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第2章 

第95話 イース公国攻略編 準決勝

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準決勝、第一試合
バルバレスvsミーズリー


この試合は剣での戦いだった。

体力の消耗が激しいバルバレスにとっては良かったんじゃないだろうか。

剣の実力はほぼ互角だった。

きれいな剣術を披露するミーズリーに対して、

型などなく経験に任せた臨機応変な戦い方をするバルバレス。

ていうかバルちゃん引き出し多いな。

剣じゃ不利かと思ってたけど、結構やる。

バルバレスの一発一発が重いのでミーズリーのリズムが崩れてきた。

第一ラウンド終盤、バルバレスの横なぎに振った剣を受け、

大きくはじかれた一瞬の隙を突かれてミーズリーは腕に一撃を食らった。

第2ラウンドに入り、ミーズリーはバルバレスの癖を見切ったようだった。

適度な距離を保ってうかつに攻め入らず、返す刀で反撃をする。

バルバレスの攻撃は当たらなくなった。

小気味のいいリズムでの剣劇が何度か続いた後、

バルバレスの足にミーズリーの一太刀が入った。

会場の空気がヒリつくような緊張感漂う攻防が続く。

バルバレスが食らったら頭が吹っ飛ぶような突きを繰り出すと、

それをギリギリ避けたミーズリーは回転しながらの連続斬りで応戦する。

印象として手数はバルバレスの方が多い。

剣技は互角でも力の差が戦いの流れを作っていた。

それでも互いに決め手を欠くまま第3ラウンドまでもつれ込んだ。

バルバレスはスタミナが切れてきたようだ。

早く仕留めたいに違いない。

ミーズリーは押されながらも注意深く隙を伺っている、そんな感じだ。

試合終了間際、互いの剣が拮抗し、

動きが止まった瞬間、バルバレスが力任せに剣をはじく。

両者共に大きな隙が生まれた。

ミーズリーはここぞとばかりに剣を振り下ろす。

バルバレスは振り下ろされた剣を腕で防いだ。

会場が静まり返る。

誰もがミーズリーの勝利を確信したが、

バルバレスの剣先はミーズリーの腹を突いていた。

「準決勝、第一試合、勝者バルバレス・エメリア!!」

歓声が凄い。

敗北したミーズリーにも称賛の拍手が舞い飛ぶ。

腕を犠牲にして一撃で勝てる腹を突く。

まさに肉を切らせて骨を断つ、だ。

ミーズリーはあくまで試合、バルバレスは戦い。

イース公国はこれまで一度も戦争をしたことがない。

キトゥルセンは昔、ザサウスニア帝国と国境紛争があったり、

定期的な魔物討伐など実戦経験が豊富だ。

そこの意識の差が戦い方に表れていた。

バルちゃん、頼もしいけど、

戦場で互角の相手が現れたら多分同じ戦い方するんだろうな……。

武人の覚悟って凄まじい。




準決勝、第二試合
アーシュvsギバ


ここまで来ちゃうなんて……ああもう心配。

しかも相手は一番凶悪な奴。

希望通り【王の左手】にしてあげるから棄権してくれないかな。

下馬評は完全にギバの方だ。

アーシュの体重ならパンチ一発で吹っ飛んでしまうだろう。

緊張のさなか試合が始まった。

ギバは余裕の表情で距離を詰めていく。

アーシュは後退していくと見せかけて急に前進、

電撃的な速さで飛び回し蹴りを繰り出した。

ガードが間に合わず、

見事かかとがギバのあごにヒット、ダウンを奪った。

まさかの一撃に大歓声が上がる。

頭を振りながら立ち上がったギバは、

もう過信することはなかった。

体格差は二分の一。

しかし距離を保ち迂闊に近づくことはしない。

大振りになる攻撃もせず、ガードを固めてジャブを繰り返す。

アーシュにとってはジャブでも食らうと危ない。

当たり所が悪ければ一発KOだ。

アーシュはギバの攻撃を器用に避け、

隙を見つけてローキックを繰り返す。

一回の攻撃で2,3発を素早く叩き込むので、さすがのギバも足が止まる。

ダメージが蓄積したのか動きが鈍くなったギバに、

まるで格闘ゲームのようにラッシュを叩き込むアーシュ。

しかし、急に俊敏に動いたかと思うとギバはアーシュの足を掴み、

そのまま強烈なフックを見舞った。

疲れたふりをしていたらしい。

ガードはしていたが吹っ飛んだアーシュは立ち上がれずダウンを期した。


第2ラウンド、ギバは本当に右足が出なくなった。

積み重ねたローキックがようやく効いてきたのだ。

思えばアルトゥール、マーハントもローキックをかなり叩き込んでいた。

そこからのダメージも相当あるはずだ。

反対に動けば動くほどノッてくるのがアーシュだ。

戦闘民族の血なのだろうか。

目がギラギラして表情もイキイキしてきた。

ギバの攻撃はもう二度と当たらないだろう。

そう言い切れるほど見ていてアーシュの動きには安心感があった。

ギバは攻撃が当たらずイラついている。

その後も何発もギバの右足にローキックを入れ続け、ついにダウンを奪った。

ギバは試合続行が困難となり、アーシュが勝利した。


「準決勝、第二試合、勝者アーシュ・シリアム!!」
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