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二章 魔族地方

五十五話 副作用

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【五十五話】

クルトの実家にある地下室でソファに寄りかかる。全く動けない状態ではなく、今では少しだけ歩いたり出来るようになった。

そもそも大して使っていない。飲んだ後カムリを切りまくって首を飛ばしただけ。
なのにこの疲労は…やっぱりそれなりに無理はしていたのかもしれないな。

「ツバキ…お水」

「悪いな」

グラスに入った水を一気に飲み干す。エリクサーは喉を潤せないのだ。

「クルトとね、話し合ったの」

「何を?」

「私も魔王城行きたいなって」

「クルトはなんて?」

「危険だと思ってるみたい。説明したら『少し考える』って言ってた」

魔王城ではタダで住めるのだろうか? やっぱり働かないと住めないのか? リンもクルトも能力はあるし、大丈夫な気がするが。

「行ってどうするんだ?」

「目的は無いけど…私は一緒にいたいから。ツバキもお姉ちゃんも、クルトも」

「快適ではあるが、これから人には殆ど会えないかもしれないんだぞ?」

「いいよ、元々人との関わりなんてなかった。だからこそ今の人を大切にしたい」

「クルトが行かないって言ったら?」

「それは…それだったら、行かないかも……」

「俺は反対しないよ」

「ほんと? …良かった」

リンもソファに座る。暫くしてクルトが夕飯を持って入ってきた。
非常食だからか彩りは無いが、匂いはいい。

「ツバキさんとリンさんの分です。ツバキさんのは少し多めにしてありますからね」

俺とリンは支度をするクルトをじっと見る。
それに気付いたクルトは頬をかく。

「あの話の事ですよね、魔王城の…。少し考えたんです、本当に信じられるのかって」
「でもツバキさんが嘘をつくはずが無いですよね」

「それじゃあ…いいの?」

「はい、リンさんが行きたいのなら私も付いていきますよ」

「お店は?」

「元々あまり繁盛してませんし…遠出するとでもいっておきます」

「…ありがとっ!」

リンはクルトに抱きつく。
非常食は餅にチーズを入れたような味がした。


それから、ベッドとソファの上でぼーっとしている退屈な生活が続いた。リンが話し相手になってくれるが、リンも話上手ではない。

そして三日後、体も殆ど回復したので魔王城へ出発する事にした。地下通路を使ってずっと歩き、疲れては休憩して、扉まで来た頃には何時間も経っていた。

リンとクルトは緊張した顔で地下通路前の地下室へと足を踏み入れる。
地下は誰もいなく静かで、外に出てもいなかった。

「どこいったんだ?」

「あの…魔物は?」

「わからない。とりあえず家に行くから付いてこい」

俺が歩き出すと、リンとクルトを恐る恐る付いてくる。
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