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14章 穏やかな日々
らしいお茶会
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「そう言えば、アイリスさんの部族では。」
歓談というには生臭い話も続いたが、その中でふと気になってオユキからアイリスに聞いてみる。
「よくあるわよ。ただこうして席に座ってそれだけをという物では無く、焼くためのパン生地を用意したりお酒を仕込んだり。何かしながらが多いけれど。」
「そちらは日常のものかとも思いますが。」
「ああ、客人を迎えてとなると、それこそ料理をなるべく多く並べてといった感じね。」
「成程。」
近しい文化圏では無く、いよいよ大陸の真ん中そちらが近しいようだ。
「ただ、それこそ部族ごとで違いも多いし、国としての正式なものは地の国に合わせてものになるけれど。」
「その、そちらはアイリスさんの御国とは。」
「神国の北西にある国を挟んで、テトラポダよ。その間の国も、今どうなっているものだか正直分からないけれど。」
位置を考え、国家群、先に聞いたその言葉を思えば推して知るべし、そのような物ではある。
「神国は確か9カ国に隣接しているのだったかしら。」
アイリスにそう確認されるが、トモエもオユキも分からず、意見をカナリアに求める。
「そうですね。烙印者達の国、その名を口に出すのもおぞましきあの国を含めれば、9カ国です。北に王国、そちらから東に向けて回ると、芸術の国、華の国、魔国、夜国、武国、人国、間にあの国を挟んで、地国。これらの国と現在国境を接していたはずです。最もそれにしても正確な約定の下では無く、それぞれの方角にある最新の拠点から一番近い場所と、そう言った意味合いでしかありませんが。
正確に国境が定められているのは魔国だけだったかと。間に大河もあって分かりやすいですし。」
「そういった位置関係であれば、魔国に向かうには華の国を抜けるのでしょうか。」
漠然とした国の位置関係を聞いたトモエがそう疑問を作る。
「いえ、華の国は魔国に向かう際は通りませんね。先にも言いましたが、最も近い拠点、それを基準に国境を考えていますので。神国のそちらよりの拠点が近いというだけで、正直どこの国にも属していない土地をどう通るか、そう言った位置関係です。」
「成程。」
「急いでも、そういった地帯を抜けるのに4日はかかりますし。」
国境が定かでない地域、恐らく新しく拠点を作る予定の箇所を超えてさらにという事なのだろうが、やはりこちらの世界は広大だ。
その話を聞いたうえで、トモエは近衛の方に視線を送る。
「現在、アベル様が主導で。」
「確かに、詳細な計画が要りますか。方角を考えれば、無用な問題は避けられそうですが。」
「王都にもある程度いた事を考えれば、それも難しいでしょうね。国土ではあっても目の届かぬ空白地帯、それがいくらでもあることを考えれば、いくらでもやりようはあるでしょうし。」
トモエが気を緩めて放つ言葉にオユキからは警告を返す。
オユキの望むところではないが、それはそれとして簡単に思い至る危険というのは共有しなければならない。
「そういった地域で加護もないものたちが、それを言うのは今更という事なのでしょうね。」
「魔物に襲われないのよね、そもそも烙印者達は。」
「ああ、それはそれで理屈も通りますか。」
アイリスから新たに話された情報に、オユキとしては納得も行く。
魔物はあくまでこちらで暮らす人々のための資源となるべき存在、そして、そこから何かをというのであれば試練を受けよと。そういったあり方を自動化した相手だ。ならば、そこから外れた相手に与えるべき試練はない。
「むしろ、そう言った相手から魔物は逃げまずか。」
「迷惑な事よね。」
つまり、その国との国境近くでは、本来そこで発生するべき魔物たちがということもあるらしい。
「ただ、そうなると魔物の原因となる淀みと、そう言った相手は別物ですか。」
「ああ。それは、何だったかしら。大きな説が二つあるとかないとか。」
「神々の最期の慈悲、それとするか、そうしないかで確かに分かれそうなものですね。」
汚染の原因、それが魔物に。そう言う考えもあるだろう。そして、それらを討つことで、徐々に除染が出来るという考え。これまで聞いた話では、本体に戻るという事でもあったが、そこに髪が介在しているのであれば、ただ人出も可能になるだけの何かがありそうだとも考えられる。
オユキとしては、定期的な溢れは、それこそ非戦闘員、魔物の狩りに積極的ではない者達を加護の外で活動させるための仕組みだと思っていたが、定期的に敵の力を削る、そう言った仕組みであっても不思議はない。そうなると、今度はこれまでそれを大々的に行わなかった理由も分からないのだ。
「そうですね。恐らく両方、そう言った物なのでしょう。」
そうして一人で少し思考を遊ばせてみたところで、着地点はどちらもありそうであり、どちらも行われているだろうとそれに終始する。どちらにも可能性があり、らしい動機がある。それこそ実際に確認を取らねば、分かりそうもない。聞いたところで答えが得られないと分かり切っている事でもある。
「なんにせよ、次の移動、その予定は全てお任せしますが。」
「王都からは、オユキはどう考えているのかしら。」
「以前簡単に伺いましたが、王太子様の手配によるものだとか。」
オユキはアベルからそうなるだろうとの予測は聞いている。ただ、それに対してはトモエから。
「生まれたばかりの子供を置いて、ですか。」
明らかに、そこに不満があると、そう訴えるトモエ。見ればアイリスにしても同じような物だ。
「後から合流、と言いますか、今回二つを明確に得られたことで予定の変更を奏上することは出来ますが。」
ただ、大きな問題として。
「私が現状存じ上げている方で、王太子様よりも適任となると、居られないのですよね。」
魔国、用は他国に神々からの頂き物を運ぶ。その道中での布告や、魔国に対しての挨拶などを考えたときに、王太子以上の適任がいない。2国を神殿経由とはいえ、直接の行き来が可能とするだけの物で繋ぐのだ。勿論外交的な話も大量に出て来る。これまでの交易がどのような物か分からないが、それで損失を抱える量があるのなら、そちらに対しての何某かの配慮がいる。高度に政治的な問題が起こる物を運び、そして運んでしまえば門は設置される。前段階としての折衝なども、今大急ぎで進めているだろうが。
神々から託された物である以上、決定事項はそこにあり、交渉が可能な期間も存在する。そして、それらをひっくり返すための手段というのは、王太子が実際にその場を訪ったときに直訴する。最低でも少し時間を取り、そこで話し合いを行ったという実績が必要になる。それでようやく留飲を下げられる者も多いだろう。
そこに、オユキが働きかけを行い、機会を奪い王太子が直接話し合いの場にとなれば。
「王太子様に、ご兄弟がおられるのでしたら。」
問題が解決できそうな案として、オユキが口に出し近衛に視線を向けるが、ただ首を横にふられる。
王都での事を考えれば、実に納得異のいく対応ではあるが。
「確か、王兄殿下は。」
「今は武国の公爵とのことでしたから。流石に私たちも、次に武国に向かう、それは良しと出来ません。」
魔国の次に武国と出来るのならば、交渉の余地もあるがそうでは無い。
武国に向かうのは、あくまで創造神の神殿に向かう前だ。目線だけで、オユキがそうでしょうと尋ねればトモエも苦々しさを前面に出しながらも、頷く。他人に、己の望みで負担をかける。それに対するものとして。
「シェリア様は、どなたか心当たりがあったりは。」
「政治の要素が強いので、神職の方には頼めません。勿論同行の願いは既に出していますが。そうなると王族、若しくは高位貴族ですが。」
「ただ、道行きで領地を持たれている方は、饗応役をお願いすると。」
「そうなのですが、先代公爵夫妻であれば。」
オユキはシェリアのその言葉に首をかしげる。
「先代アルゼオ公の奥方様は、魔国から輿入れされていますので。」
「成程。公爵領は、基本的に王都に隣接している、これに間違いは。」
「ございません。」
「魔国との関係もあれば、新年で独立ということもありませんか。」
オユキとミズキリの共通認識、苦々し気にアベルも認めたそれとして、その権限を持っており、改めて神々の言葉で領の全権を持っているとされた領地の支配者は、新年に独立を宣言すると考えている。
公爵は確定、伯爵は一つは間違いなくそうなると。残りの一つの伯爵家は、地理的な条件もあるため、様子見をすると踏んでいるが。そもそもその公爵領は神国で最も汚染された国に近い。もう一方の伯爵は、それこそ辺境伯と呼んでもいい位置に存在する領地の伯爵だ。各々独自の戦力を求める気風が強い以上は、やむを得ない。そしてそこが陥落した時に起こる問題を考えれば、無碍にも出来ない。
忠誠の有無ではなく、そこに暮らす者たちの事を考えた上で、どうした所で分散し、有事に対応しきれるか分からない王都の戦力よりも、常に使える自領の戦力の充実を望むだろう。その結果としての独立を選択するだろうと。
「オユキ様は、サクレタ公爵家が。」
「私だけでは無く、アベル様と、ミズキリもですが。ただ、そちらの手があるのなら、また手紙を書かねばなりませんね。」
その手紙を書くという行為にしても、先日の戦闘で使うために掌をそれなりに深く切ったその傷が塞がっていない。相応に手間がかかりそうなものだ。まぁ、やりはするのだが。
「流石に、アルゼオ公爵様との挨拶の場までは、王太子様の同行を願わなければなりませんが。」
「しかし。」
「王太子様が残られることについては、まぁ、巫女二人からの。この度この功績を頂いた者達の我儘として言えば、叶えられる物でしょう。特に私の方では、王都で少々縁もあったわけですし。」
実利、と言えばいいのか、対外的な言い訳と言えばいいのか。オユキはまずそれを口に出す。ただ、オユキがトモエとアイリスを説得せずに、それに乗っかっているのには、当然オユキなりの考えがある。
「王太子様が王都に残って頂けるのであれば、勿論お願いさせて頂きたいこともありますから。」
そう笑いながら、言えばシェリアが何やら半歩さがったりもするが、そこに客人の期間を知らせるとともに、来客を伝える使用人が訪れる。
「今日は来客の予定は無かったようにも思いますが。」
「教会からの言伝を持ってとのことです。」
「ああ、変わった予定もありますからね。恐らくあの子たちの誰かでしょうし、この場にそのまま案内を。」
歓談というには生臭い話も続いたが、その中でふと気になってオユキからアイリスに聞いてみる。
「よくあるわよ。ただこうして席に座ってそれだけをという物では無く、焼くためのパン生地を用意したりお酒を仕込んだり。何かしながらが多いけれど。」
「そちらは日常のものかとも思いますが。」
「ああ、客人を迎えてとなると、それこそ料理をなるべく多く並べてといった感じね。」
「成程。」
近しい文化圏では無く、いよいよ大陸の真ん中そちらが近しいようだ。
「ただ、それこそ部族ごとで違いも多いし、国としての正式なものは地の国に合わせてものになるけれど。」
「その、そちらはアイリスさんの御国とは。」
「神国の北西にある国を挟んで、テトラポダよ。その間の国も、今どうなっているものだか正直分からないけれど。」
位置を考え、国家群、先に聞いたその言葉を思えば推して知るべし、そのような物ではある。
「神国は確か9カ国に隣接しているのだったかしら。」
アイリスにそう確認されるが、トモエもオユキも分からず、意見をカナリアに求める。
「そうですね。烙印者達の国、その名を口に出すのもおぞましきあの国を含めれば、9カ国です。北に王国、そちらから東に向けて回ると、芸術の国、華の国、魔国、夜国、武国、人国、間にあの国を挟んで、地国。これらの国と現在国境を接していたはずです。最もそれにしても正確な約定の下では無く、それぞれの方角にある最新の拠点から一番近い場所と、そう言った意味合いでしかありませんが。
正確に国境が定められているのは魔国だけだったかと。間に大河もあって分かりやすいですし。」
「そういった位置関係であれば、魔国に向かうには華の国を抜けるのでしょうか。」
漠然とした国の位置関係を聞いたトモエがそう疑問を作る。
「いえ、華の国は魔国に向かう際は通りませんね。先にも言いましたが、最も近い拠点、それを基準に国境を考えていますので。神国のそちらよりの拠点が近いというだけで、正直どこの国にも属していない土地をどう通るか、そう言った位置関係です。」
「成程。」
「急いでも、そういった地帯を抜けるのに4日はかかりますし。」
国境が定かでない地域、恐らく新しく拠点を作る予定の箇所を超えてさらにという事なのだろうが、やはりこちらの世界は広大だ。
その話を聞いたうえで、トモエは近衛の方に視線を送る。
「現在、アベル様が主導で。」
「確かに、詳細な計画が要りますか。方角を考えれば、無用な問題は避けられそうですが。」
「王都にもある程度いた事を考えれば、それも難しいでしょうね。国土ではあっても目の届かぬ空白地帯、それがいくらでもあることを考えれば、いくらでもやりようはあるでしょうし。」
トモエが気を緩めて放つ言葉にオユキからは警告を返す。
オユキの望むところではないが、それはそれとして簡単に思い至る危険というのは共有しなければならない。
「そういった地域で加護もないものたちが、それを言うのは今更という事なのでしょうね。」
「魔物に襲われないのよね、そもそも烙印者達は。」
「ああ、それはそれで理屈も通りますか。」
アイリスから新たに話された情報に、オユキとしては納得も行く。
魔物はあくまでこちらで暮らす人々のための資源となるべき存在、そして、そこから何かをというのであれば試練を受けよと。そういったあり方を自動化した相手だ。ならば、そこから外れた相手に与えるべき試練はない。
「むしろ、そう言った相手から魔物は逃げまずか。」
「迷惑な事よね。」
つまり、その国との国境近くでは、本来そこで発生するべき魔物たちがということもあるらしい。
「ただ、そうなると魔物の原因となる淀みと、そう言った相手は別物ですか。」
「ああ。それは、何だったかしら。大きな説が二つあるとかないとか。」
「神々の最期の慈悲、それとするか、そうしないかで確かに分かれそうなものですね。」
汚染の原因、それが魔物に。そう言う考えもあるだろう。そして、それらを討つことで、徐々に除染が出来るという考え。これまで聞いた話では、本体に戻るという事でもあったが、そこに髪が介在しているのであれば、ただ人出も可能になるだけの何かがありそうだとも考えられる。
オユキとしては、定期的な溢れは、それこそ非戦闘員、魔物の狩りに積極的ではない者達を加護の外で活動させるための仕組みだと思っていたが、定期的に敵の力を削る、そう言った仕組みであっても不思議はない。そうなると、今度はこれまでそれを大々的に行わなかった理由も分からないのだ。
「そうですね。恐らく両方、そう言った物なのでしょう。」
そうして一人で少し思考を遊ばせてみたところで、着地点はどちらもありそうであり、どちらも行われているだろうとそれに終始する。どちらにも可能性があり、らしい動機がある。それこそ実際に確認を取らねば、分かりそうもない。聞いたところで答えが得られないと分かり切っている事でもある。
「なんにせよ、次の移動、その予定は全てお任せしますが。」
「王都からは、オユキはどう考えているのかしら。」
「以前簡単に伺いましたが、王太子様の手配によるものだとか。」
オユキはアベルからそうなるだろうとの予測は聞いている。ただ、それに対してはトモエから。
「生まれたばかりの子供を置いて、ですか。」
明らかに、そこに不満があると、そう訴えるトモエ。見ればアイリスにしても同じような物だ。
「後から合流、と言いますか、今回二つを明確に得られたことで予定の変更を奏上することは出来ますが。」
ただ、大きな問題として。
「私が現状存じ上げている方で、王太子様よりも適任となると、居られないのですよね。」
魔国、用は他国に神々からの頂き物を運ぶ。その道中での布告や、魔国に対しての挨拶などを考えたときに、王太子以上の適任がいない。2国を神殿経由とはいえ、直接の行き来が可能とするだけの物で繋ぐのだ。勿論外交的な話も大量に出て来る。これまでの交易がどのような物か分からないが、それで損失を抱える量があるのなら、そちらに対しての何某かの配慮がいる。高度に政治的な問題が起こる物を運び、そして運んでしまえば門は設置される。前段階としての折衝なども、今大急ぎで進めているだろうが。
神々から託された物である以上、決定事項はそこにあり、交渉が可能な期間も存在する。そして、それらをひっくり返すための手段というのは、王太子が実際にその場を訪ったときに直訴する。最低でも少し時間を取り、そこで話し合いを行ったという実績が必要になる。それでようやく留飲を下げられる者も多いだろう。
そこに、オユキが働きかけを行い、機会を奪い王太子が直接話し合いの場にとなれば。
「王太子様に、ご兄弟がおられるのでしたら。」
問題が解決できそうな案として、オユキが口に出し近衛に視線を向けるが、ただ首を横にふられる。
王都での事を考えれば、実に納得異のいく対応ではあるが。
「確か、王兄殿下は。」
「今は武国の公爵とのことでしたから。流石に私たちも、次に武国に向かう、それは良しと出来ません。」
魔国の次に武国と出来るのならば、交渉の余地もあるがそうでは無い。
武国に向かうのは、あくまで創造神の神殿に向かう前だ。目線だけで、オユキがそうでしょうと尋ねればトモエも苦々しさを前面に出しながらも、頷く。他人に、己の望みで負担をかける。それに対するものとして。
「シェリア様は、どなたか心当たりがあったりは。」
「政治の要素が強いので、神職の方には頼めません。勿論同行の願いは既に出していますが。そうなると王族、若しくは高位貴族ですが。」
「ただ、道行きで領地を持たれている方は、饗応役をお願いすると。」
「そうなのですが、先代公爵夫妻であれば。」
オユキはシェリアのその言葉に首をかしげる。
「先代アルゼオ公の奥方様は、魔国から輿入れされていますので。」
「成程。公爵領は、基本的に王都に隣接している、これに間違いは。」
「ございません。」
「魔国との関係もあれば、新年で独立ということもありませんか。」
オユキとミズキリの共通認識、苦々し気にアベルも認めたそれとして、その権限を持っており、改めて神々の言葉で領の全権を持っているとされた領地の支配者は、新年に独立を宣言すると考えている。
公爵は確定、伯爵は一つは間違いなくそうなると。残りの一つの伯爵家は、地理的な条件もあるため、様子見をすると踏んでいるが。そもそもその公爵領は神国で最も汚染された国に近い。もう一方の伯爵は、それこそ辺境伯と呼んでもいい位置に存在する領地の伯爵だ。各々独自の戦力を求める気風が強い以上は、やむを得ない。そしてそこが陥落した時に起こる問題を考えれば、無碍にも出来ない。
忠誠の有無ではなく、そこに暮らす者たちの事を考えた上で、どうした所で分散し、有事に対応しきれるか分からない王都の戦力よりも、常に使える自領の戦力の充実を望むだろう。その結果としての独立を選択するだろうと。
「オユキ様は、サクレタ公爵家が。」
「私だけでは無く、アベル様と、ミズキリもですが。ただ、そちらの手があるのなら、また手紙を書かねばなりませんね。」
その手紙を書くという行為にしても、先日の戦闘で使うために掌をそれなりに深く切ったその傷が塞がっていない。相応に手間がかかりそうなものだ。まぁ、やりはするのだが。
「流石に、アルゼオ公爵様との挨拶の場までは、王太子様の同行を願わなければなりませんが。」
「しかし。」
「王太子様が残られることについては、まぁ、巫女二人からの。この度この功績を頂いた者達の我儘として言えば、叶えられる物でしょう。特に私の方では、王都で少々縁もあったわけですし。」
実利、と言えばいいのか、対外的な言い訳と言えばいいのか。オユキはまずそれを口に出す。ただ、オユキがトモエとアイリスを説得せずに、それに乗っかっているのには、当然オユキなりの考えがある。
「王太子様が王都に残って頂けるのであれば、勿論お願いさせて頂きたいこともありますから。」
そう笑いながら、言えばシェリアが何やら半歩さがったりもするが、そこに客人の期間を知らせるとともに、来客を伝える使用人が訪れる。
「今日は来客の予定は無かったようにも思いますが。」
「教会からの言伝を持ってとのことです。」
「ああ、変わった予定もありますからね。恐らくあの子たちの誰かでしょうし、この場にそのまま案内を。」
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