59 / 145
二章 魔族地方
五十五話 副作用
しおりを挟む
【五十五話】
クルトの実家にある地下室でソファに寄りかかる。全く動けない状態ではなく、今では少しだけ歩いたり出来るようになった。
そもそも大して使っていない。飲んだ後カムリを切りまくって首を飛ばしただけ。
なのにこの疲労は…やっぱりそれなりに無理はしていたのかもしれないな。
「ツバキ…お水」
「悪いな」
グラスに入った水を一気に飲み干す。エリクサーは喉を潤せないのだ。
「クルトとね、話し合ったの」
「何を?」
「私も魔王城行きたいなって」
「クルトはなんて?」
「危険だと思ってるみたい。説明したら『少し考える』って言ってた」
魔王城ではタダで住めるのだろうか? やっぱり働かないと住めないのか? リンもクルトも能力はあるし、大丈夫な気がするが。
「行ってどうするんだ?」
「目的は無いけど…私は一緒にいたいから。ツバキもお姉ちゃんも、クルトも」
「快適ではあるが、これから人には殆ど会えないかもしれないんだぞ?」
「いいよ、元々人との関わりなんてなかった。だからこそ今の人を大切にしたい」
「クルトが行かないって言ったら?」
「それは…それだったら、行かないかも……」
「俺は反対しないよ」
「ほんと? …良かった」
リンもソファに座る。暫くしてクルトが夕飯を持って入ってきた。
非常食だからか彩りは無いが、匂いはいい。
「ツバキさんとリンさんの分です。ツバキさんのは少し多めにしてありますからね」
俺とリンは支度をするクルトをじっと見る。
それに気付いたクルトは頬をかく。
「あの話の事ですよね、魔王城の…。少し考えたんです、本当に信じられるのかって」
「でもツバキさんが嘘をつくはずが無いですよね」
「それじゃあ…いいの?」
「はい、リンさんが行きたいのなら私も付いていきますよ」
「お店は?」
「元々あまり繁盛してませんし…遠出するとでもいっておきます」
「…ありがとっ!」
リンはクルトに抱きつく。
非常食は餅にチーズを入れたような味がした。
それから、ベッドとソファの上でぼーっとしている退屈な生活が続いた。リンが話し相手になってくれるが、リンも話上手ではない。
そして三日後、体も殆ど回復したので魔王城へ出発する事にした。地下通路を使ってずっと歩き、疲れては休憩して、扉まで来た頃には何時間も経っていた。
リンとクルトは緊張した顔で地下通路前の地下室へと足を踏み入れる。
地下は誰もいなく静かで、外に出てもいなかった。
「どこいったんだ?」
「あの…魔物は?」
「わからない。とりあえず家に行くから付いてこい」
俺が歩き出すと、リンとクルトを恐る恐る付いてくる。
クルトの実家にある地下室でソファに寄りかかる。全く動けない状態ではなく、今では少しだけ歩いたり出来るようになった。
そもそも大して使っていない。飲んだ後カムリを切りまくって首を飛ばしただけ。
なのにこの疲労は…やっぱりそれなりに無理はしていたのかもしれないな。
「ツバキ…お水」
「悪いな」
グラスに入った水を一気に飲み干す。エリクサーは喉を潤せないのだ。
「クルトとね、話し合ったの」
「何を?」
「私も魔王城行きたいなって」
「クルトはなんて?」
「危険だと思ってるみたい。説明したら『少し考える』って言ってた」
魔王城ではタダで住めるのだろうか? やっぱり働かないと住めないのか? リンもクルトも能力はあるし、大丈夫な気がするが。
「行ってどうするんだ?」
「目的は無いけど…私は一緒にいたいから。ツバキもお姉ちゃんも、クルトも」
「快適ではあるが、これから人には殆ど会えないかもしれないんだぞ?」
「いいよ、元々人との関わりなんてなかった。だからこそ今の人を大切にしたい」
「クルトが行かないって言ったら?」
「それは…それだったら、行かないかも……」
「俺は反対しないよ」
「ほんと? …良かった」
リンもソファに座る。暫くしてクルトが夕飯を持って入ってきた。
非常食だからか彩りは無いが、匂いはいい。
「ツバキさんとリンさんの分です。ツバキさんのは少し多めにしてありますからね」
俺とリンは支度をするクルトをじっと見る。
それに気付いたクルトは頬をかく。
「あの話の事ですよね、魔王城の…。少し考えたんです、本当に信じられるのかって」
「でもツバキさんが嘘をつくはずが無いですよね」
「それじゃあ…いいの?」
「はい、リンさんが行きたいのなら私も付いていきますよ」
「お店は?」
「元々あまり繁盛してませんし…遠出するとでもいっておきます」
「…ありがとっ!」
リンはクルトに抱きつく。
非常食は餅にチーズを入れたような味がした。
それから、ベッドとソファの上でぼーっとしている退屈な生活が続いた。リンが話し相手になってくれるが、リンも話上手ではない。
そして三日後、体も殆ど回復したので魔王城へ出発する事にした。地下通路を使ってずっと歩き、疲れては休憩して、扉まで来た頃には何時間も経っていた。
リンとクルトは緊張した顔で地下通路前の地下室へと足を踏み入れる。
地下は誰もいなく静かで、外に出てもいなかった。
「どこいったんだ?」
「あの…魔物は?」
「わからない。とりあえず家に行くから付いてこい」
俺が歩き出すと、リンとクルトを恐る恐る付いてくる。
0
お気に入りに追加
202
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
とある元令嬢の選択
こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。
女を肉便器にするのに飽きた男、若返って生意気な女達を落とす悦びを求める【R18】
m t
ファンタジー
どんなに良い女でも肉便器にするとオナホと変わらない。
その真実に気付いた俺は若返って、生意気な女達を食い散らす事にする
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる