30 / 79
06 - 一学年 三学期 冬 -
01
しおりを挟む晴れてなのか分かんないけど、大倉とお付き合いというものを始めて、早いもので一ヶ月が経った。
大倉に好きと言われたのが、元旦で、まだまだ寒い季節だったのが、気付いたら春らしい暖かい季節になろうとしている。三学期はとうに始まっていて、大倉は相変わらずよく呼び出されている。
今日も今日とて、お昼に呼び出され、今教室に居ない。
「航ちゃんつらくないの?」
「へ?なにが?」
「大倉くんのこと」
「んー?」
真琴にはちゃんと報告してある。
と言うか報告したら「やっとか。よかったねぇ」と言われ、驚かれることもなく、どちらかと言うと「何でそんな達観してるの?」とこっちが驚いた。
そして、俺も大倉も何故か怒られて、大倉の方から「付き合おう」って言われて、ちゃんとお付き合いする事になった。
どこまで真琴はすごいんだ!と思ったのは内緒。
「だって、呼び出されてるのって告白でしょ?」
「うん」
「嫌じゃないの?」
「んー…別に?」
「なぜ」
「んー…」
別に、大倉が呼び出されるのは今に始まった事じゃないし…大倉がモテるのは分かりきってる事だし…呼び出されて告白されるのが日常化してると言うか…うん。だから別に、嫌とかはない。
ただ、毎回本当に可哀想だなぁとは思うけど。
告白って、伝えるのも断るのも体力いるんだなって、なんとなく分かったし。
「…なんか、熟年夫婦みたいだね」
「は?」
「大倉くんの事信用してるんだねぇ」
「ん、まぁ…」
信用…と言うのだろうか…。
ただ、俺が少し冷めてるからとも言えるけど。
まぁ…信用してなかったら、今頃ソワソワしてるんだろうけど。
「ただいまぁ…、」
「あ、おかえり。お疲れ」
「うん」
疲れた顔して大倉が帰って来た。
今の時期、3年生からの呼び出しが多い。
もうすぐ卒業するからだと思うけど、1年からしたら3年の事断るのは精神的にも疲れるらしい。ほんと、お疲れ様。
「っ、ちょ…大倉、」
「…少しだけ」
「…うん」
俺の隣に座った大倉は、周りから見えないようにしながら俺の手をぎゅってしてくる。
大倉曰く、俺の手を握ると癒されるんだとか。
そう言われても、俺自身がどう大倉を癒してるのかは分からないから、効果があるのかはほんとサッパリ。
でも、大倉が少しでも楽になるなら…恥ずかしいけど、うん。拒否する事はない。ただ、めちゃくちゃ恥ずかしいけど!
「今日一緒に帰ろうな」
「うん」
「あ、うち来る?」
「ええの?」
「うん。母さんも会いたがってた」
「んはっ。じゃあお邪魔するわ」
「うん」
なんだかんだで、仲良くしてます。
付き合うとか初めてだし、何をどうしたら良いのか分かんないけど、俺らは俺らでそれなりにお付き合いをしていこうと思ってる。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?
漢方薬局「泡影堂」調剤録
珈琲屋
BL
母子家庭苦労人真面目長男(17)× 生活力0放浪癖漢方医(32)の体格差&年の差恋愛(予定)。じりじり片恋。
キヨフミには最近悩みがあった。3歳児と5歳児を抱えての家事と諸々、加えて勉強。父はとうになく、母はいっさい頼りにならず、妹は受験真っ最中だ。この先俺が生き残るには…そうだ、「泡影堂」にいこう。
高校生×漢方医の先生の話をメインに、二人に関わる人々の話を閑話で書いていく予定です。
メイン2章、閑話1章の順で進めていきます。恋愛は非常にゆっくりです。
オレに触らないでくれ
mahiro
BL
見た目は可愛くて綺麗なのに動作が男っぽい、宮永煌成(みやなが こうせい)という男に一目惚れした。
見た目に反して声は低いし、細い手足なのかと思いきや筋肉がしっかりとついていた。
宮永の側には幼なじみだという宗方大雅(むなかた たいが)という男が常におり、第三者が近寄りがたい雰囲気が漂っていた。
高校に入学して環境が変わってもそれは変わらなくて。
『漫画みたいな恋がしたい!』という執筆中の作品の登場人物目線のお話です。所々リンクするところが出てくると思います。
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
なんか金髪超絶美形の御曹司を抱くことになったんだが
なずとず
BL
タイトル通りの軽いノリの話です
酔った勢いで知らないハーフと将来を約束してしまった勇気君視点のお話になります
攻
井之上 勇気
まだまだ若手のサラリーマン
元ヤンの過去を隠しているが、酒が入ると本性が出てしまうらしい
でも翌朝には完全に記憶がない
受
牧野・ハロルド・エリス
天才・イケメン・天然ボケなカタコトハーフの御曹司
金髪ロング、勇気より背が高い
勇気にベタ惚れの仔犬ちゃん
ユウキにオヨメサンにしてもらいたい
同作者作品の「一夜の関係」の登場人物も絡んできます
理香は俺のカノジョじゃねえ
中屋沙鳥
BL
篠原亮は料理が得意な高校3年生。受験生なのに卒業後に兄の周と結婚する予定の遠山理香に料理を教えてやらなければならなくなった。弁当を作ってやったり一緒に帰ったり…理香が18歳になるまではなぜか兄のカノジョだということはみんなに内緒にしなければならない。そのため友だちでイケメンの櫻井和樹やチャラ男の大宮司から亮が理香と付き合ってるんじゃないかと疑われてしまうことに。そうこうしているうちに和樹の様子がおかしくなって?口の悪い高校生男子の学生ライフ/男女CPあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる