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四章 椿蓮

九十話 王の剣

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僕を受け止めた兵士は見覚えのある者ばかりで、彼らは僕を抱えるとすぐに後方の扉から出て塞ぎ、そのまま全速力で街中を駆け抜ける。

「大丈夫! もう降ろしてくれ」

ごちゃごちゃとした裏路地で一度止まる。人は逃げ去ったのか殆ど居なく、夕暮れの為影が濃い。

「助かったよ、ありがとう」

「いえ…あの者はなんなのでしょう?」

四人のうち一人の女、エルメスが言った。

「僕の剣を狙っているらしい。魔王軍かは分からない。なにしろ仲間がいるように見えなかった…」

「なるほど…単独犯ならば対策できますが魔王軍だとしたらなかなか難しいですね…」

エルメスが苦い顔をする。ふと、さっきあの男に言われた言葉が思い浮かんだ。客観的に見て悪いのは僕ーーー。

「なあ…僕のやってる事は……間違ってると思うか?」

そう言うとほかの3人もこちらを向く。エルメスは薄く微笑み、

「わかりません。ただ、私達はあなたについて行くと誓っています。何が正しいかは、あなたによって決まるのです」

「あなたのやっている事が間違ってると思っているなら、命を捨てて助けようとしませんよ」

ガビのことを言っているのだと分かった。確かにその通りだ。

「あなたは使命を全うする事を考えて…、その為に私達はいます」

「いいのか?」

「勿論」

この4人とガビは大分前に計画について話されていた。正直、彼らはこの作戦に反対しているものだとばかり思っていたが…。

「わかった。それじゃあ最後に1つ…、僕の邪魔をする奴を全兵力を上げて殺してくれ。僕は術を発動させる」
「…油断はしないでくれ。あいつはユリウスの剣を持ってる。僕一人じゃ勝てないが、人数さえいれば何とかなるかもしれない」

「わかりました」

「それから…」
「それが終わったらすぐに全員を連れて逃げてくれ」

「…わかりました。それでは」

4人の背中を見送り、僕は隣の家に入って別の服と、剣を隠せる布を手に取った。
そして振り返った時、窓の外の路地にあの男の横顔が見えた。咄嗟にしゃがみ、口元を手で抑える。

息もできないくらいにきつく口を抑え、筋繊維が痛くなってもまだ体を動かせなかった。震えが物音を立てる度、ビクっと体が跳ねた。

ユリウスの剣と僕の剣、シリウスは能力では互角であるが、両者が正面からぶつかり合ったとして勝つのはユリウスだ。あちらは損傷する程強化されるのに対し、僕は回復能力が高いだけ。
事実、魔王に勝った王はいない…。

不吉な考えを振り払うように首を横に振った。
殺されるわけにはいかないんだ。たとえ魔王が相手だとしても。能力の差を埋めるのなら技術だ。

震える口から息を吐き出し、決意したように剣をぐっと握って、窓の反対側に体を向けた。

僕だってろくに作戦を立てていないわけじゃない。城の地下には牢獄があり、大量に囚人達がいるはずだ。そこにいけばある程度稼げるはず。
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