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第六章 俺様、東方に行く
(閑話)東奔西走
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まさか再びこの地に帰ってくることになるとは思ってもいなかった……。
豪奢な建物が並ぶ通りを眺めながら、懐かしいような、気まずいような、そんな形容しがたい感情に包まれる。
「おぉっ! 凄いなあれ! おぃ、ドナート見ろよあれ! どんだけ金かけてんだか!」
バルトヴィーノがそんな俺の肩をバンバンと叩きながら、金箔の貼られた像が並ぶ庭園の屋敷を差して大はしゃぎしている。
あの屋敷の当主は確か、伯爵位を金で買ったと言われている元商人の一族だったはず。弱者に対して威張り散らして、どれだけ浪費しても困らないほどの金をどこからか捻出しているため黒い噂が絶えない人物だ。
「じゃあ、ここからは約束通り休暇ってことで」
宿の部屋の鍵を人数分受け取ると、アルベルトが解散の号令をかけた。
この鍵についている紋章は宿を経営する侯爵家のもので、この鍵自体が貴族街の出入り許可証となっている。この宿の宿泊客が即ち国の賓客であるからだ。
鍵を受け取ったエミーリオはルシア様とリージェ様を連れて平民街へと出かけて行った。
「ふぉれで、ふぉなーふぉふぁ」
「飲み込んでから喋れよ」
口いっぱいに頬張ったまま喋るバルトヴィーノに周りの非難がましい視線が突き刺さる。
それに気づいたのか気付いていないのか、もごもごと慌てて酒で口の中のものを流し込んでから再び口を開く。
「で、お前はこの後どうするんだ?」
俺達はまだここで食べていくけど、と近くを通りかかった給仕を呼び止めて追加注文をかけている。レガメの中でも食い意地の張っているバルトヴィーノとチェーザーレはまだまだ食べる気満々なようだ。
ここの料理は食材にばかり金をかけていて、量も味もイマイチだと思うのだが。いや、庶民では手が出ない胡椒などが使われている分昔は憧れたし美味いとも思っていた。
けれど、カナメの料理を食べてからは、辛すぎたり甘すぎたりするここの料理はとてもじゃないが美味しいとは思えなかった。高価な食材、高価な香辛料を使えば使うほど美味と考えていることが体現された料理だった。
「俺はせっかくだし、一人でゆっくりと羽をのばしてくるよ」
任務報告はリーダーであるアルベルトが代表して行うから、急いでギルドに行く必要もない。とはいえギルドカードの更新は個々でやらなきゃだからいずれは行かないといけないけれど。
再びリスのように口の中パンパンに詰め込んでいる二人を放っておいて俺は宿を出た。
「ただいま、母さん」
「あら、おかえりなさい、ドナート」
急な帰省だっていうのに、たいして驚いた様子もない返事に長旅をしてきたのが夢だったように錯覚してしまいそうになる。
「これ、今月の分。また調度品減った? 生活費足りてる?」
「大丈夫よ。リチャードもしっかりしてくれてるから」
心なしか痩せたような気のする母親に、金貨の詰まった袋を渡す。だが年老いた母は気持ちだけもらうわと微笑むばかりで受け取ってはくれなかった。それどころか、仕送りしていた分を出してきて突き返してくる始末。
……後で全額当主であるリチャードに渡しておこう。ここで屋敷を維持するならいくらあっても困るものではないだろうし。
なんとかやり繰りしていると言うが、冒険者になる道を選び家を出た当初から比べると明らかに調度品が減っている。修道院の方がまだ華美なくらいだ。
三代前の当主が宰相の座を退けられてから衰退の一途を辿っている家は、王城に近い土地ではあったが既に土地代を支払えないくらい貧しくなっていた。当主となった兄・リチャードも奮闘しているが、経済状況は思わしくないようだ。
食料を得るため猟師のものまねをするようになっていたこともあり、成人と同時に家計を助けるために冒険者ギルドの門を叩いた。結果として良いメンバーに恵まれ、かなり稼げている方だと思う。
「それにね、これ。リチャードが誕生日プレゼントにってくれたの。嬉しくって、これをつけていると力が湧いてくるのよ」
おかげで元気元気、と腕を振り上げて見せる母親の首には、黒い小さな宝石の嵌った首飾りが光っていた。
「ふぅん、黒曜石かな? 綺麗だね」
「でしょう? あなたといいリチャードといい、良い子に育ってくれて母さん嬉しいわ」
なんて幸せそうに微笑んでいたのがつい昨日。俺はアルベルト達を連れて貴族街を走っていた。
冒険者ギルドで聞いた、力を与える代わりに人をモンスターに変える恐ろしいアクセサリーが出回っているという話。あれは、まさか……。
「アル、手分けして探すのは良いけど、貴族街はどうするんだ? ツテなんかないだろ?」
「伝手ならある。俺が行く」
「ドナート、それなら俺とベルナルドも行こう」
効率は多少落ちるが、アクセサリーの効果を考えると一人で行かないほうが良いというアルベルトの言葉もそこそこに俺はギルドを飛び出していた。
連絡もせずに王城近くの屋敷の門をいきなり開く俺に、追いかけてきていたアルベルト達が驚いている気配がするが構っている余裕はない。嫌な予感がする。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
扉に手をかけると同時に、奥から悲鳴が聞こえる。リチャードだ。
俺は扉を蹴破ると、弓に矢を番えて中に駆け込んだ。
「リチャード!」
「ドナート?! 母さんが!」
血の流れる右肩を抑えながら倒れるリチャードの向こう、変わり果てた姿の母さんがいた。
俺は迷わず、矢を放つ。急所を狙ったそれは躱され、背中から羽のように生えた腕の1本に突き刺さり寸断する。
「やめろ、ドナート! 母さんだぞ! あれは、母さんなんだ!」
「知っている! ああなってはもう、戻らないと!」
キシャァァァァ、と威嚇のような音を上げながら飛び掛かってくるそれにもう一矢射かける。
「原因は、リチャードが贈ったあのネックレスだ」
「! そんな……!」
戸惑いながら追いかけてきたアルベルト達が状況を把握し、加勢する。
俺達を庇うように前に飛び出したアルベルトが一閃の光と共に母さんだったものを斬り捨てた。
異形となった後も面影をそのまま残す母さんの死に顔はとても穏やかで。俺とリチャードが泣きながら遺体を庭に埋めるのを、アルベルト達は何も聞かずに手伝ってくれた。
「で、その宝石商に珍しい宝石を入手したからと商品の宣伝を頼まれたんだ」
いくら没落寸前の貧乏貴族とはいえ、亡くなれば色々手続きがいるし葬儀だってしなければならない。けれど、異形となった母さんを人目にさらすわけにはいかない。
葬儀すら出せないことを悔しく思いながら手を合わせた後、俺達はリチャードからいきさつを聞いた。
商品を身に着け、自慢してくれるような貴族を紹介してくれと。その謝礼として一点、あのネックレスをもらったのだそうだ。贈り物をするような相手もいないし、女手ひとつで育ててくれた母さんへ恩返しのつもりであげたと。
誇らし気に自慢してきた母さんの笑顔が浮かぶ。あんなに嬉しそうにしていた首飾りが、まさか呪いのアイテムだったなんて。
「紹介した貴族は何人だ? 俺達を引き合わせて、呪いのアクセサリーを回収するのを手伝ってくれ」
「ああ、任せておけ。何の罪滅ぼしにもならないかもしれないが、できるだけのことはしよう」
そんなこんなでこの二日間、リチャードが紹介したという貴族の家々を回り事情を話し、ある時は買い取り、ある時は押し付けられと何とか三つ集めた。
回った家は28軒、話を聞いてくれたのはわずか10軒にも満たない。知らぬ存ぜぬと言われては引き下がるしかない。何しろ相手は俺達よりもよほど力のある貴族なのだ。
「全ては、明日か。……一体、どうなることやら……」
リチャードが紹介した貴族だけでも7人、その貴族がさらに自分と仲の良い貴族を紹介していたことが判明していた。貴族の間だけでもどれだけ出回っているかわからない。
明日の祝典の事を考えて、俺達は深い深いため息を吐いた。
豪奢な建物が並ぶ通りを眺めながら、懐かしいような、気まずいような、そんな形容しがたい感情に包まれる。
「おぉっ! 凄いなあれ! おぃ、ドナート見ろよあれ! どんだけ金かけてんだか!」
バルトヴィーノがそんな俺の肩をバンバンと叩きながら、金箔の貼られた像が並ぶ庭園の屋敷を差して大はしゃぎしている。
あの屋敷の当主は確か、伯爵位を金で買ったと言われている元商人の一族だったはず。弱者に対して威張り散らして、どれだけ浪費しても困らないほどの金をどこからか捻出しているため黒い噂が絶えない人物だ。
「じゃあ、ここからは約束通り休暇ってことで」
宿の部屋の鍵を人数分受け取ると、アルベルトが解散の号令をかけた。
この鍵についている紋章は宿を経営する侯爵家のもので、この鍵自体が貴族街の出入り許可証となっている。この宿の宿泊客が即ち国の賓客であるからだ。
鍵を受け取ったエミーリオはルシア様とリージェ様を連れて平民街へと出かけて行った。
「ふぉれで、ふぉなーふぉふぁ」
「飲み込んでから喋れよ」
口いっぱいに頬張ったまま喋るバルトヴィーノに周りの非難がましい視線が突き刺さる。
それに気づいたのか気付いていないのか、もごもごと慌てて酒で口の中のものを流し込んでから再び口を開く。
「で、お前はこの後どうするんだ?」
俺達はまだここで食べていくけど、と近くを通りかかった給仕を呼び止めて追加注文をかけている。レガメの中でも食い意地の張っているバルトヴィーノとチェーザーレはまだまだ食べる気満々なようだ。
ここの料理は食材にばかり金をかけていて、量も味もイマイチだと思うのだが。いや、庶民では手が出ない胡椒などが使われている分昔は憧れたし美味いとも思っていた。
けれど、カナメの料理を食べてからは、辛すぎたり甘すぎたりするここの料理はとてもじゃないが美味しいとは思えなかった。高価な食材、高価な香辛料を使えば使うほど美味と考えていることが体現された料理だった。
「俺はせっかくだし、一人でゆっくりと羽をのばしてくるよ」
任務報告はリーダーであるアルベルトが代表して行うから、急いでギルドに行く必要もない。とはいえギルドカードの更新は個々でやらなきゃだからいずれは行かないといけないけれど。
再びリスのように口の中パンパンに詰め込んでいる二人を放っておいて俺は宿を出た。
「ただいま、母さん」
「あら、おかえりなさい、ドナート」
急な帰省だっていうのに、たいして驚いた様子もない返事に長旅をしてきたのが夢だったように錯覚してしまいそうになる。
「これ、今月の分。また調度品減った? 生活費足りてる?」
「大丈夫よ。リチャードもしっかりしてくれてるから」
心なしか痩せたような気のする母親に、金貨の詰まった袋を渡す。だが年老いた母は気持ちだけもらうわと微笑むばかりで受け取ってはくれなかった。それどころか、仕送りしていた分を出してきて突き返してくる始末。
……後で全額当主であるリチャードに渡しておこう。ここで屋敷を維持するならいくらあっても困るものではないだろうし。
なんとかやり繰りしていると言うが、冒険者になる道を選び家を出た当初から比べると明らかに調度品が減っている。修道院の方がまだ華美なくらいだ。
三代前の当主が宰相の座を退けられてから衰退の一途を辿っている家は、王城に近い土地ではあったが既に土地代を支払えないくらい貧しくなっていた。当主となった兄・リチャードも奮闘しているが、経済状況は思わしくないようだ。
食料を得るため猟師のものまねをするようになっていたこともあり、成人と同時に家計を助けるために冒険者ギルドの門を叩いた。結果として良いメンバーに恵まれ、かなり稼げている方だと思う。
「それにね、これ。リチャードが誕生日プレゼントにってくれたの。嬉しくって、これをつけていると力が湧いてくるのよ」
おかげで元気元気、と腕を振り上げて見せる母親の首には、黒い小さな宝石の嵌った首飾りが光っていた。
「ふぅん、黒曜石かな? 綺麗だね」
「でしょう? あなたといいリチャードといい、良い子に育ってくれて母さん嬉しいわ」
なんて幸せそうに微笑んでいたのがつい昨日。俺はアルベルト達を連れて貴族街を走っていた。
冒険者ギルドで聞いた、力を与える代わりに人をモンスターに変える恐ろしいアクセサリーが出回っているという話。あれは、まさか……。
「アル、手分けして探すのは良いけど、貴族街はどうするんだ? ツテなんかないだろ?」
「伝手ならある。俺が行く」
「ドナート、それなら俺とベルナルドも行こう」
効率は多少落ちるが、アクセサリーの効果を考えると一人で行かないほうが良いというアルベルトの言葉もそこそこに俺はギルドを飛び出していた。
連絡もせずに王城近くの屋敷の門をいきなり開く俺に、追いかけてきていたアルベルト達が驚いている気配がするが構っている余裕はない。嫌な予感がする。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
扉に手をかけると同時に、奥から悲鳴が聞こえる。リチャードだ。
俺は扉を蹴破ると、弓に矢を番えて中に駆け込んだ。
「リチャード!」
「ドナート?! 母さんが!」
血の流れる右肩を抑えながら倒れるリチャードの向こう、変わり果てた姿の母さんがいた。
俺は迷わず、矢を放つ。急所を狙ったそれは躱され、背中から羽のように生えた腕の1本に突き刺さり寸断する。
「やめろ、ドナート! 母さんだぞ! あれは、母さんなんだ!」
「知っている! ああなってはもう、戻らないと!」
キシャァァァァ、と威嚇のような音を上げながら飛び掛かってくるそれにもう一矢射かける。
「原因は、リチャードが贈ったあのネックレスだ」
「! そんな……!」
戸惑いながら追いかけてきたアルベルト達が状況を把握し、加勢する。
俺達を庇うように前に飛び出したアルベルトが一閃の光と共に母さんだったものを斬り捨てた。
異形となった後も面影をそのまま残す母さんの死に顔はとても穏やかで。俺とリチャードが泣きながら遺体を庭に埋めるのを、アルベルト達は何も聞かずに手伝ってくれた。
「で、その宝石商に珍しい宝石を入手したからと商品の宣伝を頼まれたんだ」
いくら没落寸前の貧乏貴族とはいえ、亡くなれば色々手続きがいるし葬儀だってしなければならない。けれど、異形となった母さんを人目にさらすわけにはいかない。
葬儀すら出せないことを悔しく思いながら手を合わせた後、俺達はリチャードからいきさつを聞いた。
商品を身に着け、自慢してくれるような貴族を紹介してくれと。その謝礼として一点、あのネックレスをもらったのだそうだ。贈り物をするような相手もいないし、女手ひとつで育ててくれた母さんへ恩返しのつもりであげたと。
誇らし気に自慢してきた母さんの笑顔が浮かぶ。あんなに嬉しそうにしていた首飾りが、まさか呪いのアイテムだったなんて。
「紹介した貴族は何人だ? 俺達を引き合わせて、呪いのアクセサリーを回収するのを手伝ってくれ」
「ああ、任せておけ。何の罪滅ぼしにもならないかもしれないが、できるだけのことはしよう」
そんなこんなでこの二日間、リチャードが紹介したという貴族の家々を回り事情を話し、ある時は買い取り、ある時は押し付けられと何とか三つ集めた。
回った家は28軒、話を聞いてくれたのはわずか10軒にも満たない。知らぬ存ぜぬと言われては引き下がるしかない。何しろ相手は俺達よりもよほど力のある貴族なのだ。
「全ては、明日か。……一体、どうなることやら……」
リチャードが紹介した貴族だけでも7人、その貴族がさらに自分と仲の良い貴族を紹介していたことが判明していた。貴族の間だけでもどれだけ出回っているかわからない。
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