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第八章 俺様、勇者と対立する
1、何でこいつらこんなに戦うことに積極的なんだよ
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ゴトゴトと車体を軋ませながら6台の馬車は進む。
乗せていた荷物を本庄に全部収納してもらって、アスーで合流した勇者達が乗る馬車を用意したのだ。
皇帝は新たに勇者達の乗る馬車と御者を用意すると言ってくれたのだが、勇者を日本に帰そうと企んでいる俺達にとっては部外者が増えるのは脅威でしかない。
現状で足りていることを証明するために彼らの目の前で収納してもらって見せたら、誰も本庄のスキルを知らなかったようでとても驚いていた。
「それで、どこに向かっているんだ?」
「当てもなく進んでいるわけではないんだろう?」
昼休憩で馬車を停めると、暗黒破壊神を倒す自信で満ち溢れたアスーの勇者達が口々に聞いてきた。
彼らが言うには、梅山のように城を抜け出して冒険者をやっていた奴もいたし、皇帝の諜報部隊と共に暗黒破壊神の手がかりを探っていた奴もいたらしい。何でこいつらこんなに戦うことに積極的なんだよ。まぁ、俺も他人のこと言えないんだが。
『うむ、まずはキノシタの作った村へ向かう』
「きのこの村ぁ? っつーか、きのこもこっち来てたのかよ」
『戦いたくない者をそこで預かってもらうのだ。その後は、暗黒破壊神が封印されていたノルドに向かい、奴の手がかりを探し北上する』
アスーの勇者達の台詞はスルーして話を進める。
ノルドで遭遇した強大な影。奴はノルドから更に北上していった。
ノルド以北、地図にない人類未踏の地にいるはずだ。
「はっ、そりゃぁ良い。戦う気のない奴だけでなく、レベルを上げていない足手まといもそこに置いて行こうぜ」
「本庄は荷物持ちだから連れていくけどな。安心しろ、一人くらいなら守ってやらぁ」
俺の計画を聞いた奴らがゲラゲラと笑いながら言うその言葉に、オーリエンの勇者達は顔を顰める。
が、彼らはアスーの勇者が近々日本に帰されることを知っているからか、特に言い返したりしない。しばらくの辛抱だと思っているのだろう。
このギスギスした空気をどうにかしてくれんかね? と、そういや1号を紹介していなかったな。
『そうそう、貴様らに紹介したい者がいる』
「よっす! お前らの大好きな木下先生だよ!」
ルシアちゃんの側に置いていた篭から、ぴょこっと1号が手を挙げながら出てくる。
その姿に、一瞬固まったアスーの勇者達だったが、すぐにゲラゲラと腹を抱えて笑い出す。
「きのこが本物のキノコになってる!」
「おいやめろ言うな! ツボっただろ」
「先生と呼べ―。誰だ今きのこって言ったの! よし、後でしめる」
ヒーヒーと転がって苦しそうに笑う面々に対し、少し落ち着いた女子達が可愛いとか言い出す。
1号は彼らが落ち着くのを待って話し出すが、一言発する度に堪え切れないとまた笑い出すのがいて、なかなか本題に入れない。
箸が転がってもおかしいお年頃ってやつか? やれやれ。
「さて、先に言っておくが、村には俺が保護した子供たちがいる。黒髪と言うだけで黒の使徒扱いされて迫害を受けていた子供たちだ。決して、突然攻撃をすることのないように」
1号が言い聞かせるが、はぁい、と返事をしたのはオーリエンの勇者達と本庄だけで、アスーの勇者達はクスクスヒソヒソと感じが悪い。
『ここから村までどのくらいかかる?』
「うん? 整備された街道を進むなら1カ月、道を外れて一直線に突き進むなら半月ってとこだな」
『一直線は却下だ』
道を外れるということは、モンスターの巣窟である森に入るということだ。
俺やルシアちゃん、エミーリオ達だけならレベルアップも兼ねて望むところだと進んだのだろうが。勇者達や馬車を守りながらは進めない。いや、そもそも馬車を捨てていくことになるか。
「えー、一ヶ月もかかんの?」
「さっさとモンスター倒しに行こうぜ」
どうやらアスーの勇者達は森の中を突き進みたいようだ。本当に好戦的だな。
さて、どうしたものか。
オーリエンの勇者達がおずおずと声を出した。
「あの、最短距離を行くルートでも良いですよ」
「戦わなくても良いんですよね?」
「最近では私達も自分の身を守れる程度には戦えますから」
『だが……』
森の中は道はおろか宿だってないし、弱いモンスターばかりとは限らない。
先日の熊のような黒モンスターの群れに襲われたら、全員を守り切れるかどうか。
なんて考えてたら、またまたオーリエンの勇者達が煽ってきた。
「なんだ? 聖竜様はビビってるんでちゅか? まだ小さいでちゅもんねー」
「俺鑑定レベル2だからわかるんだけど、この竜レベル23だぜ」
「はぁ? レベル23? 雑魚じゃねぇか」
アスーの勇者たちが口々に俺を雑魚呼ばわりしてきやがる。ギチギチと俺を抱きしめる腕が食い込むので慌ててルシアちゃんを見上げると、般若顔になっていて思わずヒッと息を飲んでしまった。お、女の子がそんな顔するんじゃありません!
確か鑑定レベル2は名前とレベルくらいしか見れなかったような。それで俺が弱いと勘違いされたのか。
ルシアちゃんがブチ切れしているのに気付かないまま、勇者達の暴言は続く。そして。
「こんな雑魚の指示に何で従わなければいけないんだ!」
「ここは一番レベルの高い谷岡がリーダーをするべきだ!」
そーだそーだ、と騒ぎだし、ガッシリとした体形の男がスッと手を挙げた。
その仕草に全員口を閉ざす。こいつが谷岡か? やばい、全然記憶にない。
「皆がそこまで言うんじゃ仕方ないな。今から全員俺の指示に従ってもらうよ」
アスーの勇者達がわっと歓声を上げる。
良いのか? とアルベルト達が耳打ちしてきた。もちろん良いわけない。
ルシアちゃんの顔も怖いしこうなれば実力行使で黙らせようか、と身動ぎすると、1号がそれを制した。
「大丈夫、俺に考えがあるんだ。このまま好き勝手にやらせてやれ」
1号の考え、それは俺にも一応納得のいくものだった。
あいつらが指揮を執るのは内心面白くないが。まぁ、今しばらくの辛抱だ。
乗せていた荷物を本庄に全部収納してもらって、アスーで合流した勇者達が乗る馬車を用意したのだ。
皇帝は新たに勇者達の乗る馬車と御者を用意すると言ってくれたのだが、勇者を日本に帰そうと企んでいる俺達にとっては部外者が増えるのは脅威でしかない。
現状で足りていることを証明するために彼らの目の前で収納してもらって見せたら、誰も本庄のスキルを知らなかったようでとても驚いていた。
「それで、どこに向かっているんだ?」
「当てもなく進んでいるわけではないんだろう?」
昼休憩で馬車を停めると、暗黒破壊神を倒す自信で満ち溢れたアスーの勇者達が口々に聞いてきた。
彼らが言うには、梅山のように城を抜け出して冒険者をやっていた奴もいたし、皇帝の諜報部隊と共に暗黒破壊神の手がかりを探っていた奴もいたらしい。何でこいつらこんなに戦うことに積極的なんだよ。まぁ、俺も他人のこと言えないんだが。
『うむ、まずはキノシタの作った村へ向かう』
「きのこの村ぁ? っつーか、きのこもこっち来てたのかよ」
『戦いたくない者をそこで預かってもらうのだ。その後は、暗黒破壊神が封印されていたノルドに向かい、奴の手がかりを探し北上する』
アスーの勇者達の台詞はスルーして話を進める。
ノルドで遭遇した強大な影。奴はノルドから更に北上していった。
ノルド以北、地図にない人類未踏の地にいるはずだ。
「はっ、そりゃぁ良い。戦う気のない奴だけでなく、レベルを上げていない足手まといもそこに置いて行こうぜ」
「本庄は荷物持ちだから連れていくけどな。安心しろ、一人くらいなら守ってやらぁ」
俺の計画を聞いた奴らがゲラゲラと笑いながら言うその言葉に、オーリエンの勇者達は顔を顰める。
が、彼らはアスーの勇者が近々日本に帰されることを知っているからか、特に言い返したりしない。しばらくの辛抱だと思っているのだろう。
このギスギスした空気をどうにかしてくれんかね? と、そういや1号を紹介していなかったな。
『そうそう、貴様らに紹介したい者がいる』
「よっす! お前らの大好きな木下先生だよ!」
ルシアちゃんの側に置いていた篭から、ぴょこっと1号が手を挙げながら出てくる。
その姿に、一瞬固まったアスーの勇者達だったが、すぐにゲラゲラと腹を抱えて笑い出す。
「きのこが本物のキノコになってる!」
「おいやめろ言うな! ツボっただろ」
「先生と呼べ―。誰だ今きのこって言ったの! よし、後でしめる」
ヒーヒーと転がって苦しそうに笑う面々に対し、少し落ち着いた女子達が可愛いとか言い出す。
1号は彼らが落ち着くのを待って話し出すが、一言発する度に堪え切れないとまた笑い出すのがいて、なかなか本題に入れない。
箸が転がってもおかしいお年頃ってやつか? やれやれ。
「さて、先に言っておくが、村には俺が保護した子供たちがいる。黒髪と言うだけで黒の使徒扱いされて迫害を受けていた子供たちだ。決して、突然攻撃をすることのないように」
1号が言い聞かせるが、はぁい、と返事をしたのはオーリエンの勇者達と本庄だけで、アスーの勇者達はクスクスヒソヒソと感じが悪い。
『ここから村までどのくらいかかる?』
「うん? 整備された街道を進むなら1カ月、道を外れて一直線に突き進むなら半月ってとこだな」
『一直線は却下だ』
道を外れるということは、モンスターの巣窟である森に入るということだ。
俺やルシアちゃん、エミーリオ達だけならレベルアップも兼ねて望むところだと進んだのだろうが。勇者達や馬車を守りながらは進めない。いや、そもそも馬車を捨てていくことになるか。
「えー、一ヶ月もかかんの?」
「さっさとモンスター倒しに行こうぜ」
どうやらアスーの勇者達は森の中を突き進みたいようだ。本当に好戦的だな。
さて、どうしたものか。
オーリエンの勇者達がおずおずと声を出した。
「あの、最短距離を行くルートでも良いですよ」
「戦わなくても良いんですよね?」
「最近では私達も自分の身を守れる程度には戦えますから」
『だが……』
森の中は道はおろか宿だってないし、弱いモンスターばかりとは限らない。
先日の熊のような黒モンスターの群れに襲われたら、全員を守り切れるかどうか。
なんて考えてたら、またまたオーリエンの勇者達が煽ってきた。
「なんだ? 聖竜様はビビってるんでちゅか? まだ小さいでちゅもんねー」
「俺鑑定レベル2だからわかるんだけど、この竜レベル23だぜ」
「はぁ? レベル23? 雑魚じゃねぇか」
アスーの勇者たちが口々に俺を雑魚呼ばわりしてきやがる。ギチギチと俺を抱きしめる腕が食い込むので慌ててルシアちゃんを見上げると、般若顔になっていて思わずヒッと息を飲んでしまった。お、女の子がそんな顔するんじゃありません!
確か鑑定レベル2は名前とレベルくらいしか見れなかったような。それで俺が弱いと勘違いされたのか。
ルシアちゃんがブチ切れしているのに気付かないまま、勇者達の暴言は続く。そして。
「こんな雑魚の指示に何で従わなければいけないんだ!」
「ここは一番レベルの高い谷岡がリーダーをするべきだ!」
そーだそーだ、と騒ぎだし、ガッシリとした体形の男がスッと手を挙げた。
その仕草に全員口を閉ざす。こいつが谷岡か? やばい、全然記憶にない。
「皆がそこまで言うんじゃ仕方ないな。今から全員俺の指示に従ってもらうよ」
アスーの勇者達がわっと歓声を上げる。
良いのか? とアルベルト達が耳打ちしてきた。もちろん良いわけない。
ルシアちゃんの顔も怖いしこうなれば実力行使で黙らせようか、と身動ぎすると、1号がそれを制した。
「大丈夫、俺に考えがあるんだ。このまま好き勝手にやらせてやれ」
1号の考え、それは俺にも一応納得のいくものだった。
あいつらが指揮を執るのは内心面白くないが。まぁ、今しばらくの辛抱だ。
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