14 / 79
03 - 一学年 二学期 冬 -
04
しおりを挟む気のせいなのは分かってるけど、あのカーディガン事件(俺の中ではすでに事件だ)の後から、大倉の距離感が可笑しい気がする。
この前は、珍しくお昼に呼び出しされなかった大倉も一緒にご飯食べてたんだけど、いきなり大倉が俺に箸を突き出してきて「食べる?」って言いながら卵焼きを口元に持ってきたり(所謂あーんだ)、違う日には、俺のお気に入りスポットで一人ぼーっとしてたら大倉が来て、何も言わずに隣に座って(しかも腕が触れる距離だ)、大倉も一緒にぼーっとしてたり。
とにかく可笑しいんだ。
仲良くなったんだと思えば良い事だと思う。
俺も、大倉と仲良くなれたんだと思ったら嬉しいし、多分友達って心から言えるし。
でも、どうしても友達の距離とは思えない時もあって、心が落ち着かない。
残りの仕事も片付けて、図書室の最終点検も終わって図書室から出る。
鍵は俺たちで片付けるから、山本さんには先に帰ってもらった。
まだ17時だと言っても、今の時期は陽が落ちるのが早くて外はもう薄暗くなってる。
流石に女の子をこれ以上遅く帰らせるのは忍びないから、まだ少し明るいうちに早めに帰した。
「んー…っ!はぁ…。大倉、帰ろう」
「うん。…な、相澤」
「んー?」
「変な事、お願いしてもええ?」
「変な事?なに?」
「………」
「大倉?」
何だか緊張してるような、ソワソワしてるような顔しながらじーっと見られてる。
何。え、何?
多分時間にして数秒しか目を合わせてないんだけど、その大倉の目を見て俺も何故かソワソワしてきた。
じーっと見つめられて、俺も何故か目が離せなくて大倉をじーっと見て。 やっぱイケメンだな、大倉って。
「…手、貸して」
「は?手?」
「うん」
「どうぞ…?」
手を差し出したら、恐る恐ると言った感じで俺の手をぎゅってされた。
何。え、何?(リターンズ)
「お、大倉…?」
「……ちょっとだけ、繋いでてもええ?」
「え、あ…い、いいけど…」
何だろう。なんか、なんか…心臓痛い。
すごくぎゅってする。
ぎゅってされた俺の手は、大倉の大きな手に覆われて、その暖かさに何故か涙が出そうになった。
それと同時に、俺の心臓も泣きそうになった。
雪が降りそうな、泣きそうな空を背に、俺は大倉の温もりを感じていた。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
愛などもう求めない
白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。
「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」
「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」
目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。
本当に自分を愛してくれる人と生きたい。
ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。
ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。
真冬の痛悔
白鳩 唯斗
BL
闇を抱えた王道学園の生徒会長、東雲真冬は、完璧王子と呼ばれ、真面目に日々を送っていた。
ある日、王道転校生が訪れ、真冬の生活は狂っていく。
主人公嫌われでも無ければ、生徒会に裏切られる様な話でもありません。
むしろその逆と言いますか·····逆王道?的な感じです。
身の程なら死ぬ程弁えてますのでどうぞご心配なく
かかし
BL
イジメが原因で卑屈になり過ぎて逆に失礼な平凡顔男子が、そんな平凡顔男子を好き過ぎて溺愛している美形とイチャイチャしたり、幼馴染の執着美形にストーカー(見守り)されたりしながら前向きになっていく話
※イジメや暴力の描写があります
※主人公の性格が、人によっては不快に思われるかもしれません
※少しでも嫌だなと思われましたら直ぐに画面をもどり見なかったことにしてください
pixivにて連載し完結した作品です
2022/08/20よりBOOTHにて加筆修正したものをDL販売行います。
お気に入りや感想、本当にありがとうございます!
感謝してもし尽くせません………!
台風の目はどこだ
あこ
BL
とある学園で生徒会会長を務める本多政輝は、数年に一度起きる原因不明の体調不良により入院をする事に。
政輝の恋人が入院先に居座るのもいつものこと。
そんな入院生活中、二人がいない学園では嵐が吹き荒れていた。
✔︎ いわゆる全寮制王道学園が舞台
✔︎ 私の見果てぬ夢である『王道脇』を書こうとしたら、こうなりました(2019/05/11に書きました)
✔︎ 風紀委員会委員長×生徒会会長様
✔︎ 恋人がいないと充電切れする委員長様
✔︎ 時々原因不明の体調不良で入院する会長様
✔︎ 会長様を見守るオカン気味な副会長様
✔︎ アンチくんや他の役員はかけらほども出てきません。
✔︎ ギャクになるといいなと思って書きました(目標にしましたが、叶いませんでした)
風紀“副”委員長はギリギリモブです
柚実
BL
名家の子息ばかりが集まる全寮制の男子校、鳳凰学園。
俺、佐倉伊織はその学園で風紀“副”委員長をしている。
そう、“副”だ。あくまでも“副”。
だから、ここが王道学園だろうがなんだろうが俺はモブでしかない────はずなのに!
BL王道学園に入ってしまった男子高校生がモブであろうとしているのに、主要キャラ達から逃げられない話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる