3 / 3
03
しおりを挟む◇◆◇
まさか、野木崎くんに送ってもらえるとは思ってなくて、すっごくドキドキしてる。
隣を歩く野木崎くん。
さっきは少し前にいたけど、今は隣にいる。不思議な感覚。
横目でチラッと野木崎くんを伺うと、なんだか緊張してるような顔してる。
どうしたんだろ?
「…家、もうすぐ?」
「あ、うん。あそこ曲がってちょっと歩いたら家」
「そっか」
「うん」
あと少ししか一緒にいられないのか。
ちょっと寂しいけど、まさか私がこうやって野木崎くんと帰ってること自体がいつもと違って、これは現実なの?状態。
だってこの半年間、同じクラスでも話したことなかったし、それに1年生の時のことなんか覚えてないだろうし。
「…あ、じゃあここで。送ってくれてありがとう」
「…っ待って!」
自宅前の曲がり角に着いて、野木崎くんにお礼を言って身体の向きを変えて帰ろうとしたら、野木崎くんに腕を掴まれた。
「あの…惣谷さん」
「な、なに…?」
「あの…俺、俺ね?」
「う、うん…?」
「俺…っ、惣谷さんが好きだ!」
「……………え?」
「1年の時から、ずっと好きでした!」
「ぇ………え?」
待って。私今、何を言われてる?
野木崎くんは、なんて言った?
私の空耳?聞き間違え?勘違い?
「もしよかっなら、俺と付き合ってください!」
「………あ、の」
「……ダメ?」
「ま、待って…待ってください」
「………」
「えっと…の、野木崎くん、は…愛原さんが好きなんじゃ、ないの?」
「え?なんで夢菜?」
「え?」
「夢菜はただの幼馴染」
「そ、うなの…?」
「うん。それに、あいつ彼氏いるし」
「そ、うなん、だ…」
「うん」
待って。やっぱり待って。
あれ?やっぱり私の聞き間違い?
野木崎くんは、愛原さんが好きなんじゃないの…?
だって、愛原さんと喋ってる時、よく顔赤くしてたし、照れ笑いしてるのよく見てたんだけど…あれ?
それに…え?私のこと、好きって……?
「あ、あの」
「うん?」
「あの…愛原さんと、お喋りしてる時、顔赤くしてたのは…」
「へっ?」
「………」
「え、え?!見てたの?!」
「ご、ごめんなさい!」
「いやっ、あの…そ、それは…」
突然下向いてる、顔を真っ赤にした野木崎くんを見て、なぜか私も顔が熱くなってきた。
「それは…夢菜に、惣谷さんのこと、話して、て…」
「え…、」
「…俺、誰か好きになるの初めてで」
「………」
「気持ち抑えるの苦手で、だから夢菜にはすぐにバレたんだけど」
「………」
「そしたらなんか、箍が外れて、その…夢菜に惣谷さんのどこが好きかをずっと喋っちゃってて」
「っ!!?」
「それで…か、勝手に顔真っ赤になってたと言うか………ごめん」
「ぁっ、い、いえ…」
何、それ…!!
は、恥ずかしいのですが?!
え、本当に野木崎くんは、私のことが好き、なの?
「それで、返事が欲しいんだけど…?」
「あっ…あ、あの…」
「うん」
「…………」
伝えて大丈夫かな、私の気持ち。
気持ち悪がられない?同じ気持ちの好き?
「あの…わ、私も、その…………好き、です」
「っ…本当に?」
「は、はい…」
「いつから?」
「え?」
「いつから、好きでいてくれた?」
「えっと…1年の時の、委員会で…」
「っ…一緒だ」
「え?」
「俺も、1年の委員会の時に、惣谷さんのこと好きになった」
「っ…、」
「そっか…そうだったんだ…やばい…すげぇ嬉しい」
「っ……」
その笑顔は反則です。
心の底から嬉しそうに笑う笑顔は、本当に素敵でさらに好きが増した気がする。
「俺と、付き合ってくれますか?」
「わ、私で、よければ…」
「惣谷さんがいい」
「っ、はい」
「あと、麻希って名前で呼んでもいい?」
「あっ、は、はい」
「俺のことも、名前で呼んで?」
「っ…ぜ、善処します」
「ダメ、呼んで」
「………無理です」
「ダメ、呼んで。呼ばないと帰さない」
「えっ?!」
あれ?野木崎くんってこんなキャラだったっけ?
明るくて優しいけど、あれ?なんか、あれ?
「俺、かなり嫉妬深いみたいだから」
「え?」
「正直麻希が初恋だし、初彼女だし、だから自分が恋愛してどうなるか知らないんだけど」
「…うん?」
「多分、というか確実に嫉妬深いと思う」
「………」
「それでも、そばにいてくれる?」
「…はい。ゆ、柚乃くん、のそばに、います」
「っ!!ありがとう…!」
「わわっ…!」
泣きそうな、でもとても嬉しそうな笑顔で私を抱きしめる野木崎くん…柚乃くんは、とてもかっこよくて可愛らしい人で、きっと私も嫉妬深いのかも知れない。
そんな柚乃くんを、誰にも渡したくないと、初めての感情が芽生えたから。
それから2年。
柚乃くんのとは順調にお付き合いをしてる。
私は最初から志望してた大学に無事合格して、今は静岡に部屋を借りて通ってる。
驚いたことに、柚乃くんも私と同じ大学を受験して合格してた。
今は、お互い近くに住んで、毎日一緒に通ってる。
「ねえ、麻希」
「うん?」
「もうそろそろ、一緒に住まない?」
「え?」
「こんだけ近くにいるし、麻希は基本俺の家にいること多いじゃん?」
「まぁ…」
「だったらもう一緒に住もう?ね?」
「でも…」
「いいじゃん。俺と結婚してくれるでしょ?」
「え…?」
「と言うか、結婚してください」
「ゆ、の…くん…?」
「ずっと一緒にいよう?」
「っ、いいの?」
「うん?」
「私で、いいの…?」
「麻希がいいんだよ。麻希しか考えられないの。麻希じゃないとダメなの」
「っ…」
「結婚、してくれる?」
「うん…っうん」
「へへっ。麻希、大好きだよ」
「っ、私も、柚乃くん大好き」
これからも私は、柚乃くんとずっと一緒。
初恋は実らないと言うけれど、私の初恋はずっと柚乃くんのまま。
本当に、大好きだよ、柚乃くん。
END
0
お気に入りに追加
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
好きな男子と付き合えるなら罰ゲームの嘘告白だって嬉しいです。なのにネタばらしどころか、遠恋なんて嫌だ、結婚してくれと泣かれて困惑しています。
石河 翠
恋愛
ずっと好きだったクラスメイトに告白された、高校2年生の山本めぐみ。罰ゲームによる嘘告白だったが、それを承知の上で、彼女は告白にOKを出した。好きなひとと付き合えるなら、嘘告白でも幸せだと考えたからだ。
すぐにフラれて笑いものにされると思っていたが、失恋するどころか大切にされる毎日。ところがある日、めぐみが海外に引っ越すと勘違いした相手が、別れたくない、どうか結婚してくれと突然泣きついてきて……。
なんだかんだ今の関係を最大限楽しんでいる、意外と図太いヒロインと、くそ真面目なせいで盛大に空振りしてしまっている残念イケメンなヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりhimawariinさまの作品をお借りしております。
私と彼の恋愛攻防戦
真麻一花
恋愛
大好きな彼に告白し続けて一ヶ月。
「好きです」「だが断る」相変わらず彼は素っ気ない。
でもめげない。嫌われてはいないと思っていたから。
だから鬱陶しいと邪険にされても気にせずアタックし続けた。
彼がほんとに私の事が嫌いだったと知るまでは……。嫌われていないなんて言うのは私の思い込みでしかなかった。
軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら
夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。
それは極度の面食いということ。
そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。
「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ!
だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」
朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい?
「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」
あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?
それをわたしにつける??
じょ、冗談ですよね──!?!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる