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第2章 

第77話 ケモズ共和国攻略編 女王アルウネア討伐

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俺が地下ダンジョンの外に出たとき、すでにダカユキーたちがその場にいた。

囚われていた四名の方も無事救出できたみたいだ。

ただ、ダカユキー隊の人数はだいぶ少なくなっていた。

「さあ、最後の仕事だ」

「はい」

ダカユキーたち護衛兵団全員が出入り口を囲うように布陣して、剣を抜いた。

誰一人として目が死んでいない。

こいつらは本当に心強い。

俺は俺で千里眼と脳内チップのおかげで次の展開に備えられる。

これだけでもかなり優位に立つことが出来た。

なかったらそもそもこのダンジョンに突入もしていなかっただろうな。

もうすぐクロエたちがアルウネアと共に飛び出してくるはずだ。

ユウリナはエネルギー切れか、ルレ隊に担がれていた。

クロエもキャディッシュもボロボロの体だ。

ベミーとルレだけが奮戦している。

アーキャリー姫たちも保護していた。

よくやった、みんな。

あとは任せろ。

と心の中で勇んでみたけど、俺も正直体力が残り少ない。

さて、どうするか。



みんなが出てきた。

「両脇に散れ! 散開しろ!」

友軍を見て安心した顔をしたのも一瞬、

状況を飲み込んだ兵士たちはダンジョン入り口からすぐに左右に分かれた。

続いてアルウネア達が出てきた。

出てくる前から千里眼でタイミングを計っていた俺は、

ドンピシャで〝炎蛇〟を放った。

アルウネアたちの鳴き声が炎の中から聞こえる。

「下がれ下がれ!」

「矢をつがえろ!」

俺の最後の全力だ。

どうしてこんなすんごい力扱えるのに毎回毎回ギリギリの戦いになるんだろうか。

案外センスないのかな、俺。

膝から力が抜け、ガクッと地面に手をつくまで、炎を出し続けた。

ダンジョンの入り口は真っ黒になっていた。

千里眼で見てみる。

約30いた子アルウネアは全部焼け焦げていた。

よし。……肝心の女王は?

一番奥にいた……が動かない。死んだか?

すると突然外殻にひびが入った。

ああくそ、それ知ってるぞ。まだ死んでなかったか。

「女王はまだ生きてる! 来るぞ!」

呼吸が乱れて息が苦しい。

姿を現したと同時に、女王は腹のエラを開いて甲高い超音波を出した。

反射的に全員が顔をしかめた。

だが前より威力が弱い。立っていられないほどではなかった。

よく見ると女王の表皮は赤く爛れていたり、

痣のような紫や黄色に変色している箇所がたくさんあった。

殻のような外骨格が剥がれ、内側の皮膚が出ているようだった。

俺たちもボロボロだが、女王もかなり弱っている。

しかし、その表情は憤怒の形相で、とても退いたりはしなさそうだった。

「子供ヲ……私ノ子供を……子供たちヲ……お前ラ、許さナいッッ!!!」

女王は吠える。

最後の戦いの火蓋が切って落とされた。

数十の矢が放たれ、半分ほどが女王に刺さった。

鎌足が振られルレ隊の四人が真っ二つになる。

ルレと班長の一人が攻勢を仕掛け、足を一本切り落とした。

俺も小さな火球を放ち、腕を焦がした。

その場に嘔吐。全身から冷や汗が出て頭が痛くなってきた。

「オスカー様、お下がり下さい」

近衛兵団数名に脇を持たれ、陣の後ろまで運ばれた。

隣には動かなくなったユウリナが寝ていた。

アーキャリー姫達も後方に下がっていた。

鎌足が兵士に振り下ろされる寸前でクロエの氷がその足を固め、

そのスキにキャディッシュが上空から背中を切る。

しかし女王の振り回した腕に当たり、

キャディッシュはダンジョン入り口の壁に激突した。

クロエも力を使い果たしたようで、氷の足がなくなり、その場に倒れた。

なおも暴れる女王は、盾で陣形を作り進んでくるダカユキーたちを蹴り散らし、

糸玉で数名の動きを止めた。

しかし、ダカユキーたちも腹に槍を突き刺し、一矢報いる。

矢が立て続けに飛び、女王の片目を潰した。

リンギオがすごい速さで矢を連射していた。

さすがに少し足を止めた女王に、

ベミーが助走をつけた渾身の拳を蜘蛛の方の腹に叩きんだ。

「よくも、よくもミレを!!」

ベミーはまた暴走しそうな勢いだ。

吹っ飛んだ女王が立ち上がる寸前に俺は最後の火球を撃った。

頭に命中。また倒れる。

頼む、もう立ち上がるな。

俺はまた吐いた。意識が遠のきそうだ。

しかし、ボロボロの姿ながら女王は立ち上がった。

口元には笑みさえ見える。

「こンなものか……」

女王は体を縮こませた。

何をする気だ。

次の瞬間、四方八方に細い糸を放射した。

「うわっ」

「ちっ!」

俺たちは一人残らず糸に絡めとられた。

「調子にノるなよ、食料の分際で……」

そう言いかけた時、突然女王に炎が上がった。

「なんだ!?」

上空を見上げるとそこにはカカラルがいた。

「クウヵヵカカッ!」

「……ははっ」

自然に笑みがこぼれた。

カカラル、お前ってやつは!

女王アルウネアが灰になるまでカカラルは炎を吐き続けた。
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