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10 - 二学年 二学期 秋 -
01
しおりを挟む大倉から連絡来たのは、夏休みが終わる前の日だった。
ただ短く『当分帰れない』の文字だけ。
返信はしたけど、それに返事はなく、何だったら既読にもならなかった。
なんか、あったのかな…。大丈夫かな、大倉。
「大丈夫だよ」
「だといいけど…」
「そのうち連絡来るって、絶対」
「うん…」
結局大倉から連絡来る事なく2学期になった。
今日で、大倉と出会って1年目なんだぞ。
なんで連絡もしてくれないんだよ、大倉。
「…は?」
「多分、今大変なんだと思う」
「…そっか」
始業式が終わって、珍しく真琴が一緒に帰れると言うから一緒に帰ってる時に、なんで大倉が連絡よこさないのかを教えられた。
あの日、大倉の元にお母さんから連絡が入った。
それは、お父さんが仕事中に、交通事故に遭ったと言う話だった。
大倉は、声や態度は焦ってはなかったけど、隠しきれないほど、顔に心配の文字が浮かんでて、そのまま帰って行った。
そこまでは、俺も一緒に居たから知ってる情報。問題はその後だ。
大倉のお母さんから学校に連絡があって、ホームルームで詳細は話されなかったらしいけど、真琴が先生に無理やり聞き出した話だと、地方に出張してるお父さんの世話を、最初はお母さんがやろうと思ってたんだけど、お母さんはこっちで大きな案件を背負ってるから抜け出せないと。
じゃあ誰が世話する?ってなった時に、お兄さんに頼むか?となったけどお兄さんが嫌がったらしく、じゃあどうする?となった時に大倉が面倒見る事になったらしい。
色々と準備やらなんやらでまともに連絡が取れなかったらしく、先生たちも今日お母さんから連絡が来て知った、って話だった。
「はぁー…」
「安心した?」
「うん…」
安心はした。大倉に何かあったのか、それともお父さんがそんなに大変なのか…いや、大変なのは大変か。
確か、お兄さんは大阪の大学に通ってるんだったよな…。
それで、お父さんは確か東北に居るって言ってたから、確かに大阪からは無理だよな…。
お母さんもこっちで弁護士やってるから無理だし。そうなったら大倉しかいないもんなぁ。
大倉の祖父母は互いに子供の頃に他界してるって言ってたし。
じゃあ、大倉は今東北に居るのか。
そりゃ、「当分帰れない」って言うわな。
でも…連絡欲しかったな…て思うのは、俺の我儘になってしまうのだろうか。
それから、相変わらず大倉から連絡はない。
俺からも連絡しない。と言うか出来ないで居る。
確実に大変なのに、俺から連絡して煩わせたくないと思ったら、なかなか連絡出来ないで居る。
真琴には、「連絡くらいいいんじゃない?」と言われたけど、それでもやっぱり躊躇してしまう。
落ち着いたら、連絡くれるだろうと信じて待つ事にした。
「ねみぃー…」
「はい、寝なーい」
「うぅー…」
もうすぐで学園祭だ。
と言ってもまだ2ヶ月はあるんだけど。
大倉は、今何してるのかな。ちゃんと寝て、ご飯食べてるかな。
勉強もやってるか?もうすぐテストあるけど、こっち戻って来れるんだろうか?
声、聞きたいなぁ…手も繋ぎたい。大倉に触れたいなぁ…。
そう言えば、大倉のクラスはお化け屋敷するみたいだよ。しかも本格的なやつ。
大倉、多分無理なんじゃないか?あいつ、意外とビビりだし。
例え自分が脅かす側でもビビりそうだな。ふはっ、そんな大倉も見たいかも。
俺のクラスはね、クラスメイトに占いできる奴が居るからそいつメインで喫茶店するんだって。
2年連続喫茶店だよ。勿論、俺は裏方だけどね。
大倉、お前に話したい事いっぱいあるんだよ。
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