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二章 新しくも懐かしい日々
参戦
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「よう。あんたらもここか。」
「はい。そう言われています。」
イリアを含め、何人かの狩猟者が、門のそばまで抜けてきた魔物の処理を終えると、オユキ達に声をかけて来る。
とはいっても、まだ遠くから抜けてきた魔物が見え、イリアを含めた数人は、そちらへの警戒を緩めてはいない。
それに、トモエが答えた後に、オユキも続ける。
「まだ狩猟者になって、一週間もたっていませんから。
こちらで一緒に、抜けてきた相手の処理をさせていただきますね。」
「ま、回されてくるくらいの力量はあるんだろうさ。
そうだな、壁よりの場所に立つようにしてくれ。」
「分かりました。それと、予備の武器や荷物などは、どこに纏めておけば宜しいのでしょう。」
トモエがそう聞けば、相手は、トモエたちが来た道を少し戻った場所を指す。
そこは、出て来る時には気にしなかったが、町を守る壁、そこにまとめられている一角があった。
「あそこに置いておいてくれればいい。
一応、他の人間のとまぎれないよう、分かり易くはしておいてくれ。」
「分かりました。では荷物を置いたら、また戻ってきますね。」
そう告げて、荷物を置き戦列に戻ってくれば、直ぐに魔物が抜けて来る。
「何匹かは任せるぞ。」
改めて周囲を見渡せば、森に近く、明らかに突出した位置に配置されている人員と、それ以外、門の出入り口を守るように、半円に配置された人員がいる。
オユキ達は後者に組み込まれ、それも壁にほど近い、そんな場所で抜けてくる魔物に、さっそく対峙する。
トモエが早々とサーベルを抜き放ち、跳ねながら突っ込んでくる丸兎を早々と切り捨て、オユキもそれに習って、グレイブを振るい、丸兎を斬ろうとするが、上手くいかずそのまま地面にたたきつけることとなり、二撃目をすぐに切り返しで放つ。
それで問題なく、丸兎を倒すことはできたが、これまでと明らかに違う手ごたえに、首をかしげる。
それはトモエも同じだったのだろう、サーベルを見ながら、オユキに声をかけて来る。
「武器のせいかとも思いましたが、違うようですね。」
「ええ、これまでに比べて、毛皮がかなり固く感じます。本番と、そういう事なのでしょうね。」
二人でそんなことを言いあっていると、最初に声をかけてきた男が、肩をすくめて話しかけてくる。
「一週間じゃ、今回が初めてだろ。あんたらの言う通り、溢れの本番はこんなもんだ。
一刀で切り伏せて、手ごわそうにするから何かと思ったが。」
「ご心配をおかけしたのなら、申し訳ありません。
それにしても、武器の痛みが早くなりそうですね。」
「まぁ、仕方ないさ。普通のなら、一日戦えば少なくとも2本は使いつぶすつもりでいな。」
「そうなってしまいそうですね。次が来ましたか。」
トモエが、オユキにははっきりとわかる程度に残念そうに言いながら、次に来る魔物を相手に意識を向ける。
オユキとしても、技という面ではトモエに劣るため、さて一刀で切り伏せられるのか、ここにきて改めて自分の腕を磨く機会があるのかと、少しの楽しさを覚えながら、勢いよく跳ねながら突っ込んでくる丸兎に意識を向ける。
切れ味は変わらない、得物に対する慣れも似たようなもの、勢いという意味で言えば、長物のほうが上。
しかしトモエは切り裂き、オユキは弾いた。はっきりと鋭さに差があるのだろう。
少しくらいは、差を詰めたい、そんな考えの元、丁寧に、しっかりと、攻撃を放つ。すると、今度は問題なく一刀で切り伏せることができた。
正面に置いた丸兎の、向こうからは、グレイハウンド、歩きキノコといった見慣れた物も突っ込んできているのが見える。
さて、トモエにしても、ここでしっかりと経験を積み、差が詰まるとは言い切れないだろうが、それでも詰められるよう、並べるように、そう考えれば、オユキは得物を持つ手に過剰に力が入る自分を感じて、意識して力を抜く。
それこそ、先はまだまだ長い。
無駄に力んでいては、息切れするだけと、己に縛めて、突っ込んできたグレイハウンドに対して突きを放ち、そのまま肉に変え、遅れて近寄る歩きキノコを遠心力をしっかり乗せた一撃で、一刀で切り伏せる。
周囲、トモエを始め、他の者も魔物を次から次へと蹴散らす中、普段と変わらずその場に残る物品たち。
魔物がそのままの大きさで、その場に残るよりはましだが、それでも、足場の確保も考えなければ、そんなことを考えて、オユキは戦いに身を投じる。
そして、次から次へと、一体何処からこれだけ、そう思うほどの魔物を斬り続けて、2時間ほどが経っただろうか。
オユキは、武器に違和感を覚え始める。
これまでの切る、そういった手ごたえよりも、叩く、その手ごたえが強く帰ってき始めた。
間断なく襲ってくる魔物の相手をしており、武器の手入れなどもちろんする暇はない。
流石にそろそろまずいか、そう考えて、声を上げる。
「そろそろ、武器を変えたいのですが。」
他の者そう声をかけて、休憩であったり、食事であったり、武器の交換、手入れであったりと、入れ代わり立ち代わり魔物と戦い続けている。
トラノスケも、仮眠明けだろう、少し前にオユキ達の陣取る一角に参加していた。
「ああ。一度抜けてくれ。」
そう言われて、オユキは対峙していたグレイハウンドを切り捨てると、後ろに数歩下がる。
すると、他の人員が、それを埋めるように、オユキがいた場所へとある程度近づく。
その様子を見ながら、魔物の群れから視線をしばらく切らずに、暫く下がり、十分に距離が空いたところで構えを解いて、荷物を最初に置いた一角へと向かう。
戦っている最中も見てはいたが、グレイブの刃先は血と脂にまみれて、ひどい状態になっている。
荷物の中から、武器の手入れ用としている布を取り出し、軽く拭ってはみるが、脂は落ちそうにもないし、ところどころ刃毀れも見られる。
思わずため息をこぼしてしまうと、同じタイミングで抜けてきたトモエも、オユキの横から荷物に手を伸ばしながら、苦笑いと共に、オユキに話しかける。
「流石に、想像以上でしたね。」
「本番はこれからですよ。変わらないのであれば。」
トモエもオユキと同じように、武器を軽く拭うと、眉を顰める。
その様子に、オユキも自分も同じような表情なのだろうと、そう思いながら声をかける。
「打ち直しなど、してくれるところがあればいいのですが。」
「そうですね。流石に、気を付けてもあれだけの数を斬れば痛みますね。
まだ先が長いのなら、もう1,2本予備を買っておいたほうが良かったかもしれません。」
「まぁ、途中で、大きく休憩をとる機会もあるでしょう。その時に必要であれば。」
そんなことを話し、持ってきた木製の水筒から水を飲み、その残りでここまで使い倒した武器の血だけ落とし、新しい予備を手に取る。
「トモエさんは、先に少し食事にしますか。」
「そうですね、朝食もまだでしたから。オユキさんも。」
食事に手を付けずに、そのまま戻ろうと考えていたオユキを、トモエが止める。
「半分だけでも食べていきましょう。少し無理に動いたのでしょう、後半疲れが見えていましたよ。」
言われて、オユキは気恥ずかしさを覚えて、軽く頬を掻く。
「雑になっていましたか。」
「雑とは言いませんが、切れ味が落ちたのに、無理に切ろうとしていましたから。」
「私もまだまだ、そう思ってしまいますね。
トモエさんは、それで後半刺突を中心に。」
「そうですね。さした魔物が消えるので、引っかかることはありませんから。
まぁ、結果として曲げてしまいましたが。」
そういって、トモエは申し訳なさそうに、サーベルの刀身を撫でる。
「お互い、まだまだ伸びしろがある、そういう事なのでしょうね。」
「ええ、そうですね。それに力の入り方がやはり違いますので、私のほうも少々動きに粗がありますから。」
トモエはそういうと、袋から出がけに頂いた紙包みを取り出す。
中には大ぶりなサンドイッチ、こちら何と呼ぶのかわからないが、野菜と肉をパンで挟んだものがその中に入っていた。
それを二人で齧りながら、互いに魔物の感想を少し話ながら食事をする。
視線を周囲に向ければ、魔物とそれと戦う相手、門の壁以外は、どこもそれが目に入る。
「はい。そう言われています。」
イリアを含め、何人かの狩猟者が、門のそばまで抜けてきた魔物の処理を終えると、オユキ達に声をかけて来る。
とはいっても、まだ遠くから抜けてきた魔物が見え、イリアを含めた数人は、そちらへの警戒を緩めてはいない。
それに、トモエが答えた後に、オユキも続ける。
「まだ狩猟者になって、一週間もたっていませんから。
こちらで一緒に、抜けてきた相手の処理をさせていただきますね。」
「ま、回されてくるくらいの力量はあるんだろうさ。
そうだな、壁よりの場所に立つようにしてくれ。」
「分かりました。それと、予備の武器や荷物などは、どこに纏めておけば宜しいのでしょう。」
トモエがそう聞けば、相手は、トモエたちが来た道を少し戻った場所を指す。
そこは、出て来る時には気にしなかったが、町を守る壁、そこにまとめられている一角があった。
「あそこに置いておいてくれればいい。
一応、他の人間のとまぎれないよう、分かり易くはしておいてくれ。」
「分かりました。では荷物を置いたら、また戻ってきますね。」
そう告げて、荷物を置き戦列に戻ってくれば、直ぐに魔物が抜けて来る。
「何匹かは任せるぞ。」
改めて周囲を見渡せば、森に近く、明らかに突出した位置に配置されている人員と、それ以外、門の出入り口を守るように、半円に配置された人員がいる。
オユキ達は後者に組み込まれ、それも壁にほど近い、そんな場所で抜けてくる魔物に、さっそく対峙する。
トモエが早々とサーベルを抜き放ち、跳ねながら突っ込んでくる丸兎を早々と切り捨て、オユキもそれに習って、グレイブを振るい、丸兎を斬ろうとするが、上手くいかずそのまま地面にたたきつけることとなり、二撃目をすぐに切り返しで放つ。
それで問題なく、丸兎を倒すことはできたが、これまでと明らかに違う手ごたえに、首をかしげる。
それはトモエも同じだったのだろう、サーベルを見ながら、オユキに声をかけて来る。
「武器のせいかとも思いましたが、違うようですね。」
「ええ、これまでに比べて、毛皮がかなり固く感じます。本番と、そういう事なのでしょうね。」
二人でそんなことを言いあっていると、最初に声をかけてきた男が、肩をすくめて話しかけてくる。
「一週間じゃ、今回が初めてだろ。あんたらの言う通り、溢れの本番はこんなもんだ。
一刀で切り伏せて、手ごわそうにするから何かと思ったが。」
「ご心配をおかけしたのなら、申し訳ありません。
それにしても、武器の痛みが早くなりそうですね。」
「まぁ、仕方ないさ。普通のなら、一日戦えば少なくとも2本は使いつぶすつもりでいな。」
「そうなってしまいそうですね。次が来ましたか。」
トモエが、オユキにははっきりとわかる程度に残念そうに言いながら、次に来る魔物を相手に意識を向ける。
オユキとしても、技という面ではトモエに劣るため、さて一刀で切り伏せられるのか、ここにきて改めて自分の腕を磨く機会があるのかと、少しの楽しさを覚えながら、勢いよく跳ねながら突っ込んでくる丸兎に意識を向ける。
切れ味は変わらない、得物に対する慣れも似たようなもの、勢いという意味で言えば、長物のほうが上。
しかしトモエは切り裂き、オユキは弾いた。はっきりと鋭さに差があるのだろう。
少しくらいは、差を詰めたい、そんな考えの元、丁寧に、しっかりと、攻撃を放つ。すると、今度は問題なく一刀で切り伏せることができた。
正面に置いた丸兎の、向こうからは、グレイハウンド、歩きキノコといった見慣れた物も突っ込んできているのが見える。
さて、トモエにしても、ここでしっかりと経験を積み、差が詰まるとは言い切れないだろうが、それでも詰められるよう、並べるように、そう考えれば、オユキは得物を持つ手に過剰に力が入る自分を感じて、意識して力を抜く。
それこそ、先はまだまだ長い。
無駄に力んでいては、息切れするだけと、己に縛めて、突っ込んできたグレイハウンドに対して突きを放ち、そのまま肉に変え、遅れて近寄る歩きキノコを遠心力をしっかり乗せた一撃で、一刀で切り伏せる。
周囲、トモエを始め、他の者も魔物を次から次へと蹴散らす中、普段と変わらずその場に残る物品たち。
魔物がそのままの大きさで、その場に残るよりはましだが、それでも、足場の確保も考えなければ、そんなことを考えて、オユキは戦いに身を投じる。
そして、次から次へと、一体何処からこれだけ、そう思うほどの魔物を斬り続けて、2時間ほどが経っただろうか。
オユキは、武器に違和感を覚え始める。
これまでの切る、そういった手ごたえよりも、叩く、その手ごたえが強く帰ってき始めた。
間断なく襲ってくる魔物の相手をしており、武器の手入れなどもちろんする暇はない。
流石にそろそろまずいか、そう考えて、声を上げる。
「そろそろ、武器を変えたいのですが。」
他の者そう声をかけて、休憩であったり、食事であったり、武器の交換、手入れであったりと、入れ代わり立ち代わり魔物と戦い続けている。
トラノスケも、仮眠明けだろう、少し前にオユキ達の陣取る一角に参加していた。
「ああ。一度抜けてくれ。」
そう言われて、オユキは対峙していたグレイハウンドを切り捨てると、後ろに数歩下がる。
すると、他の人員が、それを埋めるように、オユキがいた場所へとある程度近づく。
その様子を見ながら、魔物の群れから視線をしばらく切らずに、暫く下がり、十分に距離が空いたところで構えを解いて、荷物を最初に置いた一角へと向かう。
戦っている最中も見てはいたが、グレイブの刃先は血と脂にまみれて、ひどい状態になっている。
荷物の中から、武器の手入れ用としている布を取り出し、軽く拭ってはみるが、脂は落ちそうにもないし、ところどころ刃毀れも見られる。
思わずため息をこぼしてしまうと、同じタイミングで抜けてきたトモエも、オユキの横から荷物に手を伸ばしながら、苦笑いと共に、オユキに話しかける。
「流石に、想像以上でしたね。」
「本番はこれからですよ。変わらないのであれば。」
トモエもオユキと同じように、武器を軽く拭うと、眉を顰める。
その様子に、オユキも自分も同じような表情なのだろうと、そう思いながら声をかける。
「打ち直しなど、してくれるところがあればいいのですが。」
「そうですね。流石に、気を付けてもあれだけの数を斬れば痛みますね。
まだ先が長いのなら、もう1,2本予備を買っておいたほうが良かったかもしれません。」
「まぁ、途中で、大きく休憩をとる機会もあるでしょう。その時に必要であれば。」
そんなことを話し、持ってきた木製の水筒から水を飲み、その残りでここまで使い倒した武器の血だけ落とし、新しい予備を手に取る。
「トモエさんは、先に少し食事にしますか。」
「そうですね、朝食もまだでしたから。オユキさんも。」
食事に手を付けずに、そのまま戻ろうと考えていたオユキを、トモエが止める。
「半分だけでも食べていきましょう。少し無理に動いたのでしょう、後半疲れが見えていましたよ。」
言われて、オユキは気恥ずかしさを覚えて、軽く頬を掻く。
「雑になっていましたか。」
「雑とは言いませんが、切れ味が落ちたのに、無理に切ろうとしていましたから。」
「私もまだまだ、そう思ってしまいますね。
トモエさんは、それで後半刺突を中心に。」
「そうですね。さした魔物が消えるので、引っかかることはありませんから。
まぁ、結果として曲げてしまいましたが。」
そういって、トモエは申し訳なさそうに、サーベルの刀身を撫でる。
「お互い、まだまだ伸びしろがある、そういう事なのでしょうね。」
「ええ、そうですね。それに力の入り方がやはり違いますので、私のほうも少々動きに粗がありますから。」
トモエはそういうと、袋から出がけに頂いた紙包みを取り出す。
中には大ぶりなサンドイッチ、こちら何と呼ぶのかわからないが、野菜と肉をパンで挟んだものがその中に入っていた。
それを二人で齧りながら、互いに魔物の感想を少し話ながら食事をする。
視線を周囲に向ければ、魔物とそれと戦う相手、門の壁以外は、どこもそれが目に入る。
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