冷たい人

冷たい人

次の日井上は会社に出勤した。仕事が始まると北島が井上に話し掛けて来た。

「純子ちゃんみてみて佐久間さんが女性に優しくしてるよ。あんな優しいところもあるんだね」
そう言ってきた。井上は北島が言う方角を見た。
井上が見た時にはチャラチャラしたいかにも女ったらしのような佐久間の姿があった｡

「あの？北島先輩？佐久間さんが女の子に優しいと言うより、チャラチャラした感じに見えますが？」

北島は
「ほ、本当ね。さっきまであんな感じじゃなかったんだけど？あれじゃあ女ったらしに見えるわね」
そう言って笑っていた。

その日は会社の大先輩の加藤が井上に話し掛けてきた。
「朝、私見たんだけど、佐久間さんが岡田さんから告白されていたわよ。この間は山本さんからも告白されていたわよ。石田さんも告白してたところ見たわよ。佐久間さんってもてるのね。みんな断られたって。
誰か好きな人でもいるんじゃないの？」
井上にそう話し掛けてきた。

井上は
「そうなんですか？私は興味ありませんが。」
加藤さんは
「そう？いろんな人にもてるんだよ。人柄がいいからもてるんじゃないの？」
そう井上に言ってきた。

井上は
「どこがいいのかしら？あんなチャラチャラして女ったらしにしか見えないけど？三十代って言うのに落ち着きもないし、私はタイプじゃないわ。ありえない。」心の中でそう思っていた。

「しかも告白した子って一つ先輩の人ばかり、顔だって普通なのに、まだ結婚してないのに何人も断るなんてよほど理想が高いんじゃない？全くどこがいいのか？さっぱりわからん？」
井上は心の中でいつも思っていた。

少しずつ運命が動き出したのは井上が入社してから
一年が過ぎた頃だった…。

その時から佐久間義男と井上純子は運命に引き寄せられていく事になる。

この時点で井上純子は地獄の入り口に立ってしまったのだった…。