アネモネ

ぱる@あいけん風ねこ

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11 - 二学年 二学期 冬 -

05

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「なんか見たい?」
「んー…よく分かんない」
「やんなぁ。俺も」
「え?大倉も?」
「うん」
「んはっ。じゃあ、なんでここ来たんだよ」
「定番のデートスポットやから?」
「あははっ、意味分かんね」
「んふ」




今までもいろんなところ行ったけど、こうやって手を繋いでデートするのは初めてのことで、俺多分かなり浮かれてる。
もしかしたら、この空気にも流されてる気がしなくもないけど、それでも今すっごくしあわせを感じてる。
隣に大倉がいて、優しくて温かい体温を感じて、本当にしあわせだぁ…。


お店に入るでもなく、ただなんとなく人の流れに乗って歩いてるだけ。
それだけでいいんだ。




「少し休もうか」
「うん。喉渇いた」
「そういや、外にワゴンで珈琲売ってたからそこでなんか買う?」
「カフェオレあるかな」
「あるやろ」




人の流れに乗って一通り歩いて、少し疲れたから休憩。
外にはちゃんと休憩スペースがあって、恋人同士だったり家族連れだったり、はたまた友達同士だったり。いろんな人がいる。
俺と大倉は、周りから見たらきっと友達同士で来てるんだろうなって見られてるんだろうな。
でも別にそれでもいい。本当は、恋人同士です!って言いたけど、なんか内緒な感じがいいじゃん?




「飲み物買ってくるから座ってて」
「分かった」




ちょうどよく席を立った人がいたから、そこに腰を下ろす。
大倉が飲み物買いに行ってくれてる間に、俺は鞄の中を確認。
ちゃんと、大倉に渡すプレゼントが入ってる。
いつ渡そうか。大倉の家に行ってからの方がいいのかな?それとも今渡す?
雰囲気が大事なのは分かってるけど、どんな雰囲気の時に渡すのがベストなんだ?
こんなことあんまないからよく分かんない。
てか、夜ご飯どうするんだろ?外で食べるのかな、それとも大倉の家?
それすらも大倉に聞いてなかった。

色々頭の中で考えながら大倉のこと待ってたら、後ろの方で聞いたことある声が聞こえてきた。
まさかな…と思いながら振り向いたら、見知った人がいた。それも大倉と一緒に。




「…なんでいる?」




大倉と一緒にいるのは、大倉に思いを寄せてる椎名 アリスだった。
なんでいるだ……いや、別にいてもいいんだけど。




「大倉先輩!無視しないでくださいよぉ!」
「………」




いや、本当にあの子すごいよなぁ…。
俺があれだけ言って、大倉もちゃんと断って、彼女も「分かりました」って言ってたのに。
やっぱ大倉に会っちゃうと好きの感情が溢れ出ちゃうのかな。
しかも今日はイブだしね。雰囲気に流されてる感は否めない。




「…はぁ」




あーあ…せっかく大倉と楽しくてしあわせなデートしてたのになぁ…なんて考えるのは、俺の心が狭いせいなのかな。




「大倉」
「ん。お待たせ」
「あ……相澤先輩…」
「こんにちは、椎名さん」
「………」




その嫌そうな顔やめてもらえないだろうか?
大倉が1人でここにいたと思ってたのだろうか。
そうだったら凄いよ、うん。




「椎名さん、1人なの?」
「いえ…家族と、来てます…」
「じゃあ、1人でここにいたらご家族心配するんじゃない?」
「………」
「ご家族のところ、戻りな?」
「……本当に、付き合ってるんですね」
「うん。付き合ってるよ」
「っ……」




彼女に対して、大倉と付き合ってることを濁すことはしない。
濁したら、きっとまた大倉に付き纏うだろうし。
正直、これ以上大倉の周りうろちょろされたら、大倉の疲れがピークに達しちゃうだろうし、俺もあまりいい気はしない。
そして俺は、これから嫌な奴になろうと思います。正直、心痛いけど。




「諦めてくれる?」
「っ、それは」
「また、大倉に付き纏うの?」
「付き纏う、とかは…」
「じゃあ、諦めて?」
「………」
「いくら椎名さんでも、俺は大倉のこと離す気ないから」
「………」
「勿論、椎名さん以外が大倉に付き纏ってても同じだけど」
「………、で」
「ん?」
「…っ、なんで!」
「………」




パッチリとした大きな目に涙を浮かべてる椎名さんは、側から見たら可憐で可愛くて守りたくなるタイプで。
周りにいる人たちは、俺たちの言い合いをどう見てるんだろう。
きっと、俺が女の子を泣かせてる悪い奴に見えてるに違いないけど、それでもいい。
大倉のことが守れるのなら。
こんな俺でも、大倉の疲れてる気持ちを守ることが出来るなら。




「…航」
「うん?」
「行こう」
「…、うん」




いまだに涙を浮かべた顔してる椎名さんを、そのままにしていいのかは分からないけど、大倉に託されてその場を離れた。
椎名さんは、下を向いて泣くのを我慢したまま、その場に佇んでいた。




あの後は、2人して特に喋ることもなく、大倉が買ってきてくれたカフェオレを片手に持ち、空いてる手は大倉としっかりと繋がってた。
お互いに絶対に離さないと強く思いながら。


ご飯を食べて帰ってくるでもなく、なんとなく早く大倉の家に行きたくて、その気持ちは大倉も同じだったらしく、すぐに大倉の家に帰ってきた。




「っ、ま」
「無理、待てへん」




大倉の家に着いた途端、大倉に抱きしめられて、息が出来ないくらいの口付けをされた。
突然のことでビックリしたけど、うっすらと開けた目で見た大倉は、どこか余裕がない表情をしてた。

 

「、っおおく、ら」
「っこう、航…っ」
「ま、って…部屋、」
「っ、うん」




大倉に手を引かれて、大倉の部屋に行ったら、そのままベッドまで連れて行かれた。
押し倒すようにベッドに沈んだら、覆い被さるようにして大倉に痛いくらいに抱きしめられた。




「、大倉」
「…航、すき」
「うん」
「俺も、航と離れる気ない」
「うん」
「ずっと一緒に居りたい」
「うん」
「絶対に、離さなん」
「うん。俺も」




その日初めて、大倉と身体も繋がれたら。




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