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10 - 二学年 二学期 秋 -
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しおりを挟む「で?なんで泣きそうな顔してたの?」
「…別に、」
「大倉くん、居たね?」
「っ…、」
「彼、いつ帰って来たの?」
「…知らない」
「…知らなかったのか」
「………、」
だったらなんだよ。知らなかったよ。連絡も一切なかったよ。
あと、別に泣きそうになってない!ただ、色々とムカついてただけ!
それに…井上に言えるかよ。言えるわけないだろ。
俺たち別に、友達でも何でもないただのクラスメイトだし。何だったら、俺お前のこと振ってるし。
「ね、相澤くん」
「…なに」
「俺、まだ諦めてないからね?」
「は?」
「まだ、相澤くんの事好きだよ」
「何言って、」
「そんなすぐに諦められるわけないじゃん」
「…、」
そんな事言われても、俺はお前の気持ちに応えられないんだって。
女が好きかと言われたらそうでもないし、じゃあ男が好きなのかと言われたらそれも違う。
多分、大倉だから好きになったんだ。
だから、他の人を好きになる事はないんだ。
井上にそうはっきり伝えたのに、こいつは諦めようとしない。
「…俺のどこがいいんだよ」
「……1年の時さ、図書委員してたでしょ?」
「…うん」
「その時に俺、図書室通ってたの」
「…そうなんだ」
「うん。でさ、カウンターで本読んでる相澤くん見かけて」
「………」
「その時の真剣な顔が可愛いなぁって思ったのがきっかけ」
「は…?」
「それから毎週木曜日は通ってたんだよ」なんて言われても、俺は知らない。
その時は、大倉と居るのが楽しかったし、周りは当時の3年生ばっかりだったし。
井上が俺に好意を寄せた事も知らないし、見られてた事も知らない。何だったら井上の存在も知らなかった。
「2年になって、同じクラスになって、しかも目の前に相澤くんが居て」
「………」
「好きな人が目の前に居て、気持ち抑えるなんて無理でしょ」
「それは、」
「まぁ…大倉くんと何があるんだろうなぁとは思ってたけど」
「……、」
「まさか付き合っちゃうとはなぁ」って、どこか寂しそうに言われても…反応に困る。
正直、俺は今まで告白した事もされた事もなかったから。
それも全部、大倉だけだったから。
「なんで大倉くんと喧嘩したのかは知らないけど」
「……」
「そんなんだったら、俺奪っちゃうよ?」
「っ…、」
「……いいの?大倉くん」
「っはぁ…あかんに、決まってるやろ」
「…っえ?」
声のした方に振り向いたら、大倉と真琴が居た。
2人とも息が上がってる。走って来たのかな。
「航」
「っ……」
「…ごめんなさい」
「……、」
「ほんまにごめんなさい」
「っ……」
「俺も。航ちゃん、ごめんなさい」
「………」
謝られても、正直どうしていいのか分からない。
確かに、何も聞かされてなかった事には怒ってる。
何で俺には何も言わないで、真琴は知ってるの?とか、いつ戻って来たの?とかもうなんか、色々。聞きたい事もいっぱいある。
でも、どうしたらいいのか分からなくなってるのも確か。
許すのが1番良いのも分かってる。でも自分の中でまだ処理しきれてないから、どう許せば良いのかも分からない。
取り敢えず、ずっとここに居るのも何だからと、俺の家に行く事にした。
井上は、あまり関わりたくないのか、それとも大倉と一緒に居たくないのか、帰って行った。
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