368 / 1,235
10章 王都の祭り
これからの話
しおりを挟む
「良かったのですか、これまでのようにとしなくても。」
「その、私が望んでという事では無いんですよ。」
創造神ルゼリア。恐らくその名を伝える事ですら、ロザリア、あまりに名前の似た彼女に、言い含めていたであろう相手。それが席についてせっせと供えた物を口に運びながら、そう応える。
「今後切り離しが終われば、そうなれば新たにお呼びすることはありませんが。」
「ええ、その折には、私たちの未練、それに捕らわれる事も無くなると、そう理解はしています。」
「あの、話してはいけない事は、やはりありますから。」
「正直、判別が難しいので、その折にはどうぞ存分に。」
そう、彼女とて、今はまだ役割という物に縛られている。絶大な力、それはあくまでその枠でしか振るえない。そして、だからこそ、それを超える物に容赦はない。その枠を守らなければいけないのだから。
これまでにも、何度となくあったのだ。分かりやすいように、特にここ最近は、そう配慮はなされていた。トモエと話していた。グラスを半分ほど空けた、書き物の途中であった。だというのに起きてみればグラスは空であり、記憶よりも進んでいるのだ。
それこそ、一切の容赦なく、エラーが発生しないように、そうできたはずだというのに。
「変革の時、ええ、想像の通りです。切り離しを行う、ここでしか許されないことが、実に多いのです。」
「となると、未だに制限は。」
「多いですね。ただ、もう、技術、知識の共有、それについてはありませんよ。異邦の方々は、それを望んでいる方が多いので、クエスト形式ですけど。」
正直、オユキとしては立て続けにマジパンを口に放り込まれる、その姿を見るだけで胸やけがするのだが。以前よりも甘味が得意、好ましく思えるようになったとは言え、これは無理だったのだ。
「つまり、御身らにとって。」
「それは違います。こちらにも残っているでしょう。この世界の始まり、その歪。つまるところ、それを埋めるためにこれほどの時を要しました。そこから生まれた私たちだからこそ、その仕組みから抜ける事が難しかったんですよ。」
そう、独立したそれとして、互いに手を取り合う。そこに力が生まれるのだとして。神とて力を蓄える必要があった。恐らくかつて存在した数多を切り捨てながら、そうせざるを得なかった。
ゲームでは、リスポーンという明確などのプレイヤーにも提供されていたらしい機能。それで確認できるのは、あくまで10柱だけ。しかし、こちらの人々は口にする。それ以外の神の名を。オユキの呼んだ、ゲーム外の知識、そこに書かれていたものの名を。
「だからまずは、使徒様方。それからプレイヤーがいる、その前提であった魔物に対するために、ですか。」
「はい。そしてそこで増えた総量を元にこちらの世界で。ええ、ご想像頂いた事が正解です。勿論、他のことも、それなりに手をだされていましたが。」
「ええ、基盤に大いに不足がある以上、どうにもならないでしょう。そもそも物理法則、宇宙によって定まるとされているそれにしても、根本から異なるのですから。」
オユキの言葉に創造神はただ嬉しそうに笑う。そもそもオユキにしてもそれは専門という訳でも無い。そして、実際の専門家はこちらに来なかった、未練が無かった。そういう事なのだろう。ただ、いくらかは無しえている。国王、王太子がそれぞれ抱え込む。そういった稀人でしかないのであろう。
トモエにしても、物理法則の違い、それを刷り込まれている節はあるのだから。
「確かに、球体と平面、損も成立を考えれば、同じ理屈も通りませんか。」
「最低限、作用反作用、それにしても。」
未だに計ることが叶わない加護、それがそこにも働いている。それにマナといった全く異なる外力が存在する。狐火、それが当たり前のように、酸化反応として現れるべきプラズマが、当たり前のように存在するのだ。
「ただ、計測、それができないようにと言う事だったのでしょう。」
「いいえ。その方々は試練が先に、そうなっていただけです。」
さて、公爵とアベル、それからアイリス。気が付けば世界はすっかりと色を失い。この場で動いているのは、オユキとトモエその二人だけ。それと、創造神もだが。こうして露骨に聞かせたくない、そうされてしまうと、色々とオユキとしてもまた考えなければならないのだが。
「未練を果たす、全てはそれからですか。であるなら、私たちは。」
「ええ。お持ちでしょう。」
ニコニコと、ただそう言われてしまえば頷くしかない。使命はないが未練はある。それはオユキにしても、実際のところはトモエにしても。
それを使命としない、その特別は、用はこの状況に合わせて、加えてそれぞれの事情によるのだろうが。
「私については、確かにとも思いますが。他の戦と武技、それに連なる方たちはやはり。」
「そもそも、後を引き取る方がいないことが多かったようですが、はい。稀に来られた方は皆さん、流派として確立し、残されていますよ。」
つまり、その働きかけとて行っているらしい。
「シグルドの言葉ではありませんが。」
「ええ、分かっています。ですが同じ問いかけには、同じ答えを。」
「一応働きかけは色々と、それは理解していますとも。」
経験をもとに、以前はそう考えもしたが、それすらも及ばないらしい。
「始まりの町の教会、司教様は月と安息とそう仰っていましたが。」
そもそも、それすら被造物であることには間違いないのだが。なんと言えばいいのか。
「お二人は特にですけど、時間を取ってもう少し話を聞くのが良いと思いますよ。」
「何分忙しく。」
「ええと。その、それについては私からもお礼を。あの子たちは、本当ならあのままあの町で暮らす予定でしたから。」
「おや、想定外のことが。」
「それはそうですよ。あの子も言っていたでしょう。本来ならもっと早く切り離すつもりだったと。」
こちらの尺度では計り知れない事が多くあるのだが、それでもそうなってしまえばこその悩みはあるらしい。
今回の事は、どこまで記憶に戻るのだろうかと、そう言った不安も頭をよぎりはするが、そのままオユキとトモエは話を続ける。恐らく、残りの3人の記憶では、整合性が取れたものとして残され、寝かしつけられる事だろう。
そこから、逆算する事も出来るのだ。
始めに戦と武技、その神が忙しく、身動きがとれぬ。そう言っていたというのに意外と気安い、その事実と合わせて。そして信仰を強く得ている場であれば、隅々まで目が届く、その月と安息の女神の言葉。
「流石は、神職と、そう言ったところでしょうか。司教以上という訳でも無いのでしょうが。」
「あ、ダメですよ。そういった考え方はルール違反です。」
「所謂メタ視点、は駄目ですか。そうなると両親が残したものを探すのも、難しそうですね。」
「そっちは、大丈夫ですよ。そう頼まれていることもありますから。」
さて、ここまで話す、これが何処まで記憶に残るかは分からないが、理由はあるのだろうが。
「ご期待頂けるのは、勿論喜ばしい事ですが。」
「ええ。流石に、移動の時間、こればかりは。」
本来であれば、今こうしている時にそれを話す予定だったのだ。あれこれと、今ある物、見て回ったそれをどうにか寄せ集めてと。生憎と、トモエにしてもオユキにしても、こちらのそれに詳しくはないのだから。元はそういったものづくりに関わっていたとして、先にあげた様な根本的な差異、それがそこに立ちはだかる。
「もう、だから何回も聞いたじゃないですか。ご褒美は何がいいですかって。」
「いえ、流石にあの程度で釣り合いが取れる様な物では。」
「勿論お二人が自由に使える物ではありますけど、それ以上に私たちの都合に必要な物ですからね。」
「確かに、それはそうなのでしょうが。ただそのてこ入れがあるという事は。」
まぁ、つまりそういう事なのだろう。定められた期限がある。根底にある考え、二人で話した先延ばしの決断。其処までには色々間に合わせろという事であるらしい。
「実際の所、どれくらい時間があるのでしょうか。」
20年、それが切り離し、それだけを指しているはずも無い。その余波については想像すらできない事態なのだ。そもそも文字通り超常の存在が先延ばし、それをするほどの事態だ。理外の事が、想像の埒外の事が、色々とあるのだろう。それについては、まぁ、そもそも出来る事はそう話し合ったこともある。だからこそ、そう尋ねるのだが。
「えっと、切り離しまでは5年ですね。」
「つまり、助力が無ければ不可能という事では。」
「だから何度も聞いてるんですよ。本当に望みはないのかと。」
元々平均して年に一つ、そう考えるほどに、離れているのだ、物理的に。
それを半分にしろと言われるとなれば、もはや移動時間の短縮、それ以外に方法も無い。そして今ないものを作る、それにかかる時間というのは、優にそれを超える。仮に別の者が研究行っている代替技術があるにしても、いま実用化されていない以上話にならない。オユキたちだけでなく、実に多くの物が求めているはずなのだから、そもそもという話もあるが。
「他から色々と言われそうなものですが。ああ、それでアベルさんに公爵ですか。」
「はい。情報の公開それができる物は用意しますけど。」
「甘味の要求、そちらはそのように相殺しますか。」
そう、手の取り合い、加護はそこに。なので一方通行とはならない。だからこそ改めて、私欲もあるだろうが。
「本当に、忙しないものですね。」
「その。」
「いえ、もう少し早くなどとは言いませんよ。」
そう、それを求めたりはしない。つまりこれとて試練の一環ではあるのだ。ギリギリ、それこそ助力を受けた上で、それに付随する多くをかなえた上で。そうしなければ叶える事も許されない、そんな大それたことを願っているのだから。
「後は、目を覚ました時にどの程度記憶に残っているか、ですが。」
「今回については、一部を除いてそのままに。」
つまり、今こうして認識できている、その流れはそのままという事らしい。周囲の動きが止まっている。時間の経過は判断しにくい。しかし、そこれならそれでやりようもある物だ。無論、それとて許されているからに過ぎない。
あまり話題に口を挟まなかったトモエ、話題の切り替えのタイミングで並んだ料理、それに口を付けていたはずだが、それがオユキが認識している話題以上に減っている。連続性があやふやな中、そんなぶつ切りのフィルムの様な時間。まずい話題など、そこをそっくり切り取ってしまえばいいものなのだから。
「では、神殿で、改めて。」
「闘技大会の終わり、では無いのですね。」
「こちらの人達が調べられませんから。」
そうして少しの間話は続く。そして気が付けば目が覚めるだろう。夜こうした時間を持った、その整合性が取れる形、その記憶が今は色の無いそれぞれに与えられたうえで。
「その、私が望んでという事では無いんですよ。」
創造神ルゼリア。恐らくその名を伝える事ですら、ロザリア、あまりに名前の似た彼女に、言い含めていたであろう相手。それが席についてせっせと供えた物を口に運びながら、そう応える。
「今後切り離しが終われば、そうなれば新たにお呼びすることはありませんが。」
「ええ、その折には、私たちの未練、それに捕らわれる事も無くなると、そう理解はしています。」
「あの、話してはいけない事は、やはりありますから。」
「正直、判別が難しいので、その折にはどうぞ存分に。」
そう、彼女とて、今はまだ役割という物に縛られている。絶大な力、それはあくまでその枠でしか振るえない。そして、だからこそ、それを超える物に容赦はない。その枠を守らなければいけないのだから。
これまでにも、何度となくあったのだ。分かりやすいように、特にここ最近は、そう配慮はなされていた。トモエと話していた。グラスを半分ほど空けた、書き物の途中であった。だというのに起きてみればグラスは空であり、記憶よりも進んでいるのだ。
それこそ、一切の容赦なく、エラーが発生しないように、そうできたはずだというのに。
「変革の時、ええ、想像の通りです。切り離しを行う、ここでしか許されないことが、実に多いのです。」
「となると、未だに制限は。」
「多いですね。ただ、もう、技術、知識の共有、それについてはありませんよ。異邦の方々は、それを望んでいる方が多いので、クエスト形式ですけど。」
正直、オユキとしては立て続けにマジパンを口に放り込まれる、その姿を見るだけで胸やけがするのだが。以前よりも甘味が得意、好ましく思えるようになったとは言え、これは無理だったのだ。
「つまり、御身らにとって。」
「それは違います。こちらにも残っているでしょう。この世界の始まり、その歪。つまるところ、それを埋めるためにこれほどの時を要しました。そこから生まれた私たちだからこそ、その仕組みから抜ける事が難しかったんですよ。」
そう、独立したそれとして、互いに手を取り合う。そこに力が生まれるのだとして。神とて力を蓄える必要があった。恐らくかつて存在した数多を切り捨てながら、そうせざるを得なかった。
ゲームでは、リスポーンという明確などのプレイヤーにも提供されていたらしい機能。それで確認できるのは、あくまで10柱だけ。しかし、こちらの人々は口にする。それ以外の神の名を。オユキの呼んだ、ゲーム外の知識、そこに書かれていたものの名を。
「だからまずは、使徒様方。それからプレイヤーがいる、その前提であった魔物に対するために、ですか。」
「はい。そしてそこで増えた総量を元にこちらの世界で。ええ、ご想像頂いた事が正解です。勿論、他のことも、それなりに手をだされていましたが。」
「ええ、基盤に大いに不足がある以上、どうにもならないでしょう。そもそも物理法則、宇宙によって定まるとされているそれにしても、根本から異なるのですから。」
オユキの言葉に創造神はただ嬉しそうに笑う。そもそもオユキにしてもそれは専門という訳でも無い。そして、実際の専門家はこちらに来なかった、未練が無かった。そういう事なのだろう。ただ、いくらかは無しえている。国王、王太子がそれぞれ抱え込む。そういった稀人でしかないのであろう。
トモエにしても、物理法則の違い、それを刷り込まれている節はあるのだから。
「確かに、球体と平面、損も成立を考えれば、同じ理屈も通りませんか。」
「最低限、作用反作用、それにしても。」
未だに計ることが叶わない加護、それがそこにも働いている。それにマナといった全く異なる外力が存在する。狐火、それが当たり前のように、酸化反応として現れるべきプラズマが、当たり前のように存在するのだ。
「ただ、計測、それができないようにと言う事だったのでしょう。」
「いいえ。その方々は試練が先に、そうなっていただけです。」
さて、公爵とアベル、それからアイリス。気が付けば世界はすっかりと色を失い。この場で動いているのは、オユキとトモエその二人だけ。それと、創造神もだが。こうして露骨に聞かせたくない、そうされてしまうと、色々とオユキとしてもまた考えなければならないのだが。
「未練を果たす、全てはそれからですか。であるなら、私たちは。」
「ええ。お持ちでしょう。」
ニコニコと、ただそう言われてしまえば頷くしかない。使命はないが未練はある。それはオユキにしても、実際のところはトモエにしても。
それを使命としない、その特別は、用はこの状況に合わせて、加えてそれぞれの事情によるのだろうが。
「私については、確かにとも思いますが。他の戦と武技、それに連なる方たちはやはり。」
「そもそも、後を引き取る方がいないことが多かったようですが、はい。稀に来られた方は皆さん、流派として確立し、残されていますよ。」
つまり、その働きかけとて行っているらしい。
「シグルドの言葉ではありませんが。」
「ええ、分かっています。ですが同じ問いかけには、同じ答えを。」
「一応働きかけは色々と、それは理解していますとも。」
経験をもとに、以前はそう考えもしたが、それすらも及ばないらしい。
「始まりの町の教会、司教様は月と安息とそう仰っていましたが。」
そもそも、それすら被造物であることには間違いないのだが。なんと言えばいいのか。
「お二人は特にですけど、時間を取ってもう少し話を聞くのが良いと思いますよ。」
「何分忙しく。」
「ええと。その、それについては私からもお礼を。あの子たちは、本当ならあのままあの町で暮らす予定でしたから。」
「おや、想定外のことが。」
「それはそうですよ。あの子も言っていたでしょう。本来ならもっと早く切り離すつもりだったと。」
こちらの尺度では計り知れない事が多くあるのだが、それでもそうなってしまえばこその悩みはあるらしい。
今回の事は、どこまで記憶に戻るのだろうかと、そう言った不安も頭をよぎりはするが、そのままオユキとトモエは話を続ける。恐らく、残りの3人の記憶では、整合性が取れたものとして残され、寝かしつけられる事だろう。
そこから、逆算する事も出来るのだ。
始めに戦と武技、その神が忙しく、身動きがとれぬ。そう言っていたというのに意外と気安い、その事実と合わせて。そして信仰を強く得ている場であれば、隅々まで目が届く、その月と安息の女神の言葉。
「流石は、神職と、そう言ったところでしょうか。司教以上という訳でも無いのでしょうが。」
「あ、ダメですよ。そういった考え方はルール違反です。」
「所謂メタ視点、は駄目ですか。そうなると両親が残したものを探すのも、難しそうですね。」
「そっちは、大丈夫ですよ。そう頼まれていることもありますから。」
さて、ここまで話す、これが何処まで記憶に残るかは分からないが、理由はあるのだろうが。
「ご期待頂けるのは、勿論喜ばしい事ですが。」
「ええ。流石に、移動の時間、こればかりは。」
本来であれば、今こうしている時にそれを話す予定だったのだ。あれこれと、今ある物、見て回ったそれをどうにか寄せ集めてと。生憎と、トモエにしてもオユキにしても、こちらのそれに詳しくはないのだから。元はそういったものづくりに関わっていたとして、先にあげた様な根本的な差異、それがそこに立ちはだかる。
「もう、だから何回も聞いたじゃないですか。ご褒美は何がいいですかって。」
「いえ、流石にあの程度で釣り合いが取れる様な物では。」
「勿論お二人が自由に使える物ではありますけど、それ以上に私たちの都合に必要な物ですからね。」
「確かに、それはそうなのでしょうが。ただそのてこ入れがあるという事は。」
まぁ、つまりそういう事なのだろう。定められた期限がある。根底にある考え、二人で話した先延ばしの決断。其処までには色々間に合わせろという事であるらしい。
「実際の所、どれくらい時間があるのでしょうか。」
20年、それが切り離し、それだけを指しているはずも無い。その余波については想像すらできない事態なのだ。そもそも文字通り超常の存在が先延ばし、それをするほどの事態だ。理外の事が、想像の埒外の事が、色々とあるのだろう。それについては、まぁ、そもそも出来る事はそう話し合ったこともある。だからこそ、そう尋ねるのだが。
「えっと、切り離しまでは5年ですね。」
「つまり、助力が無ければ不可能という事では。」
「だから何度も聞いてるんですよ。本当に望みはないのかと。」
元々平均して年に一つ、そう考えるほどに、離れているのだ、物理的に。
それを半分にしろと言われるとなれば、もはや移動時間の短縮、それ以外に方法も無い。そして今ないものを作る、それにかかる時間というのは、優にそれを超える。仮に別の者が研究行っている代替技術があるにしても、いま実用化されていない以上話にならない。オユキたちだけでなく、実に多くの物が求めているはずなのだから、そもそもという話もあるが。
「他から色々と言われそうなものですが。ああ、それでアベルさんに公爵ですか。」
「はい。情報の公開それができる物は用意しますけど。」
「甘味の要求、そちらはそのように相殺しますか。」
そう、手の取り合い、加護はそこに。なので一方通行とはならない。だからこそ改めて、私欲もあるだろうが。
「本当に、忙しないものですね。」
「その。」
「いえ、もう少し早くなどとは言いませんよ。」
そう、それを求めたりはしない。つまりこれとて試練の一環ではあるのだ。ギリギリ、それこそ助力を受けた上で、それに付随する多くをかなえた上で。そうしなければ叶える事も許されない、そんな大それたことを願っているのだから。
「後は、目を覚ました時にどの程度記憶に残っているか、ですが。」
「今回については、一部を除いてそのままに。」
つまり、今こうして認識できている、その流れはそのままという事らしい。周囲の動きが止まっている。時間の経過は判断しにくい。しかし、そこれならそれでやりようもある物だ。無論、それとて許されているからに過ぎない。
あまり話題に口を挟まなかったトモエ、話題の切り替えのタイミングで並んだ料理、それに口を付けていたはずだが、それがオユキが認識している話題以上に減っている。連続性があやふやな中、そんなぶつ切りのフィルムの様な時間。まずい話題など、そこをそっくり切り取ってしまえばいいものなのだから。
「では、神殿で、改めて。」
「闘技大会の終わり、では無いのですね。」
「こちらの人達が調べられませんから。」
そうして少しの間話は続く。そして気が付けば目が覚めるだろう。夜こうした時間を持った、その整合性が取れる形、その記憶が今は色の無いそれぞれに与えられたうえで。
0
お気に入りに追加
449
あなたにおすすめの小説
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
Fragment-memory of future-Ⅱ
黒乃
ファンタジー
小説内容の無断転載・無断使用・自作発言厳禁
Repost is prohibited.
무단 전하 금지
禁止擅自转载
W主人公で繰り広げられる冒険譚のような、一昔前のRPGを彷彿させるようなストーリーになります。
バトル要素あり。BL要素あります。苦手な方はご注意を。
今作は前作『Fragment-memory of future-』の二部作目になります。
カクヨム・ノベルアップ+でも投稿しています
Copyright 2019 黒乃
******
主人公のレイが女神の巫女として覚醒してから2年の月日が経った。
主人公のエイリークが仲間を取り戻してから2年の月日が経った。
平和かと思われていた世界。
しかし裏では確実に不穏な影が蠢いていた。
彼らに訪れる新たな脅威とは──?
──それは過去から未来へ紡ぐ物語
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
異世界坊主の成り上がり
峯松めだか(旧かぐつち)
ファンタジー
山歩き中の似非坊主が気が付いたら異世界に居た、放っておいても生き残る程度の生存能力の山男、どうやら坊主扱いで布教せよということらしい、そんなこと言うと坊主は皆死んだら異世界か?名前だけで和尚(おしょう)にされた山男の明日はどっちだ?
矢鱈と生物学的に細かいゴブリンの生態がウリです?
本編の方は無事完結したので、後はひたすら番外で肉付けしています。
タイトル変えてみました、
旧題異世界坊主のハーレム話
旧旧題ようこそ異世界 迷い混んだのは坊主でした
「坊主が死んだら異世界でした 仏の威光は異世界でも通用しますか? それはそうとして、ゴブリンの生態が色々エグいのですが…」
迷子な坊主のサバイバル生活 異世界で念仏は使えますか?「旧題・異世界坊主」
ヒロイン其の2のエリスのイメージが有る程度固まったので画像にしてみました、灯に関しては未だしっくり来ていないので・・未公開
因みに、新作も一応準備済みです、良かったら見てやって下さい。
少女は石と旅に出る
https://kakuyomu.jp/works/1177354054893967766
SF風味なファンタジー、一応この異世界坊主とパラレル的にリンクします
少女は其れでも生き足掻く
https://kakuyomu.jp/works/1177354054893670055
中世ヨーロッパファンタジー、独立してます
World of Fantasia
神代 コウ
ファンタジー
ゲームでファンタジーをするのではなく、人がファンタジーできる世界、それがWorld of Fantasia(ワールド オブ ファンタジア)通称WoF。
世界のアクティブユーザー数が3000万人を超える人気VR MMO RPG。
圧倒的な自由度と多彩なクラス、そして成長し続けるNPC達のAI技術。
そこにはまるでファンタジーの世界で、新たな人生を送っているかのような感覚にすらなる魅力がある。
現実の世界で迷い・躓き・無駄な時間を過ごしてきた慎(しん)はゲーム中、あるバグに遭遇し気絶してしまう。彼はゲームの世界と現実の世界を行き来できるようになっていた。
2つの世界を行き来できる人物を狙う者。現実の世界に現れるゲームのモンスター。
世界的人気作WoFに起きている問題を探る、ユーザー達のファンタジア、ここに開演。
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
「お前のような役立たずは不要だ」と追放された三男の前世は世界最強の賢者でした~今世ではダラダラ生きたいのでスローライフを送ります~
平山和人
ファンタジー
主人公のアベルは転生者だ。一度目の人生は剣聖、二度目は賢者として活躍していた。
三度目の人生はのんびり過ごしたいため、アベルは今までの人生で得たスキルを封印し、貴族として生きることにした。
そして、15歳の誕生日でスキル鑑定によって何のスキルも持ってないためアベルは追放されることになった。
アベルは追放された土地でスローライフを楽しもうとするが、そこは凶悪な魔物が跋扈する魔境であった。
襲い掛かってくる魔物を討伐したことでアベルの実力が明らかになると、領民たちはアベルを救世主と崇め、貴族たちはアベルを取り戻そうと追いかけてくる。
果たしてアベルは夢であるスローライフを送ることが出来るのだろうか。
公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)
音爽(ネソウ)
ファンタジー
記憶持ち転生者は元定食屋の息子。
魔法ありファンタジー異世界に転生した。彼は将軍を父に持つエリートの公爵家の嫡男に生まれかわる。
だが授かった職業スキルが「パンツもぐもぐ」という謎ゴミスキルだった。そんな彼に聖騎士の弟以外家族は冷たい。
見習い騎士にさえなれそうもない長男レオニードは廃嫡後は冒険者として生き抜く決意をする。
「ゴミスキルでも美味しい物を狩れれば満足だ」そんな彼は前世の料理で敵味方の胃袋を掴んで魅了しまくるグルメギャグ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる