上 下
30 / 47
本編

30 むちむちマスクさん登場

しおりを挟む
 手持ちのお金は、銅貨40枚と少し。

 一ツ星娼館の娼婦さんならば、15分、銅貨1枚が相場だから、単純計算として、15分で1発出せれば、40人とセックス遊びが可能。

 娼館をハシゴして、次から次に娼婦さんに中出しを決めまくるのも面白そうではあるが、それはそれで変な噂が立つかもしれない……。

 いや、そんなこともないか。

 なにせ、そもそもとして歓楽街はかなりの大きさなのだ。

 店の数など、数えきれないぐらいに多い。

 その中でも一ツ星娼館区画は一番の大きさがあると思われる。

 娼婦さん達の中でも、一番厚い層なのだろう。

 そんな中で、俺ごときの小粒な人間一人が、40軒程度をハシゴした所で、きっと誰も気がつかないだろうとは思う。

 ひとつの店では娼婦さん一人だけ、な感じで遊べば、そう簡単には噂など広がらないだろう。

 もちろん、その店の娼婦を全員抱きながら、隣の店、隣の店と移動していけば、さすがに噂が立ちそうだけれども。

 ランダムに遊べば、大きい区画を利用して距離も取れるし、きっと大丈夫だろう。

 とはいえ、そんな遊びをするかどうかは、まだまだ未定なのだが。

 俺は、大通りから店がひしめく区画へと向かって入り込み、ずらりと並ぶ一ツ星娼館通りをぶらぶらと歩いていく。



 しかし、エグいな。

 いや、娼婦さん達の美しさの話ですよ?

 一ツ星娼館といえば、娼館ランクの中でも一番下(星無しを除く)に区分されるとはいえ、店のショーウィンドウ室に立つ娼婦さんは、誰も彼もがとびきりの美しさなのだ。

 例えるならば、この異世界の女性達は、どこか漫画的、アニメ的、つまりは二次元的な美しさを持っている。

 つまり、きっとオタクな男性陣ならば、少しは分かってもらえるかもしれないが、モブキャラが意外とかわいいという感覚だろうか。

 作品からすれば名も無きキャラクター、もしくは脇役なのだが、「いや、その女性、かわいいから、悪役に殺される役とかもったいないから! 殺すぐらいならば俺にくれ!」とか、俺はよく思ったものです。

 もし、これが元の世界のリアルな女性だったならば、誰かがオススメしても、意外と男性陣の好みは分かれるだろうと思われる。

 しかし、アニメキャラ、漫画キャラ、というものは、よほどのこだわりが無い限りは、だいたいかわいいし綺麗だ。

 まー、ようするに、オタクにとっては夢の世界ということですよ。

 娼館のショーウィンドウ室を眺めているだけでも楽しいなー。

 俺はニマニマと微笑みながら歩いていると、ふと、不思議な娼婦さんを見つけた。

 ショーウィンドウ室の椅子にちょこりと座っているのだが、頭から首元にかけて、黒い布頭巾をすっぽりと被っているのだ。

 しかも、穴が1つも空いておらず、目も口も全て覆われているタイプ。

 通気性がある布地なのか呼吸は大丈夫そうだが、見た目はかなり異様である。

 一人SMプレイ中なのだろうか?

 いや、性風俗文化が未熟なこの異世界で、SMは存在しないはずだ。

 ただ、よくよく見てみると、異様なマスクの首から下は、少し太めな感じの体型をしており、ミニスカから生えた太ももはむっちむち、巨乳はブラからこぼれそうなほど豊かであり、実に俺好みな肉感的で性欲をそそる見事なむっちり体型だった。

 というか、顔が見えないからか、余計に刺激を受けるというか、想像でまかなえるというか、風俗嬢が片手で目を隠すような感じの、あのずるい手法なのだと思う。

 勝手にマスクの下の素顔を、自分好みの顔にしてしまえるという感じだろうか。

 俺は思わず、マスクさんがいるショーウィンドウ室の前で仁王立ちしてしまう。

 いやー、なんだろう。

 顔が見えない分、おっぱいとふとももが強調されるといいますか、なんか、異様にムラムラしてくるなこれ。

 でも、彼女がSMプレイ風でないとしたら、顔に何か傷でも負っているのかなー。

 そうなると、少しかわいそうだなー。

 俺は、この娼館のショーウィンドウ室の前にいる男性客に声をかけてみた。

「すいません。あの頭に黒い布を被った女性って、顔に何か傷でもあるんですかね?」

「ん? ああ、「布頭《フルフェイス》」か。いや、彼女は極度の恥ずかしがり屋らしいよ。ここらでは、異様な見た目で結構な有名人さ。ただ、有名なのは見た目と名前だけで、客はさっぱり付いていないらしいけれどもな」

「へー」

 なるほど、むちむちマスクさんは、恥ずかしがり屋さんか。

 まー、それが本当かどうかはまだ分からないけれども。

 更には、お客さんも少ないと。

 確かに、この異世界の男性陣では、あの特殊な見た目は持て余すだろうなー。

 オタクで性癖が成長している俺にとっては、余裕でご馳走の部類ですけれども。

 うーん、どうしようかなー。

 まだまだ、セックス素人の俺にとっては、相手の顔が見えないのは、むしろ利点かもしれないな。

 勝手なイメージだけれども、相手の表情を伺って気を使う必要が無いから、気ままに遊べそうだ。

 というか、それがドM用マスクの効用なんだろうな。

 相手をドM肉便器として、手荒に扱うというプレイの為のアイテムだろうし。

 そんなマスクを、こちらからお願いしてつけてもらうわけではなく、最初から装備してくれているとは、面白い、というか、ありがたい。

 ま、当の本人はそういう意味では被ってはいないのだろうけれども。

 勝手にこちらで興奮する分には、誰の迷惑にもならないからOKOK。

 そもそもとして、俺は、こういう掘り出し物系が大好物なんだよなー。

 あからさまに良いものなのに、時代の流行り廃りの影響などで全く注目されておらず、俺だけがその良さに気がついて静かに愛でている、みたいなのが実に宜しい。

 たぶん、俺だけが分かる、みたいな優越感を楽しんでいるのだろうと思う。

 これの利点は、競合相手が少ないというところだ。

 1位の存在を皆で競い合って奪い合う必要がないので、目的の存在をスムーズに手に入れやすい。

 実際、目の前のむちむちマスクさんも、すんごい肉感的でエロい見た目なのに、お客はさっぱり付いていないらしい。

 そういう話を聞くと、人気が無いのならば魔素排出の応援をしてあげたいなー、という親切心も少しばかり生まれてくる。

 と、同時に、常連客が少ないのならば、俺と遊ぶ時間が少し多くても迷惑にはなりにくいだろう、という計算もある。

 まー、うだうだと悩んでもしょうがないか。

 とにかく、目の前のむちむちマスクさんは、俺としてはエロ的にも問題は無い。

 良いか悪いかは、体験してみないと分からないしな。

 よし、彼女とひとつ楽しんでみるか!

 俺は「ホットミルク」という名の、色鮮やかなネオン看板を掲げる一ツ星娼館へと入っていくのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

声を失ったSubはDomの名を呼びたい

白井由貴
BL
 高校一年生でダイナミクスが発現した弓月。  Sub──それもSランクだとわかり、家を離れる決意をする。しかしその前にSubであることをDomである兄に知られてしまい、抵抗虚しく監禁されてしまった。両親からはいないものとして扱われ、実兄からは手酷くされ、聞きたくもない命令に従わなければならない毎日。  そんなある日、身も心も弱りきっていた弓月に救いの手が差し伸べられる。しかしその時にはすでに声が出なくなっていて───?  これは声を失ったSubが幸せになるためのお話。 【Dom/Subユニバース(※独自解釈あり)】 ※性的描写を含む話には「*」がついています。 ※ムーンライトノベルズ様でも掲載しています。 ※R18は中盤以降からの予定です。 ※進行はかなりゆっくりです。 ※PTSDや精神支配などを連想させるような表現や描写があります。苦手な方はご注意ください。 ※いじめや虐待などの暴力表現があります。苦手な方はご注意ください。

【完結】婚約破棄され国外追放された姫は隣国で最強冒険者になる

まゆら
ファンタジー
完結しておりますが、時々閑話を更新しております!  続編も宜しくお願い致します! 聖女のアルバイトしながら花嫁修行しています!未来の夫は和菓子職人です! 婚約者である王太子から真実の愛で結ばれた女性がいるからと、いきなり婚約破棄されたミレディア。 王宮で毎日大変な王妃教育を受けている間に婚約者である王太子は魔法学園で出逢った伯爵令嬢マナが真実の愛のお相手だとか。 彼女と婚約する為に私に事実無根の罪を着せて婚約破棄し、ついでに目障りだから国外追放にすると言い渡してきた。 有り難うございます! 前からチャラチャラしていけすかない男だと思ってたからちょうど良かった! お父様と神王から頼まれて仕方無く婚約者になっていたのに‥ ふざけてますか? 私と婚約破棄したら貴方は王太子じゃなくなりますけどね? いいんですね? 勿論、ざまぁさせてもらいますから! ご機嫌よう! ◇◇◇◇◇ 転生もふもふのヒロインの両親の出逢いは実は‥ 国外追放ざまぁから始まっていた! アーライ神国の現アーライ神が神王になるきっかけを作ったのは‥ 実は、女神ミレディアだったというお話です。 ミレディアが家出して冒険者となり、隣国ジュビアで転生者である和菓子職人デイブと出逢い、恋に落ち‥ 結婚するまでの道程はどんな道程だったのか? 今語られるミレディアの可愛らしい? 侯爵令嬢時代は、女神ミレディアファン必読の価値有り? ◈◈この作品に出てくるラハルト王子は後のアーライ神になります!  追放された聖女は隣国で…にも登場しておりますのでそちらも合わせてどうぞ! 新しいミディの使い魔は白もふフェンリル様! 転生もふもふとようやくリンクしてきました! 番外編には、ミレディアのいとこであるミルティーヌがメインで登場。 家出してきたミルティーヌの真意は? デイブとミレディアの新婚生活は?

婚約解消して次期辺境伯に嫁いでみた

cyaru
恋愛
一目惚れで婚約を申し込まれたキュレット伯爵家のソシャリー。 お相手はボラツク侯爵家の次期当主ケイン。眉目秀麗でこれまで数多くの縁談が女性側から持ち込まれてきたがケインは女性には興味がないようで18歳になっても婚約者は今までいなかった。 婚約をした時は良かったのだが、問題は1か月に起きた。 過去にボラツク侯爵家から放逐された侯爵の妹が亡くなった。放っておけばいいのに侯爵は簡素な葬儀も行ったのだが、亡くなった妹の娘が牧師と共にやってきた。若い頃の妹にそっくりな娘はロザリア。 ボラツク侯爵家はロザリアを引き取り面倒を見ることを決定した。 婚約の時にはなかったがロザリアが独り立ちできる状態までが期間。 明らかにソシャリーが嫁げば、ロザリアがもれなくついてくる。 「マジか…」ソシャリーは心から遠慮したいと願う。 そして婚約者同士の距離を縮め、お互いの考えを語り合う場が月に数回設けられるようになったが、全てにもれなくロザリアがついてくる。 茶会に観劇、誕生日の贈り物もロザリアに買ったものを譲ってあげると謎の善意を押し売り。夜会もケインがエスコートしダンスを踊るのはロザリア。 幾度となく抗議を受け、ケインは考えを改めると誓ってくれたが本当に考えを改めたのか。改めていれば婚約は継続、そうでなければ解消だがソシャリーも年齢的に次を決めておかないと家のお荷物になってしまう。 「こちらは嫁いでくれるならそれに越したことはない」と父が用意をしてくれたのは「自分の責任なので面倒を見ている子の数は35」という次期辺境伯だった?! ★↑例の如く恐ろしく省略してます。 ★9月14日投稿開始、完結は9月16日です。 ★コメントの返信は遅いです。 ★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。 ※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。 ※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません

公爵令息は悪女に誑かされた王太子に婚約破棄追放される。

克全
BL
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!

ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。 幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。 婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。 王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。 しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。 貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。 遠回しに二人を注意するも‥ 「所詮あなたは他人だもの!」 「部外者がしゃしゃりでるな!」 十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。 「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」 関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが… 一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。 なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…

(完結)可愛いだけの妹がすべてを奪っていく時、最期の雨が降る(全5話)

青空一夏
恋愛
可愛いだけの妹が、全てを奪っていく時、私はその全てを余すところなく奪わせた。 妹よ・・・貴女は知らない・・・最期の雨が貴女に降ることを・・・ 暗い、シリアスなお話です。ざまぁありですが、ヒロインがするわけではありません。残酷と感じるかどうかは人によるので、わかりませんが、残酷描写シーンはありません。最期はハッピーエンドで、ほのぼのと終わります。 全5話

若返ったオバさんは異世界でもうどん職人になりました

mabu
ファンタジー
聖女召喚に巻き込まれた普通のオバさんが無能なスキルと判断され追放されるが国から貰ったお金と隠されたスキルでお店を開き気ままにのんびりお気楽生活をしていくお話。 なるべく1日1話進めていたのですが仕事で不規則な時間になったり投稿も不規則になり週1や月1になるかもしれません。 不定期投稿になりますが宜しくお願いします🙇 感想、ご指摘もありがとうございます。 なるべく修正など対応していきたいと思っていますが皆様の広い心でスルーして頂きたくお願い致します。 読み進めて不快になる場合は履歴削除をして頂けると有り難いです。 お返事は何方様に対しても控えさせて頂きますのでご了承下さいます様、お願い致します。

嫌われ令嬢が冷酷公爵に嫁ぐ話~幸せになるおまじない~

朝露ココア
恋愛
ハベリア家伯爵令嬢、マイア。 マイアは身分に相応しくない冷遇を受けていた。 食事はまともに与えられず、血色も悪い。 髪は乱れて、ドレスは着せてもらえない。 父がかわいがる義妹に虐められ、このような仕打ちを受けることとなった。 絶望的な状況で生きる中、マイアにひとつの縁談が舞い込んでくる。 ジョシュア公爵──社交界の堅物で、大の女嫌いが相手だ。 これは契約結婚であり、あくまで建前の婚約。 しかし、ジョシュアの態度は誠実だった。 「君は思っていたよりも話のわかる人だな」 「それでは美しい姿がもったいない」 「マイア嬢、食べられないものはあるか?」 健気なマイアの態度に、ジョシュアは思わぬ優しさを見せる。 そんな中、マイアには特殊な「おまじない」の能力があることが発覚し…… マイアを支度金目当てに送り出した実家では、母と妹のせいで家計が傾き……マイアが幸福になる一方で、実家は徐々に崩壊していく。 これは不遇な令嬢が愛され、ただ幸福な日々を送る話である。

処理中です...