憧れの世界でもう一度

五味

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1章 懐かしく新しい世界

外に出るのにも一波乱

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そうして、話し合いながらも、オユキを時折振り返っては、待つ、そんな二人を追いかけ、どうにか町の内外を隔てる門へと、三人はたどり着く。
トラノスケが代表して、慣れた様子で門番へと話しかける。
門番の男も、トラノスケとは馴染みのようで、ずいぶん親し気に話している。

「よう。旦那。さっき帰ってきたばかりだってのに、また外に出るのかい。」
「ああ。旧い馴染みがこちらに来てな、その案内を買って出た。」
「面倒見のいいことで、そっちの赤毛の男かい?」
「ああ。」

そこまで話したトラノスケが、トモエに視線を送る。
トモエは慣れた仕草で、頭を下げ、自己紹介を行う。

「初めまして、守衛の御方。トモエと申します。これからこの町でお世話になりますので、どうぞお見知りおきを。」
「よしてくれ、そんな丁寧に話されるような、上等な人間じゃないさ。」
「なにを言う。町を守る、立派な仕事だろう。」
「そうですね、町の内側がこうして安穏とできるのも、町の外から来るものを守る方、その日々の努力があっての事でしょう。その職務が上等でなければ、他に上等なものなどありませんよ。」

門番の男は、そうほめそやされて、居心地が悪そうに、身震いをする。

「よせよせ。俺を誉めたって、何が出るわけでもない。
 それより、外に出るんだろう。あなた方の身に、神のご加護がありますよう。」

そういって、男は聖印を宙に切り、手のひらを差し出す。

「まぁ、決まりだ。さ、身分証を見せてくれ。町の出入りの際は、必ず行う決まりになっている。
 それと、いつ頃戻るのか、その大まかな予定もだな。
 あまりに遅いようなら、捜索隊が出る。」
「まぁ、至れり尽くせりですね。」
「そうならないことを、俺は日々祈ってるのさ。それにしても、随分と丁寧な兄ちゃんだな。
 ん、そういえば、物越しもやけに柔らかい。」

言われて、トモエは数度瞬きをしてから、苦笑いを浮かべる。

「ええ、異邦からきて、こちらの振る舞いにまだ慣れておらず。
 違和感を感じさせてしまうかもしれませんね。」

トモエは、嘘にならない程度に、ぼかして答える。
そして、仮登録証を門番の男に、差し出す。

「少し外の案内と、手ごろな魔物を狩ってくる。日が落ちる前には戻る予定だ。」
「はいよ。うん。これで良し。どうだい、トラノスケがついてるとはいえ、不安なら、このあたりで狩りをしてくれりゃ、危なそうだったら、俺らも助けに走れるが。」

そういって、男は手に持った槍を軽く回す。

「まぁ、心配はないだろう、森の手前くらいまでは歩くつもりだ。」
「まぁ、気をつけてな。」

そういって、トラノスケと、トモエがそれぞれ身分証を返してもらっているのを見ながら、オユキも自分のものを差し出す。

「おっと、嬢ちゃん。興味を持つのはいいが、町の外は危ない。
 もう少し大きくなってから、挑戦しな。」

しかし、門番は、オユキの身分証を受け取らなかった。
トモエは、その様子に苦笑いを浮かべ、トラノスケは大笑いする。
その様子に、門番は何があるのかと、いぶかし気に首をかしげる。

「私も自分の見た目は理解していますが、大丈夫ですよ。こう見えて、私もトラノスケさんと同郷ですから。
 経験という意味では、それこそ、トラノスケさんと同じ程度にはなじみがあります。」

まぁ、この形では説得力もないでしょうが。オユキはそういって、苦笑いを浮かべながら、再度仮登録証を差し出す。

「いや、狩猟者ギルドが良しとしたなら、俺が言うのはお門違いかもしれないが。どうするかな。」

そう応えて、門番の男は、頭を掻く。
さて、他に何が問題だろうか、ある程度の腕前をこの場で証明する必要があるのだろうかと、オユキは考える。

「いやな、嬢ちゃん。あんたが外に出るだろ、それを見た、この町の悪ガキどもが、な。」

言われて、三人とも、押し黙る。
確かに、見た目で言えば、それこそ十代前半、どころか、下手をすれば一桁のものでも、オユキ程度の体格はあるだろう。
こちらにくる際、設定した年齢で言えば、十代後半ではあるのだが。
そんなオユキが町を出入りするのを見れば、オユキより体格が優れ、それでも外に、狩猟に出れぬ子どもが、抑えが利かなくなるだろうという予想も、まぁ、まっとうなものだ。
門番は、仮登録証に書かれた年齢を、指でなぞって確認する。

「年齢的にも未成年だしな、どうするか。まぁ、保護者付きだからってことで、良しとするか。
 すまないが嬢ちゃん。これも仕事だ、治安維持、子供が無駄に外で命を散らさないためにも、堪えてくれ。」

言われたオユキとしても、否やはない。

「はい。立派な門番さん。大丈夫ですよ、トラノスケさんは、頻繁ではないでしょうが、トモエとは基本的に常に行動を共にするでしょうから。」

言いながら、オユキはちらりと、功績証を見せる。
それに、合わせてトモエも、同じものを門番の前に差し出す。

「ああ、そういう事かい。お幸せに。
 それにしても、まぁ、なんというか、夫婦というより良くて兄弟、下手すりゃ親子だな。」

そういって、門番の男は、再び頭を掻き、帳面に何かを書き込む。
オユキの外出記録だろう。

「よし、これでいい。じゃあ、くれぐれも気をつけてな。
 このあたりは、あまり強い魔物はいないが、それでも時折強いのも湧いてくる。
 油断だけはするんじゃないぞ。」

その言葉に、オユキとトモエはそろって頭を下げ、門の外へと歩き出す。
そして、ふと忘れていたと、オユキは改めて振り向き、尋ねる。

「忘れていました、門番さん。あなたのお名前をお伺いしても?」
「ああ、アーサーだ。」
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