当に、良い出会いに恵まれましたね。」
トモエの方で、後は任せると、子供たちと余程付き合いの長い相手に。
「では、貴方方が確かに神々に願った事、それが確かに果たされたと、それを見る日を楽しみにしています。」
残念ながら、予定は詰まっている。長々と時間を、お互いに使う訳にもいかない。どうにも、子供を送り出す。その寂しさばかりはなれる物では無いと、トモエの方でもそう感じながら。門の内から聞こえる群衆の声、それよりも遥かに小さいというのに、はっきりと聞こえる子供たちからの声を、背で聞きながら、オユキの乗る馬車の中に。
送り出すことはあっても、こうして送られることなど、それこそ試合や演武の時くらいであったと。どうした所で掻き立てられるものを感じながら。
「オユキさん。少しは良くなりましたか。」
そして、見た目に比べて遥かに広い馬車の中。その中には、すっかりと見慣れた氷の塊が置かれている。
カナリアにしても、本人は特別祈願することも無いと参加は断っていたのだが、その場に知識と魔の柱が現れ、声を掛けられてしまえばそうもいかなくなった。彼女にしても、戦と武技からは程遠い、そう考えて譲っただけではあるのだろう。新たに得た魔術文字。今は、初めからこう使うべしと、そうある在り方でしか使えていないもの、それに対して習熟を深め、自在と出来る様にとそのように己の先を願ったのだ。
「流石に、一晩ではどうにもなりませんよ。」
「ええ。傷が開いたりというのが無い、その程度の加減は頂けたようですが。」
「それにしても、これまではありませんでしたが。毒もあるわけですし、風邪もひきますよね。」
アイリスの方は、あまりにはっきりと見た目に出ている。本人からも、こんなみすぼらしい形で祖霊を祀るものとして表には出れぬと言い切られるほどに。そして、疲労が外見に出るわけでは無いオユキはと言えば、弱っている期間が長い所に疲労を重ねたため、風邪をひく羽目に。魔物が人体に害のある毒を持っているのだ。当然、その原因となるものは存在している。安息の加護にしても、己の不養生までは守りはしない。今回の事が、そうかと言われれば誰も彼も苦い顔をするだろうが、その辺りらしい雑さでもあるだろう。
どうにも、儀式の最中上の空といった様子はトモエも感じていたため、それに対してという事もあるかもしれないと、そのようには考えてもいるが。
「ええ。どうにも。」
「オユキさんは、元々そのつもりでもあったのでしょうし。移動の間はゆっくりと。」
過去の事を思い返して、トモエがそうしてオユキを揶揄う。
「いえ、今回は相応に仕事をするつもりでしたが。」
「ここまでのこともあります。任せられるものは、任せてしまいましょう。」
神々の前で宣誓を行い、その確かを認められた者達が増えた。ならば、少なくとも今については盤石でもある。道すがら、多少の襲撃などはあるだろうが、それを無造作に蹴散らしても問題がないだけの戦力もある。
「あの、トモエさん。これを。」
「ああ、有難う御座います。」
そして、誤算の一つと言えばいいのだろうか。
目を離すことができないからと、昨日同じ場にいたサキに対して、最低限の加護が与えられた。要は、言葉の問題が解消したのだ。身振り手振りを多く交えてでも、子供たちの輪に入り、あれこれと聞きながらメモを取ってと、そう言った努力もしていた。部活でという流れがあったにしても、生きるために戦うことを決めた少年たちと並んで、体を動かしていたのだ。時間は短くとも、目を届けやすい存在が側にいる。そして、こちらで生きる相手に良くする神々だ。伸ばした手を取るのであれば、やはりそこには確かなものが生まれる。
「サキさんは、今後はどうしましょうか。」
「えっと、正直、よくわからないです。」
「まぁ、それもそうですか。移動が苦でないのなら、当面は安心してくださいね。」
急に言葉に不自由が無くなった。それにしても、昨日の今日で、身の振り方を決めろと言われて出来る物など、早々いるはずもない。
神の加護も戻り、一応安全な存在となった。アベルが面倒を見なければならないが、彼はこの強行軍の指揮を執る立場であり、流石に一介の少女に逸れに並べというのは無理難題にもほどがあると、こうしてオユキの馬車に世話役も兼ねて乗っている。近衛たちは、どうした所で巫女達の不覚があるため、門の収められた箱の護衛も頼まなければならない。加えて、オユキとアイリスが乗る馬車の護衛にしても。
「有難う御座います。その、アルバイトもしたことないですし。」
「それについては、私も言えた義理ではありませんが。」
仕事として、流派を継いだものとしての事はトモエにもあったが。あまりにも一般的な労働とは異なる。
「まずは、色々試すのが良いでしょう。」
ここ暫くの事で、自己管理という四文字が熱に浮かされる頭を踊るオユキからは、そのように。
そもそも、望んでこちらに来た相手でもない。未練があって、失われた物で、やり残したことがあるからと、そう思いを残したわけでもない相手に。
「出来る事は、出来る様になることは、多いですから。まずは、色々見るのがいいでしょう。そして、興味を持った物を調べてみるといいでしょう。その程度の時間は、用意しますとも。」
「その、私なんかに。」
「こうして、縁を得ましたから。流石に見ず知らずの誰かに迄は無理ですが。」
そうして話していれば、風邪の諸症状が出ているオユキが咳き込み、カナリアが手を叩いてそれを止める。
「本来であれば、移動そのものを止めなければいけません。それでも行うのですから。」
「ええ、オユキさんは、安静に。」
サキというこの少女にしても、己の暮らしていた場にいた者達が、何をしていたのか。同じ境遇の相手に向けても、変わらない振る舞い。それについては、嫌という程知る事にもなった。己が強いと、その勘違いがあり、よほどのことが無ければ見た目通り。なにか技術を修めているのだとすれば、早々、そう言った場所に放り込まれることは無いのだから。
「ええ、そうですね。後は、サキさんも、こちらで戦いを職務とする者達がどういった者達か、興味があれば、移動中外を覗くと良いでしょう。」
またしても引き起こした出来事があり、それも参加者がどうした所で多く、持ち帰るものもそれなり以上にあった。それはオユキとトモエの用意した物だけでなく、アイリスの用意した場においても。そう言った諸々の報告が余儀なくされ、それこそ、間をおいて妙な報告の用意をされるよりは、纏めて王都にて報告させてしまったほうが面倒が無いと、公爵が実に疲れた素振りでそう零したものだ。お手軽な審問の場も、現在は王城内で用意が出来ることもある。そして、そうされるに足る者達にこそ、疑念が向いている。
「そう言えば、新幹線くらいって。」
「ええ。それも人の足で。」
「わ。」
なんだそれはと言わんばかりに声が上がっているが、オユキはそちらを放って置いて寝台の中、姿勢を変える。
「カナリアさんも、なかなか、難解な事を。」
「ええと、その。皆さまを巻き込むつもりではなかったのですよ。」
そして、知識と間に促される形として、カナリアにしても彼女がどうして現在に至ったのか。それが想像できることを、口にした。
彼女が本来暮らす地は、飛べなければ、生活も難しい。
しかし、翼はあるのに、それが叶わぬ者達が生まれて来る。そして、増加傾向にある。周囲の観察を常とした者達は、それこそその場で内輪の物として対策を考えている。しかし、それだけではと考えるものも現れる。カナリアのように。
病の一種かと、そう疑ったために、まずは癒しの奇跡を求めた。恐らくそうでないと、マルコとの出会いも影響しての事だろう。それが分かったのちには、知識に解決を見出して。
「彼の神の言葉もあります。恐らく、でしかありませんが。」
「はい。私たちが祀るのは、あくまでかつての世界の創造神様ですから。」
飛ぶには加護が必要であり、惜しみないそれを与えている存在は、未だに休んでいる。ならばこちらの世界でそれを台対していたのは、どの柱か。そう言った直接的な事は口にしなかったが、知識とは積み重ね、未知ばかりを求めるのでなく、振り返ることが大事なのだと、そう諭されたことでカナリアにしてもわざと見なかったことにしていたものに、改めて目を向けたらしい。
「ただ、受け入れるのは、難しいでしょう。」
「それは、そうでしょうとも。」
どういった由縁かは分からないが、世界の崩壊などという大惨事を、己の身を挺してまで守護した存在だ。そちらを置いて、他に目を向けろというのも、まぁ酷な話ではある。
「何か、思いついたりは。」
「木々と狩猟、そちらに向けたのと同じものが良いのでしょうが。そもそも旅自体が難しい世界ですし。」
「カナリアさんも、そこまでにしておいてください。オユキさんも、大人しく休む様に。」
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