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5章 祭りと鉱山
本来のお仕事
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30分ほどか、1時間ほどか。
オユキとトモエが、十分と、そう思う程度に魔物を切り捨て、少年たちの元へと戻る。
彼らにしても、ルイスとアイリスの指導の下、いつも通りに魔物を狩っていた。
「おう、お疲れ。ずいぶん楽しそうだったじゃねーか。」
「お恥ずかしながら、試しのつもりが、少々羽目を外していしましました。」
そう、トモエがはにかみながら告げればルイスが呆れたようにため息をつく。
「あんだけ暴れて、そうして惚けられるなら十分だ。
よしガキども、お前らの本来の仕事だぞ。」
そういってルイスが子供たちを集めて、連れて行く。
そもそも子供たちには荷物を運ぶ、それを頼むつもりであったのだから、言葉通りだ。
「いいか、こういった状況で集めるのはまず魔石だ。」
「えっと、珍しい物とか、高い物じゃ。」
「お、何だお前ら。初めて見る物が珍しいか、金になるか、分かるのか。」
「あ。」
「だから、必ず替えになって腐らない、痛まない、荷袋を傷めたりしない、魔石だ。加えて大きさも基本的に大したことないし、重さもそうだ。確実に金になるそれを集める。
で、次にトロフィーだな。そこらに転がってる、いや実際に今そうなってるが、まずこうはならんからな、トロフィーを回収する。」
「はい。」
どうやら、オユキ達も詳しくはない、そういった作業をする際の心得も併せてみてくれるらしい。
作業中の護衛、周囲の魔物はあらかた狩りつくしてはいるが、新しく現れたり、突っ込んできたり、それに備えてアイリスも護衛に回ってくれている。
そんな様子を見ながら、トモエとオユキはそれぞれに武器の手入れを改めて行おうかと思えば、少年たちがそれを許してくれなかった。
テンションの高いシグルドにトモエは話しかけられ、オユキは突っ込んできたアナに持ち上げられて振り回される。
「あの、アナさん。オユキさんはのついた武器を持っていますから、危ないですよ。」
そうトモエが控えめに告げても、オユキを持ち上げてくるくると回るアナには届かない。
「いや、すごかったな。なんて言うか、分かり易く凄かった。」
「ありがとうございます。少々はしゃぎすぎましたね。」
「なぁ、あのまとめてグレイウルフ切ったやつ、あれ、武技だろ。」
「ええ、使えると、そういう感覚はあったのですが、これまでは技を見せようと、そう凝り固まっていまして。」
「いや、それだって、あんちゃんの力だし、それに凄かったぜ、これまで傭兵のおっさんとかおばさんとかが使っても、あそこまできれいに斬れてなかったし。」
シグルドが興奮に任せて口を滑らし、彼の眼前に炎が躍る。
離れた位置から、アイリスのさすような視線が届き、ただシグルドはそちらに向けて何も言わずに深々と頭を下げる。
一方、オユキを振り回しながら、アナがキャイキャイと話しかける。
「オユキちゃん、かっこよかったよ。」
「ありがとうございます。あの、目が回るので。」
「すごかった。あんなふうに動けるんだ。こう本当に踊ってるみたいで。」
「まだまだ拙い物ですが、今後はああいった技を模索しようと。あの、刃のついた武器を持っているので、程々に。」
「凄いな。私もあんな風に動いてみたいかも。」
全くオユキの言葉に聞く耳を持たず、オユキを誉めながら自分もあんな動きをしてみたいと、そうまくしたてる。
「ジーク、戦場だ。」
「アン。オユキちゃん、困ってるよ。」
そんな調子で、周囲の警戒もせず、騒ぐシグルドとアナをパウとアドリアーナが止める。
言葉だけでなく、肩を掴んで。
そうしてようやく止まった二人を置いて、トモエとオユキは武器を改めて見聞する。
無理に使った、そうともいえる戦闘だったが、刃毀れもなく、曲がりもせず、ただ血と脂で曇った刃がそこにはあった。
ただ、オユキの長刀については、柄が少し痛んではいたが。
それを見て取って、手入れをしながら、少年たちと改めて話す。
「その、試し切り、その範囲を超えて流派で馴染んだ武器を手にしてはしゃいでしまいましたが、太刀、これですね、私たちの修めた流派、アイリスさんは元来これより少し長いものですが、それを扱うための技なのです。」
「ああ、うん。見ててわかった。なんか、のびのびしてた、あんちゃんもオユキも。」
「他の武器にも流用できますが、やはり馴染んでいますから。
技らしい技は使いませんでしたが、これを使う、その型、それがどういう物かは見て頂けたかと。」
そうトモエがシグルドに話せば、彼も深く頷く。
「うん。なんか、それにしっくりくる、そういう動きってのはわかった。
でも、それなら俺もそれ作っといたほうが良かったか。」
「いえ、工房でウーヴェさんも仰っていたでしょう、刀身が細いので、痩せるのが早いんですよ。」
「んー。」
「刃毀れがあれば、研ぐことになるでしょう、そうすれば刀身がさらに細くなります。
繰り返せば、折れるほどに。」
「ああ、そういう事か。そっか、こう、きれいに斬って、刃を痛めないならって事か。
じゃ、おれはまだ先だな。」
「先と、そう思ってくれるのは嬉しいですよ。そうですね、初歩の型が十分と、そう思えたときには、お渡ししましょうか。一つの形として。」
「おー。」
そうして、トモエとシグルドでそんな話をしていれば、パウもどこか楽し気にその話を聞いている。
彼にしても、纏めて敵を斬りはらい、自分より大きな熊の首を一刀で切り落とす、そんな振る舞いは目標とするに十分だったのだろう。
「ね。私もできるようになるかな。」
「まだまだ、技として組み立てている途中ですから、これに繋がる簡単な事ならお教えしますよ。」
「ほんと。でも、ナイフで出来るかな。」
「短刀、ナイフでの演武でしたらトモエさんがご存知ですから。まずはそちらを修めるのがいいかもしれませんね。私の動きにしても、これまで積み重ねた物が、基礎となっているのは間違いありませんから。」
「そっか。そうだね。普通に動いて足首痛めてるうちは、あんなことしたら怪我するだけだもんね。」
「私たちが見ている、そこで練習する分には良いと思いますよ。今は皆さん同じ動きで、体を鍛えることも目的としていますが、時間があれば、個別に望む型と、そういう事もできるでしょうから。」
「わー、楽しみ。」
「ね、オユキちゃん、そっちの長刀、借りてもいい。」
「はい、どうぞ。少し柄が痛んでいます。作りに関して、ウーヴェさんと改めて相談が要りますね。」
「そうなんだ。でも、こんな端の方を持って、あんなにまっすぐ振れるんだね。」
「その結果痛めているので、今は真似しないでくださいね。」
「分かった。そっかトモエさん、基礎の上で工夫って言ってたけど、本当に色々できるんだね。」
「はい。流派が変われば、いろいろ変わります。つまりそれだけいろいろと余地があるそういう事ですね。」
「うん。でも、今は基礎かな、それを大丈夫っていて貰いたいかな。」
「良い心掛けかと。」
そうして、魔物が来ない中、あれこれと話していると、子供たちがルイスとアイリスに連れられて、馬車へと向かっている。その手には、膨れ上がった荷袋を誰も彼も持っている。
そんな姿を横目に、一先ずの手入れを終えたオユキとトモエが子供たちを見る。
まだ時間はありそうだからと、欠ける声はいつもと同じ。
「まだ、時間はありそうですから、もう少し、魔物を狩りましょうか。」
その言葉に少年たちが、頷いて答える。
その目には、熱が宿っているが、体に余分な力が入っているわけでもない。
非常にいい状態、そう言えるだろう。
そして、子供たちは馬車から予備の荷袋を持ち出して、また荷物を拾い集めに向かっている。
さて、オユキにしてもトモエにしても、集中して魔物を斬り続け、収集物を拾い集めることに意識を割くこともなかったが、どのくらいの物が転がっている事だろうか。
周囲に広がって散らばり、魔物を狩っている傭兵達ほどではないだろうが。
オユキとトモエが、十分と、そう思う程度に魔物を切り捨て、少年たちの元へと戻る。
彼らにしても、ルイスとアイリスの指導の下、いつも通りに魔物を狩っていた。
「おう、お疲れ。ずいぶん楽しそうだったじゃねーか。」
「お恥ずかしながら、試しのつもりが、少々羽目を外していしましました。」
そう、トモエがはにかみながら告げればルイスが呆れたようにため息をつく。
「あんだけ暴れて、そうして惚けられるなら十分だ。
よしガキども、お前らの本来の仕事だぞ。」
そういってルイスが子供たちを集めて、連れて行く。
そもそも子供たちには荷物を運ぶ、それを頼むつもりであったのだから、言葉通りだ。
「いいか、こういった状況で集めるのはまず魔石だ。」
「えっと、珍しい物とか、高い物じゃ。」
「お、何だお前ら。初めて見る物が珍しいか、金になるか、分かるのか。」
「あ。」
「だから、必ず替えになって腐らない、痛まない、荷袋を傷めたりしない、魔石だ。加えて大きさも基本的に大したことないし、重さもそうだ。確実に金になるそれを集める。
で、次にトロフィーだな。そこらに転がってる、いや実際に今そうなってるが、まずこうはならんからな、トロフィーを回収する。」
「はい。」
どうやら、オユキ達も詳しくはない、そういった作業をする際の心得も併せてみてくれるらしい。
作業中の護衛、周囲の魔物はあらかた狩りつくしてはいるが、新しく現れたり、突っ込んできたり、それに備えてアイリスも護衛に回ってくれている。
そんな様子を見ながら、トモエとオユキはそれぞれに武器の手入れを改めて行おうかと思えば、少年たちがそれを許してくれなかった。
テンションの高いシグルドにトモエは話しかけられ、オユキは突っ込んできたアナに持ち上げられて振り回される。
「あの、アナさん。オユキさんはのついた武器を持っていますから、危ないですよ。」
そうトモエが控えめに告げても、オユキを持ち上げてくるくると回るアナには届かない。
「いや、すごかったな。なんて言うか、分かり易く凄かった。」
「ありがとうございます。少々はしゃぎすぎましたね。」
「なぁ、あのまとめてグレイウルフ切ったやつ、あれ、武技だろ。」
「ええ、使えると、そういう感覚はあったのですが、これまでは技を見せようと、そう凝り固まっていまして。」
「いや、それだって、あんちゃんの力だし、それに凄かったぜ、これまで傭兵のおっさんとかおばさんとかが使っても、あそこまできれいに斬れてなかったし。」
シグルドが興奮に任せて口を滑らし、彼の眼前に炎が躍る。
離れた位置から、アイリスのさすような視線が届き、ただシグルドはそちらに向けて何も言わずに深々と頭を下げる。
一方、オユキを振り回しながら、アナがキャイキャイと話しかける。
「オユキちゃん、かっこよかったよ。」
「ありがとうございます。あの、目が回るので。」
「すごかった。あんなふうに動けるんだ。こう本当に踊ってるみたいで。」
「まだまだ拙い物ですが、今後はああいった技を模索しようと。あの、刃のついた武器を持っているので、程々に。」
「凄いな。私もあんな風に動いてみたいかも。」
全くオユキの言葉に聞く耳を持たず、オユキを誉めながら自分もあんな動きをしてみたいと、そうまくしたてる。
「ジーク、戦場だ。」
「アン。オユキちゃん、困ってるよ。」
そんな調子で、周囲の警戒もせず、騒ぐシグルドとアナをパウとアドリアーナが止める。
言葉だけでなく、肩を掴んで。
そうしてようやく止まった二人を置いて、トモエとオユキは武器を改めて見聞する。
無理に使った、そうともいえる戦闘だったが、刃毀れもなく、曲がりもせず、ただ血と脂で曇った刃がそこにはあった。
ただ、オユキの長刀については、柄が少し痛んではいたが。
それを見て取って、手入れをしながら、少年たちと改めて話す。
「その、試し切り、その範囲を超えて流派で馴染んだ武器を手にしてはしゃいでしまいましたが、太刀、これですね、私たちの修めた流派、アイリスさんは元来これより少し長いものですが、それを扱うための技なのです。」
「ああ、うん。見ててわかった。なんか、のびのびしてた、あんちゃんもオユキも。」
「他の武器にも流用できますが、やはり馴染んでいますから。
技らしい技は使いませんでしたが、これを使う、その型、それがどういう物かは見て頂けたかと。」
そうトモエがシグルドに話せば、彼も深く頷く。
「うん。なんか、それにしっくりくる、そういう動きってのはわかった。
でも、それなら俺もそれ作っといたほうが良かったか。」
「いえ、工房でウーヴェさんも仰っていたでしょう、刀身が細いので、痩せるのが早いんですよ。」
「んー。」
「刃毀れがあれば、研ぐことになるでしょう、そうすれば刀身がさらに細くなります。
繰り返せば、折れるほどに。」
「ああ、そういう事か。そっか、こう、きれいに斬って、刃を痛めないならって事か。
じゃ、おれはまだ先だな。」
「先と、そう思ってくれるのは嬉しいですよ。そうですね、初歩の型が十分と、そう思えたときには、お渡ししましょうか。一つの形として。」
「おー。」
そうして、トモエとシグルドでそんな話をしていれば、パウもどこか楽し気にその話を聞いている。
彼にしても、纏めて敵を斬りはらい、自分より大きな熊の首を一刀で切り落とす、そんな振る舞いは目標とするに十分だったのだろう。
「ね。私もできるようになるかな。」
「まだまだ、技として組み立てている途中ですから、これに繋がる簡単な事ならお教えしますよ。」
「ほんと。でも、ナイフで出来るかな。」
「短刀、ナイフでの演武でしたらトモエさんがご存知ですから。まずはそちらを修めるのがいいかもしれませんね。私の動きにしても、これまで積み重ねた物が、基礎となっているのは間違いありませんから。」
「そっか。そうだね。普通に動いて足首痛めてるうちは、あんなことしたら怪我するだけだもんね。」
「私たちが見ている、そこで練習する分には良いと思いますよ。今は皆さん同じ動きで、体を鍛えることも目的としていますが、時間があれば、個別に望む型と、そういう事もできるでしょうから。」
「わー、楽しみ。」
「ね、オユキちゃん、そっちの長刀、借りてもいい。」
「はい、どうぞ。少し柄が痛んでいます。作りに関して、ウーヴェさんと改めて相談が要りますね。」
「そうなんだ。でも、こんな端の方を持って、あんなにまっすぐ振れるんだね。」
「その結果痛めているので、今は真似しないでくださいね。」
「分かった。そっかトモエさん、基礎の上で工夫って言ってたけど、本当に色々できるんだね。」
「はい。流派が変われば、いろいろ変わります。つまりそれだけいろいろと余地があるそういう事ですね。」
「うん。でも、今は基礎かな、それを大丈夫っていて貰いたいかな。」
「良い心掛けかと。」
そうして、魔物が来ない中、あれこれと話していると、子供たちがルイスとアイリスに連れられて、馬車へと向かっている。その手には、膨れ上がった荷袋を誰も彼も持っている。
そんな姿を横目に、一先ずの手入れを終えたオユキとトモエが子供たちを見る。
まだ時間はありそうだからと、欠ける声はいつもと同じ。
「まだ、時間はありそうですから、もう少し、魔物を狩りましょうか。」
その言葉に少年たちが、頷いて答える。
その目には、熱が宿っているが、体に余分な力が入っているわけでもない。
非常にいい状態、そう言えるだろう。
そして、子供たちは馬車から予備の荷袋を持ち出して、また荷物を拾い集めに向かっている。
さて、オユキにしてもトモエにしても、集中して魔物を斬り続け、収集物を拾い集めることに意識を割くこともなかったが、どのくらいの物が転がっている事だろうか。
周囲に広がって散らばり、魔物を狩っている傭兵達ほどではないだろうが。
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