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第七章 俺様、南方へ行く
(閑話)俺の苦労も知らないで!
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時は少し遡る。
ここはアスーの王城でルシアちゃんにあてがわれた部屋の中。
ルシアちゃんがリージェを連れて出掛け、無人となったはずのその部屋の中で蠢く者がいた。
「くそぅ、さ、寂しくなんかないんだからな……!」
そう、我らがマスコット、1号である。
え? マスコットはリージェだろうって? 自分でマスコットとか言うなって?
良いじゃないか! 最近影が薄かったんだから!
アスーに着いてからずぅっと、モンスターと勘違いされないために誰にも見つからないようこの部屋で留守番……俺だって街中散策してみたかった!
午前中は香月から話を聞いて、部屋から連れ出すことに成功した。
まさかあいつが引きこもりになっていたとはな。命を狙われているとか、日本じゃ妄想で済ませてしまいがちだがこっちじゃ命の価値が低いらしい。常に死が隣にある環境じゃ、ちょっとした殺意だって本気にしちまうだろう。
まぁ、あの様子ならもう大丈夫そうだが。
で、今はルシアちゃんとリージェが他のメンバーから香月を引き離す目的と気分転換で街中連れまわしているところだ。
いいなぁ。俺も行きたかった。俺ここじゃやることないんだもん。
いつもなら城の中を見つからないように探検して情報収集しているところなんだけど、リージェに大人しくしていろって言われちまったからなぁ。
「あー、暇だ―」
ずーっと、ベッドの上でゴロゴロしている。暇すぎて暇すぎて、体からカビが生えちまうよ。
と、突然コツコツと近づいてくる足音が聞こえた。慌てて布団の中に潜り込んで息を潜める。
すると、足音の主はノックをして「失礼します」と小さく声をかけて入ってきた。
返事を待たないのは誰もいないのがわかっているからか。声は高く、入ってきたのは女性らしい。
息を潜めていると、パタパタと音がする。
キュッキュッと何かをこする音。
忙しなく動き回る気配を感じながら、見つからないよう身動き一つしないでいると、突然被っていた布団をめくられた。
めくり上げられた布団に思わず掴まったが、手が滑りスポンと吹き飛ばされてしまった。
「あら? 今、何か布団から出てきたような……」
(ぎゃーっ?!)
大慌てで近くにあったベッドの下に。
すると、メイド姿の女性が床に一度下ろした布団を持ち上げて確認しようとしているのが見えた。当然、そこにはもう何もない。
すると、女性がしゃがみ込んでテーブルの下を覗く。
(うわー! やばいやばいやばい! 見つかる―!)
女性がベッド下を覗き込む気配を感じ、大慌てでベッドの足の陰に身を寄せる。
そのまま、ベッドを覗き込んでいる隙にその視界に入らないよう箪笥の下に。
「おかしいわねぇ、何か転がった気がしたのだけれど。いいえ、もし聖女様の持ち物を失くしたなんて言われたら……」
女性は自分の身体を抱くとブルリ、と震えた。
女性は諦めない。何故なら自分の首がかかっているから。解雇程度で済めば良いけれど、と呟いているから、物理的に首が飛ぶ可能性もあるのか。まぁ、王城だしなぁ。
と、憐れんでいる場合じゃない。見つかったら俺がヤバい。
女性はあちこちを覗き込んで俺を探している。
(やばいやばいやばい!)
女性が検討違いの場所を覗き込んでいる隙に、最初に確認していたテーブルの下へ全力ダッシュ。
そのままテーブルの足をよじ登り、台のすぐ裏に貼りつく。
(頼む! 諦めてくれ!)
女性には悪いが見つかるわけにはいかない。
一通り家具の下を確認して、結局女性は首を傾げながらもシーツ交換に取り掛かった。
布団のカバーまで取り替えてベッドをピシッと整えると、「聖女様が何か失くなったなんて言い出しませんように」と小さく祈って出ていった。
「大丈夫だ、そんなことにはならないからな」
気が抜けると同時にポテッとテーブルの下に落ちる。
俺は床にへたり込んだまま、声の主がいなくなった呟きに返事する。
そうして、何事もなかったかのようにベッドの上によじ登ると元の位置に戻るのだった。
「よう、お帰りー」
「ただいま戻りましたわ、1号さん」
『うむ、今日も暇そうで羨ましい限りだ』
こ、この野郎……俺の苦労も知らんでよくもそんなことを……。
ハッ、いかんいかん。俺は大人。俺は教師。子供相手に怒ったら負けだ。
夕食も済ませてぽっこりお腹を膨らませて戻ってきた竜は何やらヒソヒソとルシアちゃんに話し始める。
どうやら、香月の能力をルシアちゃんの結界の応用で抑えられないかと。昼間の香月の話だと制御しきれてないようだったからな。うん、やっぱりこいつは良い子だ。
核となる宝石がついた耳飾りのようなのものをイメージしているらしい。
うん、せっかくだ。香月に会いたがって異世界まで行っちまうあいつに、香月が見つかったって知らせてやるか。
ついでにちょっとしたサプライズだ。週末だしこっちに連れてきてやろう。
うんうん、と色々企んでいると、ドアがノックされて生徒達が入ってきた。
「どうぞ」
ルシアちゃんが迎え入れたのは、オーリエンから一緒になった小島と大塚と巽と吉岡の4人。確か4人ともサッカー部だったはずだ。普段も一緒に行動していることの多い彼女たちは、入ってきて同じように俺を見て固まった。
「えっ!? 先生?!」
「な、何でルシアさんの部屋に?」
「てっきりエミーリオ様達と同じ部屋だと思っていたのに」
「ま、まさかルシアさんの着替えやあれやそれも……?!」
口々に俺がここにいることからあらぬ妄想を始める女子達。
って誰だ今エミーリオを様付けしたの?! ああいうのがタイプなのか?!
なんて思ったのも束の間、4人が口を揃えて叫ぶ。
「「「「きゃーっ! 変態!!」」」」
「ま、待て待て待て! 誤解だぁぁぁぁぁ!!!!」
その後、しばらく軽蔑したような視線が女子生徒達から向けられることになるのだった。
ここはアスーの王城でルシアちゃんにあてがわれた部屋の中。
ルシアちゃんがリージェを連れて出掛け、無人となったはずのその部屋の中で蠢く者がいた。
「くそぅ、さ、寂しくなんかないんだからな……!」
そう、我らがマスコット、1号である。
え? マスコットはリージェだろうって? 自分でマスコットとか言うなって?
良いじゃないか! 最近影が薄かったんだから!
アスーに着いてからずぅっと、モンスターと勘違いされないために誰にも見つからないようこの部屋で留守番……俺だって街中散策してみたかった!
午前中は香月から話を聞いて、部屋から連れ出すことに成功した。
まさかあいつが引きこもりになっていたとはな。命を狙われているとか、日本じゃ妄想で済ませてしまいがちだがこっちじゃ命の価値が低いらしい。常に死が隣にある環境じゃ、ちょっとした殺意だって本気にしちまうだろう。
まぁ、あの様子ならもう大丈夫そうだが。
で、今はルシアちゃんとリージェが他のメンバーから香月を引き離す目的と気分転換で街中連れまわしているところだ。
いいなぁ。俺も行きたかった。俺ここじゃやることないんだもん。
いつもなら城の中を見つからないように探検して情報収集しているところなんだけど、リージェに大人しくしていろって言われちまったからなぁ。
「あー、暇だ―」
ずーっと、ベッドの上でゴロゴロしている。暇すぎて暇すぎて、体からカビが生えちまうよ。
と、突然コツコツと近づいてくる足音が聞こえた。慌てて布団の中に潜り込んで息を潜める。
すると、足音の主はノックをして「失礼します」と小さく声をかけて入ってきた。
返事を待たないのは誰もいないのがわかっているからか。声は高く、入ってきたのは女性らしい。
息を潜めていると、パタパタと音がする。
キュッキュッと何かをこする音。
忙しなく動き回る気配を感じながら、見つからないよう身動き一つしないでいると、突然被っていた布団をめくられた。
めくり上げられた布団に思わず掴まったが、手が滑りスポンと吹き飛ばされてしまった。
「あら? 今、何か布団から出てきたような……」
(ぎゃーっ?!)
大慌てで近くにあったベッドの下に。
すると、メイド姿の女性が床に一度下ろした布団を持ち上げて確認しようとしているのが見えた。当然、そこにはもう何もない。
すると、女性がしゃがみ込んでテーブルの下を覗く。
(うわー! やばいやばいやばい! 見つかる―!)
女性がベッド下を覗き込む気配を感じ、大慌てでベッドの足の陰に身を寄せる。
そのまま、ベッドを覗き込んでいる隙にその視界に入らないよう箪笥の下に。
「おかしいわねぇ、何か転がった気がしたのだけれど。いいえ、もし聖女様の持ち物を失くしたなんて言われたら……」
女性は自分の身体を抱くとブルリ、と震えた。
女性は諦めない。何故なら自分の首がかかっているから。解雇程度で済めば良いけれど、と呟いているから、物理的に首が飛ぶ可能性もあるのか。まぁ、王城だしなぁ。
と、憐れんでいる場合じゃない。見つかったら俺がヤバい。
女性はあちこちを覗き込んで俺を探している。
(やばいやばいやばい!)
女性が検討違いの場所を覗き込んでいる隙に、最初に確認していたテーブルの下へ全力ダッシュ。
そのままテーブルの足をよじ登り、台のすぐ裏に貼りつく。
(頼む! 諦めてくれ!)
女性には悪いが見つかるわけにはいかない。
一通り家具の下を確認して、結局女性は首を傾げながらもシーツ交換に取り掛かった。
布団のカバーまで取り替えてベッドをピシッと整えると、「聖女様が何か失くなったなんて言い出しませんように」と小さく祈って出ていった。
「大丈夫だ、そんなことにはならないからな」
気が抜けると同時にポテッとテーブルの下に落ちる。
俺は床にへたり込んだまま、声の主がいなくなった呟きに返事する。
そうして、何事もなかったかのようにベッドの上によじ登ると元の位置に戻るのだった。
「よう、お帰りー」
「ただいま戻りましたわ、1号さん」
『うむ、今日も暇そうで羨ましい限りだ』
こ、この野郎……俺の苦労も知らんでよくもそんなことを……。
ハッ、いかんいかん。俺は大人。俺は教師。子供相手に怒ったら負けだ。
夕食も済ませてぽっこりお腹を膨らませて戻ってきた竜は何やらヒソヒソとルシアちゃんに話し始める。
どうやら、香月の能力をルシアちゃんの結界の応用で抑えられないかと。昼間の香月の話だと制御しきれてないようだったからな。うん、やっぱりこいつは良い子だ。
核となる宝石がついた耳飾りのようなのものをイメージしているらしい。
うん、せっかくだ。香月に会いたがって異世界まで行っちまうあいつに、香月が見つかったって知らせてやるか。
ついでにちょっとしたサプライズだ。週末だしこっちに連れてきてやろう。
うんうん、と色々企んでいると、ドアがノックされて生徒達が入ってきた。
「どうぞ」
ルシアちゃんが迎え入れたのは、オーリエンから一緒になった小島と大塚と巽と吉岡の4人。確か4人ともサッカー部だったはずだ。普段も一緒に行動していることの多い彼女たちは、入ってきて同じように俺を見て固まった。
「えっ!? 先生?!」
「な、何でルシアさんの部屋に?」
「てっきりエミーリオ様達と同じ部屋だと思っていたのに」
「ま、まさかルシアさんの着替えやあれやそれも……?!」
口々に俺がここにいることからあらぬ妄想を始める女子達。
って誰だ今エミーリオを様付けしたの?! ああいうのがタイプなのか?!
なんて思ったのも束の間、4人が口を揃えて叫ぶ。
「「「「きゃーっ! 変態!!」」」」
「ま、待て待て待て! 誤解だぁぁぁぁぁ!!!!」
その後、しばらく軽蔑したような視線が女子生徒達から向けられることになるのだった。
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