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05 - 一学年 二学期 冬 年末年始篇 -
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母さんに着物出してもらった。
「てか、着物あったんだね」って言ったら、「こう言う日が来てもいいように新調しておいたのよ」って言われて、ジーンってなった。ありがとう、母さん。恥ずかしくて直接は言えないけど。
着物は、シンプルで、色は黒に近いグレーで、帯は濃い緑。羽織は、クリーム色に近い白。着物の下の方に花の刺繍がしてあるけど、何の花かは分かんない。
ちょっと大人っぽいけど、果たして俺に似合ってるかは分からない。
母さんも父さんも似合ってるって言ってくれたけど、多分息子贔屓の目が入ってる。
大倉との待ち合わせ時間になったから、父さんのお古の雪駄を借りて、向かった。
これがまた、お古とは思えないくらい丈夫な雪駄で、これもまた俺に似合ってるのか謎だ。
「あ、大倉!」
「あ、来た」
公園の入り口で待ってる大倉を発見。
…うん。ちょっと待とうか。
え、カッコ良すぎない?え、大倉の着物姿…やばいんですけど…!!
「っ、お…、またせ」
「あ、うん…大丈夫」
「………」
「………」
…なんだろう、この沈黙。
やっぱ俺、似合わなかったかな。
大倉の着物は、濃い目の緑で、羽織は黒。帯は白くて、着物には何にも刺繍がされてなく、すごくシンプル。でも、すごく似合ってる。因みに雪駄も白。
「…むっちゃ似合うな」
「え?」
「うん…似合うてる」
「あ、りがと…。お、大倉もすげー似合ってるよ」
「ふふ。ありがと」
「う、ん」
カッコいいな、まじで。
どんどん好きになってく、俺。
…俺、大倉の隣歩いても平気なのかな?
周りから見たら、確実にただの友達に見られてるのは分かってるけど、釣り合ってなくないか?
イケメンな大倉の隣に、平凡な俺が居て本当に平気か?
…ちょっと、離れて歩こうかな。
「あかんで」
「えっ?」
「離れて歩こうとしてるやろ」
「な、ななななっ、何の事。かなぁ?」
「分かりやすすぎやろ」
「ぅ、」
くそぅ…何でバレるんだ。徐々にフェードアウトしていったらバレないと思ってたのに…。
だってほら、周り見てみろよ。
どんだけ大倉に視線送ってるか!特に女子!
あっちこっちの女の人たちがみんな大倉見て、目をハートにしてるぞ。
そんな注目集めてる大倉の隣歩くって、まじでつらい。
大倉より20センチほど小さい俺は、絶対に邪魔だろうしなんだったら弟に見られてると思う。
…自分で言ってて悲しくなって来た。
ぽつぽつ話しながら、境内の中へと入る。
中は賑わってて、色んな食べ物の屋台や、甘酒も置いてあって、勿論おみくじも引ける。
「後で甘酒飲もな」と言いながら、拝殿に向かう。
拝殿に向かう途中で、周りから「もうすぐで年明けるよ」って声が聞こえて来て、ちょっとワクワク。
そっか。俺、大倉と年越しするんだ、なんて。
去年は、家族と家で年越してたから、それから比べるととんでもない事が今起こってる。友達と、こういう風に過ごす事も、初めてだし。
「あ、あけましておめでとう」
「え?あ。あけましておめでとう!」
「今年もよろしくな」
「こちらこそ、今年もよろしく!」
あと少しで拝殿というところで年が明けた。
新しい1年。
今年はどんな一年になるのかな。
きっと、去年よりも素敵で素晴らしい1年になるんだろうな。いや、きっとなる。
だって、大倉が居てくれるから。勿論、真琴もな。
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