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第二章
14話 監査
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商社ビル、社員用出入口前。
父娘は相変わらずそこで、土下座を続けていた。
父はドワーフ族のルイス・ファーベル。
この街で、十数名の社員を抱えた小さな町工場を営む社長であった。
主に自社開発した魔道具の製造を行っているが、他社製品の修理も請け負っており、地域密着型の会社として地元に根付いていた。
しかし、最近になり大手企業が同じ分野に参戦してきたことで経営が悪化、娘のフラムも懸命に手伝いをしていたが、どうにもならず、とうとう資金の借り入れを行っていたウェルダム商事にも見放され、融資の打ち切りの通告を出されたのだった。
融資が無くなってしまうと、工場を回すことができなくなり、自分の身ならず、娘や社員も路頭に迷うことになる。
それだけは避けたいと、ウェルダム商事に頼み込んだが、打ち切りは決定事項と突き放されるだけ。
後はもう、土下座をして情に訴えるしかなかった。
娘のフラムにも付き合わせてしまい、心苦しい思いをしながらも、ルイスは土下座を続ける。
その時、出入口の扉が開き、土下座をする二人に声がかけられた。
「感謝しろ。この方の懇願で、融資の再考することになった」
その言葉を受けて、ルイスとフラムの二人が顔を上げると、そこにはロバートと凛の姿があった。
目が合った凛は軽く会釈をする。
「あ、ありがとうございます」
表情を明るくさせて喜ぶ二人に、ロバートは続けて言う。
「融資を再開するかどうかは、監査結果次第だ。監査には彼女をつける。仕事を見てもらい、アドバイスを受けろ」
それだけ言い、一時金として、金貨の入った小袋を二人へと投げ渡した。
ファーベル親子に凛が監査につき、三人は商社ビルを離れる。
「本当に、ありがとうございます」
表通りを歩きながら、ルイスとフラムはぺこぺこと凛に頭を下げる。
「いえいえ。まだどうなるかは分からないけど、一緒に立て直し頑張りましょ」
凛は聖人の如く親切に対応する。
助ける理由は、相手が女の子付きだからという下心からだったが、フラムの人生を助ける為にも、本気で挑むつもりだった。
「それで、早急に立て直さないといけないのだけど、問題点とか分かってたりする?」
「うーん……問題点と言いますか、なかなか買っていただけないことが、問題と言えば問題ですね。商品には自信がありますから、使っていただければ満足してもらえると思うのですが、お試しで置かせてもらうことも難しくて」
「営業かぁ……。そっちについては、完全に門外漢なのよね。一先ず、何か気付くこともあるかもしれないから、仕事っぷりを見させてもらうことにするわ」
こうして、まずは一番の問題である営業を見学させてもらうこととなった。
ルイスは魔道具の電話でアポを取り、訪問を始める。
「……それで、ですねっ。部屋の空気を綺麗にすることができるんです! 更に! これは埃だけでなく、臭いも除去してくれるので、室内でタバコを吸われたり、お弁当を開けた時の臭いも完全に消してくれます! まさに画期的、魔道具界に革命を起こす商品です!」
訪れた応接室にて。
アポが取れた企業の社長に向け、ルイスは熱烈に商品の売り込みをしていた。
売り込んでいる商品は、空気を綺麗にする魔道具、所謂空気清浄機である。
日本では一般的な家電であるが、こちらの世界ではまだ普及しておらず、知名度も皆無であった。
「必要性を感じないな」
ルイスがマシンガン的なセールストークを浴びせるが、話を聞かされている社長は、全く興味なさそうな顔をしていた。
「これまでにないものですから、そう思うのも無理ありません。しかし! 使ってみれば、すぐに分かっていただけます! 現在キャンペーン中につき、無償レンタルサービスを行っておりますから、是非お試しにお使いください! 即買いしていただけるなら、特別割引も致します! 是非とも、ご検討を!」
社長の態度を物ともせず、ルイスは猛アピールを続ける。
しかし、意見は変わらず、いらないと言う社長に商品を押し続け、最終的には強引に話を打ち切られた。
建物から追い出された三人。
「よくあることです。話を聞いてくれても、契約結んでくれるのは少数しかいません。でも、諦めませんよ。せっかく凛さんがチャンスをくれたのですから、絶対に立て直して見せます」
営業で断られることは日常茶飯事だった為、ルイスは全くへこたれていなかった。
しかし、先程の営業の様子を見ていた凛は、何とも言えないような表情をしていた。
「提案なんだけど、まずは相手の話を聞いてみない? 何か、必死過ぎて引かれてたわよ」
「え? 商品の売り込みだから、相手からの話なんてないのでは?」
「いや、商品のことだけじゃなくて、相手が興味のある話を振ったりして」
「何故そんなことを?」
「コミュニケーションというか接待というか……とりあえず、やってみてよ」
ルイスは頭に?を浮かべるが、監査からの指示であるので、従うことにした。
父娘は相変わらずそこで、土下座を続けていた。
父はドワーフ族のルイス・ファーベル。
この街で、十数名の社員を抱えた小さな町工場を営む社長であった。
主に自社開発した魔道具の製造を行っているが、他社製品の修理も請け負っており、地域密着型の会社として地元に根付いていた。
しかし、最近になり大手企業が同じ分野に参戦してきたことで経営が悪化、娘のフラムも懸命に手伝いをしていたが、どうにもならず、とうとう資金の借り入れを行っていたウェルダム商事にも見放され、融資の打ち切りの通告を出されたのだった。
融資が無くなってしまうと、工場を回すことができなくなり、自分の身ならず、娘や社員も路頭に迷うことになる。
それだけは避けたいと、ウェルダム商事に頼み込んだが、打ち切りは決定事項と突き放されるだけ。
後はもう、土下座をして情に訴えるしかなかった。
娘のフラムにも付き合わせてしまい、心苦しい思いをしながらも、ルイスは土下座を続ける。
その時、出入口の扉が開き、土下座をする二人に声がかけられた。
「感謝しろ。この方の懇願で、融資の再考することになった」
その言葉を受けて、ルイスとフラムの二人が顔を上げると、そこにはロバートと凛の姿があった。
目が合った凛は軽く会釈をする。
「あ、ありがとうございます」
表情を明るくさせて喜ぶ二人に、ロバートは続けて言う。
「融資を再開するかどうかは、監査結果次第だ。監査には彼女をつける。仕事を見てもらい、アドバイスを受けろ」
それだけ言い、一時金として、金貨の入った小袋を二人へと投げ渡した。
ファーベル親子に凛が監査につき、三人は商社ビルを離れる。
「本当に、ありがとうございます」
表通りを歩きながら、ルイスとフラムはぺこぺこと凛に頭を下げる。
「いえいえ。まだどうなるかは分からないけど、一緒に立て直し頑張りましょ」
凛は聖人の如く親切に対応する。
助ける理由は、相手が女の子付きだからという下心からだったが、フラムの人生を助ける為にも、本気で挑むつもりだった。
「それで、早急に立て直さないといけないのだけど、問題点とか分かってたりする?」
「うーん……問題点と言いますか、なかなか買っていただけないことが、問題と言えば問題ですね。商品には自信がありますから、使っていただければ満足してもらえると思うのですが、お試しで置かせてもらうことも難しくて」
「営業かぁ……。そっちについては、完全に門外漢なのよね。一先ず、何か気付くこともあるかもしれないから、仕事っぷりを見させてもらうことにするわ」
こうして、まずは一番の問題である営業を見学させてもらうこととなった。
ルイスは魔道具の電話でアポを取り、訪問を始める。
「……それで、ですねっ。部屋の空気を綺麗にすることができるんです! 更に! これは埃だけでなく、臭いも除去してくれるので、室内でタバコを吸われたり、お弁当を開けた時の臭いも完全に消してくれます! まさに画期的、魔道具界に革命を起こす商品です!」
訪れた応接室にて。
アポが取れた企業の社長に向け、ルイスは熱烈に商品の売り込みをしていた。
売り込んでいる商品は、空気を綺麗にする魔道具、所謂空気清浄機である。
日本では一般的な家電であるが、こちらの世界ではまだ普及しておらず、知名度も皆無であった。
「必要性を感じないな」
ルイスがマシンガン的なセールストークを浴びせるが、話を聞かされている社長は、全く興味なさそうな顔をしていた。
「これまでにないものですから、そう思うのも無理ありません。しかし! 使ってみれば、すぐに分かっていただけます! 現在キャンペーン中につき、無償レンタルサービスを行っておりますから、是非お試しにお使いください! 即買いしていただけるなら、特別割引も致します! 是非とも、ご検討を!」
社長の態度を物ともせず、ルイスは猛アピールを続ける。
しかし、意見は変わらず、いらないと言う社長に商品を押し続け、最終的には強引に話を打ち切られた。
建物から追い出された三人。
「よくあることです。話を聞いてくれても、契約結んでくれるのは少数しかいません。でも、諦めませんよ。せっかく凛さんがチャンスをくれたのですから、絶対に立て直して見せます」
営業で断られることは日常茶飯事だった為、ルイスは全くへこたれていなかった。
しかし、先程の営業の様子を見ていた凛は、何とも言えないような表情をしていた。
「提案なんだけど、まずは相手の話を聞いてみない? 何か、必死過ぎて引かれてたわよ」
「え? 商品の売り込みだから、相手からの話なんてないのでは?」
「いや、商品のことだけじゃなくて、相手が興味のある話を振ったりして」
「何故そんなことを?」
「コミュニケーションというか接待というか……とりあえず、やってみてよ」
ルイスは頭に?を浮かべるが、監査からの指示であるので、従うことにした。
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