44 / 54
第三章 スキルの力と金策と裏切り
十六
しおりを挟む
エンドに売り上げを渡した一週間前。
彼の言葉に私はただただ驚くばかりだった。
世間知らずのぼんぼんかと思ったけど、そんなことはなかった。
彼は、私のことを細かく調べ上げていたのだ。
あそこまで知られているのであれば、きっと私が契約をごまかしていたことはバレている。
だからこそ、あの言葉は私には脅しにしか見えなかった。
――これ以上は許さない。
という脅し。
そうとしか思えなかったのだ。
だから、私にはそのあとの言葉が理解できなかった。
「ここまで伝えれば僕が何を言いたいかわかると思うんだ。けど、誤解しないで欲しいのは、脅してるわけじゃないってこと。僕はもしオリアーナが困ってたら助けたいって思ってる。だから、お互いに隠し事はなしにして、協力してやっていきたい。それを伝えたいって思ったんだよ」
どういうこと?
困っていたら助けたいって?
困ってるって言われたら、そうに違いない。
でも、あのことはさすがに知られていないはず。誰かにしられるほど、奴らは間抜けじゃないはずだから。
だから、言えない。
これがバレたら、私の生きる目的がなくなっちゃう。それだけは、絶対言えない。
言えないのだ……。
それに、このままお金をだまし取ることだって、私を助けることにつながる。
だから許してほしい。
あと少しなのだ。
あと少しで……私は、あの子を――。
あと少し。
そう思って耐えてきた。
あと少しで、このしがらみからも、呪縛からも逃れられると信じて。
だからどんなことだって我慢できたんだ。
人を騙すつらさも、見ないふりして突っ走ってこれた。
けど、こんなのってない。
こんなのってないよ!!
「どこ!? どこにあるのよ! 私の! 私のお金がない!!!」
どこを探しても、私がずっとためてきたお金が無くなっている。
それこそ、普通じゃない場所に隠してきたのに。
だれにも見つかるはずがない場所だったのに。
何か所にも隠してたそれが、全部なくなっているのだ。
あと少しだったのに。
そんな希望が、目の前でがらがらと崩れていくのを感じた。
こんなことをするのって。
私をこんなにも調べてる人って……。
そうだ。
あいつしかいない。
騙してた私に復讐したんだ!
だからって、私が今までためてきたお金ぜんぶを持っていくなんて信じられない!!
幸いにも、今日は待ち合わせの日だ。
だから、取り換えす。
何をしてでも。
なんとしても。
だから刺した。
すべてをやり直すために。
非力な私だけど、これだけやればきっと取り戻せる。
そう思ったけれど――。
彼の言葉に私はただただ驚くばかりだった。
世間知らずのぼんぼんかと思ったけど、そんなことはなかった。
彼は、私のことを細かく調べ上げていたのだ。
あそこまで知られているのであれば、きっと私が契約をごまかしていたことはバレている。
だからこそ、あの言葉は私には脅しにしか見えなかった。
――これ以上は許さない。
という脅し。
そうとしか思えなかったのだ。
だから、私にはそのあとの言葉が理解できなかった。
「ここまで伝えれば僕が何を言いたいかわかると思うんだ。けど、誤解しないで欲しいのは、脅してるわけじゃないってこと。僕はもしオリアーナが困ってたら助けたいって思ってる。だから、お互いに隠し事はなしにして、協力してやっていきたい。それを伝えたいって思ったんだよ」
どういうこと?
困っていたら助けたいって?
困ってるって言われたら、そうに違いない。
でも、あのことはさすがに知られていないはず。誰かにしられるほど、奴らは間抜けじゃないはずだから。
だから、言えない。
これがバレたら、私の生きる目的がなくなっちゃう。それだけは、絶対言えない。
言えないのだ……。
それに、このままお金をだまし取ることだって、私を助けることにつながる。
だから許してほしい。
あと少しなのだ。
あと少しで……私は、あの子を――。
あと少し。
そう思って耐えてきた。
あと少しで、このしがらみからも、呪縛からも逃れられると信じて。
だからどんなことだって我慢できたんだ。
人を騙すつらさも、見ないふりして突っ走ってこれた。
けど、こんなのってない。
こんなのってないよ!!
「どこ!? どこにあるのよ! 私の! 私のお金がない!!!」
どこを探しても、私がずっとためてきたお金が無くなっている。
それこそ、普通じゃない場所に隠してきたのに。
だれにも見つかるはずがない場所だったのに。
何か所にも隠してたそれが、全部なくなっているのだ。
あと少しだったのに。
そんな希望が、目の前でがらがらと崩れていくのを感じた。
こんなことをするのって。
私をこんなにも調べてる人って……。
そうだ。
あいつしかいない。
騙してた私に復讐したんだ!
だからって、私が今までためてきたお金ぜんぶを持っていくなんて信じられない!!
幸いにも、今日は待ち合わせの日だ。
だから、取り換えす。
何をしてでも。
なんとしても。
だから刺した。
すべてをやり直すために。
非力な私だけど、これだけやればきっと取り戻せる。
そう思ったけれど――。
0
お気に入りに追加
856
あなたにおすすめの小説
おっす、わしロマ爺。ぴっちぴちの新米教皇~もう辞めさせとくれっ!?~
月白ヤトヒコ
ファンタジー
教皇ロマンシス。歴代教皇の中でも八十九歳という最高齢で就任。
前任の教皇が急逝後、教皇選定の儀にて有力候補二名が不慮の死を遂げ、混乱に陥った教会で年功序列の精神に従い、選出された教皇。
元からの候補ではなく、支持者もおらず、穏健派であることと健康であることから選ばれた。故に、就任直後はぽっと出教皇や漁夫の利教皇と揶揄されることもあった。
しかし、教皇就任後に教会内でも声を上げることなく、密やかにその資格を有していた聖者や聖女を見抜き、要職へと抜擢。
教皇ロマンシスの時代は歴代の教皇のどの時代よりも数多くの聖者、聖女の聖人が在籍し、世の安寧に尽力したと言われ、豊作の時代とされている。
また、教皇ロマンシスの口癖は「わしよりも教皇の座に相応しいものがおる」と、非常に謙虚な人柄であった。口の悪い子供に「徘徊老人」などと言われても、「よいよい、元気な子じゃのぅ」と笑って済ませるなど、穏やかな好々爺であったとも言われている。
その実態は……「わしゃ、さっさと隠居して子供達と戯れたいんじゃ~っ!?」という、ロマ爺の日常。
短編『わし、八十九歳。ぴっちぴちの新米教皇。もう辞めたい……』を連載してみました。不定期更新。
Another Of Life Game~僕のもう一つの物語~
神城弥生
ファンタジー
なろう小説サイトにて「HJ文庫2018」一次審査突破しました!!
皆様のおかげでなろうサイトで120万pv達成しました!
ありがとうございます!
VRMMOを造った山下グループの最高傑作「Another Of Life Game」。
山下哲二が、死ぬ間際に完成させたこのゲームに込めた思いとは・・・?
それでは皆様、AOLの世界をお楽しみ下さい!
毎週土曜日更新(偶に休み)
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
成長チートと全能神
ハーフ
ファンタジー
居眠り運転の車から20人の命を救った主人公,神代弘樹は実は全能神と魂が一緒だった。人々の命を救った彼は全能神の弟の全智神に成長チートをもらって伯爵の3男として転生する。成長チートと努力と知識と加護で最速で進化し無双する。
戦い、商業、政治、全てで彼は無双する!!
____________________________
質問、誤字脱字など感想で教えてくださると嬉しいです。
【完結】天候を操れる程度の能力を持った俺は、国を富ませる事が最優先!~何もかもゼロスタートでも挫けずめげず富ませます!!~
udonlevel2
ファンタジー
幼い頃から心臓の悪かった中村キョウスケは、親から「無駄金使い」とののしられながら病院生活を送っていた。
それでも勉強は好きで本を読んだりニュースを見たりするのも好きな勤勉家でもあった。
唯一の弟とはそれなりに仲が良く、色々な遊びを教えてくれた。
だが、二十歳までしか生きられないだろうと言われていたキョウスケだったが、医療の進歩で三十歳まで生きることができ、家での自宅治療に切り替わったその日――階段から降りようとして両親に突き飛ばされ命を落とす。
――死んだ日は、土砂降りの様な雨だった。
しかし、次に目が覚めた時は褐色の肌に銀の髪をした5歳くらいの少年で。
自分が転生したことを悟り、砂漠の国シュノベザール王国の第一王子だと言う事を知る。
飢えに苦しむ国民、天候に恵まれないシュノベザール王国は常に飢えていた。だが幸いな事に第一王子として生まれたシュライは【天候を操る程度の能力】を持っていた。
その力は凄まじく、シュライは自国を豊かにするために、時に鬼となる事も持さない覚悟で成人と認められる15歳になると、頼れる弟と宰相と共に内政を始める事となる――。
※小説家になろう・カクヨムにも掲載中です。
無断朗読・無断使用・無断転載禁止。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)
音爽(ネソウ)
ファンタジー
記憶持ち転生者は元定食屋の息子。
魔法ありファンタジー異世界に転生した。彼は将軍を父に持つエリートの公爵家の嫡男に生まれかわる。
だが授かった職業スキルが「パンツもぐもぐ」という謎ゴミスキルだった。そんな彼に聖騎士の弟以外家族は冷たい。
見習い騎士にさえなれそうもない長男レオニードは廃嫡後は冒険者として生き抜く決意をする。
「ゴミスキルでも美味しい物を狩れれば満足だ」そんな彼は前世の料理で敵味方の胃袋を掴んで魅了しまくるグルメギャグ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる