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2章
オーバーヒート **
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「っ、ばかばかばか、あっ、」
「ん…むり、だめだ。」
「きいちくんきちゃうからぁあ!!」
「待たせとけ、っぐぇ!!」
ドゴォッ、といい肘が腹に入った益子は、襲いかかっていた葵によって無事粛清された。
何が無理なのか全くわからない。昨日の夜散々辞めろというのに何度も抱かれ、二人して気絶するようにして眠ったのだ。朝起きると自分の体は綺麗になっていたが、隣に寝ていた益子が荒い呼吸でぐったりしていたのに悲鳴を上げた。
「わけわかんない!!待たせられるわけ無いだろう!?妊夫だぞ!」
「俺だって熱出てるときは優先して欲しい…」
「きいちくんは悠也のために、ご飯買ってきてくれるんだよ!!だいたい朝から俺がつきっきりだろうが!」
「身も心も竿も温めてほし、ぅぐぇっ」
竿といった時点で再び葵の拳骨が降った。
益子を座らせて寝汗をかいたシーツを変えようとしたら、後ろから覆いかぶさられたのだ。散々人の腹に好き勝手出しまくったというのに、その厭らしい手付きで服の裾から侵入した手が胸を弄ってきたので慌ててどかしたのだ。
病人なんだから大人しくしろと言いたい。
「キスも?」
「風邪治ってからな!」
「ええええ!」
「うるさい、ねろ!」
変えたばっかりのシーツの上に再び益子を寝かせると、がしりと腰を掴んで来たので無理やり引き剥がす。体調不良だと本能が前に出るようで、子孫を残したくて仕方ないのか益子のそこは見事に盛り上がっていた。
「んなご無体なぁ…」
泣き言を言う益子を無視し、さて、と洗い物とシーツを抱きかかえると、ピンポンと軽快な音がなった。
葵は身なりを整えると、ガチャりと扉を開けた。
「ごめんねぇ!ああ、お腹おっきいのにほんとごめん、ありがとう。」
「全然!むしろ動けって言われてるし。あ、これノート。今日の授業のやつね!」
エコバッグを肩にかけ、きいちがニコリと笑って立っていた。膨らんだ腹は六ヶ月らしく、大きめの物カットソー素材を着ててもわかった。
「うわ助かる!あ、これお釣りね。あとお礼になるかわかんないけどクッキー。食べてね!」
「葵さんのクッキー!!!全部僕が食べるね!でへへ、ありがと。」
益子は、と心配してくれる友人に、葵は苦笑いしかでない。
「まあ、大丈夫なんだけど。風邪引くと我がままになるみたいでさ…」
「駄々っ子うける!でっけぇ赤ちゃんみたいな?」
「そうかも、まあ子育ての予行練習だと思うよ。」
大変だねぇ、と労ってくれるきいちの言葉が優しい。きっと部屋に戻れば丸くなってすねているに違いない。葵は頭の痛い思いをしながらため息を吐く。
そんな様子を見ていたきいちが、面白いもの見たといった具合に言う。
「でもさ、葵さんにそんな顔させられる益子ってすごいよね。」
「ん?」
「だって葵さんいっつも抜かりないってか、ちゃんとしてる感じがするから。」
そう言ってきいちの細い指先が葵のぼさついた髪を整える。年下の子に頭を撫でられるような形になり、少しばかし気恥ずかしい。けれど、その指先には労りが感じられた。
「いっつも綺麗なお兄さんでいなくても、いいと思うなぁ。」
「…ありがとう。なんか、きいちくんって人たらし だな?」
「そう?」
くすくすと笑い合っていると、がらりと奥の寝室の扉が開く。けほけほと席をしながら、マスクをした顔の赤い益子がふらふらとゾンビのように歩いてくると、慌てて葵はかけ寄って支える。
「ごめんきいちくん!うつすと不味いし、今日は本当にありがと!!」
「あ、え、うん!じゃあまた!益子お大事に…」
のしかかるように葵に抱きつく益子の体は上半身は何も纏っていない。まるで取り組みのように腰に手を回して小柄な身長で支える葵は、益子に押されるかのように仰け反っていて大変そうだ。
なんだかまるでわがままな大型犬を育てるブリーダーのようだなと思った。
「葵、ながい…」
「はいはいごめんて!暑いからって服脱ぐなよなほんと!!」
「きいちまたなぁ…」
「邪魔者はかえりまーす、ほどほどにね。」
葵は益子によって抱き竦められている為見えないだろうが、ちらりときいちを見た益子はニヤリと意地悪く笑う。その様子は元気そのもので、熱など等に下がっていることを物語っていた。
単純に甲斐甲斐しく世話されることに味をしめたな。どうしょうもない奴だと呆れつつ、二人を残してきいちは玄関の扉をそっと閉じた。
せっかく来てくれたのに、半ば追い出すような形になってしまったきいちに申し訳なく思う。葵は体調が治ったら絶対に益子からも謝らせようと決めつつ、全体重を預ける益子のちからに負けてずるずると壁伝いに床にへたり込んだ。
「ちょ、っ…もー‥」
「葵、俺も構ってくれ…」
「散々夜構っただろ!具合悪いなら大人しく寝て治してくれよ…」
「いやだ。」
ぎゅうと抱きしめられながら、年下のわがままな番に若干諦め気味になる。具合が悪いときこそ人肌恋しくなるのはわかるのだが、本能が剥き出しというか、今までこんなに我儘に求められる事なかったのになと思う。
アルファの血が濃いと、性行為で野性的になるのはわかった。だけどそれが具合悪くてもそうなるのは、生存本能として種を残したいからなのか。
なんだかオメガのヒートみたいだなと思う。
「ひょわ、っ!ば、ばか!!だからしないってば!」
「いやだ、今抱きたい。」
「昨日の夜抱いただろ!」
「まだ足りねぇ、いただきます。」
「いただき、っ!?ん、んんむ、むー!!!!!」
息を荒らげながら首筋に鼻先をうずめていた益子にのしかかられながら、深く唇を合わせられる。気づけば廊下に押し倒され、体重をかけられながらその身を抱きしめられていた。
鼻先をくすぐる微かな香りは、番のアルファのフェロモンだ。まるですべてを飲み込むかのような深く溶けるような舌遣いに翻弄されながら、そういえば ヒート遅れてたんだっけ、と唐突におもいだした。
「んん、ふ…ま、っぇ…んぅ、む…っン…」
「ふは、ほら…そう、んん…もっとくれ、…ン…」
ちゅぽ、と音を立てながらいやらしく益子に舌をしゃぶられる。ひくりと腰がはねてしまう位きもちがいい。葵の目がとろけた瞬間を見逃さなかった益子が、先程よりも濃度の濃いフェロモンを放った瞬間だった。
「ひぁ、あっ!あ、だ、だめ、ぇっ…!」
びくびくと脚をはねさせる。番の香りが呼び水になったのか、誘発されるように葵のヒートが唐突に始まった。組み敷いた番から、突然放たれたそのフェロモンに益子は目を見開いた。ぶわりと煽るように鼻先をくすぐる本能を煽る香り。
自然と口の中に唾液が溢れ、まるで鈍器で殴られたかのような強い衝撃が益子の本能を振る揺さぶった。
「あ、あ、なん、れ…きゅ、うにぃ…っ…」
「っ、ぐぅ…あ、おい…っ…」
「ひ、ぃっ…あ、っ」
ぜぇ、はぁ、と喉がなるような荒い呼吸と全身を包む甘い痺れに目眩がする。前に来たときよりも、ひどく重いヒートだ。こんなの知らない。なんだ、なんだこれは。
口端からはだらし無く垂れた唾液は床に落ち、無意識に下半身は強いフェロモンに当てられたせいか、雌の部分を刺激させられたせいで床に水溜りを広げた。
雄の目をした番の強い視線に絡め取られ、腰を震わしてしょろりと漏らした。どちらが獣かわからない。まるで犬の嬉しくて粗相をするときの様な仕草で、益子の強い欲の目線をその身に受けてよろこんだ。
腰回りが温かい。自分の意志とは関係なく、突然漏らした。その柔らかい水流と匂いに反応した益子は、心底愛おしそうに、そして嬉しそうにして犬歯を舐めた。
焼ききれたアルファの理性の前で、今の葵は完全にご馳走でしかなかったのだ。
「ん…むり、だめだ。」
「きいちくんきちゃうからぁあ!!」
「待たせとけ、っぐぇ!!」
ドゴォッ、といい肘が腹に入った益子は、襲いかかっていた葵によって無事粛清された。
何が無理なのか全くわからない。昨日の夜散々辞めろというのに何度も抱かれ、二人して気絶するようにして眠ったのだ。朝起きると自分の体は綺麗になっていたが、隣に寝ていた益子が荒い呼吸でぐったりしていたのに悲鳴を上げた。
「わけわかんない!!待たせられるわけ無いだろう!?妊夫だぞ!」
「俺だって熱出てるときは優先して欲しい…」
「きいちくんは悠也のために、ご飯買ってきてくれるんだよ!!だいたい朝から俺がつきっきりだろうが!」
「身も心も竿も温めてほし、ぅぐぇっ」
竿といった時点で再び葵の拳骨が降った。
益子を座らせて寝汗をかいたシーツを変えようとしたら、後ろから覆いかぶさられたのだ。散々人の腹に好き勝手出しまくったというのに、その厭らしい手付きで服の裾から侵入した手が胸を弄ってきたので慌ててどかしたのだ。
病人なんだから大人しくしろと言いたい。
「キスも?」
「風邪治ってからな!」
「ええええ!」
「うるさい、ねろ!」
変えたばっかりのシーツの上に再び益子を寝かせると、がしりと腰を掴んで来たので無理やり引き剥がす。体調不良だと本能が前に出るようで、子孫を残したくて仕方ないのか益子のそこは見事に盛り上がっていた。
「んなご無体なぁ…」
泣き言を言う益子を無視し、さて、と洗い物とシーツを抱きかかえると、ピンポンと軽快な音がなった。
葵は身なりを整えると、ガチャりと扉を開けた。
「ごめんねぇ!ああ、お腹おっきいのにほんとごめん、ありがとう。」
「全然!むしろ動けって言われてるし。あ、これノート。今日の授業のやつね!」
エコバッグを肩にかけ、きいちがニコリと笑って立っていた。膨らんだ腹は六ヶ月らしく、大きめの物カットソー素材を着ててもわかった。
「うわ助かる!あ、これお釣りね。あとお礼になるかわかんないけどクッキー。食べてね!」
「葵さんのクッキー!!!全部僕が食べるね!でへへ、ありがと。」
益子は、と心配してくれる友人に、葵は苦笑いしかでない。
「まあ、大丈夫なんだけど。風邪引くと我がままになるみたいでさ…」
「駄々っ子うける!でっけぇ赤ちゃんみたいな?」
「そうかも、まあ子育ての予行練習だと思うよ。」
大変だねぇ、と労ってくれるきいちの言葉が優しい。きっと部屋に戻れば丸くなってすねているに違いない。葵は頭の痛い思いをしながらため息を吐く。
そんな様子を見ていたきいちが、面白いもの見たといった具合に言う。
「でもさ、葵さんにそんな顔させられる益子ってすごいよね。」
「ん?」
「だって葵さんいっつも抜かりないってか、ちゃんとしてる感じがするから。」
そう言ってきいちの細い指先が葵のぼさついた髪を整える。年下の子に頭を撫でられるような形になり、少しばかし気恥ずかしい。けれど、その指先には労りが感じられた。
「いっつも綺麗なお兄さんでいなくても、いいと思うなぁ。」
「…ありがとう。なんか、きいちくんって人たらし だな?」
「そう?」
くすくすと笑い合っていると、がらりと奥の寝室の扉が開く。けほけほと席をしながら、マスクをした顔の赤い益子がふらふらとゾンビのように歩いてくると、慌てて葵はかけ寄って支える。
「ごめんきいちくん!うつすと不味いし、今日は本当にありがと!!」
「あ、え、うん!じゃあまた!益子お大事に…」
のしかかるように葵に抱きつく益子の体は上半身は何も纏っていない。まるで取り組みのように腰に手を回して小柄な身長で支える葵は、益子に押されるかのように仰け反っていて大変そうだ。
なんだかまるでわがままな大型犬を育てるブリーダーのようだなと思った。
「葵、ながい…」
「はいはいごめんて!暑いからって服脱ぐなよなほんと!!」
「きいちまたなぁ…」
「邪魔者はかえりまーす、ほどほどにね。」
葵は益子によって抱き竦められている為見えないだろうが、ちらりときいちを見た益子はニヤリと意地悪く笑う。その様子は元気そのもので、熱など等に下がっていることを物語っていた。
単純に甲斐甲斐しく世話されることに味をしめたな。どうしょうもない奴だと呆れつつ、二人を残してきいちは玄関の扉をそっと閉じた。
せっかく来てくれたのに、半ば追い出すような形になってしまったきいちに申し訳なく思う。葵は体調が治ったら絶対に益子からも謝らせようと決めつつ、全体重を預ける益子のちからに負けてずるずると壁伝いに床にへたり込んだ。
「ちょ、っ…もー‥」
「葵、俺も構ってくれ…」
「散々夜構っただろ!具合悪いなら大人しく寝て治してくれよ…」
「いやだ。」
ぎゅうと抱きしめられながら、年下のわがままな番に若干諦め気味になる。具合が悪いときこそ人肌恋しくなるのはわかるのだが、本能が剥き出しというか、今までこんなに我儘に求められる事なかったのになと思う。
アルファの血が濃いと、性行為で野性的になるのはわかった。だけどそれが具合悪くてもそうなるのは、生存本能として種を残したいからなのか。
なんだかオメガのヒートみたいだなと思う。
「ひょわ、っ!ば、ばか!!だからしないってば!」
「いやだ、今抱きたい。」
「昨日の夜抱いただろ!」
「まだ足りねぇ、いただきます。」
「いただき、っ!?ん、んんむ、むー!!!!!」
息を荒らげながら首筋に鼻先をうずめていた益子にのしかかられながら、深く唇を合わせられる。気づけば廊下に押し倒され、体重をかけられながらその身を抱きしめられていた。
鼻先をくすぐる微かな香りは、番のアルファのフェロモンだ。まるですべてを飲み込むかのような深く溶けるような舌遣いに翻弄されながら、そういえば ヒート遅れてたんだっけ、と唐突におもいだした。
「んん、ふ…ま、っぇ…んぅ、む…っン…」
「ふは、ほら…そう、んん…もっとくれ、…ン…」
ちゅぽ、と音を立てながらいやらしく益子に舌をしゃぶられる。ひくりと腰がはねてしまう位きもちがいい。葵の目がとろけた瞬間を見逃さなかった益子が、先程よりも濃度の濃いフェロモンを放った瞬間だった。
「ひぁ、あっ!あ、だ、だめ、ぇっ…!」
びくびくと脚をはねさせる。番の香りが呼び水になったのか、誘発されるように葵のヒートが唐突に始まった。組み敷いた番から、突然放たれたそのフェロモンに益子は目を見開いた。ぶわりと煽るように鼻先をくすぐる本能を煽る香り。
自然と口の中に唾液が溢れ、まるで鈍器で殴られたかのような強い衝撃が益子の本能を振る揺さぶった。
「あ、あ、なん、れ…きゅ、うにぃ…っ…」
「っ、ぐぅ…あ、おい…っ…」
「ひ、ぃっ…あ、っ」
ぜぇ、はぁ、と喉がなるような荒い呼吸と全身を包む甘い痺れに目眩がする。前に来たときよりも、ひどく重いヒートだ。こんなの知らない。なんだ、なんだこれは。
口端からはだらし無く垂れた唾液は床に落ち、無意識に下半身は強いフェロモンに当てられたせいか、雌の部分を刺激させられたせいで床に水溜りを広げた。
雄の目をした番の強い視線に絡め取られ、腰を震わしてしょろりと漏らした。どちらが獣かわからない。まるで犬の嬉しくて粗相をするときの様な仕草で、益子の強い欲の目線をその身に受けてよろこんだ。
腰回りが温かい。自分の意志とは関係なく、突然漏らした。その柔らかい水流と匂いに反応した益子は、心底愛おしそうに、そして嬉しそうにして犬歯を舐めた。
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