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第34話 ノストラ王国攻略編 【ツェツェルレグの魔女】
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ミルコップ軍の後ろに200人の軍が続いている。
これは事前に【千里眼】で確認していた集団だ。
このまま進めばミルコップ軍に合流するだろう。
問題はその更に後方に数千人規模のキャラバンを発見したことだ。
「オンナコドモ、ロウジン。ヒセントウインノシュウダンネ」
上空からは雪原に黒い粒が延々と彼方まで続いているのが見えた。
国を追われた難民。たった一人の魔人の影響で、ここまでひどい事になるとは。
「このキャラバンの先に魔女がいます!」
カカラルの足にはダルハンと共に、ノストラの若い戦士ルレも同行していた。
剣も弓も人並み以上に扱える優秀な戦士らしい。
ゾフの孫で案内兼人質だ。
4人も乗せると流石にカカラルは重そうで、何度か休憩を挟みながら飛んだ。
ミルコップたちはあの場でキャンプをしてもらった。
相談役のゾフとは、俺たちが魔女を倒したら配下に下れと言っておいた。
命を懸ける訳だから強気で攻めた。頑張った、俺。
ゾフはもしも倒せたら誰もがあんたを敬うじゃろ、と言ってくれた。
取り敢えずは思惑通りに事が進んでほっと一安心。
倒しても言うこと聞かないよ、なんて言われたらどうしよ、と内心ガクブルだった。
しばらく飛んで、ようやくキャラバンの最後尾に魔女を発見した。
【千里眼】で見るととんでもなく強い光だ。
魔女の周りにだけ不規則な吹雪が舞っていた。
魔女の足元には、地面から鍾乳石のような氷が生えてくる。
歩いた後の雪原には、鋭い氷が遥か先まで続いていた。
そしてその周りには沢山の死体があった。キャラバンから遅れた者が犠牲になったらしい。
【千里眼】でズームしてみる。
なるほど、人ではない。
青い肌に布を纏っただけの服。背丈も2mはある。
手足もまるで獣のようで、顔は女性のそれだが、眼球が全て黒く、
まるで仮面をつけているかのように表情がなかった。
腰まである真っ白な髪は吹雪の影響を受けず、
まるで意思を持っているかの如く、思い思いに動いていた。
「アレハマジンノ〝ギカク〟カネ」
「〝ギカク〟化?」
「チカラノコントロールガデキナカッタリ、ノマレテシマウト、
イシキヲウシナイボウソウスルキケンナジョウタイ」
注意して見ると身体の奥が青白く点滅しながら光っていた。
心臓の鼓動に合わせているみたいだ。
あの状態が長く続くと終いにはエネルギーが身体を突き破り、
広範囲が凍てつくとユウリナは続けた。歴史書には過去に水を操る魔人がギカク化し、
巨大な街一つが湖になってしまった記録があるらしい。
上空を旋回し様子を見ていたら、魔人がこちらを向いた。
見つかった。ていうか顔面怖すぎ。
周囲に何か動くモノ。大狼だ。10匹ほどがうろついている。
「行くか。俺とユウリナは真正面に降りる。
二人はカカラルの背中から矢で大狼を引き付けてくれ」
「了解しました!」
ユウリナと共に雪原に降りる。魔女までの距離はおよそ10m。
カカラルは低空飛行で大狼の前を横切り、
ダルハンとルレはカカラルの背中から弓で大狼を挑発した。
一頭がカカラルを追いかけていくと、残りの大狼もその後をついて行った。
「止まれ! 引き返すんだ! それ以上進んだら攻撃する!」
魔女に反応はない。そもそも言葉を理解しているのか?
「ムダヨ。カノジョニハナニモキコエテイナイ」
「一応言っとかないとな」
俺はフラレウムを抜き、いきなり強火の炎をお見舞いした。
最大級の火柱は魔女を包み込み、周囲の氷や雪を溶かした。
辺りには蒸発した蒸気が瞬時に広がり、西から吹く吹雪がまたそれらを細氷に変えた。
炎を止めると地面の土が見え、キラキラとダイヤモンドダストが舞う。
蒸気が去った後には半分溶けた氷の壁が残った。
魔女が消えた。どこだ?
氷の壁が動いた、と思ったら氷の鎧をまとった魔女が中から出てきた。
同化してたのか! そう簡単にはいかないよな……。
氷の解けた地面にまた雪が積もってゆく。体力は3分の1程度を残した。
瞬間、ものすごいスピードで魔女が迫ってきた。
氷の津波に乗っていた。下半身は氷と同化している。
ユウリナが砲弾の様なものを放つ。魔女の腕が吹き飛んだ。
だがすぐに腕が生えた。うそでしょ、どうなってんの?
魔女の氷で強化した巨大な腕が迫る。
だめだ、間に合わない!
横から強い衝撃。
間一髪、ユウリナが助けてくれたようだ。
全身が痛い。
起き上がると目の前にユウリナの後姿があった。
「ダイジョウブ? オスカー」
「ありがとう、ユウリナ。助か……」
俺はそこで気付いた。
ユウリナの左腕が無くなっていることに。
これは事前に【千里眼】で確認していた集団だ。
このまま進めばミルコップ軍に合流するだろう。
問題はその更に後方に数千人規模のキャラバンを発見したことだ。
「オンナコドモ、ロウジン。ヒセントウインノシュウダンネ」
上空からは雪原に黒い粒が延々と彼方まで続いているのが見えた。
国を追われた難民。たった一人の魔人の影響で、ここまでひどい事になるとは。
「このキャラバンの先に魔女がいます!」
カカラルの足にはダルハンと共に、ノストラの若い戦士ルレも同行していた。
剣も弓も人並み以上に扱える優秀な戦士らしい。
ゾフの孫で案内兼人質だ。
4人も乗せると流石にカカラルは重そうで、何度か休憩を挟みながら飛んだ。
ミルコップたちはあの場でキャンプをしてもらった。
相談役のゾフとは、俺たちが魔女を倒したら配下に下れと言っておいた。
命を懸ける訳だから強気で攻めた。頑張った、俺。
ゾフはもしも倒せたら誰もがあんたを敬うじゃろ、と言ってくれた。
取り敢えずは思惑通りに事が進んでほっと一安心。
倒しても言うこと聞かないよ、なんて言われたらどうしよ、と内心ガクブルだった。
しばらく飛んで、ようやくキャラバンの最後尾に魔女を発見した。
【千里眼】で見るととんでもなく強い光だ。
魔女の周りにだけ不規則な吹雪が舞っていた。
魔女の足元には、地面から鍾乳石のような氷が生えてくる。
歩いた後の雪原には、鋭い氷が遥か先まで続いていた。
そしてその周りには沢山の死体があった。キャラバンから遅れた者が犠牲になったらしい。
【千里眼】でズームしてみる。
なるほど、人ではない。
青い肌に布を纏っただけの服。背丈も2mはある。
手足もまるで獣のようで、顔は女性のそれだが、眼球が全て黒く、
まるで仮面をつけているかのように表情がなかった。
腰まである真っ白な髪は吹雪の影響を受けず、
まるで意思を持っているかの如く、思い思いに動いていた。
「アレハマジンノ〝ギカク〟カネ」
「〝ギカク〟化?」
「チカラノコントロールガデキナカッタリ、ノマレテシマウト、
イシキヲウシナイボウソウスルキケンナジョウタイ」
注意して見ると身体の奥が青白く点滅しながら光っていた。
心臓の鼓動に合わせているみたいだ。
あの状態が長く続くと終いにはエネルギーが身体を突き破り、
広範囲が凍てつくとユウリナは続けた。歴史書には過去に水を操る魔人がギカク化し、
巨大な街一つが湖になってしまった記録があるらしい。
上空を旋回し様子を見ていたら、魔人がこちらを向いた。
見つかった。ていうか顔面怖すぎ。
周囲に何か動くモノ。大狼だ。10匹ほどがうろついている。
「行くか。俺とユウリナは真正面に降りる。
二人はカカラルの背中から矢で大狼を引き付けてくれ」
「了解しました!」
ユウリナと共に雪原に降りる。魔女までの距離はおよそ10m。
カカラルは低空飛行で大狼の前を横切り、
ダルハンとルレはカカラルの背中から弓で大狼を挑発した。
一頭がカカラルを追いかけていくと、残りの大狼もその後をついて行った。
「止まれ! 引き返すんだ! それ以上進んだら攻撃する!」
魔女に反応はない。そもそも言葉を理解しているのか?
「ムダヨ。カノジョニハナニモキコエテイナイ」
「一応言っとかないとな」
俺はフラレウムを抜き、いきなり強火の炎をお見舞いした。
最大級の火柱は魔女を包み込み、周囲の氷や雪を溶かした。
辺りには蒸発した蒸気が瞬時に広がり、西から吹く吹雪がまたそれらを細氷に変えた。
炎を止めると地面の土が見え、キラキラとダイヤモンドダストが舞う。
蒸気が去った後には半分溶けた氷の壁が残った。
魔女が消えた。どこだ?
氷の壁が動いた、と思ったら氷の鎧をまとった魔女が中から出てきた。
同化してたのか! そう簡単にはいかないよな……。
氷の解けた地面にまた雪が積もってゆく。体力は3分の1程度を残した。
瞬間、ものすごいスピードで魔女が迫ってきた。
氷の津波に乗っていた。下半身は氷と同化している。
ユウリナが砲弾の様なものを放つ。魔女の腕が吹き飛んだ。
だがすぐに腕が生えた。うそでしょ、どうなってんの?
魔女の氷で強化した巨大な腕が迫る。
だめだ、間に合わない!
横から強い衝撃。
間一髪、ユウリナが助けてくれたようだ。
全身が痛い。
起き上がると目の前にユウリナの後姿があった。
「ダイジョウブ? オスカー」
「ありがとう、ユウリナ。助か……」
俺はそこで気付いた。
ユウリナの左腕が無くなっていることに。
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