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消えゆく存在と国家
35 保安庁、越権出撃
しおりを挟むICICLEが攻撃され始めて数十分後
ロレーヌ
ビンテージはケインに用があり埋立地へと向かっていた。その日は一段と冷え込んでいたので、ビンテージはコンビニで何か温まるものを買おうと思い、車を止めて店内に入った。ケインの分とを合わせて二つコーヒー缶を買った。さっさと済ませて埋立地へ向かおうと店を出だ直後電話が鳴った。誰からか確認してみると、アルフォンスからだった。周りは展開中の軍人ばかりだったため、ビンテージは車に乗り電話に出た。
「アルフォンスか?どうした?」
ビンテージの問いに、アルフォンスは時折うめきながら答えた。
「奴らに先を越されちまった.....」
すぐに異常を察知したビンテージは聞き返した。
「どうした?答えろ。」
「連中に....バレちまってな...」
「大丈夫なのか?」
「あぁ、なんとかな....けど、それどころじゃねぇ....」
「教えてくれ。」
「以前....ある組織について内偵を進めている事を教えただろ....俺が内偵を進めていたのは...マクロスだったんだ...それで前に.....奴らにとって不都合なブツの話もしただろ、それの位置が特定されたんだ....ブツを持っているのはICICLE.....連中は...ICICLEもろともブツを揉消すために...軍や自分たちの私兵を動員させて行動を起こそうとしている...」
「軍や私兵団はどこに向かっているんだ。」
「ICICLEの本拠点.....サルヘス区東部だ....急げ、じゃないと俺たちの手に.....負えなくなるぞ」
「分かった。お前は大丈夫なのか?」
「あぁ....救急隊を呼んだからな...俺は多分大丈夫だ。それとだ....イーベルは..最北端の離島に逃げた....」
「分かった。」
ビンテージはすぐに携帯を切って、アクセルを強く踏んだ。埋立地にまっすぐ向かった。
埋立地に到着するとすぐに隊舎の方へと駆けていき玄関の係員を無視して、隊長室にいるケインの元へいった。扉を開けてケインの方をビンテージは見る。ケインはシャロンの机に、"本庁"と書かれた札を置きながら、見慣れない、慌てた様子のビンテージ驚いた顔で見ていた。
「緊急..事態?」
「まあそんなところだ。アルフォンスが襲撃を受けた。アイツが言うには、マクロスにとって最大の不都合なブツをICICLEが抑えようとしているらしい。だが、連中はICICLEの本拠点をつかんだ。ブツと共にICICLEを消すつもりでいて、軍とマクロス私兵を向かわせているらしい。」
「本当か。」
「ああ。先を越されたよ。」
ビンテージがそう言うと、ケインは掛けてあった上着を羽織った。
「何をするつもりだ。」
それを見たビンテージが不思議そうに見た。
「なにって、出向くんだよ。マクロスに渡すわけにはいかないでしょ。」
ビンテージは頷いた。ケインはすぐに隊長室を出て、課員を緊急招集した。事の全容を伝えてすぐに彼の隊員たちは武装の準備と車両の準備に当たった。ケインもビンテージを連れて倉庫に出向いた。隊員達が武器を片手に輸送車両に次々と乗り込んで行っている。あらかた準備が出来たところで、ケインは綺麗に整備し直された指揮車に乗り、ビンテージも同様に乗り込んだ。
<指揮車から特殊警備課第2小隊、目的地はサルヘス区東部街、指揮車に続け。>
了解!と威勢の良い返事が無線から帰ってくる。
<よし、出撃。>
ケインがそう言うと、輸送車両はけたたましいサイレン音を鳴らし始めた。倉庫を出て埋立地の出口の方へ向かう。出口に近づくと警備隊員にクラクションをお見舞いして、木製の車止めを突き破ってサルヘス区に向けて加速していった。途中の信号も緊急走行と冠して止まる事なく進んで行く。異変に気付いた軍隊はすぐに後を追おうとしたが、通行量の多い港湾通りだったため、すぐに民間車両に阻まれて立ち往生し始めた。
「本当にやるんだな。」
助手席に乗ったビンテージは笑みを浮かべながら言った。
「やらなきゃいけないさ。このままマクロスの好き勝手させて過ぎていくのを見てるのも罪だ。」
ケインはそう言うと、更にアクセルを強く踏み込んでまっすぐ向かって行った。
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