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第27話 マイマ・ファウストの日常

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こんにちは。

キトゥルセン王国、ファウスト家の長女、

マイマ・ファウストと申します。

ノーストリリア城のメイド長をしております。

メイドのお仕事は大変です。でもやりがいを感じております。

朝はオスカー様のお部屋のお掃除、朝食の配膳、

それが終われば洗濯、食器洗い、城中の掃除をします。

メイドは12名ですが実家に帰る者もいるので、

常時動けるのは10名ほどになります。

それでも現在、王家の人間はオスカー様お一人なので大分仕事が楽です。

お城の皆さんが起きる前、私たちは一日の仕事を割り振ります。

今日はネネル様の部屋の掃除です。綺麗に使ってもらっているようです。

強いて言えば、ろうそく台や置物がたまに床に落ちているくらいです。

きっと羽をお伸ばしになられるのでしょう。

有翼人用に作られた部屋じゃないので仕方ありませんね。

羽に巻いている包帯がテーブルに上にありました。まだ万全じゃない様です。

今朝はオスカー様と朝食を共に取られたという事で、

ずいぶん仲がよろしい様です。

あら、タオルが破れてしまいました、なぜでしょう?

ネネル様はオスカー様に好意をお持ちのようですが、

オスカー様はウルエスト王国のことを考慮して手を出していません。

ネネル様はお姫様なので、へたをすれば国際問題です。

聡明なオスカー様の事です、情勢を見ているのでしょう。


次は回収したシーツや洋服を皆で洗います。

お湯で洗えるようになりました。

以前は冬でも冷たい水で洗っていたので、その頃を考えると夢みたいです。

オスカー様に感謝です。

洗濯物は乾燥室に干します。

お風呂の加熱室の空いた空間に、物干し竿を設置してくれました。

ここだと大きなシーツが1時間、厚手の服も3時間で乾きます。

これはもう革命です。嬉し過ぎます。

これを見た日はメイド皆で大興奮でした。

ここに入りきらないものは二階の温風口前に掛けさせて頂いてます。

洗濯の労力が以前の10分の1になりました。

時間が空いたので窓枠の掃除なんかも出来ます。

窓からカカラルが鹿を運んでいるのが見えます。

カカラルは最近私の事を認識してくれるようになりました。

でもまだ怖いです。

いつか背中に乗せてもらいたいものです。

鹿の飼育場には結構な数がたまっているようです。

ここ最近は毎日森を往復しています。働き者だと思います。

他の家畜場もたくさん集まっているようです。

働き者です。

そういえば鹿肉が食卓に上がる日が多くなりました。

あんなに柔らかくなるものなのですね。

マイヤーはオスカー様に教わったらしいです。感謝です。


中庭の掃き掃除をしていると養鶏場から帰るマイヤーと会いました。

お酒臭いです。ネネル様と毒味をしていたらしいです。

ネネル様が参加される時点でそれはもう毒味ではないですよね? とは言いません。

手には卵。これから夕食の仕込みだそうです。

そして私のお尻を揉んできます。いつもの事なのでもう気にしませんが、

服をたくし上げて直に触るのはやめてほしいですね。ここ外なので。

業者や兵士や他の方たちもいらっしゃいます。

この前貸したお金の催促をすると、てへっと舌を出して行ってしまいまいました。

友達じゃなければ彼女に水を被せ磔にして一晩外に出しておくところです。



休憩は足湯と決まっています。

同じタイミングのメイド数人と報告し合い、お茶を飲みます。

身体が温まります。

これを作ってくれたオスカー様に感謝です。

通りかかったラムレス様から服を直してほしいとお願いされました。

お腹周りですね、と言ったらなぜわかったのだと驚ていました。

誰でも分かります。



昼下がり、私はオスカー様の訓練に帯同します。

城壁前の広場にて、筋力トレーニングと剣術の稽古です。

バルバレスさんの部下、臨時近衛兵長ダカユキー・ヤーマと模擬剣で打ち合っています。

ダカユキ―殿は背が低いけど整った濃ゆいお顔なので、すぐに覚えました。

お髭が濃くて熱血な方です。

オスカー様の、魔剣だけに頼らず、精進されるお姿に胸がときめきます。

私は傍らでタオルと飲み水をもって待機します。

ああ、オスカー様の腕の筋肉、首筋の汗、見ているとゾクゾクします。

下半身が熱くなります。生唾ゴクリです。今夜が楽しみでにやけてしまいます。



夕方、城門にて私の弟、ユスケ・ファウストに紙の束を渡しました。

私の家は一応貴族ですが、借金があり貧しいのです。

生活水準は一般庶民と変わらないか、それ以下です。

私が王城に務めているので威厳は保てているようですが、

病弱な父は評議会にも選ばれておりません。

とある夜、オスカー様のベッドで家の事を聞かれて全て話すと、

ならば商会を作れ、と申されました。

オスカー様が考案したものを作ってほしいとの事で、

それはエンピツという羽ペンに変わる物でした。

黒鉛と粘土と水を混ぜ、焼き固め、それを削った木で巻いた細い棒状の新しいペン。

インクがいらない便利なペンです。

弟は昔から手先が器用で、工作が得意でしたので、

オスカー様が望むものを作り上げました。

商人に売らせたところとても好評らしく、

城に売り上げの2割を納めるという契約で、

ファウスト家が独占販売権を頂きました。

そして今回は新たな発明品の設計図です。こちらもうまくいけばまた契約できます。

これでファウスト家も持ち直すことが出来るかもしれません。

弟には頑張ってもらいたいものです。



夜は浴場にてオスカー様のお背中を流します。

王族専用の浴場も24時間お湯が流れ続けるようになりました。

1階ではないので工事が大変だったようです。オスカー様に感謝です。

水衣はいまだに恥ずかしいですが、オスカー様に見られるのは嬉しいです。

メミカも慣れてきたようで、そろそろ一人でもやらせてみようと思います。

というか早く一人でやりたそうです。

とんだ好きものです。

痛い、とオスカー様に言われました。

背中を少し強く擦ってしまいました。

一体私の腕はどうしたというのでしょう。


今夜の夜番は私でございます。しっかり務めさせて頂きます。

先ほどメイド全員の夜番予定表にちゃっかり医術師見習いのモリアの名がありました。

明日の朝一番でどういうことか問い質してみましょう。

その際、メミカに鬼がいますと言われました。その場には二人しかいなかったので

はて不思議な事をいう娘だな、と思いました。


ろうそくを消します。

今夜は久しぶりに月が綺麗です。

おや、窓の外に一瞬だけ白い羽が見えました。誰かが覗いているようです。

見られていると思うと一段と激しくなるものですね。

まぁこれが初犯ではないので、気が付かないふりをしておきます。
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